成長期におけるひざ小僧下部の強い痛み。
ちょうど上の画像のように、ひざを抱えたり指し示して痛がるのがオスグッド・シュラッター症候群(以下、オスグッド)です。
安静にしていれば痛みが引く場合もありますが、そのまま練習を継続すると再発したり、さらに痛みが強くなっていきます。
そうなると練習を休まざるを得ないほか、日常の立ったり歩いたりにも苦労するようになります。
成長に伴い痛みが落ち着くこともありますが、実は色々な原因が引き起こしている可能性があります。それを改善しないことには他の傷害が将来発生する危険性も少なくありません。
そこでこの記事では私たちの知識と経験を元に、オスグッドを改善し再発を防止する方法をお伝えします。お悩みの方はぜひ参考になさってください。
目次
1.オスグッド・シュラッター症候群とは
成長期(10代)に多い、膝蓋骨(ひざのお皿)下部に発生する強い痛みです。サッカーや野球などスポーツをするジュニア選手に多いことが特徴で、成長痛の一つとして捉えられることがあります。
これがなぜ起きるかというと、太ももの前にある大腿四頭筋のひざ周辺の腱(膝蓋腱)が付着部である脛骨上部を強く引っ張り続けるからです。
大人になるとこの部分はしっかりした骨になるのでオスグッドは起こりにくいのですが、成長期はまだここが軟骨様です。丈夫な膝蓋腱で上に引っ張られるために、骨との付着部がはがれて炎症と鋭い痛みを引き起こすのです。
なぜここにだけ起こりやすいかと言うと、骨格的なお話しになります。
太ももの内部には大腿骨という大きな一本の骨しかありません。すねにも脛骨とそれを補佐するような腓骨という二本しかありません。他の部位であれば多くの骨や関節があってカバーしあうことができるのですが、脚においてはこの大きくて長い骨だけなので、負担がひざにかかりやすいのです。
成長に伴い大腿骨や脛骨が伸び、それに筋肉の伸展が追いつかなければ、付着部が強く引っ張られ続けることになります。前ももには大腿四頭筋という大きな筋肉群がありその膝周辺の付着部が膝蓋腱です。
腱自体は丈夫であまり伸び縮みしないために、大腿四頭筋の柔軟性が大変重要なのです。
2.オスグッドを改善するために
当ブログに関わるトレーナーは多くのオスグッドになったジュニア選手をケアしてきました。彼等による一致したケア方法は以下の通りです。
・大腿四頭筋のストレッチを行う
・股関節のストレッチを行う
・足首のストレッチを行う
・正しいカラダの使い方をおぼえる
・オーバーユースを避ける
特に大腿四頭筋のストレッチは重要で、練習前のウォーミングアップ、練習後のクールダウンを十分に行い、家庭での空いた時間でも積極的に行ってほしいものです。
3.オスグッドの具体的改善法
ここからは具体的な方法を解説します。
3−1.【ケア方法1】大腿四頭筋の柔軟性を上げるストレッチ
ヒザのお皿をまたいで通っているのが大腿四頭筋で、ここのストレッチが最も大切です。練習前後や起床時、お風呂上がり等によく行うようにしてください。
■大腿四頭筋ストレッチ
ももの前をストレッチしていきます。ストレッチを行うことで、筋肉が温まり柔軟性を向上させる効果があります。オスグッドの選手にとって最も大事なストレッチで、毎日必ず行ってください。練習前、練習後、さらに家でも時間をとって行います。
横向け寝で行うパターンです。下に来る方の膝を90度を目安に曲げ、膝の裏を手で固定します。上に来る足のつま先をもう片方の手で持ち、膝を曲げましょう。
ただストレッチを行えば良いというものではありません。NG例は、脚が外に開いたり、腰を反ってしまっている場合です。強くストレッチをしようとするとこうなることが多いので気をつけてください。
ストレッチは、効かせたい部分にじんわりストレッチがかかっているか感じながら行うことが重要です。
■ストレッチポール®を使えば簡単&効果的にセルフマッサージができる
ストレッチポール®は当ブログを運営する㈱LPNが製造販売するツールで、発売以来多くのアスリートに愛用されています。
うつぶせの状態から肘を床に90度に曲げておき、ストレッチポール®をもも前に当ててゆっくり転がします。ふだんなかなか気付かない筋肉のコリを感じながらほぐすことができます。中には張りすぎていて強烈な痛みを感じる場合もあります。
ももの横で行えば外側広筋や腸脛靭帯にアプローチします。オスグッドになりやすい人はこの筋肉が張っていることが多いので、高頻度で行いましょう。
ストレッチポール®を使ったセルフマッサージの方法は別記事「必見!筋膜リリースをツールで効果的かつ安全に行う最善方法」にて詳しく説明していますので、そちらも参照ください。
3−2.【ケア方法2】股関節の柔軟性を上げるストレッチ
大腿骨の最上部は骨盤と繋がり股関節を形成しています。また大腿四頭筋は股関節を超えて骨盤まで繋がっています。
股関節の柔軟性がないと、大腿四頭筋で足を持ち上げる動きになります。すなわち大腿四頭筋に負荷がかかり、過緊張を発生させヒザに傷害が出ることになります。また、地面からの衝撃をうまく吸収することができなくなります。
股関節の硬さやツマリを感じる方はぜひ股関節ストレッチを行ってください。
■股関節まわし
仰向けの状態から軽く膝を曲げて両方の膝を持ちます。力が入らないように注意し、脱力しながら大きく回します。10〜20回行ったら、逆回しも行ってください。
■股関節ストレッチ・1
続けて、股関節を開くように床方向に押し付けます。息を止めずに10〜30秒を3セット行ってください。
■股関節ストレッチ・2
ドアの枠などを利用すると効果的にストレッチをすることができます。両ひざを曲げないようにして行ってください。お尻を枠につけておくことがポイントです。片足30秒程度を3セット。
■ストレッチポール®を使った股関節の動きを良くする運動
ストレッチポール®を使った運動を行うと股関節の状態を向上させる可能性があります。股関節のための運動はいくつかあるのですが、ここでは代表的なものをご紹介します。
リラックスした状態から、左右の足の裏を合わせるようにして、膝を開きます。足裏を体に近づけたり離したりして、ご自身の気持ちがよい位置を見つけてください。写真下の姿勢で40秒ほど自然な呼吸を行います。
ストレッチポール®を使わないで行うよりも、はるかに効果が得られる理由について、またその他の効果的な運動を別記事「ストレッチポール®で簡単骨盤調整!2つのポイントと改善法」にてご紹介していますので併せてご覧ください。
3−3.【ケア方法3】足首の柔軟性を上げるストレッチ
足首の柔軟性は膝蓋腱に影響を与えることが複数の研究でわかっています。(Malliaras et al. 2006) , (Backman, Danielson 2011)など。また衝撃吸収の点でも柔らかくしておくことが重要です。
エネルギーを効率的に伝え、また速く走れるようになるためにも足首ストレッチを行いましょう。
■足首ストレッチ
先を引きつける動き(背屈)と伸ばす動き(底屈)のストレッチを行います。
まずは背屈ストレッチです。壁に手を当てて立ちます。そのままひざを曲げて前と下にストレッチをかけていきます。前に出した足のかかとは浮かないように注意し、この足首がストレッチされる感じをつかんでください。10〜30秒を3セット。
続いて底屈のストレッチです。前に出した足のかかとを少し浮かせます。後ろ足のひざをさらに後ろに出して、足の甲を床につけてストレッチします。効かせるのはこの後ろ足の足首です。10〜30秒を3セット。
■腸腰筋のストレッチ
そのまま股関節深層部の腸腰筋のストレッチも行いましょう。
後ろ足をつま先で立てます。そのまま腰をおろしていくことで後ろ足の腸腰筋のストレッチになります。
3−4.【ケア方法4】正しいカラダの使い方をおぼえる
同じ練習をしているのに、オスグッドにならない選手がいます。正しいカラダの使い方をすることで、一ヶ所への負担を軽減することができます。ケガをしにくい選手は、上手なカラダの使い方ができているといえます。
3−4−1.引き起こしやすいカラダの使い方があることを理解する
ここまでで述べた通り、股関節と足首関節の柔軟性は重要です。さらに骨盤の前傾や後傾がないか、足全体で衝撃を吸収できる走り方になっているか、などが重要です。
ジャンプの着地を例にします。下図をご覧ください。
(左)が正しい姿勢です。(中)は股関節があまり曲げられずに、代わりにひざが足より前に出ています。ひざの角度がキツくなりオスグッドを起こしやすくなります。(右)は股関節と足首が曲げられない例です。その代わりに骨盤を後ろに倒し、バランスをとるために猫背になっています。オスグッドや他の傷害を発生させる可能性があります。
これを防ぐために柔軟性を向上させ、正しい姿勢でトレーニングを行う必要があるといえます。競技に最適なイメージをつかみましょう。
3−4−2.適切な股関節とひざの連動を身につける方法
スクワットを行ったときに、ひざの屈伸だけで行うような選手がいます。椅子を使って簡単に正しい姿勢で行う方法をお伝えします。足とひざ、股関節の適切な連動を感じることができます。
1)椅子に腰掛け、ひざから下はそのままにゆっくり立ち上がります
2)逆の順番で椅子に腰掛けるまでを行います
3)椅子をはずして同じように立ち上がり〜座りを繰り返します。これが正しい下肢連動のイメージです
上体を持ち上げる時には、大腿四頭筋のみならず、お尻やハムストリングス(もも裏)の筋肉の連動も重要です。日頃から正しいスクワットを練習に取り入れて動きをマスターしましょう。
3−5.【ケア方法5】オーバーユースを避ける
多くの場合は、これまでの方法ができていればオスグッドにはなりにくいです。それでもなるという方は、オーバーユース症候群、つまり使い過ぎが考えられます。
小学生世代でもほぼ毎日練習があるというチームも少なくありませんし、練習がなくても遊びとしてサッカーや野球を長時間行う選手がほとんどでしょう。
それにより負荷が増大し、オスグッドが発症することもあります。成長には休息も必要ですし、脚に負荷のかからない練習を行うことも重要です。
4.まとめ
オスグッドの対処と再発防止策をお伝え致しました。痛み止めや湿布で痛みを抑える方法もありますが、根本的な解決を行わないと練習に参加できないばかりか、競技をあきらめてしまうことに繋がります。
お伝えした中で、特に大腿四頭筋のストレッチは欠かさずに行うことをおすすめします。そこからさまざまな予防法と正しいフォームの獲得を実施し、オスグッドと無縁の競技生活を送ってください。この記事が参考になれば幸いです。
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