「良く磨いているつもりなのに、歯科医から磨き残しを指摘される。」
「子供がいつも歯磨きの時間が短い。こんなので大丈夫?」
「歯垢チェックの赤いインクがぜんぜん消えない!なんで?」
このようにお考えの方は大勢いらっしゃいます。世の中に歯の磨き方を教えてくださるサイトや文献、学校や歯ブラシメーカーの資料は山ほどあるかと思いますが、一日に何度も歯ブラシでゴシゴシ磨いても歯垢がたまってしまいます。
このような方のために、正しい歯の磨き方をお伝えします。少々常識を覆すやり方かもしれませんが、テレビでも有名な歯科医の先生が30年間60万人を診察した結果たどりついた一つの結論です。
誰よりも歯垢を除去したい!とお考えの方はぜひ参考になさってください。
この記事は歯科医師・森昭先生の監修をいただきました。 竹屋町森歯科クリニック院長(京都府舞鶴市)。人口8万人の同市にて総世帯数の25%がクライアントという人気歯科医。予防歯科、予防医学を重点的にとらえ、唾液やオーラルケアの重要性を全国に発信している。「歯医者を行きたい場所に変える」がモットー。第1回「歯科甲子園」準優勝。著書に『体の不調は「唾液」を増やして解消する』(PHP研究所)『行列のできる歯科医院3』共著(デンタルダイヤモンド社)など。 |
目次
1.磨き残しチェック
以下のような磨き方をしている方は、正しい歯の磨き方をしていないと思われます。
・食べたらすぐに磨く
・朝食前は歯磨きをしない
・冒頭写真のように、歯磨き粉をタップリつけて磨く
・冒頭写真のように、角度がついた歯ブラシを使っている
・山切りカットの歯ブラシを使っている
・力を入れてゴシゴシ磨く
・歯を二、三本まとめて磨けるように、大きく歯ブラシを動かしている
・「シャカシャカ」と音が立てて磨いている
・口をすっきりさせるために日に何度も磨いている
・お口のケアには歯ブラシしか使っていない
このような方は、ご自身ではしっかり磨いているつもりでも、歯科医から「磨き残しがありますね」と指摘されることが多いと思います。その理由を次章からご説明します。
2.歯磨きの真の目的とは
食べかすを取ったり、歯を白くしたり、口をスッキリさせることが歯磨きの主たる目的ではありません。それらはあくまでも副次的効果です。これをメインに考えると、効果的な歯磨きができません。
2−1.歯垢を落とすため
最優先で考えるべきことが「歯垢の除去」です。歯垢は食べかすではありません。
歯垢(プラーク)は、食べカスと思っている人もいますが、まったくの別もの。細菌と代謝物のかたまりです。
歯の表面に付着している、白色または黄白色のネバネバした物質です。1mgには1億個以上の細菌が存在しています。〜ライオン・クリニカホームページより
この歯垢は歯石を作り、また細菌(特にミュータンス菌)は虫歯や歯周病菌の原因となります。細菌の多くは唾液によって除去されますが、歯間や歯が重なったところに溜まりやすいのです。歯ブラシだけではどんなに丁寧に磨いてもなかなか除去しにくいのです。力ずくでゴシゴシ洗えば取れるというものではありません。
2−2.口内環境を整えるため
口の中を健康的な状態にしておくことで、さまざまなメリットがあります。そのためには唾液のパワーが大きいのですが、歯磨きはこの唾液の活動をサポートするように活用することが大切です。
一日の中で、口内細菌が最も多い時間帯は、唾液の分泌が減り、口内が乾燥しがちな就寝中となります。このときの細菌数は便10gに匹敵する量です。就寝中の口がどれだけ汚いかイメージできるかと思います。
また、歯の磨きすぎは唾液を減らすことになります。この2点を考慮したタイミングと方法で歯磨きを行うことが理想的です。
ストレッチオーラル®︎は硬くなった表情筋を、口の中から緩めるツールです。表情筋を活性化することで、リンパの流れや唾液の分泌を促進します。表情筋が使えるようになることで、ほうれい線解消やリフトアップといった美容効果が期待できます。さらに、唾液が増えることで口臭予防などのオーラルケアが可能になります。商品は公式LPNショップにてお買い求めいただけます。
3.歯垢を落とす効果的な方法とは
この2点に注力することで、磨き残しがなくなり虫歯や歯周病、口臭が減り、胃腸内に細菌が入る可能性も少なくなります。ここからはいよいよその方法をお伝えします。
3−1.デンタルフロスが主
デンタルフロスをよく使ってください。食後は歯磨きではなく、デンタルフロスです。なぜならばデンタルフロスなら歯垢を直接除去できるからです。特に歯と歯の間や重なったところはデンタルフロスではないと不可能です。ちなみに歯磨きだけでは、歯垢の除去率は30%しかありません。フロスを使ってみると、食べかすや歯垢が多量にとれることに皆さんびっくりされます。それだけのモノを今まで歯に溜めてきたのです。
デンタルフロスの使い方は下記の通りです。
・30cmほど出して指に巻き付ける。糸をピンと張る
・歯と歯の間をゆっくりと上からスライドさせつつ、歯茎に達するまで動かしていく
・スッと上に引き抜く。詰め物がある場合は、片方の指からフロスを外して手前に引き抜く
・一ヶ所終わったら、当たる部分を変えて次の隙間に移る
・始めと終わりの歯を決めて、毎回同じ順番で行う
・歯肉を痛めないように注意
これを毎食後行ってください。携帯するのもおすすめです。
3−2.健常なら歯磨き剤は不要!唾液磨きでOK!
デンタルフロスが苦手なポイントが歯の表面と、歯と歯茎の接している部分です。ここは歯磨きではないと難しいです。
そこで、歯磨き粉をタップリつけ、ゴシゴシ磨いていると清潔になった気はするかもしれません。しかしお伝えした通り、歯垢の7割は除去できていないのです。歯磨き粉は研磨剤と人工界面活性剤(ラウラル硫酸ナトリウム)入りのものが多いですので、たしかに表面はツルツルしますが、味覚を変容させます。またこの洗剤効果で唾液を流してしまうことになります。
歯周病や虫歯がない方は、唾液だけで歯磨きをするようにしてください。起床時にまず唾液で歯磨きをして必ず吐き出す。口の中がカラカラという方は、少量の水を口に含んでもOKですが、絶対に飲み込んではいけません。歯磨きはあとはおやすみ前に同様に行うだけで大丈夫です。
歯周病や虫歯が既にある方は、薬理作用のある歯磨き剤を使用して改善に努めることをおすすめします。
【森先生の歯の磨き方】
・一本ずつ行う
・歯ブラシは歯の表面と直角に当たるようにする
・歯茎との境目は45度の角度で当てる
・歯ブラシは優しく細かく当てる
・歯の表面と、歯と歯茎の隙間を意識しておこなう
・歯茎が下がらないように注意。一度下がった歯茎は戻らない
歯磨き粉を使いたい方は、研磨剤なしの天然洗浄剤でできたものをおすすめします。研磨剤いりのものはたまに使用する程度になさってください。
また、歯ブラシの毛先ですが、通常カットのものは歯の表面を磨くことに、上の写真のように先端が尖っているものは歯と歯茎のあいだの使用に向いています。できれば2種類を使い分けられるといいでしょう。
3−3.歯間ブラシも使う
歯磨きの三種の神器の最後が、「歯間ブラシ」です。デンタルフロスや歯ブラシでは不可能な鼓形空隙(こけいくうげき)を掃除することができます。
ここは歯垢が溜まりやすいポイントで、歯石のほとんどができる部分です。デンタルフロスの当て方を変えても、歯ブラシで丹念に磨いてもなかなか綺麗に掃除できないのです。それが歯間ブラシを使うとたいへん簡単に素早くきれいにすることができます。
歯の間に入らないと効果を発揮しないので、小さめを選ぶようにしてください。多くの方の場合、市販品ではSSサイズから試されるといいでしょう。
3−4.「舌回し」を習慣化する
口を閉じて、口の中で舌をぐるぐる回す体操です。食後の体操として習慣化してください。唾液の分泌を多くし、表情筋を鍛える効果があります。竹屋町森歯科クリニックでも昼食後に全員で行っています。森先生も舌回し体操を始めてから6ヶ月後から、ほうれい線や口まわりのシミが薄くなったと言われるようになったそうです。
【体操の方法】
・口を閉じて行います。まず舌先をできるだけ右上の一番奥の歯茎と頬の間に置きます。
・そのまま歯の外をなぞるようにして、左上の奥まで動かします。そこで左下の奥にシフトして、右下奥まで戻ってきます。10回まわしてください。
・反対回しも10回行います。
・一周を3秒ほどかけて行います。慣れてきたら回数を20回に増やします。毎食前後におこなってください。
4.正しい歯磨きのタイミングと方法・モデルケース
以下にタイミングごとの具体的な方法をお伝えします。
起床時 | 唾液磨きをする。水でよくすすいだ後に、飲水 |
朝食後 | デンタルフロス+歯間ブラシ+舌回し体操 |
昼食後 | デンタルフロス+歯間ブラシ+舌回し体操 |
夕食後 | デンタルフロス+歯間ブラシ+舌回し体操 |
就寝前 | 唾液磨きをする。水でよくすすいだ後に、飲水 |
虫歯や歯周病がなければこれが最も効果的な方法です。
5.森先生おすすめ!効果的な歯磨きグッズ
この章では森先生やご家族、クリニックの歯科衛生士の方が実際に使っているオススメグッズをお伝えします。
5−1.デンタルフロス
デンタルフロスは、慣れない方は細めをおすすめします。そのほうが歯と歯の間に入りやすいからです。いろいろな種類があり、お好みで選んでいただいて構いませんが、使うごとに切るロールタイプのほうがコストは安いです。
このフロス。実はワックス付きとワックスなしの2タイプがあります。ワックス付きの方が歯の間に入りやすいですが、歯垢を取る力はワックスなしのほうが高いです。慣れないうちはワックス付きを選んでいただいて、慣れたらワックスなしになさることをおすすめします。またワックス付きは唾液を吸い込むと膨れます。
■森先生おすすめのデンタルフロス
5−2.電動歯ブラシ
普通の歯ブラシがうまく使えない人は、電動歯ブラシでもうまく磨けません。まずは普通の歯ブラシで上手に磨けるように練習なさってください。そのうえでどうしても時間がない人や電動歯ブラシを使ってみたい方にお勧めなのが音波歯ブラシです。音波歯ブラシと超音波歯ブラシは違うものです。音波歯ブラシは歯に当たっていなくても洗浄できるというメリットがあります。超音波でもソニッケアーは独自の水流にメリットがあります。
電動歯ブラシを使用する際は、歯間に当てた状態で数秒待ちます。決して左右にこすったり、歯と歯茎の間に強く押し当ててはいけません。
■森先生おすすめの電動歯ブラシ
5−3.ガム&タブレット
歯を強くするのにおすすめなのが、キシリトール100%ガムです。キシリトールは天然由来の甘味料で、虫歯抑制効果が学術的に認められています。歯科専用品はキシリトール100%です。少々硬めなので噛む力も養われます。
空腹時の間食にもおすすめです。ガムが噛めない方にはタブレットもおすすめです。口の中でゆっくり溶かしてください。
5−4.その他
普通の歯ブラシや歯間ブラシの選び方、その他の歯磨きグッズのおすすめや、ここで紹介した商品をおすすめする理由については、下記の書籍にてご紹介しています。そちらでは世代別や歯周病のある方、妊婦の方に最適な方法も紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
6.まとめ。間違いだらけの歯磨き方法とは
日本の伝統的な歯の磨き方の指針として、「3・3・3運動」というものがあります。これは1960年代から官民一体で普及してきた運動で、「食後30分以内、3分間、一日3回磨きましょう」というものです。日本人のほとんどの方がこれを理想と考えているのではないでしょうか。
口のケアについて意識向上を促した側面はあるでしょうが、食事直後の有用な唾液が失われたり、口の中を傷つけたり、行う時間の割に磨き残しが解消されないなどのデメリットのほうが大きかったと森先生は考えています。
この記事でお伝えした方法が、最も効果的に口の中を綺麗にし、口内環境を整えることができる方法です。ぜひ今日から習慣化されて、生活の質向上を成し遂げてください。
この記事は、森先生への取材と以下の書籍を参考に執筆しました。
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