足首の捻挫は、スポーツ外傷ではもっとも多いケガだといえるでしょう。
ランニングはもちろん、バレーボール、バスケットボール、サッカー、野球、テニスなどあらゆる競技でよく起こります。また日常生活でも段差の踏み外しなどで簡単に起きてしまうケガです。
程度によっては立ち上がるのも歩くのも困難。体重をかけるだけで激痛が走ります。このような場合、どんな対処方法がベストなのでしょうか。
程度に関わらず、捻挫はケアを全く行わなければ、回復は長引きますし慢性化する可能性があります。
そこでこの記事では、足首捻挫のケア方法について解説します。競技活動や日常生活を以前と同様のレベルに一日もはやく戻したい方はぜひご一読ください。
この記事は石塚利光が監修しました。 日本コアコンディショニング協会コアコンディショニングリサーチディレクター/東京大学女子バレーボール部トレーナー/米国公認アスレティックトレーナー (BOC-ATC) /日本トレーニング指導者協会・認定上級トレーニング指導者(JATI-AATI)/ペンシルベニア州立カルフォルニア大学卒業/前・福岡大学助教/訳書「アスレティックボディ・イン・バランス」(Gray Cook著) |
目次
1.捻挫の度合いを知る
捻挫は、足首を内側にねじって起きてしまう内反捻挫と、外側にねじった時に起こる外反捻挫の2種類が代表的なものです。
内反捻挫の場合はくるぶしの外側の靭帯を、外反の場合は内側の靭帯を痛めています。腫れや内出血もその部分に起きます。
くるぶし周辺には多くの靭帯があります。内反捻挫の場合は、下図の5つの靭帯のいずれか(または複数)に損傷が生じることがほとんどです。
捻挫の程度は、痛みや症状のレベルによって3つに分類されています。
程度による復帰期間や痛みの程度の目安は下記の通りです。
捻挫の程度 | 靭帯の状態 | 痛みが引くまでの期間 | 発症時の痛みの程度 |
---|---|---|---|
1度・軽度 | 伸張または軽度な亀裂 | 数分〜1日程度 | なんとか歩ける |
2度・中度 | 部分断裂 | 数週間程度 | 足をひきずりながら歩ける |
3度・重度 | 完全断裂 | 治療の上で数ヶ月程度 | 足をつけるだけでも激痛が走る |
あなたの捻挫はどの程度でしょうか。表のとおりの目安はありますが、素人判断は危険です。重症の際は骨折を伴っている可能性もあります。
正確な程度は、整形外科や接骨院で正しく判断してくれます。一日程度でおさまりそうな痛みならともかく、「少しヤバいな」と思う程度以上の捻挫ならば大至急、整形外科や接骨院を受診しましょう。病院の選び方の目安は5章にて説明いたします。
2.急性期に行うべき5つの対処法「PRICE処置」
受傷時の応急処置として伝統的に行われてきたのがRICE処置。急性期にとるべき大事な方法の頭文字をとってこのように名付けられています。すなわちR=Rest(安静)、 I=Icing(アイシング)、 C=Compression(圧迫)、 E=Elevation(挙上)です。
専門家の間では、近年これに、P=Protection(保護)の考え方が加わるようになりました。まず第一にPを行い、RICE処置へ繋げるということでPRICE処置と言われています。各処置頃にご説明しますので、捻挫を発症した際はぜひ参考になさってください。
2−1.保護
さらなるダメージを患部に与えないための対策をとるということです。捻挫の際は靭帯がダメージを受けた状態です。つま先や足裏にわずかな衝撃が加わっただけでも捻挫が深刻化する危険性があります。そのためになるべく患部を他の衝撃が加わらないように保護する必要があります。
イングランド・プレミアリーグでは重症な捻挫が発生した可能性がある際は、まずエアキャストウォーカーという製品で患部を保護しています。レベル3の患者のリハビリ期にも活用できる製品だそうです。
2−2.安静
患部を使うことをしない、ことです。具体的には「歩かない」ことがベストです。受傷の直後からカラダは再生化プログラムを開始します。回復を進めるにはそっとしておくことが最も大事なのです。衝撃が加わることで、再生化プランがゼロに戻り、ひどい場合はさらに深刻化します。
医師の診断があり程度や治療プランがはっきりしたあともなるべく患部を使わないようにしましょう。「無理をすれば歩ける」という程度であれば、無理をしないで松葉杖を活用し、患部に衝撃が加わらないようにしてください。痛みがひどくて眠れないような場合は、痛み止めが処方される場合もあります。
テーピングで固定をすることも一種の安静です。テーピングは直に肌に触れたまま長時間たつとカブレを生じさせることもあります。よく注意をしてください。テーピングの方法については3章にてご紹介します。
2−3.アイシング
アイシングは痛みを軽減し、腫れを引かせ、内出血も抑える効果があります。アイスバッグを用いて一回20分を目安に2〜3時間おきに患部にアイスパックを当ててください。氷水のはったバケツに患部を入れるのも有効です。指で触って感覚をおぼえないようであればやり過ぎです。
2−4.圧迫
軽視されがちですが重要なのが圧迫です。足首の腫れは中程度以上の捻挫のサインです。腫れを放置しておくと過剰な瘢痕組織ができてしまうなど、リハビリ期間を長引かせてしまうことになります。受傷初期から圧迫し続けることで腫れを軽減することができるので、必ずやるべき方法です。
単にテーピングで固定するだけでは圧迫にはなりません。固定しながら圧迫しつづけることが大事です。
外側の靭帯を痛めている場合は、外側くるぶしの周囲を圧迫します。左の写真は専用の商品です。適度な硬さで圧迫感を与え続けます。サポーターと併用することで固定できます。
このような製品が手に入らない場合も、自作することができます。5mmのフェルト生地を用意して、右の写真のようにU字にカットします。この上からサポーターで固定したり、キッチンラップを巻いてからテーピングするなどをして圧迫しながら固定することができます。
2−5.挙上
足首が常に下にあると重力の影響で組織液が蓄積することになります。これが溜まりすぎると足首内部を圧迫して重苦しい痛みを生じさせます。この痛みを緩和し、過度の膨潤を防止する必要があります。安静時やおやすみのときは、足首は腰の高さより上に挙げることが望ましいです。
湿布には「炎症を押さえ、腫れや内出血をひかせる」という効果があります。口から飲む痛み止めと同様の成分を患部周辺の皮膚から吸収させて安全性と効果を高める狙いがあります。炎症や痛みが発生している場合は冷湿布が処方されますが、長時間貼ったままにしないようにしましょう。
3.足首捻挫の際のテーピングの方法
ここでは安静時固定のためのテーピングの方法をお知らせします。使うテープは伸縮性ではないタイプです。
左・まずは足首上部のスネ位置に横にテーピングを巻きます。引っ張らないで貼ります。
右・足首の角度が90度の位置で外側から内側に縦にテーピングを巻いて貼ります。足の裏はカカト位置を通るようにします。
左・じゃっかん重ねて2〜3枚貼り、補強効果を出します。足裏はカカトゾーンを必ず通るようにします。土踏まずにかかるようには貼らないでください。
右・外側から後ろを回って斜め下に巻き貼りしていきます。まずは、横のテープと縦のテープが重なっているところをスタート地点にしてください。後ろを回って貼っていきます。
左・90度状態をキープするために、誰かに手伝ってもらってください。写真のように上にテンションをかけながら巻いていきます。
右・かかと部分まで来たら外側から巻き上げていきます。テープの端は別のテープを切って固定するとはがれにくいです。
ちなみに、日本コアコンディショニング協会会長の岩﨑由純さんによるテーピングの方法も動画にてお伝えします。これは捻挫クセのある方の予防にお使いいただけます。その際は圧迫をしないように注意なさってください。
4.捻挫の際はどこを受診するか
ここでは捻挫を発症した時に、どのような病院か治療院の診察を受けるべきかご説明します。
スポーツ整形外科
整形外科を受診することで、レントゲン撮影による骨折の有無が判断できます。レントゲン撮影は国家資格技師しかできませんので、病院で行う他の方法はありません。一般的な方の捻挫でしたら整形外科で十分な治療が受けられます。
アスリートの方の場合は、ぜひスポーツに強い整形外科を受診してください。競技の特性に詳しく、同じような患者さんが自然と集まるのでより適切な治療や指導が受けられます。
(公財)日本体育協会のホームページでは、公認スポーツドクター検索サービスを行っています。
お住まいの近くにいない場合も、検索や口コミ等でスポーツに強い整形外科医が見つかることがありますので調べてみてください。
接骨院(柔道整復師)
接骨院での急性の捻挫治療も保険診療にて受診することができます。レントゲン設備はありませんが、触診などで骨折の有無を判断するケースが多いようです。中度まででしたら一般的な整形外科よりも診察に時間をとってくれるケースが多いかもしれません。重度の場合は骨折の有無を整形外科にて確認してもらいましょう。
接骨院の場合もスポーツ外傷を得意とする院に行った方がよいでしょう。看板などに明記してあったり、口コミが参考になります。
5.まとめ
足首捻挫を発症した時に自分で取れる方法について解説しました。
捻挫のケアは特に急性期の対処が大事です。どのような軽い捻挫でも一日は安静にして様子を見てください。この記事がお役に立てば幸いです。
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