トレーニングはシンプルな運動が大きな効果をあげることが多いです。腕立て伏せや懸垂、スクワット等が代表格です。
体幹トレーニングにおいては「プランク」がそれにあたります。方法は、ヒジと足先を床につけて、全身を床から浮かせるだけです。
見た目が簡単そうですし、何に効果があるのかわからない方も少なくないでしょう。また適正な姿勢で行わないことにより効果が感じられず、軽視されていることも多いです。
「プランクをやる時間があれば、他のトレーニングを行ったほうがいい」と思われる方がいるのも理解できます。
しかしプランクには様々な効果があり、それは一般的な筋トレでは得られにくいものです。最高のパフォーマンスを生むためには、筋トレと同等に重視すべきトレーニングの一つなのです。
「ではその効果は?」「効果的な方法は?」とお考えの方のために、当ブログ監修者の石塚利光氏(米国公認アスレティックトレーナー・ATC)に回答を聞いてみました。
何ごとも効果や目的をわからずに行うことは得られるメリットを半減させてしまいます。正しいプランクを行いたい方はぜひ参考になさってください。
目次
1.プランクの効果とは
ここでは石塚ATCがリストアップしたプランクの効果について5つお伝えします。
1−1.持久系体幹力を作り、理想的な姿勢と動きの元となる
正しい姿勢をキープし、手足本来の筋力や能力を発揮できる状態を作るということです。持久系体幹力がない人は、プランクを行うことで体幹部の重さを実感します。
多いのは腰が落ちてしまうパターンです。これでは鍛えるべき腹部を中心とする筋肉に負荷がかからず、鍛えられません。ハムストリングやお尻の筋肉で安定させているかもしれません。
大臀筋やハムストリングスは動きのための大きな筋肉です。それが本来の役割とは違う、骨盤を安定させるためにも使われることになります。例えば走りながら骨盤を安定させることもしなくてはならず、いわば一人二役の役割を強いられることになるのです。このことにより大臀筋やハムストリングスのタイトネス(拘縮)や、筋出力の低下にもつながると考えられます。
もう一つのパターンは腰をあげてしまうケース。これも腸腰筋やもも前の筋肉で支える癖がついてしまっています。これも腹部を中心とする筋肉が使われずに、適切に鍛えることができません。
正しい姿勢でプランクを行うことで持久系体幹力が付くのです。同時に動きのために使われるアウターの筋肉も適切な働きができるようになります。
1−2.腹腔内圧を保ち、インナーユニットを活性化させる
プランクを継続して行うと腹腔内圧を保つことができます。このことで腰部や骨盤の安定性に関与しています。歩行やランニング、日常生活において、腹腔を構成するインナーユニットが腹腔内圧を一定に保ち、腰部や骨盤帯の安定に寄与します。
プランクのように負荷のかかる態勢で適切な姿勢をキープしながら、呼吸を止めずに行ってください。これによりインナーユニットの筋緊張(トーヌス)が高まり、腹腔内圧のコントロールがしやすくなります。
インナーユニットは鍛えて強くするということも必要ですが、活性化し適切なタイミングで適切な反応を引き出しておくことが、機能改善に貢献します。これは質の高い呼吸法やシンプルな体幹トレーニングで可能になり、プランクはその代表例です。
1−3.カラダの柔軟性を高める
意外かもしれませんが、体幹トレーニングで体が軟らかくなるのです。一般的なストレッチだけではありません。
これはどういうことかというと、本来、姿勢を安定させるために働くべき筋肉が働かないと、カラダはハムストリングスや大臀筋などの動くために必要な筋肉で安定させようとします。このために緊張が高くなってしまいます。それでは適切に力を抜くことができませんので、前屈動作時など、その筋肉を伸ばす動きのときに筋肉の張りが出てしまいます。
また、体幹の筋肉が適切に働くことで、重心の位置を適切にコントロールできるようになります。このことも、関節可動域が上がる要因となります。
前屈ストレッチを毎日行っていても、すぐ硬さが戻ってしまう方は体幹が弱いことが考えられます。プランクの継続で筋肉の拘縮を防ぐことができるのです。
1−4.肩こり、腰痛を減らす
プランクは正しい姿勢を作ることに貢献します。正しい姿勢でいることが、肩腰への負担がもっとも少ないです。
基礎筋力がつくことでも肩こり減少に繋がります。肩こりで悩まれる方は基礎筋力が少ないことで腕の重みが肩の負担になったり、血流不足が生じている可能性が高いです。
肩こりが出やすい人はプランクでも肩が上がり、首が縮こまり、頭が前に出がちになります。肩や頭もしっかりと適切な位置にキープすることで基礎的な筋力が付いてきます。
腰痛については、腹部深層筋の活性化で腰が守られるようになります。米国運動会議(ACE)は以下のように伝えており、腰痛予防にプランク等の運動が効果があるとしています。
プランクは、腹膜筋膜のすべての層を収縮させながら最小限の動きしか必要としないので、コアを強化する優れた方法であり、これは腰痛を軽減するのに役立ちます。American Council on Exercise February 4, 2013
1−5.ぽっこりお腹を引締め、くびれを作りやすくする
姿勢が悪いことは、お腹が前に出やすくなります。ですのでスタイルを良くしたい方はまず体幹を鍛え、良い姿勢をキープすることです。これはプランクが効果的です。
しかし、実際に腹筋を割るためには、脂肪を落とさなければなりません。シックスパックを得るための体脂肪率の目安は、男性は約6%、女性は約9%です。一般の方においてはやりすぎな数値と言えるでしょう。
2.正しく、最も効果的なプランクの方法
多くの効果がある「プランク」。さっそく行ってみましょう。
1・うつぶせ寝になり、ヒジを肩の高さに揃えます。足は肩幅と同程度に開きます。
2・胸と頭部を少し引き上げてヒジを肩の真下に滑らせます。アゴを首に近づけます。
3・足指を床に接します。足裏、カカトが垂直を保持します(内側に倒れたり、外を向かないように)。
4・ヒジから先と、足指に力を入れて末端から浮かせていきます。つられて腰を浮かせ、浮いたカラダが一直線になるようにキープします。(先に腰からあげないように)
5・呼吸は止めずに、この姿勢をキープします。最初は20〜30秒を目安に行い、徐々に伸ばしていきます。2分間を目標にしてください。1分間休憩し、3〜5セット行います。
【ポイント】キープ中は、お腹を中に引き込むように、息を細く長く吐きながらキープします。同時に、骨盤底筋群(骨盤底部の中にあるインナーユニット)も息を吐きながら引き上げ、吸うときは少し緩めるように意識します。
3.プランクのNGとは
まずは、はやく体幹力を付けようとして限界を超えて頑張りすぎることです。姿勢が崩れたり、いろいろな痛みを発生させることになります。
また、運動前、運動中に関わらず、首、背中、腰に痛みを感じるときは中止してください。
効果が得られにくい失敗例は次のとおりです。
・頭や腰、肩が落ちる。もしくは持ち上げすぎる
・ヒジを内側に入れすぎる(肩の内転を起こしたり、バランス保持が難しくなります)
・呼吸を止める
悪い姿勢で長い時間行うよりも、適切なフォームで数秒間行う方が効果的といえます。まずは正しいプランクができているかチェックすることは一人では難しいものです。一度はトレーナーの指導を受けることをおすすめします。
4.プランクのバリエーション
プランクは横向きや後ろ向き、さらにツールを使うことで、全身をバランス良く鍛えることができます。左右や裏表で難しい方があると、そこがウイークポイントだとわかります。普通のプランクに併せて行いたいバリエーション例をお伝えします。
■サイドプランク
横向きで床に寝ます。肩からくるぶしまで一直線になるように確認してください。
肩の下にヒジが来るようにして床に置きます。足とヒジのみを床につけ、カラダを持ち上げましょう。カラダが捻じれないように注意して姿勢を保持しましょう。左右交互に30~60秒3セットを目安にまずは30秒3セットを目標に行います。
■バックプランク
仰向け寝になり、上半身を軽く起こしながら、ヒジを90度に曲げ肩の真下をつきます。おしりを床からあげます。鎖骨から足首までが一直線になるように姿勢を安定させて体幹を強化していきましょう。腰が落ちやすいので注意します。30~60秒を3セットを目安にまずは、30秒3セットを目標に行いましょう。
■プッシュアップポジション&ダイアゴナルプランク
腕立て伏せの開始姿勢です。この姿勢で何秒キープできるか挑戦してみましょう。腰が落ちるなど姿勢が崩れないようにします。
その姿勢から一直線になるように対角にある手足を伸ばします。カラダが左右に傾いたり回転しないようにバランスをとりながら姿勢を保ちましょう。左右10秒キープ。5~10回を目安にまずは左右10秒5回を目標に行いましょう。
■ツール活用編1・ストレッチポール®でのローリング
ツールを使えばさらにバランスを崩しやすくなったり負荷をかけることができます。
プッシュアップポジションから以下のようなバリエーションも可能です。
■ツール活用編2・トレーニングチューブでのサイドプランク
■ツール活用編3・ダンベルプランク&スタンド
ダンベルが2つ(もしくは腹筋ローラー)ある方は、立ち姿勢からダンベルの両端を持ち、ダンベルを転がしながら前に進めます。腕が肩の下あたりにくるまで転がし、頭から足首までが一直線になるように写真のように姿勢を作ります。
その状態から、手足を中心部に引き寄せるようにして上の姿勢に戻ってきます。この姿勢を繰り返し行います。
5.プランクは万能ではない
メリットが多く、パフォーマンスの維持向上には不可欠な体幹力を鍛えるには最適なプランクですが、これだけで体幹力がつくというわけではありません。
プランクで鍛えられるのは「持久系体幹力」です。静止時の姿勢や理想的な骨格の状態を作るのには適していますが、実際の競技は「動き」を伴います。
つまり実際はカラダを曲げたり伸ばしたり(伸展・屈曲)、捻ったりひねる(回旋)動作の連続となります。それぞれに理想的な動きがあり、体幹力もその瞬間ごとに適切に発揮される必要があります。
体幹トレーニングにおいては、これらの動作を分解して鍛える必要もあります。
一部の練習は4章でバリエーションとしてお伝えしましたが、それ以外には例えばやや重いメディシンボールを、体幹を使って投げたり受け止めるトレーニングです。実際に必要とされる動きとの連動を考えて鍛えるようになさってください。
6.まとめ
基礎的な体幹力があるかどうか、見極める方法をお伝えします。それは「アスリートレベルの場合、正しいプランクが最低2分間できるか」です。どんなに筋トレを行っていても、これが難しければコアが弱い可能性が高いです。
一般のスポーツ愛好家の方は90秒を、体力に自信のない方は60秒を目標にしてください。
これが難しければ、体幹トレーニングの量が少ないか、体幹力に対して体重が重いということになります。
プランクを行うことはインナーユニット活性化のスイッチを入れることになります。これにより呼吸の質が高まり、骨盤などの骨格が正しい位置や傾きになります。ひいては全身の姿勢が正しくなります。
姿勢が悪いと鍛えた筋力が発揮できないばかりか、負荷が一ヶ所に加わりがちになり、ケガを引き起こしやすくなります。
お伝えしたポイントで、ぜひ継続的にプランクを始めとする体幹トレーニングを行ってください。
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