蚊に刺されるのはいつも突然です。
キャンプやバーベキュー、ガーデニングなど野外での活動時や、夜のおやすみ中にいきなり刺されることが多いでしょう。
「虫さされ薬がない!買おうと思ってまだ買っていなかった!」となると気分は最悪です。
対処のしようがないと思うとかゆみが余計に増幅する感じがします。さらにイライラして他のことを考えられなくなります。
「ツメで×の字を作れば良い」と聞いたことはありますが、あまり効果が実感できません。痛みとかゆみで二重苦です。
そこでこの記事では、かゆみを消す数々の方法や、薬の知識、予防法、重篤な疾患について解説します。今かゆみでお困りの方はぜひ参考になさってください。
1.刺された時にまず行うべき方法とは
蚊は衛生状況の悪いところで育ち、他の動物の血を吸うなどしており不潔な害虫です。感染症をさけるために以下の方法をとってください。
1−1.さらなる被害を避ける
刺されてからかゆみを自覚するまでに、数十秒程度かかります。これは蚊の針には麻酔成分があり刺されたことを人間が自覚しにくく、この成分と人間の体内成分が反応を起こしてかゆみとなるからです。
ですので、一ヶ所刺されたことに気付いたら、すでに数カ所刺されていたということが珍しくありません。屋外では一匹だけということは少なく、複数匹に同時に刺されることもあります。ウイルスによる蚊刺過敏症(ぶんしかびんしょう)の可能性も増しますので、一刻も早く蚊のいない場所に避難しましょう。
1−2.患部を消毒または清潔にする
アルコールを浸した綿で患部をよく拭くか、石けんで丁寧に患部周辺を洗ってください。熱めのお湯を使うことができれば、これだけでかゆみが治まる場合があります。
- EBウイルスはヘルペスなどを引き起こすウイルスですが、風邪と同様に時間の経過とともに体内から排除されます。これがなんらかの理由で体内に留まっていることがあり、この状態で蚊に刺されると、数日後に高熱や水ぶくれ、潰瘍を起こすことがあります。このような症状が見られた場合は皮膚科を受診なさってください。
2.かゆみ止めがない!時の民間伝承療法
まずは今かゆみに悩んでいる方に、薬なしでできるかゆみ止めの方法をお伝えします。
2−1.熱いシャワーを瞬間的に当てる
実際に筆者が行う方法で、腕や足などに有効です。熱いシャワーのお湯を患部に一瞬だけ当てます。「熱い!」と感じたら離すのがベストです。温度は50〜60度。60度ですとかなり熱いので気をつけてください。数回繰り返します。熱いと感じたホテリがおさまっていくと同時にかゆみも引いていきます。
※この方法は高温のシャワーを肌に当てる方法ですので、十分に注意なさってください。肌が弱い方では低温ヤケドなどの可能性があります。また使用後は冷水モードなどに切り替えて温度が下がったことを確認してください。次に使用される方が熱傷を受ける可能性があります。
2−2.温めたスプーンを患部に当てる
上記の方法ができない方におすすめの方法です。
金属製のスプーンを熱いお湯に1分間浸します。お湯から出し、5〜10秒間冷ましてから患部に当て、10〜30秒間キープします。 鍋のお湯がまだ熱い間に数回繰り返します。
2−3.アルコールを塗る
アルコールが蒸発する時に熱を放散させます。これが注射前のスーッとする感覚です。医療用アルコールを脱脂綿に浸して使いますが、面倒なのでアルコール綿があればベストです。沖縄では家庭療法として虫さされやあせもに泡盛を塗ることがありますが、これもアルコールによる効果です。高い効果を得るには高度数のお酒の方が良いです。
2−4.リンゴ酢を塗る
アップルサイダービネガーとも言います。米国での伝統的な家庭療法で、かゆみや腫れ、炎症等がある際によく使われます。アルコール同様に脱脂綿に浸して使用します。
また、小麦粉に混ぜることで簡易的な軟膏を作ることができます。かゆみが引いたらよく洗い流してください。リンゴ酢はフルーティーな酸味があり、いろいろな料理に使用できますのでこれも常備しておいてはいかがでしょうか。
2−5.レモン汁を塗る
リンゴ酢のかゆみ軽減効果はクエン酸によるものです。身近なものではレモンにも豊富に含まれます。レモン汁をしぼり脱脂綿に浸して患部に当てます。
2−6.アロエ軟膏や葉を使用する
スムージーなどに使用され健康食品として有名なアロエは、肌のトラブルにも使用されます。葉を使用する際は、折った断面のジェル状の部分や液体を患部に擦り込むようにしてください。断面を直接当て続けるのも有効です。
2−7.試す価値あり? 効果不明のその他の方法
以下はかゆみを押さえるために国内外で伝えられる方法です。筆者は試したことがないのですが、ここまで挙げた方法ができない方は試してみてはいかがでしょうか?
・ぬるめのお風呂にゆっくり入る
・氷やアイスバッグで冷やす
・蜂蜜を塗る
・歯磨き粉でこする
・バナナの皮の白い部分を当てる
・バジルの葉をすりつぶして塗る
・ラベンダーオイル、ティートリーオイルを塗る
・ベーキングパウダーを熱湯で練り、患部に塗りこする
・オートミールを水で練り、患部に塗りこする
3.かゆみ止めの選び方
蚊に刺された時のかゆみは、やはり薬を使うのが最も手軽で効果的です。市販薬であればお近くの薬店やドラッグストア等で簡単に求めることができます。
しかし種類がおおくて悩まれる方もいると思います。この章では、市販薬選びの際に役立つ薬の知識をお伝えします。
3−1.メントールやカンフル等を使用したかゆみ止め
メントールはハッカ(ペパーミント)に含まれる清涼成分で、多くのかゆみ止めに使用されています。これを応用して、ハッカ油でもかゆみの緩和を感じることができます。
これ単体では副作用がほとんどないので、安全に使用できます。
■キンカン
アンモニアは刺激性があり、酸性毒を中和します。刺された直後に使用することで効果があります。l-メントールは清涼剤でスースーする感覚をもたらすことで熱とかゆみを緩和します。また、カンフルは樟脳(しょうのう)で同様の効果を狙っています。これらの複合作用でかゆみや痛みを伝わりにくくしています。
3−2.抗ヒスタミン外用薬
上図はアレルギーの症状が出る原理を説明したものですが、蚊に刺されたときも同様です。神経伝達物質であるヒスタミンを抑えることでかゆみや腫れを発生させないようにすることを狙ったのが、「抗ヒスタミン成分」の入った外用薬です。多くは涼感をもたらすl-メントールも配合され総合的にかゆみを抑えるように調整されています。
■ムヒS
抗ヒスタミン剤として伝統的な「ジフェンヒドラミン塩酸塩」を処方し、またl-メントールとカンフルも配合したシンプルなかゆみ止め薬です。副作用が少ないです。
■新ウナコーワクール
同じく「ジフェンヒドラミン塩酸塩」が配合されていますが、こちらには「リドカイン」も。これは麻酔薬として非常に一般的なものであり、すばやくかゆみを感じさせなくする効果があります。この2つの力でW作用をうたっています。
3−3.ステロイド外用薬
ステロイドは副腎皮質ホルモンともいい、かゆみや腫れを抑える効果が高いものです。反面、ステロイド依存症を心配する方もおり、このような方は使用を控えられた方がいいでしょう。
近年はステロイドを配合したおくすりが多くなってきました。ステロイド配合とは大きく書いていないことが多いので、気にされる方はよくパッケージをご覧ください。
ちなみに市販品に使用されるステロイドは、医療用に使用されるものよりも中程度〜弱いものばかりで、商品説明書どおりに使用するぶんには危険性は少ないと考えられています。(医療用ステロイド剤には5段階あり、最も強力、かなり強力、強力の3つが中程度の上にある。病院処方は上位2つのみ)
ステロイド剤の強さ | 代表的薬品名 |
強い(Strong) | フルオシノロンアセトニド ベタメタゾン吉草酸エステル 等 |
中程度(Medium) | デキサメタゾン酢酸エステル プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル 等 |
弱い(Weak) | プレドニゾロン |
■ムヒアルファS2
抗ヒスタミン剤として伝統的な「ジフェンヒドラミン塩酸塩」を通常のムヒSよりも2倍処方したおくすり。さらにステロイド成分「デキサメタゾン酢酸エステル」がぶりかえしやすいかゆみを早めに抑えます。
■マキロンsかゆみどめ液
擦り傷などに有名な「マキロン」から出ているかゆみ止め薬です。こちらにも「デキサメタゾン酢酸エステル」が配合されていると同時に、殺菌剤イソプロピルメチルフェノールも追加されています。
■メンターム ペンソールSP
抗ヒスタミン剤「ジフェンヒドラミン塩酸塩」と、中程度のステロイド剤「デキサメタゾン酢酸エステル」を配合したうえに、肌の修復促進「パンテノール」を配合。かきむしってしまった患部を元通りに治す効果を狙っています。
■液体ムヒアルファEX
蚊以外にもヒトを刺す毒虫はダニ、ノミ、ケムシ等多数あります。その多くが蚊よりもかゆみが強く、跡も残りがちです。ムヒアルファEXはこのような強いかゆみにも聞くように、ステロイド剤「プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル」が配合されています。
■ベトネベートN軟膏
蚊に刺された跡が残り、ぶり返すかゆみをかきむしっていると化膿やとびひ状になることがあります。こうなると通常のかゆみ止めではあまり効果が得られないので、より強力な薬が必要になります。ベトネベートN軟膏には、市販品では最高レベルのステロイド剤「フルオシノロンアセトニド」と、抗生物質「フラジオマイシン硫酸塩」が処方されています。
4.引き起こされる可能性のある重篤な疾患
蚊に刺されたことを決して軽く考えないでください。蚊の怖いところは重篤な病気をもたらす可能性があることです。ここでは代表的な疾患をご紹介します。蚊に刺された後に以下のような症状が出始めたら大至急医療機関を受診なさってください。
4−1.デング熱
昨年、東京都内でも媒介蚊が発見され公園等が立ち入り禁止になりました。今後も増え広がっていくおそれがあります。
・潜伏期間2〜15日
・突然の発熱、筋肉痛、全身倦怠感等をもたらす
・3〜4日後から全身に発疹
・根本治療法はなく、水分補給や解熱剤等の対処療法
・より症状の重い重度デング熱になるケースも
4−2.日本脳炎
小児期での予防接種で有名な疾患ですが、発生を防がなければならない理由があります。
・夜に活動するコガタアカイエカが媒介
・脳や脊髄まわりに炎症を引き起こす
・高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんをもたらす
・発症者の25〜40%が死亡
・小児では重い後遺症を残す可能性が高い
4−3.ジカ熱
日本では国内感染例はありませんが、外国旅行の際に注意が必要です。
・南米、中米、メキシコ、カリブ海、東南アジア、太平洋諸島に拡散中
・症状は発熱、関節や筋肉の痛み、または筋肉の痛み 、 発疹
・ギラン・バレー症候群を引き起こす。衰弱や麻痺の原因となる神経系障害であり、時間とともに回復する
・妊婦が感染すると、胎児への小頭症を引き起こす可能性がある
・予防ワクチンがないため、妊婦は感染地域への移動を避けることが賢明
4−4.その他
国内ではまだ発見されていませんが、海外からの帰国者が罹患している可能性があります。渡航の際は現地の感染症状況を把握し、必要な予防ワクチンを摂取するようにしてください。
・西ナイル熱(虚脱感・疲労感が続く。少数に高熱や脳の炎症を引き起こす。致死率は低い)
・チクングニアウイルス(米国で拡散中。関節痛が数週間続く。根本治療法はまだない)
・黄熱病(感染地域では旅行者は予防ワクチン必須。肝臓や腎臓の不全を発生させ致死率が高い)
・マラリア(世界中で毎年60万人が死亡。熱帯の島などで感染が広がる)
5.蚊に刺されないための予防策とは
お伝えした通り、蚊の一刺しも重大な病気の原因となりえます。刺された後の策よりもまずは予防することが重要です。
5−1.産卵場所を作らない
蚊は10日〜2週間程度で卵から成虫になります。ほんのわずかの水たまりでも育つことができるので、まずは蚊が産卵する水辺の環境を整備しましょう。主な方法は以下の通りです。
・水場に殺虫剤を撒く(子供が遊んだり、周辺の生態系を乱さないよう注意してください)
・側溝や排水溝、雨どいを掃除し、水が滞らないようにする
・花瓶の水をこまめに換える
・古タイヤに水がたまらないようにする。置き方に工夫するか軒下等を利用する
・バケツや樽は伏せておく(底部に水がたまらないように形状をチェックしてください)
・池や睡蓮鉢では金魚やメダカを飼う
・雨水槽などはフタをする
5−2.接触機会を減らす
蚊の寿命は2〜3ヶ月で、摂氏10度以下になるとほとんど死んでしまいます。国内のほとんどの場所では、春先に発生し冬の訪れまで活動していることになります。沖縄など暖かい場所では一年中活動しているところもあります。
ふ化を防ぐ方法は前述の通り。発生した蚊は避けることです。
・防虫スプレーを使用する
・部屋の窓や庭に忌避剤を設置する
・室内では蚊取線香や駆除剤を使用する
・蚊帳(かや)を使用する
・薄くて明るい色の服のほうが刺されにくい
・飲酒後は刺されやすい。田畑やグラウンド等に出る前日の飲酒は控える
・高層階に住む(5階以上になると減るといわれていますが、より高い階に住んだ方が可能性は低くなります。しかし、エレベーターなどで入り込む可能性もあるのでまったく刺されなくなるわけではありません)
6.まとめ
蚊に刺されたときの対処法をお伝えしました。一カ所程度ならガマンをしていればしばらくすると治まりますが、お伝えした方法ですぐ治まる可能性があります。
しかし重大な疾患をもたらす可能性があるので軽視は禁物です。なるべく蚊に刺されないように環境を整備したり対策を万全になさってください。
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