朝起きた時から腰痛を感じる方がいます。寝起きの腰痛です。
なかには、「寝ていると腰が痛くなるから、長い時間眠られないんだ」という方もいます。
休養のための睡眠にならずに、痛みを発生させる原因になっているというのです。
実は、このような方は寝返りが少ないことが多いです。詳細は本文中でお伝えしますが、このために睡眠中の姿勢が固まっているのです。
そこでこの記事では日頃からできる寝返りを増やす運動を解説します。「ガッテン」(NHK)でも効果があると紹介された東大病院が発表した運動をベースにし、さらに私たちがおすすめするポイントや、加えて行った方がいい運動もご紹介します。
その他に、寝起きの腰痛を減らすための方法もお伝えしますので、起床時の腰の痛みに悩んでいる方はぜひ参考になさってください。
目次
1.寝返りを増やす5つのストレッチ
さっそくストレッチをご紹介します。
ポイントとしては
・呼吸は止めずに。自然呼吸やゆっくり呼吸で
・痛みのある方は避ける。ない方も痛みが出ない範囲で行う
・行いながら不愉快な痛みが出たり、痛みの範囲が広がる方は整形外科の診察を受ける
ようになさってください。
1−1.腰ねじりストレッチ
寝返りのための上半身と下半身のねじりを再現するエクササイズです。
写真のように仰向け寝になり、手足を伸ばします。腰をねじりながら、片手で反対側の片膝を押さえ、カラダに対して90度になるように倒します。最初は両肩や腰が床につかなくてもOKです。(慣れたらつくようにしてください)
この状態で脱力し、深呼吸5回繰り返します。左右1回ずつ×3セットが目安です。
1−2.反り腰ストレッチ
腰を反らせるストレッチです。反ると痛い方は行わないでください。特に反り腰の方に向いているストレッチです。
うつぶせ寝になり、上半身を軽く持ち上げます。足は、写真のようにお尻の方に引きつけてあげます。慣れない方は持ち上げなくても大丈夫です。お尻に寄せるほど腰の反りを感じるでしょう。
脱力して、頭を落としてもOKです。
30秒程度行い、一度うつぶせ寝になります。2〜3セット繰り返しましょう。
1−3.膝抱えストレッチ
寝返りには背骨の柔軟性が必要です。丸まり運動で獲得しましょう。
仰向け寝で片ヒザを片手でホールドします。
そのまま両ヒザをホールドし、背中が丸まるようにします。両手をしっかり組んでもOKです。
丸まったまま脱力し自然な呼吸10カウント数えます。その後仰向け寝の体勢に戻り、3〜5回繰り返してください。
1−4.タオルもも裏ストレッチ
男性では骨盤が後ろに傾いている方が多いです(女性でもあります)。この骨盤の傾きに影響している後ろももの筋肉=ハムストリングスを柔らかくするストレッチです。
バスタオルを用意します。仰向け寝になり、写真のように両手でタオルの両端を持ち、片足先に引っ掛けます。
足を伸ばして手前に引き寄せ、もも裏をストレッチします。
呼吸を止めずに10カウント。痛みのない範囲でおこなってください。可能であれば右左にゆっくり倒します。
足を入れ替えて交互に3〜5回繰り返します。
1−5.鉛筆コロコロ運動
寝返りという動作を分解すると、上半身が先に動いてから下半身が動き出します。大人になるとこれができない方が多くなってきます。
赤ちゃんの頃に戻ったつもりでやってみましょう。
戻ったら、反対の動きで一回転し当初の位置に戻ります。逆回りもしてください。交互に2〜3セット行います。
ポイントとしては、写真中にも書いた通り、上半身と下半身を分離して回ることです。同時に回る動きになってしまうとエクササイズの目的が「カラダの軸作り」になってしまい、寝返りとは別になります。
2.腰痛対策に寝返りが必要な理由とは
なぜ寝返りができたほうがいいのでしょうか。ここではその理由について解説します。
2−1.寝返りができないデメリット
寝返りができない=同じ姿勢で固まったままでいるということです。
人間は立っていても座っていても同じ姿勢を続けていると、さまざまなトラブルを起こしやすくなります。疲労感、肩こり、腰痛などです。これはなぜかというと、同じ部分だけ重力の影響を受けるからです。姿勢を保持するための筋肉は、抗重力筋ともいい常に重力の影響を受けながら、人間の姿勢を保持しています。
例えば足を組むことが姿勢にとってよくないと言われますが、時折組み替えたり、組まない状態をつくる等、姿勢を固定化しないことで悪影響を避けることができます。
寝ていても同様で、仰向けや横寝、うつぶせ寝など、体勢を入れ替えることがカラダの負担を減らすためには大事です。
2−2.寝返りは背骨本来の動きを取り戻す
寝返り運動は、誰もが生まれて半年前後で獲得する基礎的な動きの一つです。実は生まれてから立つまでの間は、人間の一生の生活に関わる機能を獲得する時期です。
泣くことで呼吸機能を、さらに視線を動かしながら首を動かすことを覚え、腕を伸ばして何かを取ろうとします。この次に行う寝返りも大切な意味があります。
一つは、上半身と下半身を分離させて動かすこと。
もう一つは、背骨の一つひとつを細かく動かすことです。
さらには、背骨を丸めたり反ったりする動きもこの時期前後から加わってきます。
この背骨本来の動きができなくなると、寝返りも難しくなります。寝たきり生活になり自分で寝返りが打てなくなると、介助により2時間起きに体勢を変えてもらうことが必要になります。これをしないと、骨の一部に体重が集中し床ずれが発生します。床ずれを放置すると、そこから壊死が起きるなどし、命に関わる問題となりえるのです。
2−3.寝返りができない人が増えている
赤ちゃんの頃に寝返りを繰り返していると、胸郭(肋骨周辺)は上から見た時に楕円系のように膨らんだ形になります。この形でいると寝返りしやすいのです。
寝返りが少ないと胸郭が薄くなります。また大人になってこの動作が少なくなっても寝返りしにくいという悪循環が生まれるのです。
これがなぜかというと、肋骨の丸まりには呼吸筋が関係しています。仰向け寝では上に膨らみ、うつぶせ寝では背中のほうが、横寝では肋骨の横側が広がります。これを繰り返すことで丸くなると考えられます。(この胸郭の形については、乳児の発育発達理論を学ぶ理学療法界などではよくいわれるお話しです)
「這えば立て 立てば歩めの 親心」という心境はよくわかりますが、乳児期はそれぞれの動作(四つ這い、ずりばい、つかまり立ち等)に大事な意味があります。焦らずに一つひとつの動きをさせるようになさってください。
大人になって、寝返りが少なかったり胸郭が薄いと感じる方は、ぜひお伝えしたエクササイズを日頃おこなってください。
3.寝返りを増やすための睡眠環境3選
カラダの使い方に加えて、寝返りをしにくい環境になっているかもしれません。寝具等を見直すことで改善する可能性があります。
3−1.硬いマットレスを使う
低反発が流行った時もありますが、柔らかいマットレスですと、カラダが沈みすぎて寝返りしにくくなります。
最近の流行は「体圧分散」&「高反発」型です。「体圧分散」とは、カラダの表面になるべく等しく圧がかかるような設計で、「高反発」は固めの感触と考えてください。
この種類は、寝返りがしやすいというのがメリットですが、固めの素材が苦手な方はこの辺に注意。ただ、昔から腰痛の原因は「高枕腰落ち」といい、腰部が沈み込むような柔らかいマットレスは要注意と考えられています。
3−2.枕も硬めが寝返りしやすい
枕も沈み込むようなタイプは寝返りしにくいです。頭の位置はカラダの中心線と頭の高さが同じになるようにしてください。
前述した通り、高い枕にも注意です。一本の軸をつくるようにして、寝返り時に頭が動きやすく、回りやすい環境を作ります。
3−3.冷え対策も行う
意外な盲点が就寝中の冷えです。腰痛の方は、おやすみしている間につい布団を蹴っ飛ばす等して、寒さで目が覚めることも多いかもしれません。冷えは血行不良を引き起こし、カラダを固まらせる原因になります。
入眠直前は、入浴や汗をかくような運動を避けましょう。お部屋は涼しめなほうが、熟睡することができます。
4.まとめ
寝起き直後から腰痛を感じる方のために、正しい寝返りを再習得するためのエクササイズをご紹介しました。誰しも赤ちゃんのころによく行っていた運動ですが、大人になると行う機会が少ないのではないでしょうか。
意識して動かすことを続けることで、無意識下でもできるようになります。ぜひお伝えしたエクササイズを日常習慣に取り入れ、腰痛が起きにくいカラダを作ってください。
参考:
慢性の非特異的腰痛患者に対するMcKenzie 法とストレッチング,その両方の介入効果 ─単盲検準ランダム化比較試験─ (山口 正貴(東京大学医学部付属病院)ほか 理学療法学 論文ID: 11136)
コンテンツの全部または一部の無断転載を禁止します。(C)Imaginear co.,ltd. co.,ltd. All rights reserved.