「親指の付け根がジンジンする」。
内部からの痛み、しびれ、腫れがある方は、スマートフォンの使いすぎに心当たりはありませんか?
これは、最近では「スマートフォンサム」、日本では「スマホ指」という名で呼ばれることが増えてきた、親指付け根付近の腱鞘炎です。専門用語では「ドケルバン症候群」という言い方が一般的です。
スマホ指は、親指の基部周囲の腱が刺激されたり収縮したりすると起こります。
テレビ番組「ガッテン」(NHK)でも紹介されたこのスマホ指。この記事ではスマホ指かどうかのチェック方法、治療方法やストレッチなどの改善策、再発防止方法をお伝えします。
目次
1.スマホ指の症状とは
ここではまずスマホ指(ドケルバン症候群)についてご説明します。
1−1.親指付け根に痛みやしびれが出る
スマホ指の症状は以下のようなものです。
・親指の付け根付近(トップ画像参照)の痛み、しびれや腫れ
・手を握った状態や、何かを挟んだ状態で親ゆびと手首を動かすことが難しい。(ハサミやゴルフクラブやラケットのグリップ、ハンドルを握ったとき等の操作で痛みや抵抗を感じる)
・親指がスムーズに動かせない。引っかかりや可動範囲の制限を感じる。
治療をしないで長期間放置しておくと、その痛みは親指付け根付近から広がっていき、前腕部まで至ることがあります。親指や手首によるつまみ、挟み、握りの動作をすると痛みがさらに増加します。
1−2.類似の腱鞘炎との区別方法
手、指、手首周辺は腱鞘炎が起きやすい場所です。類似の腱鞘炎には
・腱交叉症候群(けんこうさしょうこうぐん)
・尺側手根伸筋腱鞘炎(しゃくそくしゅこんしんきんけんしょうえん)
・手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん) などがあります
腱交叉症候群はスマホ指よりももう少し手首側の腱が交叉している位置で発生します。
尺側手根伸筋腱鞘炎はテニスひじなど、ひじの内側にも痛みを発生していることが多いです。
手根管症候群は、腱鞘炎では最も多いものです。手のひらの指側に痛みを伴います。
2.スマホ指のチェック方法
シンプルな動作で可能性がわかります。これはフィンケンシュタイン(Finkelstein)テストというものです。
握手をする向きで手を前にだし、親ゆびを中に入れて握ります。
握ったまま下に傾けると、上図の位置に痛みが出る方はスマホ指の可能性が大きいです。
X線などの画像検査はスマホ指の診断には必要ではありません。
3.痛みの原因とは
最も大きなものは、親指内部にある腱の慢性的な過剰使用(オーバーユース)です。特に同じ動作を繰りかえすことが最大の原因と考えられます。
腱は、筋肉を骨に取り付けるロープのような構造をしています。 手を握ったり、何かをつかんだり、つまんだりすると、手首の2本の腱が親指の基部につながる小さなトンネル(腱鞘)を滑らかに滑ります。 スマホやパソコン操作等で毎日特定の運動を繰り返していると、2本の腱の周りの鞘が刺激され、肥厚化と腫脹が起こり、動きが制限されるようになります。
オーバーユース以外にも原因があることがあり、
・手首や腱に起きた直接的な外傷(刺し傷など)
・瘢痕組織(外傷が治癒したあと皮膚に残る変性部分)
・関節リウマチなどの炎症性関節炎
が挙げられます。
- スマートフォンサムは、ここ数年で新たに発生したものではありません。BlackBerry社がキーボード付きの携帯電話を発売し人気を得ていた時には「ブラックベリーサム」といわれましたし、ゲーム機PlayStationが一世を風靡した時には「プレイステーションサム」と呼ばれました。それ以前から、よくモノを書く人に多かったので「テキスティングサム」といわれたり、家事を行う女性に多かったので「washerwoman’s sprain」という別名が付けられたこともあります。
4.発症傾向の特徴とは
ドケルバン症候群にかかりやすい方は以下のようなタイプです。
・年齢 30〜50歳代。小児から老人までの全年齢で比較した場合、この年代が多いです。
・性別 女性の方が多いようです
・体の状態 妊娠、出産、育児期に多いようです。ホルモンバランスや、授乳姿勢、乳児のケアのために手首を酷使することが考えられます。授乳や育児期間が終わると改善する可能性が高いです。
・職種 デスクワーク、作業労働に関わらず、手首や指を同じ動作で酷使する方に多いです。
5.応急処置について
痛みやしびれを感じた場合は、以下の処置を行ってください。2〜3日経過後も改善の兆しがなければ、整形外科を受診なさってください。
・痛みのある指をなるべく使わないようにして、安静にしておく。
・アイシングを行う。アイシングの方法については、当ブログの記事「アイシング・10部位の効果的な方法を写真で紹介!実施時間の目安も」の手首の方法のやり方を親指の付け根に応用しておこなってみてください。
・痛み止め薬を飲む。イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用する。
治療をしないで放置しておくと、悪化する可能性が高いです。
6.病院で行う治療とは
治療の目的な、炎症の軽減し、親指の動きの保持、再発予防になります。早期に治療を開始すると、症状は4〜6週間以内に改善するはずです。その期間中は、それ以前と同様の負荷をかけないようにします。基本はなるべく使わずに安静にしておくことです。
6−1.治療薬
基本は飲み薬やシップ薬等の痛み止めです。塗り薬を処方されることもあるでしょう。
痛みがひどい場合は、コルチコステロイド薬の注射をする可能性もあります。ステロイドと聞くと心配になる方もいるかもしれせんが、症状の最初の6ヶ月以内に治療が開始された場合、多くの方は1回のコルチコステロイド注射で改善します。
6−2.薬以外の治療方法
他の方法を併せて行う場合が多いです。
・装具によって親指と手首を固定する方法
・できるだけ親指の動きを避ける指導
・アイシングのやり方の指導
また、理学療法士や作業療法士が充実しているクリニックであれば、指の動かし方に問題がないか観察し、療法士が動かし方や、手首や腕の筋肉を鍛える方法をお伝えしてくれるところもあります。日常のケアとして行うようにしてください。
6−3.手術をするケースも
重傷の場合は手術を検討することもあります。手術は、医師が関連する腱または腱鞘を検査し、腱をの動きがスムーズになるように腱鞘を開いて圧力を解放するような内容となります。術後はリハビリを行い、回復を進めます。
7.セルフで行えるトレッチの方法
ここでは予防や改善に効果的なストレッチをご紹介します。
胸の高さで、両手の指先を下に向け、甲を押しあいます。その後、合掌のように手のひらを合わせ押し合います。それぞれのポーズを10〜15秒間キープします。
手を机の上など硬い面に置き、手を開いて閉じてを繰り返します。開く時はできるだけ指を広げるようにします。10秒間おこなったら一度休憩し3〜5回繰り返します。
指を組みます。体の前で腕を伸ばして、両手を前方に離していきながら、手のひらを外側に向けていきます。手首を中心に優しいストレッチ感をかんじてください。10秒間保持します。3〜5回繰り返します。
今度は頭の上に伸ばしていきます。腕や胸が伸びることを感じてください。10秒間保持します。3〜5回繰り返します。
手のひらを太ももに当てます。手のひらをひっくりかえし、手の甲で太ももを軽く叩きます。直後に手のひらで叩きます。その繰り返しをなるべく速く行います。パタパタパタパタと20回繰り返します。
同じ手の親指で各指をタップします。人差し指から小ゆびまで行ったら戻ってきてください。5回繰り返します。
8.まとめ 再発防止策
スマホ指についてお伝えしました。医師の診察を受ける受けないに関わらず、日頃からの対策が改善と再発防止に繋がります。以下の点に留意してください。
・痛みが発生する時と同様の動きをなるべく避ける。
・医師の指示があれば装具を使用する。
・クリニックで伝えられた運動を継続する。
この記事でお伝えした内容が参考になれば幸いです。
この記事は米国の健康情報サイトマヨクリニックの以下の記事を一部参考にしました。http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/de-quervains-tenosynovitis/basics/definition/con-20027238
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