「姿勢が悪い」と言われたことがある方は多いのではないでしょうか。
とはいえ、姿勢の悪さを自覚することはなかなか難しいです。姿勢が悪いとはどんな状態なのか、姿勢が悪いとどんな問題があるのか、について解説します。
また、今からできる改善方法についてご紹介します。ぜひ参考になさってください。
この記事は石塚利光が監修しました。 日本コアコンディショニング協会コアコンディショニングリサーチディレクター/東京大学女子バレーボール部トレーナー/米国公認アスレティックトレーナー (BOC-ATC) /日本トレーニング指導者協会・認定上級トレーニング指導者(JATI-AATI)/ペンシルベニア州立カルフォルニア大学卒業/前・福岡大学助教/訳書「アスレティックボディ・イン・バランス」(Gray Cook著) |
目次
1.姿勢が悪いとはどんな状態なのか?
姿勢が悪いとは、どのような状態でしょうか?逆に良い姿勢とはどのような状態でしょうか。人それぞれカラダは違います。姿勢には、私たちが生きていく上で正常な範囲というものがあり、そこから逸脱すると「悪い姿勢」となります。
1-1.「良い姿勢」とは、重力に対してまっすぐで、身体に負担がかからない
細かく姿勢を評価することは、なかなか難しいです。理学療法士や、姿勢に関する勉強や経験を積んだトレーナーでないと、正確に評価できません。
私たち人間は、二本足で歩き手を自由に使うことができる唯一の生物です。そのため、重たい頭蓋骨が一番上にあり、縦に立った状態で支えています。なるべく身体に負担をかけずに立つことがとても大切になります。
頭が前に出ていると、それだけで多くの筋肉が余計な働きをしなければならなくなるのです。
1-2.悪い姿勢になってしまう原因とは
姿勢は、私たちの生活を映し出す鏡です。普段の動きのクセ、生活パターンが結果として姿勢に現れます。基本的には使いすぎたり、縮んだままになった筋肉は短くなります。また、使っていなかったり、伸ばされたままの筋肉は長くなります。その状態が長く続くと、姿勢として定着します。
カヌーやラフティングのチーム競技をしている方は、決まったポジションで漕ぎ続けます。ボートの右側にいる人は、左手を上にあげ、右に傾いた状態で漕ぎ続けるそうです。そのような競技の表彰式では、どちらかにカラダが傾いているそうです。
デスクワークで背中を丸めている、いつも片肘をついて座っている、という状態を繰り返していると、背中がまるまり、肘を付いている側に傾いた姿勢となります。
常にまっすぐである必要はありませんが、同じ姿勢をなるべく取り続けないことが大切です。
2.悪い姿勢が引き起こす健康への影響とは
悪い姿勢は、若い人にもよく見受けられます。若いうちはカラダに何の影響も感じない方は多いかもしれませんが、長年の習慣となると、この悪習慣は少しずつカラダをむしばんでいきます。具体的な例をあげて説明します。
2-1.悪い姿勢が肥満の原因にも?
姿勢が崩れると内臓の位置がずれてしまい、内臓に負担がかかります。
負担がかかり過ぎてしまうと内臓が本来の正しい働きをしなくなり、その結果、消化吸収がうまくできなくなり肥満を助長します。
また、血液の流れが悪くなるために、血行不良が起こり、代謝は低下していきます。代謝の低下は、脂肪燃焼効果を下げるため、このことでも、太りやすい体質になってしまいます。
年をとると、カラダの機能は低下して代謝も落ちていきます。姿勢が悪いと、この悪影響にさらに拍車をかけることになるのです。肥満を防止するためにも、日常生活で姿勢を良くしておきたいものです。
2−2.コリや痛み、睡眠障害など
悪い姿勢をとっていることは、一部の筋肉だけがカラダを支えて、緊張したままで姿勢を維持している状態です。
つまり、カラダの一部に対して特に負荷をかけることになります。そのためカラダのあちこちにコリや痛みが発生する原因になります。
カラダにコリや痛みがあると、筋肉は緊張したままの状態が続くので、ベッドに入っても寝付くことができず、熟睡できなかったり、ひいては不眠症を引き起こすなど、睡眠障害を招くことがあります。睡眠の質が悪いと疲労もたまってしまいます。
2-3.精神的な不安
悪い姿勢は、精神的な面でも悪影響を及ぼします。不眠症は精神的なストレスに繋がります。また、自律神経失調症やうつ病などの精神的な疾患を抱える人は、傾向として浅い呼吸の方が多いようです。
実は呼吸は、姿勢と密接に関係しているのです。姿勢が悪いと、息を吸うときに横隔膜や肋骨をうまく動かすことができず、十分な空気を体内に入れることができません。そのために呼吸は常に浅くなり、脳内神経伝達物質の活動を抑制し、精神的な不安につながってしまいます。さらに姿勢が悪いことで、うつむきがちになることも、後ろ向きなイメージを自身へと植えつけ、うつ病などの原因になるといわれています。胃腸などの不調によるカラダへの不安も精神的な疲労を生みます。
呼吸や姿勢が健康的な生活に大きく寄与することは、様々な研究結果によって導かれています。
参考文献:
意識的腹式呼吸がもたらす高齢者の自律神経反応及びホルモン変化
セロトニンの生理作用 有田秀穂(小児科 第50巻 第13号 特集:セロトニンの働きを考える)
姿勢改善のための社会的システムの構築(政策フォーラム発表論文)
3.良い姿勢は心とカラダを健康にする
このように、姿勢が悪いとカラダに様々な悪影響を与える可能性があります。今からでも遅くはありません。良い姿勢を意識することで、あなたも健康的な生活をおくることができるようになります。正しい姿勢をマスターして心もカラダも健康になりましょう。
3-1.良い姿勢とはどのような姿勢か
骨盤が後ろに倒れたり、頭部が前に出たりとわかりやすかった悪い姿勢。逆に良い姿勢とはどのようなものなのでしょうか。良い姿勢を私たちは以下のように定義しています。
鏡などで自分の姿勢をチェックしてみましょう。
1日中座って仕事などを行う方のために座位も確認していきましょう。
意外と多いのが背もたれを正しく活用できずに骨盤が後ろ向きに傾き、背中が丸まってしまうことです。
あなたはこのような姿勢で座ってモニターなどを見ていませんか?
より詳しい姿勢のチェックは、姿勢改善で脱・猫背!姿勢のパターンでわかるタイプ別ストレッチ4選をご覧ください。
3-2.良い姿勢がもたらす健康的な生活
良い姿勢をキープすることで、生活の質が改善します。正しい姿勢は血液循環を良くし、良質な睡眠がとれるようになり、肩こりや腰痛など日常的なトラブルの予防・解消に繋がります。
さらに、基礎代謝が上がることで、メタボリックシンドロームの予防にもなります。
また、深い呼吸ができ、ウエスト周りが活発に運動するため、腸内運動の活発化で便通が良くなり、便秘などに改善も期待できます。適度な運動は、健康には必要不可欠ですが、姿勢が良くなることで、運動の効果がさらに高まります。スポーツ障害の予防にも繋がり、パフォーマンスがアップします。
3-3.外見的にも大きなメリットが!
外見にも変化が表れる方がいます。正しい姿勢で呼吸をすることで、腹横筋とよばれるお腹にあるコルセットのような筋肉が締まり、ウエスト周りが引き締まるからです。ボディラインにメリハリができ、女性ならキレイに、男性ならばスリムに、たくましく見えるようになります。
動きやすく軽く感じるようにもなります。また、血液循環が良くなることで肌にツヤや張りが生まれ、若々しく見えます。
4.姿勢を良くするエクササイズ
背骨が歪み、カラダに痛みが出る人の特徴として、胸を起こして開くことができない場合が多いです。これができないことで(専門用語で胸椎の伸展と言います)背骨がS字カーブを崩しやすくなるのです。
ここでは胸椎の伸展を引き出すエクササイズと、背骨をS字カーブに整えるためのエクササイズを併せてご紹介します。
4−1.キャットバック
胸郭の伸展を出すことで肩の痛みの原因改善を目指すエクササイズです。猫が背中を伸ばすところをモデルに考案されたエクササイズです。
肩と太ももの付け根から、まっすぐ床にくるように手と膝をつき四つばいになります。
四つばいの姿勢から背中を丸めるように天井へ引き上げます。この時に息を細く吐きながら、おへそをのぞき込むようにします。背中が丸められることで背骨にそった脊柱起立筋へのストレッチがかかります。
続いて、息を吸いながら背中を反らし、胸郭をストレッチしていきます。天井を見るように目線を上げ、首を前にのばしていきます。両手で床をじんわりと強く押していってください。
交互に繰り返し5~10セットを目安に行いましょう。
4−2.サイドルック
左右に伸ばすことで胸郭の横の動きを滑らかにします。日常生活の中であまり動かないため固くなりがちな部分です。ストレッチをしてほぐしていきましょう。
肩とももの付け根から、床に垂直になるように手と膝をつき四つ這いになります。
姿勢が崩れないように注意し、息を吐きながら横から左右のつま先をのぞき込むようにして上半身を左右に曲げましょう。脇腹あたりにストレッチを感じながら左右5回ずつ行いましょう。
4−3.トランクローテーション
最後は固まってしまった胸郭をヒジを上げて動きやすくします。腰を動かさず胴体を意識して動かしていくことがポイントです。
肩と手のひら・膝とももの付け根が床に垂直になるようにして四つ這いになります。
片手の甲を背中に当てます。腰が動かないように注意しながら左右にカラダをひねって行きます。
(※痛みがある方はこの体勢がとれないかもしれません。できるだけ近い状態で行ってください)
ひねるポイントはひねるほうの肩甲骨を内側に寄せるようにして動きをリードすることです。
痛みは我慢せずに自分のできる範囲で10回を目標に行いましょう。
5.まとめ
姿勢がカラダに与える影響は非常に大きいことがお分かりいただけたでしょうか。
日常生活や習慣でできてしまった悪い姿勢を改善するためには、日々意識して、姿勢をチェックすることがとても重要です。
姿勢が良くなることでカラダに良いコトがたくさんあります。良い姿勢を保つためにも、正しい姿勢を理解して意識的に改善するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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