「口の中がいつも渇く」「口臭が気になる」「虫歯もなくならない」
このような方は唾液が少ない可能性が高いです。ご自身の唾液の量はいかがでしょうか?
唾液は多いことを気にされる方もいますが、さほど問題はありません。むしろ少ない場合のほうが危険性が高いのです。
それはお口の中だけではなく、全身に影響する場合もあります。
でもどうすれば?
そこで当ブログでは「唾液」に関するベストセラーもある著名な歯科医の先生におうかがいしました。
唾液を多く分泌して口内環境を整えたいとお考えの方はぜひ参考になさってください。
この記事は歯科医師・森昭先生に取材し、監修をいただきました。 竹屋町森歯科クリニック院長(京都府舞鶴市)。人口8万人の同市にて総世帯数の25%がクライアントという人気歯科医。予防医学を重点的にとらえ、唾液やオーラルケアの重要性を全国の歯科医に発信している。「歯医者を行きたい場所に変える」がモットー。第1回「歯科甲子園」準優勝。著書に『体の不調は「唾液」を増やして解消する』(PHP研究所)『行列のできる歯科医院3』共著(デンタルダイヤモンド社)など。 |
目次
1.簡単唾液チェック
みなさんの唾液分泌量は健全ですか? 以下の項目に当てはまるかチェックしてみましょう。
□歯肉が腫れている、または歯肉から出血がある
□歯肉や舌が痒いことがある
□口内炎がよくできる
□滑舌が悪い
□パンやクッキー、焼き芋などが飲み込みにくい
□唇がよく渇く。または唇から出血しやすい
□口の中が乾燥しがちだ
□虫歯ができやすくなった
□ほっぺをよく噛む
□舌に痛みを感じることがある
これらのうち一つでも当てはまる方は唾液が少ない可能性が高いです。さらに5項目に当てはまる方はすぐ歯科医院の診療を受けられることをおすすめします。唾液量の不足はもちろん、それによって歯周病や口内炎、虫歯のトラブルが起きている可能性があるからです。
2.唾液が少ないことで起こりやすくなるカラダのトラブル
前述の項目は唾液が少ないことによって起こるお口のトラブルです。それ以外にも森先生は以下のトラブルが起きやすくなると考えています。これは人間の根本的な健康に直結する問題です。
・歯周病 唾液が少なくなると食べかすが口の中に溜まりやすくなり、歯垢と歯石の原因になります。それらがばい菌の巣窟となり歯周病をもたらします。
・糖尿病 歯周病菌が血管から体内に入ると、インスリンの作用を阻害します。また血糖値が高い状態は、唾液中の糖も高くなり、これが歯周病菌に触れると歯周病菌が増殖しやすくなります。糖尿病と歯周病が悪循環する負の連鎖となります。
・動脈硬化 歯周病菌が血管に入ると動脈を硬くしやすいのです。歯周病の人はそうでない人に比べて2.8倍も脳梗塞になりやすいというデータがあります。(出典:日本臨床歯周病学会ホームページ「歯周病が全身に及ぼす影響」 リンク)
・がん 唾液にさまざまな発がん物質を30秒間浸すと発がん作用が急激に低下することがわかっています。(出典:咀嚼とがん予防 西岡一 日本咀嚼学会雑誌 1991 vol.1 原文リンク)
・肺炎 唾液が少なくなり、口の中の病原性細菌が気管に落ちると肺炎を発症しやすくなります。青森県五戸町の老人ホーム「ハピネス五戸」では、入所者50人の口腔ケアを行ったことで肺炎の罹患率が半分以下に減りました。唾液を潤沢にすることで、食べ物を気管に入れて発症する誤嚥性肺炎を防ぐことにもなります。
・インフルエンザ インフルエンザはシーズンになると多くの方の口中に入りますが、それだけでは感染しません。喉粘膜に糖タンパクというバリアーがあるからです。しかし唾液が少ないとこの糖タンパクが破壊されやすくなります。インフルエンザウイルスは、乾燥するところを好む、という点でも唾液を十分に分泌しておく必要があります。
・食中毒 予防には胃酸がしっかりと働くことです。実は胃酸が働くためにはよく噛んで唾液の分泌を促しておくことが重要です。口中で咀嚼が始まり唾液が分泌されると、胃中でも食べ物を受け入れる準備が始まるのです。あまり噛まずに飲み込むと胃酸も働かず食中毒が起こりやすくなるのです。
・高血圧 唾液が働かないと、味覚が鈍くなり味が濃いものを好むようになります。精製塩の摂りすぎにつながり、高血圧リスクが増大します。
・認知症 糖尿病や動脈硬化は認知症の発生リスクを高めます。前者はアルツハイマー型、後者は脳梗塞などの脳血管障害を経て血管性認知症の原因となります。これは認知症専門医の長谷川嘉哉先生も提言しています。先生は実際に認知症の患者さんに歯が悪い方が多いことを体感されています。(出典:認知症予防の食事・専門医が提言!「食品よりも歯が大事」な理由とは リンク)
「唾液が少ない」とお考えの方は、「ドライマウス気味かも?」と放置せずに、分泌強化への取り組みが必要です。
3.唾液が少なくなる原因
様々ありますが、よく噛まないことや口を動かさないことが最も一般的な原因です。その他には、
・口呼吸(口内が乾燥しがちです。口をあまり動かさないことにも繋がります)
・柔らかいものばかりを好む(あまり噛まずに飲み込めます)
・笑わない、しゃべらない(口をあまり動かしていません)
・加齢(自然に唾液の分泌が減り、口もあまり動かさなくなります。多くの薬を飲むことがあり、副作用で口中が乾燥しやすいことも少なくないです)
・前かがみ、猫背などの悪い姿勢(血行不良につながります)
・運動不足
・マイナス思考(ため息をつくと口呼吸と同じ原理で乾燥します。前屈み姿勢になりがちです)
・不規則な生活、昼夜逆転の生活(自律神経が正常に機能せず、唾液の分泌が低下します)
・暴飲暴食
・飲酒、喫煙
・暖冷房の効いた部屋に居続ける。湯船につからない
・パソコンやスマホ、テレビゲームのしすぎ(ドライアイとドライマウスは関係があります)
などです。一般に健康にあまり良くないことは唾液の分泌を減らすのです。
4.軽視できない!唾液の役割とは
少なくてもあまり気にされない方が多いでしょう。しかし唾液には健康を保つための役割が豊富にあるのです。
・おいしさを高める作用 よく噛んで唾液と混ぜることで食品のおいしさが高まります。例えばご飯を何もつけずにそのまま口の中で30回ほど噛むと甘みが増してきます。これはでんぷんが糖化するからです。
・洗浄作用 唾液は天然の歯磨きです。昔はカタイもの、繊維質のもの、素材そのままのものが多く、よく噛まないと飲み込むことができませんでした。唾液が十分に分泌され流し込むことができたのです。現代は柔らかく歯にまとわりつくものばかりなので、唾液も少なく、また歯磨きをしないと綺麗にすることができません。
・傷を治す作用(抗菌作用) 唾液は分泌直後はアルカリ性です。その後酸化し、再度アルカリ性に戻ります。この作用でばい菌に抵抗することができます。マウスによる実験だと、傷を負ったマウスを数匹同居させると治りが早いことがわかっています。これは傷口を舐め合うからです。
・中和作用 飲食する度に歯は損傷しています。これを上図の通り、唾液のアルカリ〜酸〜アルカリの作用で再石灰化が行われ歯を元に戻しているのです。唾液の分泌が少ないと、歯は復元されません。
- 5ccの水と唾液を別々に用意し、そこに0.2ccの塩酸を加えます。水はpH度2.3まで下がりますが、唾液はpH度6.0です。塩酸の影響をほとんど受けていないのです。水のpH度を唾液同様の6.0にするためには水5Lが必要となります。
・保護作用 歯やほっぺを守る作用です。唾液は歯や口の中をコーティングして感染菌や損傷から守っています。実は人間は下の歯の方が平均4年長持ちします。これは常に唾液腺に触れているからとも考えられます。
・潤滑作用 唾液は口の中の動きを滑らかにしています。舌の動き、歯の動き、頬の筋肉の動きに関わっています。滑舌が悪い方は唾液の分泌が少ないことが考えられます。食べ物が飲み込みにくい方も注意です。
5.唾液が多いことのメリットは他にもある
唾液の分泌が十分にあると、ここまでに取り上げたこと以外にも様々なメリットがあります。
・天然のやせ薬 ゆっくり噛んで唾液を十分に分泌することで、消化吸収が促進され、満腹感をはやく得やすくなります。
・天然の口臭予防薬 口の中で悪臭を発生させる細菌は、酸素が嫌いなものが多いです。酸素が少ない状況で活発に活動するのです。口が渇いた状態の方が酸素が少ない環境なのです。風邪は口やノドからひく、ということもこのことが関連しています。
・天然の調味料兼健康バロメーター でんぷんが糖化することで甘くなることは説明しました。これはマルトース(麦芽糖)に変質するからです。また体が疲労した時に酸っぱいものを求めたり、脳疲労すると甘いものが欲しくなります。これも唾液がサインを出しているのです。胃腸をはじめ、全身や脳に繋がっているのです。
・天然の歯磨き粉 研磨剤入りの歯磨き粉は歯を削りますし、発泡剤入りのそれは簡単にスッキリ感が得られるので磨き残しが多いのです。唾液をよく分泌させて歯を磨くと磨き残し少なくきちんと磨くことができます。唾液は吐き出すとその後の効果が得られませんから飲み込んでOKです。湯船につかりながらだとサラサラ唾液が多く分泌されます。デンタルフロスも活用してください。
・天然の入れ歯安定剤 唾液が入れ歯と歯茎に入り込むことでしっかり固定されるようになります。グラグラするとお悩みの方は唾液分泌の運動をおこなってみてください。
・胃酸逆流防止薬 「逆流性食道炎」や歯の「酸蝕症」は胃酸の逆流が原因です。胃酸が戻ってくるとpH度1.0の強酸で歯や口の中がボロボロになります。唾液の分泌を多くしよく飲み込むことで胃酸の逆流が抑えられます。
6.唾液の分泌を促す簡単お口マッサージの方法とは
お待たせしました。いよいよマッサージの方法をお伝えします。唾液の分泌が促進されることで美肌効果や、消化が良くなることによるダイエット効果もある、と森先生は語っています。
6−1.これだけでもぜひ!フェイス1分マッサージ
唾液が分泌する唾液腺は上手の通り、頬の内側に3ヶ所あります。ここを指で外からマッサージします。
■耳下腺(じかせん)マッサージ
1・図のように指を広げ耳の内外に当てます。
2・耳下腺を刺激するように10回まわしてマッサージします。逆方向も行ってください。
■舌下腺(ぜっかせん)マッサージ
1・図のように親指を立て、前顎の骨の下に当てます。
2・10回押し上げてください。
■顎下腺(がくかせん)マッサージ
顎下腺は、全唾液の70%を分泌す大事な唾液腺です。しっかり行ってください。
1・図のように親指を立て、耳の下の顎の骨に当てます。
2・30回、図の範囲を押し上げてください。
6−2.口の内側からは「舌回し体操」を
森先生のクリニックで食事前後に行っている方法です。唾液の分泌を促し、歯磨き効果を促進する作用もあります。森先生も舌回し体操を始めてから6ヶ月後から、ほうれい線や口まわりのシミが薄くなったと言われるようになったそうです。
・口を閉じて行います。まず舌先をできるだけ右上の一番奥の歯茎と頬の間に置きます。
・そのまま歯の外をなぞるようにして、左上の奥まで動かします。そこで左下の奥にシフトして、右下奥まで戻ってきます。10回まわしてください。
・反対回しも10回行います。
・一周を3秒ほどかけて行います。慣れてきたら回数を20回に増やします。毎食前後におこなってください。
ストレッチオーラル®︎は硬くなった表情筋を、口の中から緩めるツールです。表情筋を活性化することで、リンパの流れや唾液の分泌を促進します。表情筋が使えるようになることで、ほうれい線解消やリフトアップといった美容効果が期待できます。さらに、唾液が増えることで口臭予防などのオーラルケアが可能になります。ストレッチオーラル®は公式ホームページにて詳しく紹介しています。
7.まとめ
唾液の分泌を促す方法をお伝えしました。唾液が少ないことは、ご自身が思うことよりも様々なデメリットがあります。しかし分泌されるようになると、メリットも大きいものです。
お伝えした方法をぜひ毎日の習慣として、長く続けられてください。
今回の内容をさらに詳しく解説し、他のトレーニング方法も紹介しているのが、森先生の著書「体の不調は「唾液」を増やして解消する」です。唾液のパワーを知り、生活の質向上を実現したい方はぜひ参考になさってください。
また、森先生の新著が出版されました。5万部のベストセラー「歯はみがいてはいけない」の続編です。より実践しやすいように、歯磨きの方法やオーラルケアツールの選び方が豊富に紹介されています。ぜひご一読ください。
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