より速く、より強くなりたい。プロアマ問わずアスリート、スポーツ愛好家にとって魅力的な言葉ですね。
パワーUPのトレーニングができるツールの中で、最もベーシックなものがメディシンボールです。
この記事では、アメリカ・メジャーリーグをはじめ、日米で多くのトップアスリートにトレーニング、コンディショニング指導をされてきた友岡先生に、メディシンボールの特徴や効果、そして目的別のエクササイズをご紹介いただきます。記事の最後には全てのエクササイズの動画も紹介しております。
この記事は友岡和彦さんに監修いただきました。 95年に立教大学を卒業後渡米し、98年フロリダ大学Exercise&Sports Science学科を卒業。99年からMLBフロリダ・マーリンズのストレングス&コンディショニングコーチを務め、01〜04年モントリオール・エクスポズ、05〜08年ワシントン・ナショナルズでヘッドストレングス&コンディショニングコーチを務める。09年よりドームアスリートハウスでパフォーマンスディレクター兼ゼネラルマネージャーに就任、多くのプロアスリート、オリンピックアスリートをサポートしている。 |
目次
1.メディシンボールとは
メディシンボールとは、1〜5kgほどのボールです。ドッジボールほどのサイズや、直径50cmほどのものもあります。この記事では、ドッジボールサイズのメディシンボールを使用した種目をご紹介します。
2.目的別メディシンボールトレーニング〜ウォームアップ系〜
メディシンボールは目的に合わせて様々な使い方が可能です。ウォームアップ、適したトレーニング種目をご紹介します。
目的:胸郭、股関節などの可動域UP、体幹の筋群の活性化。
ほとんどの競技種目において有効。
2ー1.アラウンドザワールド(スプリットスタンス)
目的:胸郭、股関節の可動域UP
股関節をストレッチした状態で胸郭を動かします。スプリットスタンスにすることで骨盤をニュートラルに保つことができます。
目線を前に、カラダをまっすぐ保ち、胸の前で掴んだボールを、頭の後ろを通して戻す。これを繰り返します。
腰から動かすのではなく、胸(肋骨)をしっかり動かして行います。
2−2.ダウン&ツイスト
目的:胸椎、股関節、足首の回旋の動きを引き出す。
立った状態でボールを上にあげ、スクワットをしながら下に下ろします。上げる際にカラダをツイストさせ、左を向きます。また正面に体を向けてスクワットをし、反対側にもツイストをします。
このように身体をまっすぐに保ちます。
背中が丸まってしまうのはNGです。
2−3.ウッドチョップ(膝立ち)
目的:体幹・股関節の安定、胸郭回旋の柔軟性UP
足幅は腰幅、膝・股関節は90度に。前の足で地面を後ろに押し、後ろの足で地面を前に押すイメージで、カラダを安定させる。体幹もまっすぐ保ちます。首は長く保ち、メディシンボールを斜め上に上げ、対角線に落とします。
このように、メディシンボールを下ろした際に身体が丸まらないようにします。
2−4.ウッドチョップ(立位)
目的:胸郭、股関節の可動域UP、体幹の安定
先ほどの動作を、立った状態で行います。今度は、全身をダイナミックに動かし、股関節もしっかり動かします。
しっかりと左の股関節を曲げ、お尻をストレッチしながら左下に身体をひねります。足裏全体で地面を蹴るように、反対側にカラダを伸ばしながらボールを持ち上げます。
3.目的別メディシンボールトレーニング〜パワー発揮系〜
全身のパワー強化、一瞬で力を発揮できる動きづくりを行います。
スイング動作、投球動作のある球技、スプリント種目で有効な種目です。
※壁を利用していますが、壁がない場合は、ペアで距離を取った上でスローするなどして行なってください。
3−1.ラテラルパス
壁に対して垂直になるように立ちます。反対側に身体をひねり、壁に向かってボールを投げます。腕で投げるのではなく、重心を移動させ、地面を蹴ってお尻の力でパスをします。
3−2.バックローテーションパス
壁に背中を向けて立ち、左に体をひねります。左の股関節を折り、お尻がストレッチされるのを感じ、左の股関節を伸ばしながら右に体をひねってボールを投げます。
3−3.フロントローテーションパス
壁に正対して立ち、片方の股関節を曲げながら体をひねり、股関節を伸ばす力を使って前にボールを投げます。腕の力で投げるのではなく、お尻の力を使って股関節を伸ばす動きを利用して投げます。
3−4.スプリットスタンス・ローテーションパス
壁に対して垂直にランジの姿勢をとり、気持ち膝は浮かせます。壁と反対にカラダをひねり、真横にボールを投げます。上半身を回旋させよう意識します。ボールをキャッチした際に、体の軸がブレないようにします。
バリエーションとして、足幅を狭くしたり、両足を一直線上に揃えて行う。そのことで左右の安定性が必要になります。
3−5.フロントパス
壁に正対して立ち、ボールをヘソのあたりで持ちます。お尻を後ろに引いて股関節を曲げ、足でボールを前に出すようなイメージで前にボールを投げます。
腕を使ったチェストパスのようになりがちですが、あくまでも股関節を伸ばすようにします。
3−6.オーバーヘッドパス
頭上にボールを上げ、全身を使ってボールを前に投げます。手でボールを投げるのではなく、股関節でボールをコントロールします。
股関節の延長線上に手が伸びているイメージで、カラダ全体を用いる。遠心力に負けないようしっかりとコアを安定させましょう。いかに力を使わずに投げるかが大切です。
3.メディシンボールの効果、利点
前半のエクササイズはウォームアップ系の動き、後半は実際に力を発揮する動きをご紹介しました。
メディシンボールの特徴を活かした利点がいくつかあります。ウエイトトレーニングはゆっくりな動きが多いですが、メディシンボールは速い動きをしながらも、無意識に体幹を安定させることができます。
また、何かを持ってトレーニングを行うと、どうしても減速のフェーズが発生します。メディシンボールのスロー種目は、最後まで速いスピードを保ったまま動作を行うことが可能になります。
回旋動作のある球技種目はもちろん、スプリント動作においても胸郭の回旋、一瞬のパワー発揮は必要です。陸上長距離のような種目においても、ウォーミングアップとして活用できます。
まとめ
メディシンボールのトレーニング種目と、効果に関してまとめました。メディシンボールはコンパクトで、スピードを活かしながら適度な負荷をかけることができます。他のツールにはない特徴を活かして、トレーニングにお役立てください。
全エクササイズ動画はこちら
取材協力:ドームアスリートハウス有明
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