眠っている時に耳鳴りがしたと思ったら… 急に身動きが取れない! びっくりして声を出そうとしても出ない! どうしよう、でもどうすることもできない、このまま死んでしまうかも!!
これが「金縛り」です。
そこでこの記事では、金縛りについて解説します。金縛りとは何か、その原因、種類、予防方法についてまとめました。実際に経験した方への取材も行いましたので、たびたび金縛りについて悩んでいる方や、一度は経験してみたい方もぜひ読んでみてください。
目次
1.金縛りとは
端的に言うと、脳は覚醒しているのに、カラダは眠っている状態です。「明晰夢」と言ったり、医学的には「睡眠麻痺」と言ったりしますが、すべて同じ状態です。
睡眠中に目覚め、意識があるにもかかわらずカラダを思うように動かすことができない状態です。数秒から数分の間、身動きしたり話すことができない場合があります。のしかかられるような圧力や窒息感を感じることもあります。
同時に夢を見ることで、他人や幽霊、悪魔のようなモノが上にのしかかったり、カラダの下、地面の奥深くに潜んで引っ張るように感じることもあります。時間が経てば徐々に軽くなって身動きできるようになったり、再び睡眠に落ちることで回復するようになります。
このような状態を、約40%の人が一度は経験しています。起こりやすい年齢は10代と言われていますが、すべての年齢層で性別に関係なく起こりえます。多くの場合治療の必要はありません。
2.金縛りのメカニズム
金縛りのほとんどは、睡眠のリズムが崩れ、脳とカラダが睡眠の過程を順調に踏んでいないか、その兆候が起きていることが原因です。ここでは、それがいつなぜ起きるのかを解説します。
2−1.金縛りが発生する2つのタイミング
金縛りは、通常、次の2つのいずれかのタイミングで発生します。
・夜中眠りが浅くなった時。覚醒時睡眠麻痺と呼びます。
・就寝直後、眠りに落ちている時。入眠時睡眠麻痺と言います。
2−2.覚醒時に発生する金縛りについて
睡眠中、レム睡眠とノンレム睡眠は交互に移り変わります。レムとノンレム睡眠の1サイクルは約90分です。脳を休めるノンレム睡眠は、入眠直後から発生し、全体睡眠時間の75%はこのノンレム睡眠となります。
ノンレム睡眠時には、脳は深い休みに入り、体が弛緩します。 そこからレム睡眠に移行します。レム睡眠はRapid Eye Movingの略語で、目は小刻みに移動します。この時にみる夢は、鮮やかで細かく感情が生まれるようなものと言われます。寝起き直前にものすごく細かく憶えている夢を見ることがありますが、これがノンレム睡眠時の夢の特徴です。
レム睡眠時、体の大半は非常にリラックスした状態で、カラダを休めています。いわばスイッチオフされた状態といえます。このレム睡眠時に脳だけが目覚めてしまい、カラダは眠ったままの状態となると、金縛りになります。
2−3.入眠時に発生する金縛りについて
入眠時、ヒトは一気にノンレム睡眠まで落ちていきますが、何らかの原因で睡眠リズムが崩れると、最初にレム睡眠が出現することがあります。これにより、カラダは深い眠りにあるのにも関わらず、脳は起きてしまう状態となります。
この時に金縛り状態を感じることがあります。たびたび起こるようだと後述するナルコレプシーという睡眠障害にかかっている可能性があります。
3.金縛りの原因
ここでは金縛りを引き起こす原因についてお伝えします。
考えられる主な原因としては、
・睡眠不足
・ストレスや双極性障害などの精神状態
・睡眠スケジュールの変更(夜勤から日勤へのシフト変更や時差ぼけなど)
一般的にはこの3つですが、多少深刻な原因もあります。
・ナルコレプシーや脚けいれんのような睡眠障害
・ADHD用など特定の薬の使用
・薬物濫用 です。ナルコレプシーについては後述します。
また、仰向け寝は、睡眠のためには良い姿勢なのですが、この仰向け寝で金縛りが最も起きやすいことがわかっています。
4.予防・改善策
金縛りのための治療は、ほとんどの方で必要としません。睡眠の質を改善し十分な休息がとれていれば再発する可能性は少ないです。
4−1.睡眠の質を改善するために行っていただきたいこと
金縛りの最大の原因は、睡眠不足と心理的ストレスです。心とカラダが十分に休息できていないと、起こる可能性が高いのです。もしまだお試しでない場合は下記のことを行ってください。
・睡眠時間を7〜8時間確保する →カラダを休める休日も設けましょう
・おやすみ前にリラックス状況をつくる →お部屋は真っ暗にし、雑音が入らないようにしてください。おやすみ前2時間をメドに入浴。また、強いライトの刺激を受けないようにしましょう。
・寝る直前に考えごとをしない →仕事などの悩みは、ベッドに入る前にtodoリストを作って、朝起きてから取りかかることにしましょう。
・ベッドに入ったら寝ることだけに集中する →枕に頭を起きながらスマホチェックをしないようにしてください。眠れない場合は、一度ベッドから出るのも手です。しかしスマホやテレビを見ずに、リラックス環境を作るようにしてください。
睡眠の質を改善する方法については、別記事「睡眠の質改善で目覚めスッキリ!最も効果的な5つの方法」で解説していますので、ご参考になさってください。
また、就寝直前にストレッチポールのエクササイズを行うことで、睡眠の質が改善される可能性があります。これは日常生活の中で緊張したり偏ってしまった姿勢を緩めほぐし、手足の血行を良くし、呼吸を深くすることができるからです。詳しくは別記事「ストレッチポールが睡眠の質改善に効果的な理由」をご覧ください。
4−2.睡眠の専門医に相談したほうがいいケース
金縛りにたびたび悩まされていたり、金縛りが怖くて眠れなかったりする方で、前項の改善のための取り組みを行ったにも関わらず改善しない場合は、医師の診断を受けた方が良さそうです。
医師は、次のような方法で睡眠状況をリサーチし、どこに原因があるのかを判断します。
・睡眠状況のカウンセリング
・数週間の睡眠日記
・睡眠計によるモニタリング
・ご本人やご家族の方の睡眠障害の既往歴
・その他の基礎疾患
基礎疾患の治療を行うことで、よく眠れるようになるケースが多々あります。
5.金縛りに関係する病気「ナルコレプシー」とは
5−1.ナルコレプシーの代表的な症状
金縛りは、ナルコレプシーなどの睡眠障害が原因で引き起こされていることがあります。ナルコレプシーとは、日中に時と場所に関係なく、急に強い睡魔が起こる睡眠障害です。(3ヶ月以上症状が続いていることが目安)
関連した症状として以下のことが起こりがちです。
・入眠時睡眠麻痺 →入眠直後における金縛り・幻覚・幻聴など。入眠時レム睡眠が発生して起こります。
・睡眠中の度重なる悪夢 →眠りが浅くなりがちで夢を見ることが多くなる。多くの場合は悪夢で、うなされることもある
・常道脱力動作(カタプレキシー) →笑い、喜び、怒りなどの感情が誘因となって起こり気を失って倒れるような動作
このうち、常道脱力動作を起こさない人もいます。
5−2.ナルコレプシーの原因
自己免疫疾患の一つではないかと考えられています。自己免疫疾患は、身体の免疫系機能が誤って健康な組織や細胞を攻撃するときに発生します。ナルコレプシーでは、免疫系機能が、オレキシンというペプチドを生産する脳細胞を破壊します。オレキシンは多くの脳機能に影響を与えるが、そのアクションの詳細は、まだすべて解明されていません。
ナルコレプシーは思春期に発症することが多い病気です。生まれつきオレキシン神経細胞が少ないのではなく、後天的に自己免疫疾患で、少なくなっていくと考えられています。放置していても自然と改善せず、ストレスや疲労を発生させるので治療が必要です。
5−3.ナルコレプシーの治療
診断の結果、ナルコレプシーであると判断された場合は治療を受けることになります。
一般的には薬物療法から行うことが多く、モダフィニル、メチルフェニデート、ペモリンという薬が処方されます。同時に睡眠習慣の見直しなどが行われます。
このように、若年層での入眠時の金縛りは注意が必要ですので、睡眠のための環境を整えても3ヶ月以上解消しない場合は、専門医の受診をおすすめします。
6.金縛りの体験談1〜M.Tさんの場合
編集プロダクションに勤めていた彼。パソコン作業で執筆やデザイン、また撮影や雑務など一人でなんでもこなす毎日で、何ヶ月も休みが取れない状態した。
その時は〆切間近の作業がいくつも重なり、4時間半ほどの睡眠が続いていたのです。肉体的疲労と心理的ストレスをかなり感じるほど追い込まれていたのでした。
「もう限界…。会社辞めようかな…」と思っていたある夜、金縛りが襲ってきます。未明に一瞬目覚めそうになった時に、頭のまわりでグワーンとなった感覚がしたと思ったら、何か抗いがたい強烈な力でカラダが押さえつけられたのです。
その力はどんどん強くなっていき、跳ねのけようとすればするほど、重くのしかかってきます。幽霊などは信じない彼でしたが、この時だけは必死に頭の中で念仏を唱え続けたそうです。
そうして耐えることおそらく数十秒(しかし彼には何十分にも感じられたそうです)、少しずつ軽くなっていき金縛りから解放されました。
息を荒くして、そのまま再び深い眠りへ。起床後、過労とストレスが金縛りの原因ではないかと考えた彼。このままの生活が続いたら自分が潰れてしまうと感じ、会社に辞表を出すことに決めたのでした。
7.金縛りの体験談2〜M.Mさんの場合
M.Mさんは建築士。10年以上前に3〜4回の金縛り経験をしています。
ある時、現場で職人さんと打ち合わせした後に建物の屋上で横になってウトウトして寝てしまいました。建築現場は断続的に「トントン」「ガガガ」など作業音がしています。
その都度パッと意識が戻り、音が止むとまた眠りに入る。それを繰り返しているうちに、耳鳴りが聞こえました。すると頭と体の覚醒程度にズレが生じたような気分になり、頭は目覚めているのですが体が動かない状態へ。「あー、これが世間でいう金縛りかも」と思ったそうです。
金縛り中の状況としては、体を動かせないことがまず起こります。その時に目の前の景色は見えています。声も出ませんでした。
金縛りをふりほどくことはできず、そのまま再び眠りに入っていきます。次に目覚めたときは通常通りの状態に戻っていました。
また別の日には、休日に昼寝をしていると近所で道路工事が行われていました。この時も「ガガガ…」という作業音が断続的に。
「これ…金縛りになるかも」と思い横になっていると見事に再現できました。
本人は、「ふりほどくように抵抗をしていないので、金縛り状態の時に覚醒していたのか?ひょっとしたら夢ではないかとも思っています」と語っています。しかしながら、音によって脳とカラダの睡眠状態にズレを起こすことができれば、また再現できるのではないか、と考えているそうです。健康的な睡眠状態ではないので、当ブログではおすすめしませんが、金縛りを自力で引き起こしてみたい方の参考になるのではないでしょうか。
まとめ
金縛りは、たいていの場合は精神的肉体的疲労と、睡眠の質の悪さによって引き起こされます。この2点のケアをすれば、一般的には再発することはありません。
しかしながらナルコレプシーのように、継続的なトラブルを引き起こす疾患もありますので、気になる方はこの記事を参考にして対応されることをおすすめします。
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