「タイムを速くしたい!」
「疲れずに長い距離を泳ぎきりたい!」
「ケガせずに長く水泳を続けたい!」
そのためには水中での姿勢が大事です。水泳では、理想的なストリームラインを水中で維持することが必要であり、それを身につけるためには、プールでたくさん泳ぐことだけではなく、陸上での練習も不可欠です。
その第一歩はストレッチとコンディショニングをおこなうです。
ストレッチは筋肉を活性化し、柔軟性と可動性の向上を進めることができます。
コンディショニングは、水泳で必要なカラダの動きをひとつずつ分解しながら動きを引き出すことができるので、両方のアプローチをおこなうことが大切です。
しかし、プールでの練習前後やオフタイムにこれらをおこなうことは少ないのではないでしょうか。正しい姿勢で泳ぐためには、カラダもその準備ができていないとなりません。
ストレッチやコンディショニングを実施することで、ケガの予防にもなります。実際にトップ選手のほとんどや、マスターズ水泳で好記録を残している方は、陸上でのトレーニングも時間をとっておこなっています。
そこで今回は、泳ぎの専門トレーナーである橋本剛史トレーナーに水泳の前後に取り入れるべきストレッチ&コンディショニング方法をお聞きしました。毎日おこなうことで効果が高まるエクササイズなので、ぜひ本日より取り組み、速く泳げるカラダへと変化させましょう。
この記事は、橋本剛史先生の監修とモデル協力を頂きました。 JCCAマスタートレーナーA級講師/PHIピラティス認定インストラクター/NESTA認定パーソナルフィットネストレーナー 「姿勢」と「動き」の改善専門パーソナルトレーニングスタジオ コア・リファイン 代表 スイミングインストラクターとしてフィットネスクラブで勤務するも、健康のための水泳で腰痛や肩の痛みが起こることに疑問を感じ、コンディショニングに特化していく。 独学で資格を取得し、パーソナルトレーナーとして活動を開始。 以後、コアリファインを立ち上げし、一般の方からマスターズスイマー、プロ格闘家、プロダンサーまで指導する。 |
目次
1.プール外で水泳のためのストレッチ&コンディショニングをおこなう効果
多くの人は日常生活の癖や水泳の練習により、筋肉が緊張しやすい状態になっています。つまり、プールに入る前から筋肉が緊張している可能性が高いのです。
ストレッチをおこなうことで得られる効果として以下の三点があります。
・水の抵抗をなるべく受けない姿勢を作ることができる
・カラダの動きがスムーズになり泳ぎにキレがでる
・練習量が増えてもケガしないカラダ作りができる
これらを実現するためには定期的にストレッチをおこなうことが大切です。以下に詳細を解説していきます。
1−1.姿勢が良くなりストリームラインが取りやすくなる
ストリームラインとは泳ぐために水の抵抗を減らした姿勢のことです。具体的には、上のイラストのように頭から足まで一直線に姿勢を作ることがポイントです。これで速く、かつカラダに負担をかけずに泳ぐことができます。
しかし、筋肉が緊張して姿勢が崩れていると、このストリームラインを作ることができません。ストレッチをおこなうことで、筋肉の緊張を緩和し、まっすぐな姿勢が作りやすくなります。
姿勢を改善し、ストリームラインを作れるようになるだけでも、タイムは変化します。つまりプールの外でもタイムを縮めるための努力はおこなえるのです。
1−2.動きやすく泳ぎにキレが出る
ストレッチをおこなわずにカラダが緊張したままの状態で練習をすると、泳いでいるときにうまく力が伝わらず、なかなか前に進むことができません。さらに力んだ泳ぎは体力を消耗させやすいので、長い距離を泳ぐことも難しくなり悪循環になります。
そうならないためにも、ストレッチをおこない、動きやすいカラダへ変化させることが大事です。ストレッチをおこない、筋肉の緊張をとることで、カラダの動きは滑らかになり、泳ぎにキレが出てきます。この状態で、長い距離を泳ぐことが、理想的な水中姿勢をとるために効果的なのです。
1−3.ケガ予防になり、精神的な負荷も減らして練習が行える
水中では聴覚や視覚からの情報が陸上と比べ、極端に制限されます。それにより他の競技に比べて「感覚」を重視する傾向が強いといえます。
少しでもラクに泳げる体力とフォームを実際の水中で身につけるには、まずは練習量が必要になると考えられています。
そのため練習過多になってしまい、慢性的なカラダの痛みに悩む方も多いです。筋肉の付き方が左右で異なると脊柱が湾曲するなどの障害が発生することもあります。
それを避けるには、日常的なストレッチやコンディショニングです。習慣的におこなうことで、ケガの予防改善につながり、痛みやケガの不安を払拭して練習に取り組むことができるのです。
2.やるだけでタイムが上がる!ストレッチ5選
ここではタイムが縮まらず、悩む方に最適なストレッチ方法をお伝えします。速く泳ぐためには股関節や肩・背骨まわりをストレッチすることで固まってしまった筋肉をほぐすことが重要です。これらのストレッチをおこなうことで、ストリームラインを作りやすくなり、水の抵抗を受けにくくするフォームへ変化するからです。
ここでは今日からできるストレッチ5種目をお伝えします。
2−1.腰方形筋(ようほうけいきん)ストレッチ
開脚した状態で、床に座り片足を内側に組みます。伸ばしている足と反対側の手を頭に、もう片方の手は反対側のふとももに添えます。
息を吐きながら上半身を倒し、その場でゆっくり呼吸をします。息を吸ったときに背中の方にも空気が入っているのを感じ、10〜20秒を目安に伸ばしましょう。ポイントは太ももの付け根をしっかり押さえることで、後方に倒れないように注意しましょう。
2−2.ツイストストレッチ
写真のように両ヒザを同じ方向に曲げ上半身を前に倒します。腕や肩に力が入らないように注意しながらゆったりと呼吸をおこないます。ポイントは、手と膝を着く位置をなるべく離すことで、腰が反らないように注意しましょう。10〜20秒を目安にストレッチをかけ、左右おこないましょう。
後ろに伸びている感覚がわかりにくい方は、上側にくる足を壁に当てて意識をしてみましょう。
2−3.腹腔内(ふくくうない)ストレッチ
両足を伸ばした状態で座ります。かかとに手をかけ(難しければ足首でも大丈夫です)、上半身を前に倒します。倒した状態で、息をゆっくり吸い、リラックスしながら息を吐きましょう。
自然な呼吸で腰あたりまで、空気が入るのを感じましょう。ポイントはお腹に大きく息を吸い込むイメージで5秒以上は吸い続けることです。お尻の周りにストレッチを感じましょう。
呼吸をすることで、背中から腰にかけてもストレッチをかけることが目的なので、背中は丸めながら前に倒し、上半身は起こさないようにします。
2−4.オーバーヘッドストレッチ
肩甲骨の下がストレッチポールハーフカットに当たるようにして、仰向けになります。両手に棒(なければタオルでも可)をもち上にあげ、肩に力が入らないように注意して頭上にゆっくり下ろしていきます。
ポイントは、お腹を締めて、胸を開くように意識すること、腰が反ったり、肋骨がせり出さないように注意することです。5〜10回繰り返しおこないましょう。
ストレッチポール®は㈱LPNの登録商標(第4666450号)です。正規品は公式LPNショップにて、またAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでも正規品をお買い求め頂けます。
2−5.ウィンギング
3つの動きを組み合わせて肩甲骨の動きを高めるストレッチです。両手を手のひらが正面に向くようにして持ち上げます。手のひらが外側に向け、ヒジを曲げながら下ろしていきます。このとき肩甲骨が内側に寄ってくるのを感じましょう。
次に両手を内側に絞るようにして、手のひらが外側に向くように回し、両手の甲、ヒジが顔の前で合うように引き寄せます。開いて元の姿勢に戻ります。
この動作をゆっくり繰り返しおこないましょう。下記に各エクササイズの注意点をお伝えします。
ポイントは肩甲骨の動きを意識して、肩が上がらないように注意することです。
3.泳ぎにキレを出す!コンディショニング5選
ストレッチとコンディショニングを合わせて行うことで、動きやすいカラダ作りができます。コンディショニングは、動きの中でカラダの正しい使い方を習得していきます。ここでは今日からできる5種目をお伝えします。
3−1.プランク
うつ伏せの状態で、肩の下にヒジが来るように床につきます。頭からおしりまでが一直線になるようにして姿勢をとります。このときに肩や腕に力が入らないようにお腹を引き締めた状態で姿勢保持をします。
お腹とお尻の筋肉を意識することでまっすぐな姿勢を維持することができます。お尻が浮いてしまったり、背中が反らないように注意しましょう。初めは30秒3セットを目安に行いましょう。
正しい姿勢で、効果的にプランクをおこないたい方は、姿勢を意識しましょう。まずは、ヒザを床についた状態でお尻を持ち上げ、肩からお尻までが一直線になるように姿勢を作ります。その姿勢が安定してきたら、ヒザを床から持ち上げ、上半身の姿勢を崩さないようにしてヒザを伸ばしましょう。
3−2.キャット&ドッグ
よつばいになり、息を吐きながらお腹をのぞきこみます。この時に左の写真のように背中がよく丸まるように意識してください。床を押し、肋骨が閉まるイメージでおこないます。
その後、息を吸いながら背筋を伸ばし、元の姿勢に戻ります。肩甲骨を寄せたり、首がすくまないように注意しましょう。この動作を5〜10回繰り返してください。
3−3.ニーアップキャット&ドッグ
よつばいの状態から床面スレスレになりようにヒザを浮かせ、姿勢を作ります。その状態から息を吐きながらお腹をのぞきこみます。この時に左の写真のように背中がよく丸まるように意識してください。
その後、息を吸いながら背筋を伸ばし、元の姿勢に戻ります。この動作を5〜10回繰り返してください。
ヒザを浮かせた状態でおこなうことで、体幹部分へのアプローチをおこないます。
3−4.ソラシックローテーション
よつばいの状態から、片手を床面から離します。肩や腕に力が入らないように注意しながら、手を伸ばした状態で上半身をひねりながら持ち上げましょう。
床に着いた方の手で床を押し、持ち上げた状態で5秒を目安にキープして元の姿勢に戻りましょう。左右交互に5〜10回を目安におこないます。
背中が丸まったり、お尻が外側に逃げないように上半身だけをねじるようなイメージで引き上げましょう。
3−5.前屈・後屈のポーズ
よつばいの状態からお尻を持ち上げ、カラダを「くの字」にします。このときおしりをしめるイメージで力を入れます。両手の間を頭から順番に通し、上半身を起こしていきます。腰が反ったり、肩が前に入りすぎないように注意することがポイントです。ゆっくりな動きで5〜10回を目安におこないましょう。
4.【参考】ピラティスチェアを使ったエクササイズ3選
ここまでご紹介したエクササイズをより短期間で、効果的におこなうために、橋本さんはジムでのパーソナルトレーニング時にピラティスチェアを活用しています。実際にセッションで実施しているエクササイズをご紹介いただきました。
大泉学園駅から徒歩2分。新築ビルの4Fにリニューアルオープンしたのがコア・リファインです。広めのサロンは明るい日差しが入り込むゆったりした空間。ストレッチポールやピラティス、加圧トレーニングなどお客様の“なりたい自分”になるための、オーダーメイドセッションを受けることができます。水泳のタイムを少しでもはやく上達したい方、理想的なフォームを身につけたい方はぜひ一度セッションを受けてみてはいかがでしょうか?
4−1.前屈(チェア)
両足を伸ばした状態でたち、背中が丸まらないように股関節を使い上半身を前に倒します。このとき背中が床と平行にして、ペダルに両手をかけます。息を吐きながら、背中を丸め、ペダルを下ろしていきます。肋骨をしめて、カラダが後ろに逃げないように注意します。
下ろした状態のまま自然な呼吸で15〜20秒を目安に伸ばしましょう。
4−2.回旋屈曲(チェア)
ピラティスチェアに片足をヒザを曲げた状態で乗せます。このとき背中を伸ばした状態で、ペダルに両手を乗せます。伸ばしている方の足が持ち上がらないように注意をしながら、背中を丸めてペダルを押し込んでいきます。
肩や足に力が入らないように気をつけ、ゆっくり呼吸をしながらおこないましょう。このとき、背骨が前後に広がるイメージでおこないます。10〜20秒を目安におこない、左右実施します。
4−3.ウォッシャーウーマン
両足を肩幅より広く開き、背中が床と平行になるように上半身を倒し、ペダルに両手をのせます。骨盤の位置がブレないように注意しながら、胸を開き、閉じの動作を繰り返しおこないます。
重心が前後に移動しないように意識して10回を目安におこないましょう。
5.専門家に聞いてみた!水泳に関する疑問Q&A(ストレッチ&コンディショニング編)
水泳のためのストレッチとコンディショニングについてその方法をご紹介しました。しかし、実施するうえでいくつかの疑問が生まれるかもしれません。
ここでは、橋本トレーナーが実際にお客様から聞かれる質問と答えをご紹介いただきます。
Q.水泳の種目ごとにストレッチやコンディショニングは異なりますか?
ほとんどの方は満遍なくストレッチをおこなう方が効果的です。
実際には、メインとなる動きは泳法ごとに異なります。例えば、クロールや背泳ぎは少しでも遠くに手を入水させ、水をかくためにカラダを回旋させる動きが入ります。その一方で、バタフライや平泳ぎは平面での動きがメインでそのなかで胸を伸ばしたり丸めたりします。
そのため厳密にこだわれば、種目によって回旋系のストレッチと胸椎伸展、屈曲のエクササイズのどちらかをメインにするかはあるかもしれません。
しかし、カラダを思い通り動かすためには、特定の動きだけ得意になってもいけません。どのような動きも満遍なくおこなうことがベストです。そのためには今回ご紹介したすべてのエクササイズをおこない、その上で固かったり動きが悪い部分を重点的におこなうことをオススメします。
Q.カラダの柔軟性が低いのですが、カラダが硬くてもタイムは速くなりますか?
カラダの柔軟性は一部の種目を除き(バタフライ)、それほど大きく関わってくるものではありません。
実際にクロールや背泳ぎは腕を回すため、肩の可動域がないと厳しいように感じますが、胴体部分の回旋なども動きに入ることでカラダ全体を動かしてストロークするので、柔軟性がなくてもタイムは速くなると考えます。
Q.ストレッチやコンディショニングは毎日やる必要がありますか?
筋肉に大きな負担がかかる種目はないので、毎日おこなうほうが良いでしょう。
特に泳ぐ前に動きを引き出す意味も含めてストレッチやコンディショニングをおこなうことで、泳ぎにも変化が現れるので積極的に取り入れた方が効果的です。
Q.競技力を向上するために練習で大事にすべきことは何ですか?
ただ練習をするのではなくて目標を持つことで継続して質の高い練習をおこなうことができます。
タイムはもちろんですが、
・50m泳いだ後の心拍数の変化
・25mのストローク数の変化
・練習後の疲労感
・サークルタイム練習のタイム・疲労感
などの違いに気づくことが大切です。その上でご自身で達成したい目標を設定していただき、一週間前、一ヶ月前と比較してどのような変化があるかを感じることが、常に集中して練習をおこなうためには大切です。
6.まとめ
ここまで、水泳のタイムを速くするためのストレッチの方法についてお伝えしました。
どのエクササイズも今日からできるものばかりなので、練習日以外でも取り入れ自己ベストを更新しましょう。
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