妊娠中(マタニティ)の骨盤矯正について、いろいろな情報があります。どの方法がベストなのでしょうか、なかなかわからないですよね。
出産という人生の一大イベント、やはり一番正しい方法を知りたいものです。
そこで当ブログでは、マタニティの骨盤矯正(調整)について、母性看護学の講師を長年勤められ、骨盤に関する著書も出している日本トップクラスの先生にお話しをおうかがいしてきました。母子ともに健康で元気な出産を迎える最善の方法をここでは初期・中期・後期にわけてお伝えします。「後期まで特になにもしてこなかった!」という人も安心してください。ここでご紹介する方法を今から行いましょう。
この記事は、岡橋優子先生の監修を頂きました。
特定非営利活動法人スマイルボディネットワーク代表理事。日本コアコンディショニング協会スーパーバイザー。早稲田大学スポーツ科学科非常勤講師。東京都立広尾看護専門学校、府中看護専門学校他、「母性看護学」非常勤講師。骨盤底筋など体幹のエキスパート。
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今回のエクササイズモデルも務めていただきました。衣装協力:RealStone
目次
1.妊娠中の骨盤矯正(調整)とは
骨盤を整えること=「骨盤矯正」とお考えですか? 「骨盤調整」という言葉もあります。この2つの言葉は意味が異なります。
実は骨盤矯正とは骨盤の骨組み(骨格)を正しくすることをさし、カラダが本来持っている力でひとりでに行われていくものです。骨盤調整は、その矯正の効果を最大限にあげるために骨盤まわりの筋肉や靭帯、カラダの状態をエクササイズで整えることを言います。
■妊婦さんが自分で行うのが骨盤調整
妊娠中、カラダは出産に向けて自然に変化していきます。お腹の中で赤ちゃんはどんどん大きくなり、それにより靭帯は広がり、関節の動く範囲が増え、カラダは重くなっていきます。妊婦さんの意思ではコントロールできない不安定な状態です。
そのカラダの変化に従い、母子ともに元気に出産を迎えるために骨盤調整のエクササイズをしていくことが大切です。行うべきことは、
・ゆるめる →日常生活やカラダの変化で緊張している筋肉を動かしやすくします。
・お腹や骨盤まわりの筋肉を鍛える(強化) →疲れにくい姿勢をつくり、内臓の下垂を予防します。
・ストレッチを行う →出産するために関節がよく動くようにする(股関節を軟らかくする) です。
2.骨盤調整で整える部分
出産に向けて調整すべき部分は、赤ちゃんの出口となる骨盤底と赤ちゃんを上から押しだすお腹の筋肉です。ここではその役割について掘り下げます。
2−1.骨盤底筋
骨盤底筋は、骨盤のもっとも底部にあってハンモックのような役割をしている筋肉です。排泄や月経はもちろん、呼吸や姿勢に関係する筋肉にも大きく作用している大事な筋肉です。
もちろん、出産においてとても重要な役割を担います。骨盤底筋を刺激して血液循環を良くしておくことで出産が楽になったりダメージが少なくなることが期待できます。
また意識して動かすことで産後のデリケートゾーンのトラブルを予防する効果もあります。骨盤調整トレーニングを行うことで、骨盤底筋に柔軟性を持たせることができます。
2−2.腹壁の筋肉
腹壁の筋肉とは、一般に言う腹筋のことで、刺激して働かせることで出産時に赤ちゃんを押し出したり、内臓の位置を整える役割があります。この筋肉をエクササイズで鍛えていくと筋力が高まり、腸を刺激して排便を助けたり、産後のウエスト引き締めにも効果的です。
妊娠中お腹を圧迫しても大丈夫なのかという不安を持つ方もいるかと思いますが、ここでご紹介するような内側の筋肉を刺激する程度であればなるべく行っていただきたいものです。(心配な方は担当医に相談して行ってください)
3.妊娠期別・セルフでできるもっとも効果の高い方法
骨盤調整をいつからいつまで行うべきかといえば、体調が良好であれば、妊娠12週以降から出産の直前まで行うことが可能です。(週2〜3回・各エクササイズ5分程度)
ここでは前述の ・ゆるめる ・強化 ・ストレッチ の3つのポイントでエクササイズを紹介していきます。決してキツいトレーニングではないので、時間を見つけて毎日2〜3回は行うようにしてください。
1)現在の妊娠が正常で,かつこれまでの妊娠に早産や繰り返した流産がないこと.
2)お腹に一人のみの妊娠で胎児の発育に異常が認められないこと.
3)原則として妊娠12週以降で,妊娠経過に異常がないこと.
4)適温(16~24度前後)の室内で、周囲の安全を十分に確保して行うこと.
5)妊娠16週以降では,仰向けになるような運動は控える.(今回ご紹介するエクササイズで、気分が悪くなったり貧血のような症状が起こったら中止してください。仰向けのエクササイズは、頭を少し高くしたり長い時間寝転んだままにしたりせずに行うと良いです)
6)マタニティエクササイズを行っていることを産科主治医に伝えること.
7)エクササイズ前後に心拍数を測定し,運動終了後には子宮収縮や胎動に注意すること.
8)体調に十分に注意し,無理をしないこと.
9)実施時間は午前10時から午後2時の問が望ましい。
10)偶発合併症の予防と治療を目的とする運動療法は,専門医と相談の上で,十分に注意して実施すること.
以下のエクササイズは、必ず上記を守り配慮した上で実施してください。
3−1.妊娠初期(〜15週目)までに効果的な骨盤調整エクササイズ
■ゆるめ編
足先バイバイ
股関節周辺の筋肉を刺激することで周辺の血液とリンパの流れを促進し、・筋肉を動きやすくする ・筋肉の緊張を取る 効果があります。仰向けで行うことで、立っている時の姿勢を保つための筋肉がゆるみやすくなるメリットがあります。立った時や、座っている時よりも血液やリンパが心臓に戻りやすくなります。
エクササイズ方法:
仰向けに横になります。この時に腕と足の力が抜けるように足を腰幅に開きます。足先で「バイバイ」するようにかかとを支点にしてつま先を左右に倒しましょう。両足が内側・外側と反対方向を向くように、股関節から動かします。内外20回を目安に行いましょう。
足ブラブラ
ふくらはぎの筋肉は足にめぐる血液を心臓に送り戻す働きをしています。このふくらはぎの筋肉を刺激して、骨盤内への血流をさらに促進するエクササイズです。足を心臓よりも高い位置へ持ち上げることで、血流を脚から骨盤へ戻しやすくします。また妊娠中に起こりやすいこむら返りを予防する効果もあります。
エクササイズ方法:
仰向けに横になります。両足を持ち上げて軽く膝を曲げ、ふくらはぎから足首までをブラブラとゆらすことで脚の力をほぐしていきます。10秒程度を目安に行いましょう。
力みなく脚を動かせるようになったら手も上げて内外と振ってリラックスしていきます。
■強化編
おしり持ち上げ
出産をするときに必要な”いきむ力”を強化するエクササイズです。妊娠後期になって腹筋が離開*しすぎないようにお腹が小さい時から腹筋力を高めておきましょう。ポイントは腰の下に敷いたタオルをお腹の力で押し込むことです。ムキになって力む必要はありませんが、お腹に圧力を入れる練習をしましょう。*離開=妊娠中や分娩中に腹直筋の真ん中が割れることを腹直筋離開と言います。赤ちゃんの成長にともなってお腹が大きくなるために起こることで、妊婦さんの9割がなるといわれています。妊娠・出産のメカニズム上、自然なことなのですが、産後のぽっこりお腹が戻らない要因と考えられています)
エクササイズ方法:
膝を曲げて仰向けに横になります。腰の下にタオルを敷きます。この時タオルの厚みは骨盤が床に当たって痛くなく腰が反りすぎないように調整しましょう。(バスタオル4つ折りくらい2~3㎝程度)
タオルを床に押し込むようにして圧をかける練習をします。5回ほど行ったら、圧をかけるのと同時におしりを床から持ち上げましょう。この動作を繰り返し、自然な呼吸で10回行いましょう。
■ストレッチ編
壁に背中を当てて股関節を開く
出産時、分娩台の上では診察時よりも大きく開脚する必要があります。イザというときに困らないように少しずつ軟らかくしていきましょう。
仰向けの開脚を立位で行います。体重がかかるので、ストレッチが強くなります。強度が強くなる分、膝などに痛みが出る方は仰向けで行いましょう。
エクササイズ方法:
壁の前に立ち、肩甲骨とおしりを壁に押し付けます。背中を押しあてた状態のまま、徐々におしりを下げていき、しゃがみます。しゃがみこんだら両手で足首を持ち、股関節がひらいているのを感じましょう。
10〜20秒程度のストレッチを行います。
3−2.妊娠中期(16~27週)に効果的な骨盤調整エクササイズ
■ゆるめ編
膝パタパタ
股関節の動きを柔らかく滑らかにし、周辺の血液とリンパの流れを良くするエクササイズです。足先バイバイとは違う角度から股関節を動かすので、一緒に行うと股関節をまんべんなくほぐすことができます。
エクササイズ方法:
膝を外側に向けて両足の裏を合わせて座り、両手で両足をつかみます。両足の力を抜き、背中が丸まらないように注意しながら、膝を上下に動かします。リラックスしながら上下に10回行いましょう。
骨盤ゆらゆら
骨盤内の臓器を刺激するエクササイズです。骨盤を揺らすことで、神経系や臓器への血流が活性化します。
エクササイズ方法:
両足の裏を合わせて座り、両手で両足をつかみます。坐骨でしっかり床面をとらえ、しっかりと立てます。頭からおしりまで1本の棒のようなイメージで上半身を整え、左右にゆらゆらと骨盤を揺らします。片方の膝が床についたら、跳ね返るイメージで、揺らぐようにしてカラダを左右にしならせながらバランスを保ちましょう。左右10回を目安に行いましょう。
また、腹圧をかけずに行う方法として、四つ這いで同じエクササイズ効果を得ることができます。四つ這いになり腰を反らさないようにして、左右のおしりを横から覗き込むように骨盤を左右に揺らしてみましょう。こちらも左右10回を目安に行います。腰の痛みやだるさを解消したい妊婦さんにオススメのエクササイズです。
■強化編
タオル腹筋
出産時に必要な腹部の筋肉を鍛えるエクササイズです。骨盤を安定させて行います。
エクササイズ方法:
膝を曲げて仰向けで横になります。大転子をタオルが覆うように巻きお腹の前でクロスさせます。
この後、外側にタオルを引くので、クロスさせたときに反対側を持ちましょう。
タオルを外側に引っ張り、骨盤を安定支えた状態でおへそをのぞき込むようなイメージで上半身を床面から持ち上げていきます。この時、軽くおへそをのぞきこむようにして、肩甲骨が床から離れるくらいを目安に持ち上げるといいでしょう。
つらい場合は頭の下に枕を置いたり、腹部を圧迫しない所にタオルを巻くとできるようになることがあります。
自然な呼吸で10回を目標に始めましょう。(目安反復回数3〜10回)※途中気分が悪くなったり苦しくなったら横向きになって休んでください。
■ストレッチ編
壁に向かって行う股関節の開脚運動
壁に手を付けながら股関節を開くことで、安全に股関節を軟らかくすることができます。また、左右の柔軟性の違いに気づくことができます。
エクササイズ方法:
壁に向かって立ち、足は肩幅よりやや広げて立ちます。両手を壁につけて、手を滑らせながら、そのまま腰を降ろしていきます。自然な呼吸で、または息を吐きながら腰を降ろします。降りきったらゆっくり立ち上がります。スタートから最後に戻る一連の流れを5回行いましょう。
また、一人で行うのがつらい方はパートナーに支えてもらいながら行いましょう。
お互いの肘を持ち、ペースを合わせながら行います。パートナーの方は後ろに倒れないように重心を支えるフォローをしましょう。笑顔でおしゃべりしながら行うと呼吸も促進でき心もはずみます。
3−3.妊娠後期(28週以降)に効果的な骨盤調整エクササイズ
■ゆるめ編
キャットバック
肩とももの付け根から、床に垂直になるように手とヒザをつきます。
背中を丸めながら天井へ引き上げます。この時に息を細く吐きながら、おへそに頭が近づいていくようなイメージを持ちましょう。背中が丸められることで背骨にそった脊柱起立筋へのストレッチがかかります。息を吸いながら、背中を反らしつつ、上と前に伸びていきます。天井を見るように目線を上げ、首を前にのばしていきます。両手で床をじんわりと強く押していってください。5回行っていきましょう。
■強化編
シットアップ
出産を意識して、出産に耐えられるだけのカラダづくりを目的とするエクササイズです。これは分娩台の上で腹筋を使っていきむことができるように鍛えていきます。
エクササイズ方法:
膝を立てて横になります。この時に両足を広く開脚します。分娩台をイメージして120度程度を目安にしてください。手をお腹の前でクロスさせて組みお腹回りを安定させます。この手で呼吸時のお腹の動きなどを感じ取りましょう。
おへそをのぞき込むようなイメージで上半身を床面から持ち上げていきます。この時、頭の下に枕を置いて、枕から頭が上がる程度持ち上げていきます。
自然な呼吸で10回を目標に始めましょう。(反復回数の目安3~10回)
■ストレッチ編
壁に向かって行う股関節の開脚運動
壁におしりを付けて行うことで、制限された面に向かって股関節をひらくことで、左右の柔軟性の違いに気づくことができます。
エクササイズ方法:
壁の前で仰向けになり、坐骨が壁に当たるようにしておしりを壁に当てます。両足を壁に沿って持ち上げて、膝を伸ばして開脚します。次に膝を曲げて足の裏を合わせます。最後に膝を伸ばして元の姿勢に戻ります。
それぞれのポジションを自然な呼吸で10〜20秒程度キープします。※途中気分が悪くなったり苦しくなったら横向きになって休んでください。
また横になって行うのがつらい方は、上の写真のようにボールに脚を開いて座ると骨盤底筋を刺激しながらストレッチすることができます。
4.まとめ
妊娠中の骨盤調整は出産を無事に終えるために重要な役割を果たします。今回お伝えしたカラダの調整法を活用して安心して出産に向き合えるカラダづくりを行ってください。どうぞ健やかな出産になりますよう、私たちも願っております。
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