膝に対して「動きが悪くなった」「違和感がある」「以前より曲がらなくなった…」と感じている方は多いのではないでしょうか。
曲げ伸ばしで痛みが走る場合は、整形外科での診察がベストですが、違和感解消や可動域向上が目的であれば、ご自身で行えるストレッチで改善する可能性がおおいにあります。
そこでこの記事では、プロトレーナーがおすすめする膝ストレッチの方法をお伝えします。スポーツパフォーマンスアップやケガ予防、日常生活での歩きやすさを求められる方はぜひご紹介する方法をお試しください。ビフォー&アフターで歩きやすさや曲げ伸ばしのしやすさに変化があるはずです。
【ご注意】膝に痛みがある場合は、筋肉をストレッチすることでさらに痛みが強まる場合があるので行わないでください。またストレッチしたことで痛みが発生した場合は中止してください。
この記事は石塚利光が監修しました。 日本コアコンディショニング協会コアコンディショニングリサーチディレクター/東京大学女子バレーボール部トレーナー/米国公認アスレティックトレーナー (BOC-ATC) /日本トレーニング指導者協会・認定上級トレーニング指導者(JATI-AATI)/ペンシルベニア州立カルフォルニア大学卒業/前・福岡大学助教/訳書「アスレティックボディ・イン・バランス」(Gray Cook著) |
目次
1.まずは膝関節の現状チェックから
膝関節の柔軟性チェックをして、どのようなストレッチが必要かテストしてみます。
1−1.膝周辺をやさしく押してみましょう
膝には多くの靭帯が集まっています。膝のコンディショニングチェックの一つが、この靭帯の癒着がないかどうかを調べることです。癒着があることで違和感や痛みを生じます。
膝をよく動かさなかったり、酷使したり、関係する筋肉の柔軟性が失われていることで発生しやすくなります。
膝の上、下、外、中のいずれかに違和感や鈍い痛みがありますか?
1−2.膝のお皿を動かしてみましょう
膝の可動域チェックはお皿を動かすことでも分かります。お皿を下、上、内側に動かしてみましょう。
椅子に浅く腰掛け、片足を伸ばします。つま先も向こうに倒してください。
膝の力を抜いてリラックス状態を作ります。膝周辺にいっさいの力が入っていないことを確認してください。
その上で以下の動きを行ってみてください。お皿の可動域は上下に1cm程度、内側に5mm程度です。
2.プロトレーナーが教える膝「5つの筋肉」ストレッチの方法
膝ストレッチの方法をお伝えします。プロトレーナーがお伝えする効果的なやり方です。
それぞれの筋肉についての解説を読んでからストレッチを行いたい方は、4.膝関節をまたぐ5つの筋肉とはをご覧ください。
2−1.まずは股関節回しから
膝に直結する筋肉は、股関節に関係していることが多いです。ストレッチの効果を高めるためにまずは股関節回しを行って股関節の柔軟性も向上させておきましょう。
写真のように仰向けになり、膝を両手で持って中、外に回します。それぞれ10〜20回。
2−2.膝の上側は大腿四頭筋のストレッチを
膝の上側に効果的な大腿四頭筋のストレッチをご紹介します。
写真の態勢をとります。右膝は直接床につけると痛いのでクッション等を利用してください。右手で右足の甲をつかみ体側に引き寄せます。腿前をよくストレッチしてください。
上記の態勢がきつい方は、机や壁などを支えに立ったまま行うこともできます。その際は腰が反らないようにしてください。腿前がストレッチされる感覚があればOKです。
2−3.膝の外側は大腿筋膜張筋のストレッチで
さらに腿の外側がストレッチされる方法です。
椅子や机、壁等を利用して写真の態勢をとります。左膝に手を起き、後ろ側にまわした右脚の外側を体重をかけてストレッチしていきます。
2−4.膝の裏側①・ハムストリングスのストレッチ
前屈をする時に、膝の裏側が痛くてできない方は、ハムストリングが硬いことが多いです。このような方はご紹介する膝裏ストレッチを行ってください。
グレイ・クックというアメリカの著名なトレーニング指導者が紹介した方法です。ドアなどを使って上記の態勢をとります。足をまっすぐにしてテンションをかけていきます。床につけた足の膝は浮かせないようにしてください。
伸ばした足の股関節前側にある腸腰筋(ちょうようきん)もストレッチされます。行ったあとに前後を比較してみましょう。
ハムストリングのストレッチはこの方法だけでOKともいえるのですが、適当なドアがない方のために他の方法もご紹介します。
できる方は両手で足先をつかんで手前に引いてください。
2−5.膝の裏側②・腓腹筋のストレッチ
ふくらはぎの筋肉である腓腹筋をストレッチする方法です。
壁を利用して、写真の態勢をとります。前に出した足は曲げ、後ろ足を伸ばします。カカトは床から離さずに、下にテンションをかけ後ろ足のふくらはぎを伸ばします。
タオルを使って腓腹筋を伸ばすことができます。座って足を伸ばし、足先にタオルをかけ両手で引きます。この時に腰を立てていってください。
2−6.膝の内側は縫工筋のストレッチを
腿の内側をストレッチする方法です。いくつかの方法をご紹介しますが、腿の内側がストレッチされることができればどれか1つで構いません。お好きな方法を探してみてください。
上写真はシンプルなエクササイズです。挙げた足の甲は左手でつかんでいます。全身の力を抜いて内腿にストレッチをかけていきます。
足を90度に曲げて行う方法です。膝が開いていきながら内腿のストレッチ感を感じてください。最も感じるポイントを探してみてください。
イチロー選手が打席前に行う有名なストレッチです。内転筋をストレッチするものですが、縫工筋にも効果的です。
相撲の蹲踞(そんきょ)に近いポーズです。両足をしっかり外に開くことがポイント。体重を下にかけ腰をおろしていくことで、内腿がストレッチされます。
3.ツールを使って膝ストレッチの効果を最大限にアップさせる方法
ストレッチの前後にセルフマッサージをすることで、筋肉の柔軟性が向上します。ぜひ行ってください。
3−1.テニスボールを使う方法
腸脛靭帯などの膝に関係する靭帯はほかの筋肉と癒着を起こしてしまう場合があります。ストレッチ前にご紹介した筋肉の周辺をテニスボールやゴルフボールを使ってセルフマッサージをしておくとストレッチの効果が高まります。ぜひ行っていただきたい方法です。
3−2.ストレッチポールを使う方法
ストレッチポールが一つあると、下肢全体を一連の流れで効果的にセルフマッサージすることができます。自分の足の重みだけでマッサージできるので簡単です。
※注意 膝裏は行わないでください。
ストレッチポール®は㈱LPNの登録商標(第4666450号)です。正規品は公式LPNショップにて、またAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでも正規品をお買い求め頂けます。
4.膝関節をまたぐ5つの筋肉とは
膝ストレッチを行うには、どの部位に関係する筋肉をストレッチするか理解することが重要です。前章のチェック方法で、上、下、内、外のどこに問題がありそうかご理解頂けたかと思います。
実は膝のお皿周辺には独立した筋肉はありません。多くの靭帯や腱がお皿の下に縦横斜めに走っているのですが、靭帯や腱はストレッチできるものではありません。それらとつながっている筋肉をストレッチし、膝周辺の柔軟性と動きを引き出すのです。
膝周辺に関係する主な筋肉は以下の通りです。いずれも膝をまたいで走っている、膝の動きに重要な筋肉です。
■大腿四頭筋(だいたいしとうきん)
以下の4つの筋肉の総称です。
・大腿直筋(だいたいちょっきん) ・中間広筋(ちゅうかんこうきん) ・外側広筋(がいそくこうきん) ・内側広筋(ないそくこうきん)
股関節から太ももの前を走り膝下までつながる大きな筋肉です。膝の前側をとおり、膝を伸ばす動きに関わる筋肉(伸筋)です。膝の上や下に違和感がある場合はこの筋肉の柔軟性を高めます。ジャンパーひざやオスグッド・シュラッター症候群といわれる傷害に直接関わる筋肉群です。
■大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)
腰の外から膝の外側に走る筋肉です。股関節の安定性に関わっています。歩行や走る際にまっすぐまえに足が出るようにするために重要な筋肉です。膝の外に痛みや違和感がある場合はこの筋肉が関係していると考えます。
■ハムストリングス
太ももの裏から膝の裏側を通って膝下に走る筋肉群です。次の3つの筋肉から構成されています。・大腿二頭筋(だいたいにとうきん)半膜様筋(はんまくようきん)、半腱様筋(はんけんようきん)。
膝の裏側に違和感を感じる場合は、ハムストリングスの硬直を考えます。膝を曲げる動きに関わる筋肉です(屈筋)。
■腓腹筋(ひふくきん)
上記ハムストリングスの図の中で下から膝裏に走っているのが腓腹筋です。ふくらはぎの大きな筋肉で、上膝から膝裏をまたいでアキレス腱となりながらかかと下まで走っています。足関節や膝関節の屈曲に関係。膝の裏側の違和感はこの腓腹筋が関係している場合もあります。
■縫工筋(ほうこうきん)
骨盤前部に起点を発し、腿の内側を通り膝の内側から膝下まで走る長い筋肉です。一つの筋肉としては人体中もっとも長い筋です。股関節、膝関節の屈曲に関っており、膝の内側に違和感がある場合は、この筋肉をストレッチします。
※その他、膝をまたぐ筋肉には、薄筋(はっきん)、足底筋(そくていきん)、膝窩筋(しっかきん)などがあります。
5.まとめ
膝まわりに効果的なストレッチをご紹介致しました。筋肉は使いすぎでも使わなさすぎでも、また使い方がアンバランスでもコリや痛みを発生させます。またアンバランスな使い方は、動作時や静止時のあらゆる姿勢悪化につながります。膝の痛みや違和感がある方は、日常やスポーツ時の姿勢にも注意をしてみてください。
ご紹介するストレッチ方法がお役に立てば幸いです。
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