「くしゃみをしたら………」
「重いものを持ち上げようとして力をいれたら………」
「体育の時間でジャンプしようと力を入れたら………」
尿漏れは尿失禁ともいい、性別に関係なくまた世代を超えて多くの方に起こりうるトラブルで、妊娠〜出産を経た女性の方にも多いです。近年は10代〜20代の女性にも増えてきました。カラダの機能が落ちている方に起こりがちですが、実はスポーツを頑張る方など体を習慣的に鍛えている方にも尿漏れは起こります。
この「女性の尿漏れ」。恥ずかしいトラブルですが、病気かといわれればそのような気もせず、しかし誰にも相談できない、というお悩みを皆さん抱えているかと思います。
そこでこのような「女性の尿漏れの原因」について、この記事では解説致します。また多くの方に効果がある改善法についてもお伝えしますので、尿漏れでお困りの方やご家族にそのような方がいらっしゃる場合はぜひ参考になさってください。
この記事は、岡橋優子先生の監修を頂きました。
特定非営利活動法人スマイルボディネットワーク代表理事。日本コアコンディショニング協会スーパーバイザー。早稲田大学スポーツ科学科非常勤講師。東京都立広尾看護専門学校、府中看護専門学校他、「母性看護学」非常勤講師。骨盤底筋など体幹のエキスパート。
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1.尿漏れのタイプチェック
ひとことで尿漏れといってもいろいろなタイプがあります。それによって原因も異なります。ここではその参考となるチェック方法をお伝えします。(あくまでも「傾向」ですので、自己判断せずに泌尿器科医の診察を受けてください)
1−1.尿漏れ5つのタイプ。女性に多いのは、腹圧性尿失禁
尿漏れは大きく分けて以下の5つのタイプがあります。
・腹圧性尿失禁 くしゃみやせき、椅子から立ち上がる時、笑った時、重いものを持ち上げようとして踏ん張った時などに思わず出てしまう尿漏れです。女性の4割を超える2,000万人以上が悩まされていると言われます。これは骨盤のもっとも底部にある骨盤底筋群が緩むために起きやすくなっているものです。加齢や出産を機に出現することもあります。
・切迫性尿失禁 突然尿意をもよおし(尿意切迫感)、トイレに行くまでに我慢できずつい漏らしてしまうものです。外出や乗り物等を利用するときに困ります。このように尿意と排尿のコントロールがうまくいかなくなったりするのは、脳血管障害の後遺症など原因が明確な場合もありますが、多くは特に原因がないのに膀胱が収縮する“過活動膀胱”によって発生します。男性では前立腺肥大もこの原因となりえます。
・溢流性(いつりゅうせい)尿失禁 尿を出したい意思はあるのに出せず、反面、尿が少しずつ出てしまうタイプの尿失禁です。このケースでは原因となっている疾患があるので、その治療や対処を行うべきです。前立腺が肥大するとこの状態になりやすくなります。この症状がある男性のシニア層に多い尿漏れです。
・機能性尿失禁 排尿機能は正常にも関わらず、運動機能低下や認知症の進行で起こる尿失禁です。尿意がはっきりとありトイレまで行きたいのに、歩行障害のために間に合わないというケースもありますし、認知症によって尿意がよくわからないというケースもあります。それぞれの背景を考慮した対策が必要です。
・混合型尿失禁 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が複合して起こる尿漏れです。
また膀胱炎等の感染症でも尿失禁が起こることがあります。
1−2.尿漏れタイプ別チェックリスト
前述の項目をチェックリストにしました。印はあくまでも可能性であり断定するものではありません。
項目 | 畜尿障害・ | 畜尿障害・ | 排出障害・ 溢流性尿失禁 | 機能性尿失禁 | 尿路感染症 |
1.尿意がわからない | ◯ | ◯ | |||
2.咳、くしゃみ、笑いなどで腹圧がかかった時に尿が漏れる | ◎ | ◯ | |||
3.下着をおろすのに間に合わず、あるいはトイレに行くまでに我慢できずに尿がもれる | ◎ | ◯ | ◯ | ||
4.いつもおなかに力をいれて、いきんで排尿している | ◎ | ||||
5.尿意がないのに、知らないうちに尿がもれている | ◯ | ◯ | |||
6.排尿後に残尿感がある | ◯ | ||||
7.排尿に勢いがない | ◯ | ||||
8.頻尿(昼間8回以上、夜3回以上)である | ◯ | ◎ | ◎ | ||
9.冷たい水で手を洗うと急に尿意をもよおす、あるいは漏れる | ◯ |
(参考:高齢者の排尿の特徴と尿失禁 ユニ・チャーム)
2.女性の尿漏れ原因のほとんどは「骨盤底機能不全」
尿漏れにはいろいろなタイプがあるのですが、女性に最も多い「腹圧性尿失禁」は、骨盤底の機能が低下して起きています。正常に機能していれば、漏らすことはありません。
骨盤底機能不全は、骨盤底筋群が正常に機能していない状態です。骨盤底筋郡は骨盤の最も底部にある小さい筋肉の総称で、ハンモックのような構造をしています。骨盤内臓器のサポート、腹内圧の制御、尿や肛門の動きのコントロールなどに大きく関わっています。
水の入った風船=水風船をイメージしてください。水風船は、口が閉じていれば水が漏れることがありません。この口を閉じたり開けたりするのが尿道括約筋です。
尿道括約筋には二種類あって、内尿道括約筋と外尿道括約筋がそれです。前者は不随意筋なので、自分の意志で開けたり閉じたりができません。後者が骨盤底筋群の一つであり、トレーニング次第で動きが自由に行えるようになります。
3.骨盤底筋群をトレーニングで活性化する方法
日本人は伝統的に、骨盤底筋群を活性化するエクササイズが生活に取り入れられていました。畳や床の間での生活や、床磨き、草むしりなどが今よりも多かったのです。女性の場合は月経のコントロールも行っていました。人前で漏れることがないように、意識的に止められるようにしていたのです。
現代人の生活では椅子の生活が増えたり便利な家電製品の登場で、昔より動かずにラクに家事ができるようになりました。衛生用品も手軽に快適になりました。
この結果、機能が低下してしまったものの一つが骨盤底筋です。そこで、意図的にトレーニングすることを最もおすすめします。
3−1.最も有名で今スグできる「ケーゲル体操」
骨盤底筋のトレーニング方法として最も広く知れ渡っているのがケーゲル体操です。1940年代後半にアメリカで考案され、開発者の産婦人科医の名前からこのように呼ばれています。
この体操はいろいろな姿勢で骨盤底筋を意識して動かすことで鍛えようとするものです。お伝えする体操を毎日朝昼晩にそれぞれ行い、1〜3ヶ月継続なさってください。
3-1-1.もっとも重要なポイントは「骨盤底筋を意識する」こと
ケーゲル体操を行う時に一番大切なポイントは、骨盤底筋群を意識して動かすことです。股間部の中にある骨盤底筋を意識することが難しい方は、始める前に骨盤底筋周辺を触るなどして感覚をつかむことが大切です。
【意識する方法】
座面のかたい椅子に座ります。まずは座った時のおしりの感覚を感じます。次に手をお尻の下に置き、座りなおします。この時におしりの穴を締めます。
手に動く感覚が感じられればそのあたりが骨盤底筋群です。エクササイズの時にはこの部分の筋肉を意識して動かしましょう。ティッシュペーパーを箱からつまんで引き上げる感じでおこなってください。
また、おしりの横にある筋肉や肩に力が入らないようにすることがポイントです。骨盤底筋以外に力が入らないように意識しましょう。
3-1-2.仰向けトレーニング
仰向けで骨盤底筋を意識するトレーニングを行います。
エクササイズ方法:
仰向けになり、足の裏を床につけ、肩幅に開いて膝を曲げます。
カラダ全体の力を抜きつつ、肛門と膣(睾丸)を締めるように意識しましょう。
これを締めたままゆっくり5カウントキープし、その後リラックスします。これを5回行います。
ポイントは骨盤底筋を箱からティッシュを抜き取るようなイメージで引き上げることです。
3-1-3.四つ這いトレーニング
続いては四つ這いで骨盤底筋を動かしていきます。
エクササイズ方法:
肩の真下に手をつき、ももの付け根から膝が床と垂直になるように付けます。
背中はなるべくまっすぐ、床と平行になるように。
この運動でも、カラダ全体の力を抜きつつ、肛門と膣(睾丸)を締めるように意識しましょう。
これを締めたままゆっくり5カウントキープし、その後リラックスします。これを5回行います。
ポイントは体の力を抜いて、手足の4点に均等に体重を預けることです。
“しゃがむ”と“しゃがんでから立ち上がる”の両方が必要
- 古来日本人の生活ではしゃがむ生活が多かったとお伝えしました。確かに、しゃがむ動作では骨盤底筋がストレッチされます。これは妊娠中には最適な動作と言われていますが、しゃがんで腹圧をかけたままにしていると、骨盤底筋に負荷がかかり、弱化が速まる可能性があります。このしゃがむ動作から立ち上がることで、骨盤底筋が強化されます。骨盤底筋を自力でトレーニングする際には、この両方の動作を取り入れるようにすることをおすすめします。
3−2.意識しにくい部分が実感できるので効果が高い「ひめトレ」
ケーゲル体操を3ヶ月行っても効果が感じられない場合は3つの理由があります。
①尿漏れの状態が重篤又は筋肉以外の問題があり、原因疾患や根本治療が必要
②回数や頻度が不足している
③やり方が間違っている
ケーゲル体操を行う際に「この場所であってるかな?」「この感覚で正解?」と疑問に思いませんでしたか。やり方が間違ってしまうと効果が上げられません。ですので、ケーゲル体操の教室などに参加し、インストラクターに指導してもらいながら行った方が、間違いを減らせることと思います。
そこで、ご家庭でひとりで簡単にできるのが「ストレッチポール®ひめトレ」を使ったエクササイズです。
このエクササイズは分かりにくいということがありません。椅子に置いて座り脱力して呼吸を行うだけでも、骨盤底筋群が活性化します。
お伝えするエクササイズもたいへん簡単で、カラダに無理なくすぐに効果を実感していただけます。
なお、第17回日本女性骨盤底医学会では、
座位による骨盤底筋収縮時には,ひめトレ前,ひめトレ中,ひめトレ後全ての条件において骨盤底は有意に挙上すること(明らかに筋肉の活動があったこと)が示された。参考リンク:ひめトレ公式サイト
などの研究発表が行われました。
3-2-1.ひめトレ呼吸トレーニング
骨盤底筋を意識して呼吸をしていきます。
エクササイズ方法:
ひめトレの上に座り、触れている部分を引き上げながら、大きく呼吸をします。
息を吸いながら骨盤底筋を引き上げ、その位置をキープした状態で息をしっかり吐ききりましょう。5回ゆっくりと行いましょう。初めはシンプルに骨盤底筋を感じましょう。
エクササイズを動画にてご紹介します。
3-2-2.ひめトレバードウイング
骨盤底筋を引き締め、呼吸でお腹を動かしたら、次は肩甲骨を動かしましょう。
エクササイズ方法:
ひめトレに座り両手を引き上げます。
手のひらを外側に向けて肘を曲げながら肩甲骨を寄せます。
この時、骨盤底筋を引き上げてキープしておくことがポイントです。ゆっくりと自分のペースで5回行いましょう。両手を動かしても骨盤底筋から力が抜けないように引き上げましょう。
エクササイズを動画にてご紹介します。
3-2-3.ひめトレシェイプブレス
最後はお腹を引締める効果のある運動、シェイプブレスエクササイズです。下腹を意識して行うことでウエスト周りを刺激します。
エクササイズ方法:
ひめトレに座り、肋骨の横に手を当てて息を吸います。この時に骨盤底筋を引き上げましょう。息を吐きながら手をクロスさせて前へ出して5回行いましょう。ポイントは下腹を意識することです。息を吐きながら肋骨が締まっていくのを感じていきましょう。
エクササイズを動画にてご紹介します。
3つのエクササイズで骨盤底筋を意識して引き上げる感覚を得てみてください。使用前の感覚もぜひ覚えておいて使用後と比較してみましょう。
本来は高齢者の尿漏れ対策体操のために、本稿監修者の副島理子先生が考案したものです。先生は当初タオルを丸めて使っていましたが、それでは反発力が弱く思うような効果が得られませんでした。逆にキッチン用ラップの芯では逆に硬すぎて痛いということもあり、微妙な反発力を求めて㈱LPNが研究し製品化したものです。
4.ひめトレで骨盤底筋群を活性化させることのメリット
これまでのユーザーの方の声で以下のようなものがあります。
・ウエストサイズダウン
・肩こりや腰痛の改善
・姿勢の改善
・立ったときの安定性改善
・身長増
・冷え性や足のむくみ改善
・生理不順改善
以下の記事では、実際に出産後に尿漏れで困っていたユーザーの方が「毎日朝と夜に2回、一週間続けたところ、劇的に尿漏れが改善されました」と書いています。腰痛への効果も言及されています。
またズームインサタデーというテレビ番組で紹介された時は、わずか10分の運動でリポーターの女性のウエストが3cmも引き締まり、姿勢も良くなるなどの効果が現れました。
またスポーツを行うアスリートの方には、腹圧をキープできることでダッシュ力、ジャンプ力、パワー発揮の瞬発力が向上することが期待できます。骨盤底筋群は体幹の筋肉の一つですからコアトレーニングの一環として毎日行っていただきたいものです。
5.まとめ
女性の尿漏れの原因についてお伝えしました。尿漏れパッドや効果がありそうなサプリメントも多数販売されていませんが、骨盤底筋群をうまく使えていないことによる尿漏れには、この部分のトレーニングしか抜本的な改善策はないといえます。しかしトレーニングすることで多くのメリットを得ることができまるのです。ぜひお伝えした方法をお試し頂き、生活の質向上をはかってください。
※この記事は、岡橋優子先生の監修と、日本泌尿器科学会の尿失禁解説ページ、および文中で紹介した各ページを参考に執筆しました。
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