小学校も低学年になれば、「逆上がり」ができてほしいと思います。
「できれば幼稚園のうちにできてほしい」と思われる親御さんも多いでしょう。
何も苦労せずにできる子も中にはいますが、多くの子は練習しないと不可能な運動です。
「大きくなればそのうちにできるだろう」とお考えの方もいるかもしれませんが、
何もしないでいると、大人になってもできる保証はありません。実際に逆上がりのできない大人が大勢います。
できなくても何の害もありませんが、特に小学校時代は、お子さん本人が体育や遊びで遅れをとる感じがします。
それが運動全般に対する苦手意識の根本になる可能性もあります。
実は、逆上がりには絶対に成功させるコツがあります。この一連の動作を突き詰めればわかる原理です。
そこでこの記事では、運動が苦手な子を何人もインターハイに出場させた体育の先生にそのコツをうかがいました。
お子さんに早く逆上がりができるようになってほしい保護者の方や、いつかは成功したいとお考えの大人の方はぜひ参考になさってください。
この記事は㈱LPN代表の吉武永賀が監修しました。 16年の高校体育教師の経歴中、体育成績1の生徒を何人も全国大会に導いた名監督。愛知県国体監督も務め、日本一の選手育成も行った。習得したい動作をすべて一つずつの動きに分解し、その中で重要なポイントを図解し指導する方法に定評がある。「楽しくできれば成績は自然と伸びる」がモットー。日本体育大学卒業。現役時代は400mHの選手。 |
目次
1.逆上がりができない理由
できない例は以下のようなものです。お子さんは次のいずれかではありませんか?
・足だけを上にあげようとしている
・頭が下にいかない
・腰(おしり)が足と一緒についていかずに落ちる
・腕がダランとして、上半身が棒から離れている
・足を地面から離し、ただぶら下がっているだけである
教えることに慣れていない方は、「うまい子のやっているのをよく見て、同じようにやってみなさい」と言うかもしれません。その結果この写真のように、気持ちだけで回ろうとし、理想からはかけ離れた動きになります。そもそも見ただけでできるならとっくにできています。正しい指導が必要です。
2.【重要】逆上がりを成功させるために重要なポイントとは
「逆上がり」には、成功させるために重要な3つのポイントがあります。この3点さえ外さなければ必ず成功します。
2−1.鉄棒とおへそを密着させる
最初は簡単に鉄棒がお腹に当たるくらいの高さで行うようにしてください。
これがなぜかというと、逆上がりは鉄棒を中心軸とした回転運動です。この軸から離れないことが、ラクに効率よく回るために不可欠な要素です。
その軸をカラダで作ります。それは
・片方の手
・おへそ(お腹)
・もう片方の手 です。
お腹が鉄棒から離れると力が入りません。特におしりが最高到達点に向かうタイミングで棒に近づいていかないと絶対に回る事ができません。
おへそと棒が密着しやすいのは、低い鉄棒です。回った時に頭が当たらない高さは必要ですがあまり高くならないようにしてください。
2−2.ヒザを曲げて股関節を鉄棒に引っ掛ける
これが最も大事なポイントと言えるでしょう。勢いよく足をあげ、おしりが上がったらなるべく早くヒザを曲げて、両足の付け根で鉄棒を引っ掛けるようにします。
これは、横軸を中心にした小さい塊になるということです。この塊が大きくなったり形がいびつだと回転に対する負荷となります。そろばんの玉は軽く弾くだけでよく回りますが、これが大きくいびつになったり、穴が広がると余計に力を必要とするのはおわかりいただけるでしょう。
カラダが真下になったらモモ前を胸に引きつけるようなイメージで両足を鉄棒に引っ掛けます。
ヒザを曲げたら、足を伸ばしながら地面に近づけることで、シーソーの原理で頭が上にあがっていきます。
このように、ヒザを曲げて回ることはカッコ悪いことではありません。足を伸ばしたまま回るほうがカッコいいですが、まずはこの原理を体得する事が重要です。徐々に蹴る力や、勢い良く反動を付けられるようになってくると、ヒザを曲げなくても回れるようになっていきます。
2−3.回る感覚を身につける
頭を下にすることが怖いと思うお子さんは少なくないでしょう。前述の方法が理解できても、頭を勢い良く後方に落としていくことに抵抗があるかもしれません。
それは、回ったことがないのでその感覚が分からず「恐怖」を感じるということです。ですので回る感覚を鉄棒なしで体感しておきましょう。
写真のように、親子で手をつかみお子さんはお父さんのヒザ、腰前、お腹、胸を使って階段状にあがっていき、最後は回ります。
慣れてきたら勢いをつけて、なるべく少ないステップ数で回れるようにします。
最終的には、お子さんが地面を蹴ったらそのタイミングに合わせて、お父さんはヒジを曲げて手前に引きつけ、同時に左右に少し広げて回転をアシストすることを目指します。お父さんのカラダを一切蹴らずに回れるようになったら、実際の鉄棒でも完成が近いです。
- どちらもそれほど重要ではありません。鉄棒が低ければ腕力がなくてもお腹を棒に近づけることは難しくありません。また、頭を後ろに倒し、足を上にあげることができれば、地面を強く蹴らなくても足を引っかける位置に持ってくることができます。
3.感覚をつかむサポートの方法とは
お伝えした方法でも難しい場合は、サポートして感覚をつかむやり方があります。
3−1.おへそと鉄棒を密着させる方法
シャツの裾を棒に巻き込んで、上から手でつかむ方法があります。また、細長いタオルの両端を鉄棒に結わえ、その中におしりを入れて棒から離れないようにする方法があります。
3−2.地面を蹴って回る感覚をつかむ方法
この写真のようなステップあがるための補助器具を使用することもできます。最初は小刻みに歩数多くまわり感覚をつかみます。徐々に勢い良くステップを減らしていきます。なるべく高い一点だけ蹴るようにして回ることができると成功までもう少しです。
親御さんが上記の器具の代わりになり、ヒザを差し出して蹴ってあがらせる方法もあります。
ただこれを使用する場合も、鉄棒にお腹を密着させ、両ヒザを曲げて引っ掛けることを心がけてください。そうしないとこの器具なしではできないことになってしまいます。置く位置を厳密に設定して、上にあがるに従ってお腹が棒に近づくようなポジションをとることをおすすめします。
3−3.鉄棒の横でサポートする方法
お子さんの勢いにあわせて、おしりを親御さんが鉄棒に密着させるように加勢して回らせる方法もあります。これでも感覚はつかめますが、立ち位置に注意してください。回ってきたヒザに頭を打つ可能性があります。
- 結論から言うと、どちらでも構いません。逆手の方が引きつける力が発揮させやすいと考えられていますが、逆上がり程度の運動であれば、やりやすい(本人が構えやすい)方法で大丈夫です。富山大学で186人を対象にした研究では「順手・逆手の握り方と逆上がりができる・できないことの関連性は認められなかった」と結論づけています。ただ、順手の際に親指を棒の下に回して握る指導の必要性についても言及しています。参照:逆上がりの握り方に関する研究(橋爪ら)
4.まとめ
逆上がり成功のために必要なポイントをお伝えしました。なかなかできない子もお伝えした3つのポイントに従って行えば、間もなくできるようになるでしょう。
練習は必要ですが、その分できたときの喜びは大きく、親子で手を取り合ってガッツポーズをすることができます。このような成功体験の積み重ねが自信となり、なにごとにも挑戦してみようという気概が生まれてきます。ぜひ親子で一生懸命に取り組んでみてください。
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