「白湯(さゆ)」が注目されています。これは普通の飲料水を沸騰させたもの、または一度沸騰させたものを冷ましたもの(湯冷まし)のことです。
いうなれば何の変哲もないただの「お湯」であり、味も香りもありませんが、これをよく飲むことで健康に効果があると考える人が少なくありません。
水道水には消毒のための塩素が微量加えられています。水を一度沸騰させることで塩素のクセ(カルキ臭)が抜け、まろやかな水になります。それだけでもカラダに良い感じがします。
しかし、白湯を飲むことのメリットに関する科学的研究はほとんどありません。しかし、水分をよく摂ることや、温めた水を摂ることの利点はいくつかあるといえるでしょう。ダイエットや健康づくりに効果的だといえる論拠はあります。また飲み方次第では口腔ケアに役立つ場合もありますし、そうでない場合もあります。
この記事では、内外の文献や歯科医師の解説をもとにその根拠をご紹介します。後半ではおすすめの摂り方もお伝えしますので、白湯を生活に取り入れたい方は参考になさってください。
目次
1.白湯を飲むダイエット上のメリットとは
前提として、どのような温度であっても「水」を飲むことは、健康にとって大切です。人体の70%は水分でできています。わずか数パーセントの水分が失われただけで、活動能力が極端に落ちるのです。
体内の水分が2%失われるとのどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめます。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状があらわれます。そして、10%以上になると、死にいたることもあります。出典:大塚製薬「もしも身体の水分がなくなったら」
人類が火を使うようになってからこれまで、水を沸騰させたもの(白湯、湯ざまし)を飲むことが少なくありませんでした。インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」、中国由来の「漢方」でも白湯を勧めています。元々は消毒の意味が大きかったのでしょうが、冷たい水よりもお湯や湯ざましを飲んでいる方が身体の調子が整うことが経験的にわかったのでしょう。
民間医学では多くのメリットをうたいますが、科学者による研究はまだ始まったばかりです。ですので有効なエビデンスがないのです。この章では、健康やダイエットに良いと考えられるメリットと背後にある理論について説明します。
1−1.良好な胃腸の状態を作る
十分な水分は便通をサポートすることになり、便秘のリスクを減らします。
水分は便を軟らかくして排便を容易にする働きがあります。
(厚生労働省e-ヘルスネット 便秘と食事)
これはなぜかというと、体内の水分が少ないときは、小腸は食べ物やアルコールから水分を補給します。結果、便から水分が奪われ硬くなるのです。
慢性的な水分不足は慢性便秘に直結します。白湯を飲むことは、冷水よりも食べ物の消化を促進することもわかっています。この場合、熱いお湯の方が消化に問題がある食べ物を排出させる効果が高いです。
1−2.ダイエット効果
より多くの水を飲むことがダイエットに効果的と考える人は少なくありません。一つには、食事前に十分に水を飲むことが満腹感を増すからかもしれません。前述した通り、十分な水分は栄養吸収を助け、尿や汗、便として老廃物を排出させることにも役立ちます。
2003年にアメリカで発表された研究では、水を食事前に十分に飲むと体重を減らすことができることが分かりました。男女14人を対象に行なった実験で、食事の前に時間をかけて500mlの水を飲むと代謝が30%増加することを発見したのです。飲んだときの水の温度は22度。これが体内で37度近くにまで上昇します。この過程において男性では脂肪を、女性では糖質を代謝して水の温度をあげていたのです。この代謝の効果は30〜40分間持続するともレポートでは述べていました。
手軽なダイエット方法の一つとして、水や白湯を飲むことが勧められるでしょう。
出典:Water-induced thermogenesis.(英語サイト)
1−3.血行促進効果
白湯は血行促進剤ともいえます。お湯を飲むことで体が内側から温まり、血管が広がることで温かい血がめぐるようになります。筋肉がリラックスすることで、コリやハリの改善にも繋がるでしょう。
この効果について直接結びつける研究はありませんが、少しの時間カラダを温めるだけでも、筋肉や臓器への血流を良くすることができます。
米国のジョンストン健康財団のブログ記事では、血行促進効果のあることとして温水浴を勧めながら、白湯を飲むことも同等の効果があると考えられる、としています。
出典:5 TIPS TO IMPROVE BLOOD CIRCULATION(英語サイト)
1−4.老廃物や毒素を排出するデトックス効果
健康のためによく汗をかきましょう、ということは古来からいわれます。汗をかかないと代謝が悪く、水分がたまりすぎてむくみの原因にもなります。
そこで白湯をよく摂ることが勧められます。
体温を上昇させるくらいの温かさのお湯を飲むと、発汗を引き起こす可能性があります。これは一時的に体温が上昇するからです。発汗は老廃物や毒素を排出し、毛穴をきれいにする作用があります。
1−5.痛みを緩和し、気分を落ち着けるリラックス効果
お湯を飲むと、中枢神経系の機能を向上させ気分を落ち着かせることができます。神経系が整っていれば痛みを少なく感じることができるのです。エビデンスはありませんが、関節痛や筋肉痛があるときにお湯を飲んで痛みを緩和させている方がいます。
また白湯は、ストレスや不安を管理するのに役立ちます。アメリカの研究では、紅茶やコーヒーなどの熱い液体を飲むとストレスが軽減され、不安感が減ることが分かりました。
この研究では、それらの効果はカフェインによるものであるとしていますが、お湯だけでも気分の改善にも役割を果たしたと主張しています。
カフェインにはメリットもデメリットもあります。後者としては「興奮作用がある」「徐々に耐性ができ、量を増やさないと効果が感じられなくなる」「依存性を生む」などです。白湯であればそのようなデメリットがないのです。
2.白湯のデメリットは?
では白湯を飲むことでデメリットやリスク、注意点はどのようなものでしょうか
2-1.効果がすぐには感じられない
前述のカフェインのように効果があるもの、には副作用があることが一般的です。白湯の場合は薬効的成分が入っていませんので、すぐに何かを感じられることは、あまり期待できません。健康づくりにしろダイエットにしろ一週間程度ではまったく変化が現れなくても自然です。
2-2.すぐに作ることができない
飲みたいな、と思ったときにすぐにごくごく飲むことが難しいのが白湯です。数十秒で湯沸かしをするケトルはありますが、飲みやすい温度にするには、しばらく待たねばなりません。
あらかじめ数リットルの水を沸かしておき、それが冷めたものを必要に応じて電子レンジややかんで少し温めて飲むようにすると良いでしょう。
2-3.熱いお湯はやけどの原因になる
熱いお湯はやけどを起こす可能性があります。熱いコーヒーが少しこぼれただけでも口の周りやノド、手をやけどすることはよくあることです。口内は比較的熱さには耐えられますが、それでも熱湯に近い温度ではやけどを起こします。
指先が触れたときに「熱いな」と感じる程度のお湯は、やけどを起こすことがあるので注意してください。
3.口腔ケアにも効果的な正しい白湯の飲み方とは
メリットの多そうな白湯ですが、どのように飲むのが最も効果的でしょうか。とり方次第ではお口の環境を左右するものでもあります。
3-1.沸いて冷ましたものを飲む
どのようにして作った白湯が最も効果的かというエビデンスはありません。文献によっては「15分以上沸騰させる」「やかんの蓋はしない」などと書かれていますが、これによって塩素の抜け方がどう変わるかは不明です。
ただ、温水器から出たお湯をそのまま飲むとか、水道水を少し温めてから飲むという方法はあまり紹介されていません。沸騰させてお好みの温度になったら飲む方法が一般的です。
3-2.白湯の適温は60度前後?
コーヒーの話になりますが、2008年に発表された研究では、コーヒーの最適温度を57.8℃と報告しています。コーヒーの香りを損なわずに、やけどの危険性が低い温度とのことです。
白湯の場合も、60度前後ですと熱いと感じることなく飲めるでしょう。しかしこれも個人差があって熱い白湯をゆっくり飲むことが好きな人もいますし、もう少しぬるい温度のものをごくごく飲むのが好きな人もいるでしょう。お好みに応じてでかまいません。
3-3.起床後、かるくうがいをしてから飲む
ダイエット効果を得るには、朝起きたらすぐ白湯をコップ一杯くらい、15分程度かけて飲むとする文献が多いです。これにより体を温める効果、胃腸に消化機能始動のスイッチを入れる効果、食事前の満腹感を得る効果などがあげられるようです。
できれば、軽く口をすすいでから飲むことをお勧めします。予防歯科の第一人者である森昭先生(竹屋町森歯科クリニック)によると口の中は雑菌が多く、寝ている間は口中が乾燥しがちになるためさらに増殖しやすいとのこと。朝一番にうがいをすることでこの雑菌を排出できるといっています。このうがいに使う水は、水道水そのままでも白湯でも構わないでしょう。
3-4.日中もこまめにとるが、食事中は避ける
成人であれば一日2リットルの水(またはお茶)を飲むようにしましょう。昼間、ときどき白湯を飲むことでこの量をとりやすくなります。
食事中は逆に水分を控えるようにしてください。森昭先生は著書「体の不調は「唾液」を増やして解消する」で次のように語っています。
食事の際はよく噛んで唾液の分泌を促すようにしてください。唾液は口中環境を適正に保つ効果があり、これにより歯周病をはじめとする疾患予防が期待できます。水やお茶を飲みながら食事をすると唾液が出なくても、胃腸に流し込むことができます。あまり噛まずに、また唾液が少なくても飲み込むことができるのでお勧めではありません。胃腸にも負担をかけてしまいます。
お口のためには、食事前に十分に水分をとって、食事中と食事直後は白湯で流すことは避けた方が良いようです。
4.まとめ
白湯の効能と飲み方についてお伝えしました。「水分を多くとりすぎると水太りになってしまう」ことを心配される方がいますが、水分は少ない方が問題です。水を排出しにくい方は、代謝機能が落ちていることが考えられます。その大きな原因は運動不足です。よく水分をとって、よく汗や尿で排出できる体質づくりを行いましょう。
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