フラの美しい踊りには誰しも憧れるものです。
優雅で笑顔に包まれ幸せが全身からにじみ出ている感じがします。このような踊りができたら………。
そう思って始めてみたけれど、想像していたよりも難しい!キツい!ということがあったのではないでしょうか。
「なんでこんなつらいのにニコニコできるの?」と思う方もいるでしょう。基本の動きでいっぱいいっぱい。振り付けを間違えないようにと考えれば考えるほど、ステップがおろそかになってしまいます。
しかも先生の言うこともよくわからない、ということも。これは先生は決して悪いわけではなく、感覚的におぼえていただきたいので、ご自身の理想とする表現をしているのです。できない方に「どうしてこのように踊れないの?」と言っても少々難しいかと思います。
でも、どうしたら?
そこでこの記事では、わかりやすいフラの指導に定評がある先生に、初心者から中級者の方がよくつまずくポイントの一つ「基本の動きとステップ」について解説していただきました。
また後半には、「レッスンで先生がよく言う言葉のひも解き」を加えました。これで先生の言っていることの意味がご理解頂けます。
この記事で紹介していることをご一読頂き、一部のエクササイズについては習慣的に行っていただくだけで、要点ができるようになります。お困りの方はぜひ参考になさってください。
この記事は、坂本律子先生の監修を頂きました。
フラサークル「ハレ・オハナ」代表 理学療法士/日本コアコンディショニング協会 マスタートレーナー&ひめトレインストラクター 他
理学療法士の視点からフラを分析。感覚的でわかりにくいフラの動きをわかりやすい言葉と指導でお伝えする手法が大人気で全国から生徒さんが集まる。’08年フラ・ハラウ・オ・カムエラと共演、’12年Kiwala’oより習ったフラ・カヒコを指導開始。これ以降、毎年ハワイ島を訪れ、クムフラKiwala’oのレッスンを受けるようになり、’15年には日本に招聘。’17年横浜市中区弥生町にスタジオを新規オープン。スタジオホームページ https://haleohana.jp/
目次
1.初心者のうちに身につけておきたいフラ・ステップの4原則
フラのステップは、ハーラウ(教室)によって特徴があり、他の教室のことが参考にならないことが多いです。スキルについてはそれぞれの教室で学ぶ必要がありますが、「ヒトの運動」という観点でみると、共通することが4つあります。これは、どんなスタイルでも大事なことです。
1−1.足の裏は三点支持
足の裏は、3つの点で支えます。踵の真ん中(踵骨)、親指の付け根(拇趾球)、小指の付け根(小趾球)です。この3点が、同じ力で柔らかく床に接しているのが理想です。
1−2.体重はまっすぐ乗せる
フラでは、床をしっかりと踏みますが、その力が、地面に対して垂直に伝わると効率がいいです。どんな向きで動いても、力は床に真っ直ぐ伝わるようにしましょう。
1−3.腰ではなく、股関節を動かす
腰を動かしているように見えるフラの動きですが、下半身で最もたくさん動くところは、脚の付け根のところ(股関節)です。ここが自由自在に動くことで、大きなヒップモーションが可能になります。どのようなエクササイズで股関節が動くようになるのかについては、次の章で解説します。
1−4.膝とつま先の向きを揃える
膝とつま先の向きが違うと、膝がねじれていることになり、痛みが起こりやすくなります。つま先がむいている向きに膝が出るようにすると、膝のねじれが解消して、痛み無く踊れるようになります。
※骨盤の傾きが太ももの骨のねじれをうみ、X脚、O脚になっているケースがあります。反り腰や、骨盤後傾に注意なさってください。
2.股関節の動きを出すための3つのエクササイズ
股関節とは、骨盤と大腿骨という太もものところにある骨とで出来ている関節です。ここが自由に動くためには、骨盤が太ももの骨の動きに影響されずに安定している事がとても重要になります。
2−1.骨盤を安定させ、股関節を動かすためのエクササイズ
骨盤は、体幹と呼ばれる胴体の部分の一番下にある骨の名前です。たくさんの筋肉がついているので、それらを上手にコントロールしながら、太ももの骨(大腿骨)を動かしましょう。
【エクササイズ方法】
仰向けで寝て、骨盤を床と平行に保ちます。腰と床には隙間が空きます。この隙間の大きさは、このまま保ちます。
骨盤が揺れないように保ちながら膝を外に開きます(股関節の外旋)動かす速さはゆったりした呼吸と合わせます。息を吐くときに開き、吸うときに戻るようにしましょう。
骨盤が揺れないように注意しながら元の位置に戻します。
左右どちらも同じ回数だけ行います。
2−2.立って行う骨盤を安定させるエクササイズ
前項の仰向け運動が安定してできるようになってから行いましょう。なぜかというと立っている方が骨盤のコントロールはが難しくなるからです。片足立ちでバランスが取れない人は、何かにつかまって行ってください。
【エクササイズ方法】
骨盤を真っ直ぐにして(反ったり後ろに傾かないようにして)立ちます。
片足だけヒザを曲げて片足立ちのようになり、ゆっくり膝を外に開きます。この時に、骨盤が一緒に回らないように気をつけましょう。
動かすのは仰向けの時と同じで、かなりゆっくりで大丈夫です。
2−3.膝の曲げ伸ばしで骨盤を動かすトレーニング
一連の股関節エクササイズのなかで、実際のフラに最も近い動きです。これがスムーズに出来るようになれば、一安心です。
【エクササイズ方法】
両膝を軽く曲げます。
交互に膝を伸ばします。この時に、膝裏を伸ばす感じではなく、足の裏を踏み込むようにして伸ばします。
骨盤は傾きますが、肩が揺れないようにしましょう。
骨盤を引き上げる動きは必要ありません。また、骨盤を横にスライドするような動きも必要ありません。
ゆっくり、滑らかに動かすことを目標にしてください。
動画でもご覧頂けます。前半は正面から、後半は背面から撮影しています。最後までよくご覧になって参考にしてください。
棒を横にし、背中にあてて両手で保持しながら行うと上半身の水平保持がわかりやすいのでおすすめの方法です。
この場合は下の動画のようになります。これも前半は正面から、後半は背面から撮影しています。最後までよくご覧になって参考にしてください。
3.ハンドモーションを美しくするための4つの必須条件
ハンドモーションは、物語を語るためには欠かせないものです。美しいハンドモーションのために欠かせない4つの要素を説明します。
3−1.腕を伸ばす位置を徹底的にマスターする
どこに腕を伸ばせばいいのかをマスターすれば、習ったその場で腕の位置が決まるので、先生に注意される回数が減ります。
特に注意するのは「見えていない側」です。これは思っているところと違う位置に腕を伸ばすことが多いのです。どこが真横か、どこが45度なのかはカラダで覚えるしかありません。繰り返し練習しましょう。
3−2.指先ではなく、手のひらを動かす
やわらかい動きは、指の曲げ伸ばしではなくて手のひらを広げたり緩めたりする動きで行います。それがやりやすいように、手首も連動して使えると、なお良いです。お米をとぐときや、パンやハンバーグをこねる動きに似ています。
動画の方がわかりやすいです。
3−3.手を上げるときに腕だけを動かす
肩に力を入れているつもりはないのに、「肩の力を抜くように」と注意されることがありませんか? これは手をあげるときに肩甲骨も一緒に動いてしまっているからです。肩甲骨が引っ張られてしまう原因としては、普段の肩こりや猫背で筋肉が突っ張っていることが原因のことも多いです。それを解消するために、簡単なストレッチを紹介します。このストレッチをレッスンが始まる前に行ってみてください。
【エクササイズ方法】
肩を押さえて、首を倒します。
続いて大きなボールを抱えるように背中を伸ばします。
3−4.胸は張らない。張ると腕の動きが固くなる
腕を動かすためには、ある程度自由に肩甲骨が動く必要があります。いわゆる「胸を張る」姿勢は、肩甲骨の動きを止めてしまうので、動きづらくなります。
「胸を張ることを意識する」というよりは「背筋が上にピンと伸びた姿勢」であることを意識してください。
特に猫背の方は、猫背のまま胸を張るとかなり苦しい体勢になります。反り腰も強くなり腰に痛みを発生させやすくなるのです。
背中を反らすのではなく、胸の縦の骨を上に引き延ばすようにして姿勢を整えることで、胸を起こして腕も自由になることが出来ます。
4.初心者が分かりづらい先生の指示TOP5を解説!
習い始めたばかりだと、先生の言っていることがよく分からないこともあります。先生はこういうことを言っている、ということを解説します。本当は、先生に直接聞ければいいのですが、当たり前のように言われると案外聞けませんよね。
4−1.なめらかに(ねばるように、曲をたっぷり使って)動く、とは
文字通り、なめらかに動くということなのですが、特にゆっくりとした曲の時に聞くと思います。ハワイアンの曲は大抵4拍子です。ですから、ステップも4カウントなのです。4拍数える間、動きが止まらないことを言います。また、方向が変わるときに急に止まらず、止まるところの手前から動きのスピードを落として方向を変えたら最初はゆっくり動き出す、と言うことです。ステップが切り替わるときにも同じことが言えます。
4−2.大きく踊る、とは
これは手の動きを大きくするという意味ではなくて、自分の周りの空間を広く使うということです。自分の体の近くで踊るのではなく、斜め前や、特に斜め下に手を伸ばす振りの時に、肘が窮屈に感じませんか? これは、肘が楽に曲げ伸ばしできるぐらい、体から腕を離して踊るのが正解です。そう踊ることを、大きく踊ると言います。
4−3.指先に神経を入れる、とは
これも同じようによく聞くことです。見ている(顔を向けている)方の手は、しっかり伸びていたり、ゆっくり止まったり出来ていても、顔が向いていない手はどうでしょう? それも全部コントロールするということです。下記の動画を参考にしてください。
また、自分の指先が描く軌跡を意識して動かして、と言うことでもあります。真っ暗な中で、指先に明かりが灯っている様子を想像してください。その時に光が描く線が美しく繋がっているだろうか? と、想像力を働かせてください。指先の動きを追っているだけでも綺麗に見える泉を描くように踊る事を指して、このように言っていると思います。
4−4.お尻を突き出さない、とは
カラダの作りとして、「お尻が大きい人は、お尻を出さない」と言われることがあると思います。実は、少し腰が反っていることが正解。でも、反りすぎはよろしくないです。体を起こそうとして背中で引っ張っていると、腰の反りが大きくなります。
それでは上手く動かないので、恥骨とみぞおちの距離をあまり離さないように、でも、恥骨の方がみぞおちよりも後ろにあるように、骨盤の位置を調整しましょう。
4−5.腰を落とす(アイハア)とは
膝を曲げて腰を落とした中腰の姿勢、と、最初に教わるかもしれません。そうすると多くの人が、膝を曲げ、体を起こそうとしてお腹が突き出ている姿勢になりがちです。これでは、膝がつま先より大きく前に出てしまいます。この姿勢は膝に悪いです。本来は、いすに腰掛ける途中のような姿勢を取ることになります。股関節が大きく曲がる方が動きが自由になるので、ヒップモーションがしやすくなります。
足首が硬くて腰を落とせない、という方は、そのやり方が違う可能性があります。
【エクササイズ方法】
スクワットで正しい腰の落とし方をヒザの位置をマスターしましょう。
棒を胸の前で両手で持ちます。
その棒を前に押し出しながら、膝を曲げお尻を後ろに突き出していきます。
腰・背・首・腕が一直線になるように十分に膝を曲げます。
膝はつま先より前にでないようにしてください。10回繰り返します。3セットを目標にしてください。
5.まとめ
フラを美しく踊るためのカラダの使い方をお伝えしました。ここで紹介した基本的な動きは、フラを始められたばかりの方に限らず、中級者の方でも「どうしても難しい」ということがあります。普段の生活でも猫背であったり反り腰やX脚・O脚である可能性もあります。そうであるとフラを踊る時でも、理想的な動きが難しかったりするものです。
理にかなった姿勢や動きというのは無理がなく美しいもの。ぜひマスターして素敵なオーラパになってください。
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