カロリーの摂取量は多くの方が気にされることです。
ダイエットに励まれる方はもちろん、医師から食事の量を制限されている方もいます。
では、カロリーさえ気にすればどんな食事を摂ってもいいのでしょうか。例えば、糖尿病の方には「糖質制限療法」というものがあります。この場合は、どちらかというとカロリーよりも糖質量に配慮します。
ダイエット目的の方がまず思いつくのはカロリーのカットでしょう。しかしこれにとらわれると別の問題を引き起こす可能性があります。
それはなぜでしょうか。また健康的なダイエットのための食生活とはどのようなものでしょうか。この記事ではカロリーだけにとらわれる危険性と、ダイエットのための食事法をご紹介します。
目次
1.摂取カロリーと消費カロリーのアンバランスだけが肥満の理由ではない
多くの方はカロリーを取り過ぎ、消費できなかった分が脂肪として蓄積される、とお考えかと思います。
1−1.摂取カロリーの誤解
実際に世界保健機関(WHO)は、肥満を「健康を損なう可能性のある過剰な脂肪蓄積である」と定義し、「肥満および体重増の基本的原因は摂取カロリーと消費カロリー間のエネルギー不均衡である」としています。
ですので摂取カロリーを減らし、運動量を増やしてカロリーを消費することで、脂肪が減り、その結果体重も減り、スリムな体型が得られると考えるのです。
運動が苦手な方は、ダイエットに際しこの摂取カロリーを減らすことをまず考えます。
一般的な減量のためのカロリーコントロール法では、成人が体重を減らすためには、1日あたりのカロリー不足が500〜750kcalの範囲にある必要があると言われています。
しかし、この数値にとらわれると、必要な栄養を得られなかったり、体重は減っても脂肪は減らないなどの問題が起こる可能性があります。
また、一般的なレシピにおけるカロリーは目安であります。調味料の量でも容易に変化します。一日のカロリーが175Kcal違うだけで、一年以内に3kgの体重増減を及ぼす計算となります。個人ではこの調整はかなり難しいと思われます。
1−2.消費カロリーの誤解
もう一つ、運動でカロリーを消費することもなかなか難しい問題があります。例えばサンドイッチ一食分のカロリーを(約290 kcal)を運動によって消費するには約90分(ほぼ6km)歩くべきなのです。
実際にはこれを毎日行える人は限られているでしょう。反面、そこまで運動していなくてもスリムな体型の方は多くいます。
それには個人差がある「代謝」が大きく関わっていると考えられます。一回の運動によるカロリー消費よりも長期的な体質の改善を目指すべきです。
1−3.カロリー過多以外に肥満を引き起こすもの
カロリーを多く取っていても人よりスリムに見える方もいますし、その反対に、カロリーに気をつけているがぽっちゃり体型の方がいます。これにはさまざまな要因が考えられます。
・視床下部の複数の神経経路によるエネルギー吸収システム作用によるもの
・腸内細菌叢の構成
・インスリンを過剰放出させる食べ物の常食
・筋肉量の減少
・遺伝 等
2.カロリーだけに注目は危険な理由
カロリーを抑えれば健康的なダイエットは可能でしょうか。そうとは言い切れない多くの理由があります。
2−1.ジャンクフードでもカロリーは抑えられる
ジャンクフードでもカロリーを控えめにできるメニューはあります。
チーズバーガーなら315kcal、ポテトL は170kcal、これにノンカロリーコーラでも500kcal以下です。
ピザの場合、トッピングによって上下しますが、Mサイズ1切れあたり平均200kcalくらいです。これを3ピース食べても600kcalくらいだとお考えください。
ではこのような食事を3食取っていれば痩せられるのでしょうか。摂取カロリーはわずか1,500〜1,800kcalです。そのような方もいるかもしれませんが、多くの方がこのような食生活で痩せられそうという感じがまったくしないのではないでしょうか。
2−2.ノンカロリーコーラでも肥満は解消しない
ノンカロリーコーラはカロリーがないので、どれだけ飲んでも太らないと思いますか? 研究結果ではそれを肯定するものも否定するものもあります。
米国における食生活の安全を啓蒙活動する非営利団体U.S. Right to Knowでは、ノンカロリーコーラでも肥満は抑制されない(痩せない、またはかえって増加する)という立場で数々の研究結果をまとめています。
人工甘味料に関する科学文献の5つのレビューは、それらが減量に寄与せず、代わりに体重増加を引き起こす可能性があることを示唆している。例えば:
・Canadian Medical Association Journalに掲載された人工甘味料研究の2017年のメタ分析では、無作為臨床試験における人工甘味料の減量効果の明確な証拠はなく、コホート研究では人工甘味料を「体重および胴囲の増加高血圧、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、および心臓血管イベントの発生率が高い」としている。
疫学的な証拠によれば、人工甘味料は体重増加に関係していることが示唆されている。 例えば:
・米国栄養学会誌に掲載された164人の子供の2年間の調査では、「ダイエットソーダ消費の増加は、体重が過体重および正常体重に比べて有意に大きかった」としている。 過体重の被験体および2年間で正常体重の被験体と比較して体重を増加させた被験体では、消費がより多かった
・9-14歳の1万人以上の子どもを対象としたUS Growing up Todayの調査では、少年の場合、ダイエットソーダの摂取量が体重増加と有意に関連していることがわかった。
その他、多くの否定的な研究結果を掲載していますので、英語にはなりますが参照してみてください。https://usrtk.org/sweeteners/aspartame-weight-gain/
2−3.日本の食材でも栄養バランスに注意
日本食はヘルシーなイメージがあり、低カロリーな食材も多いですが、必要な栄養素がかけがちになるので注意なさってください。
たとえばこんにゃくはカロリーが極めて少ないですが、脂質、タンパク質、糖質、ミネラル等の微量栄養素がいずれも不足します。
おにぎりに味噌汁だけ、という食事も一食程度なら大丈夫かもしれませんが、上記の栄養素いずれも足りていません。
そのほか、海藻、キノコ、葉物野菜などもカロリーが少ないですが、脂質、タンパク質が不足しがちになります。何事もそうですが「どれかだけをとる」ことは健康を損ねがちになります。
3.ノンカロリーコーラがダイエット効果をもたらさない理由
前章で述べた、ゼロカロリーのドリンクがダイエットに効果をもたらなさいのはなぜでしょうか。摂取カロリー<消費カロリーの理論では、ダイエットのためには理にかなっている飲み物であるはずです。
3−1.インスリンの過剰分泌を招いている
これにはいくつか理由が考えられています。医師の大西睦子さんは著書「カロリーゼロにだまされるな 本当は怖い人工甘味料の裏側」(ダイヤモンド社)のなかで以下のように書いています。
・通常、糖質をとると膵臓からインスリンが分泌され、エネルギーに変換しようとする。合成甘味料をとるとインスリンが過剰分泌され、しかし糖は得られていないのでエネルギーとなる糖を求め、甘いものや高カロリーの物を欲するようになる。
・インスリンのもう一つの機能として、脂肪を蓄積しようとする。過剰分泌されることでより肥満リスクが増大する。
・インスリンの過剰分泌が続くと、本来の分泌能力が衰え、血糖値が上昇しやすくなる。これは糖尿病リスクともなる。
・人工甘味料は砂糖と比して甘みが強い。これを継続していると甘味に鈍感となり、より甘いものを欲するようになる。
・人工甘味料にはコカイン以上の依存性がある。
これらの要素が複合して、肥満や糖尿の原因となることが考えられるのかもしれません。人工甘味料は腸内フローラ(腸内細菌叢)の構成を変化させ、糖尿病予備軍を生み出す一因になっているのでは、と考察する研究結果もあります。(Suez J、 Korem T、 Zeevi D、 et al (2014) 「Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota」 Nature 514、 pp.181-186)
3−2.食生活全体は何も変化していない
もう一つ、一般的には「大食いの免罪符」としてダイエット飲料を飲んでいるケースもあるでしょう。
大きなハンバーガーにポテトやオニオンフライを組み合わせて食べるときに「カロリー多そうだからせめてドリンクだけはノンカロリーを」と考えることはいたって自然です。罪悪感を軽減させるためにこれらの飲料をとるのです。
しかしカロリーが多いものを食べている事実は変わらないでしょう。上記した通り人工甘味料に「より血糖値を上昇させ、脂肪を蓄積させやすい」傾向があるのであれば、単にカロリーだけの問題ではない肥満リスクを生じさせていることになります。
「ノンカロリーコーラが危険」とは乱暴な言い方ですが、あくまでもほどほどにしておいた方が良いでしょう。
4.血糖値を急上昇させる食材とは
エネルギー変換効率が高い食べ物が、血糖値を上昇させやすいです。GI値という数値が目安になります。これが高いものは、
・穀物(白米、パン、うどん)
・菓子
・砂糖
・ジャンクフード
・ビール などです。食べるときは止められず、食べ終わって間も無くすると満腹感を猛烈に感じるような食べ物にも注意しましょう。
特徴としては
・精白されたものは高い
・消化が早いものは高い
・小麦菓子は甘くないものでも高い(プレッツエルなど)
・じゃがいもは高い、さつまいもはやや低い
・食物繊維が少ないものは高い
です。
ただ、GI値の高い食べ物を極端に避けるようなことまではするべきではありません。例えば夏バテなど胃腸が疲れているときはGI値が高いものの方がすばやくエネルギーに変換されるというメリットがあります。ケーキやデザート菓子なども、一週間に一度程度ならご褒美として食べられても良いでしょう。
また、「酢」「乳製品」「豆類」には他の食べ物のGI値を下げる効果があると言われます。食べ合わせの参考になさってください。
5.ダイエットのための食事法
「カロリー(摂取エネルギー)を控えめにする」「インスリンの過剰分泌を抑えるGI値の低いものを食べる」などの方法が考えられます。しかし必須栄養素や微量栄養素も健康のためには不可欠です。これらを念頭に置きながら以下のような食事法をとっていきます。
・PFCバランス(タンパク質、脂質、炭水化物の摂取カロリーの比率)は、一般的にはタンパク質(13〜20%)、脂質(20〜30%)、炭水化物(50〜65%)です。ボディメイクをされる方は、脂質を減らしてタンパク質を増やします。その場合はタンパク質(40%)、脂質(20%)、炭水化物(40%)を目安にしてください。
※三大栄養素のカロリーについて。1gあたり、たんぱく質4kcal、脂質9kcal、炭水化物4kcalとなります(ただし、食品によって、これらの数値は若干変わります)。上記パーセンテージは量の比率ではなく、カロリーの比率ですので注意なさってください。
・脂質は必要な栄養素です。上質な脂質を取るようにします。ジャンクフードや脂たっぷりの牛肉、豚肉を避け、オリーブオイルやココナッツオイル、ごま油、魚油を取るようにしてください。
・白米やパンを、玄米や雑穀米、全粒粉パン、ライ麦パンに変えます。
・少量をこまめに食べるようにします。
・食事の際は野菜、海藻、キノコ類を最初に食べるようにすると、消化がゆっくりになり満腹感が得られやすくなります。
・腹八分目を意識。
5.筋肉を増やせば痩せられる一つの理由
1章で述べたように、肥満の原因の一つとして「筋肉量の減少」が挙げられるのは、単に筋肉が脂肪に置き換わるのではなく、筋肉がないことで、「基礎代謝量」が落ちることが原因なのです。
何も動かなくても、生命を維持するために必要なエネルギー消費を「基礎代謝」といいます。例えば、心臓や内臓を動かしたり、内臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を維持するために必要なエネルギーがあります。脳を活動させるのにもエネルギーが必要です。
この基礎代謝のうち、25%以上にあたる量が筋肉に使用されます。基礎代謝量を自らの意思で変えることができるのは、唯一この「筋肉」だけといえます。
これはどういうことかというと、細胞内のミトコンドリアがアデノシン三リン酸(ATP)を発生させることも、エネルギーとなります。ミトコンドリアは、筋トレや有酸素運動を行うことにより増加し、これによりATPの代謝量と出力が上がり、熱エネルギー産生を促進することにつながります。