競技や種目を問わず、スポーツシーンにおいて「足首の捻挫」は最も起こりがちな傷害の一つです。
捻挫は軽度であればすぐに復帰できますが、靭帯の重大な損傷を引き起こしていると、復帰まで半年以上かかることも珍しくありません。このようなケガですと競技生命を大きく左右するものになります。
この捻挫を予防するには、テーピングの活用がおすすめです。しかしただ巻けばいいというものではありません。巻いていたのに捻挫したり、巻いたせいで動きが悪くなることがあるからです。
では、効果的な足首捻挫のテーピングってどうやるの? とお考えの方に、日本トップレベルのアスレティックトレーナーの先生に実演で、方法をご紹介頂きました。トレーナーを目指す方はもちろん、スポーツ関係者の方であればぜひ方法をおぼえていただきたいものですので、参考になさってください。
・この記事は岩﨑由純 日本コアコンディショニング協会会長の実演と監修をいただきました。
いわさき よしずみ NECレッドロケッツ コンディショニング・アドバイザー
/全米アスレティック・トレーナーズ協会 BOC-ATC /日本体育協会公認アスレティック・トレーナー /JOC(日本オリンピック委員会)強化スタッフ /JATO(日本アスレティック・トレーナーズ機構)副会長
目次
1.テーピングの準備と心得
早く巻きたいところですが、効果をあげるためにぜひ確認していただきたいポイントがあります。
1−1.テーピング前の準備
・足首周辺が清潔かつ乾燥していることを確認します。
・使用するテープは 38mm幅をおすすめします。伸縮性のないホワイトテープというタイプです。
・肌のカブレ予防のためにアンダーラップテープを使用することをおすすめします。極めて薄いスポンジ状のテープで、肌にはくっつかず、テープにのみくっつくという特性があります。
・巻いている最中、足先はスネに対して直角をキープしてもらうようにします。
1−2.テーピング中のポイント
・巻いているときは、テープにしわや隙間ができないように注意します。効果が弱まるばかりか、アンダーラップを使用していない場合は水ぶくれ等の原因になりやすいです。
・「ロックピース」や「再アンカー」でテーピングを終了します。これにより、その下のテープが剥がれにくくなります。
2.テーピング時の禁忌
・医師、柔道整復師等医療従事者が評価していないケガにはテープを貼らないでください。例えば、捻挫だと思ってテーピングを貼ったあとに骨折が判明するケースもあります。一般人ではなく専門家による適切な固定が必要です。
・次のいずれかが発生した場合は、すぐにテープを取り外します。
– テープ周辺や当たっている部分にかゆみや炎症の兆候が生じたとき
– テーピングによって痛みが増幅していると感じた場合
– 足部やつま先に、鋭い痛みやしびれが生じた場合
– 足部やつま先に、血の停滞が生じた場合(紫色に変色)
3.捻挫予防のテーピング例【アンダーラップ編】
ホワイトテープを貼る前に、アンダーラップで実施部を覆います。
↑かかとを中心に2回巻きます。
↑ヒールロックを行い、つま先側に巻いていきます。
↑再度かかと方面を経由して、スネの下まで巻き上げていきます。
↑写真の位置まで巻いたら、アンダーラップは終わりです。
4.捻挫予防のテーピングの例【ホワイトテープ編】
いよいよホワイトテープを巻いていきます。
↑アンカーテープを3本巻きます。テープが1/3くらい重なるように、上からかけていきます。
↑スターアップです。まず内側のくるぶし中心部の真上、アンカーの一番上から内側を通って縦に長く1本貼ります。
↑2本目。内側は1本目よりやや後ろ側からスタートし、かかと下で重なり、外側は前側に抜けます。
↑3本目。内側は1本目よりやや前側からスタートし、かかと下で重なり、外側は後ろ側に抜けます。もう1本追加し4本で扇型になります。
体重や種目に応じて増減してください。
↑上端のはがれを防ぐために横に一周ぐるりと巻きます。
↑ヒールロックに入ります。
↑斜め上からカカトを引っ掛けるように、
↑ロックしていきます。
↑ここでテープを切らずに今回は足首を一周グルリと巻いた後に、
↑もう1回ヒールロックしていきます。
↑内側からと外側からの2面ロックで保持力の向上となります。
↑岩﨑さんは、さらに小さなヒールロックを内外にかけます。
↑距骨下関節を意識して巻きます。これでヒールロックは完成です。
↑スネ側から一周ずつ下に巻いていきます。一周ごとにカットし、全体を覆っていきます。
↑前部まで止めたら
↑前の閉じていない部分をグルリと一周して止めます。
↑最終段階です。フィギュアエイト(8の字)というスタンダードなテーピングを施し、
↑そのままテープを切らずに、ヒールロックをかけて
↑上に戻ってきて
完成です!
まとめると以下のようになります。
1.アンダーラップをヒールロックを入れた形で巻いていく
2.スネに近い位置からアンカーテープを巻く
3.タテのスターアップを4本巻く
4.スターアップ上部に横に一周巻く
5.ヒールロックを内外2回掛ける
6.さらに小さなヒールロックを内外2回掛ける
7.全体を覆う
8.最前部を止める
9.フィギュアエイト〜ヒールロックで完成!
動画を用意してありますので、併せてご覧ください。別アングルからのサブ画面付きで、後半はスローモーションとなっています。
基本的な巻き方の方法については、以下のサイトも参考になります。
5.岩﨑流テーピングのポイント
いかがでしたか? 岩﨑さん流は一般的なテーピングよりもいっぱい巻いている感じがします。「こんなに巻かなくてはならないの?」と思われた方もいらっしゃると思います。
これについて岩﨑さんは、
「どう巻くか、よりも、どう巻いたら最も効果が上げられるかが大事です。これは女子バレーボールのあるセッターの選手に巻いていた方法で、実際にはポジションやカラダの使い方、筋肉の付き方などで変えていくものです。“こうすれば万能”という巻き方はないので、もしトレーナーを目指されるなら、ぜひその選手の方それぞれのことを考えて巻いていただければと思います」と語っていました。
今回、クライアント役をやっていた方に聞いたところでは、
「ガチガチに固めているように見えるが、決してそのようなことはなく普通に動けます。足首のホールド感が高いので足の安定性を感じ、動きのパフォーマンスもアップする気がしました。これだと捻挫も起こる気がしないので、安心してプレーできます」とのことでした。
6.テーピング後チェック
・締め付けすぎていないか確認します。つま先やスネ部分など周辺をチェックしてテンションが強すぎないか、血流が滞って指先が変色していないかを見ます。
・効果的にテーピングされているか確認してください。内反や外反の捻挫が予防できそうか、足部のルーズな揺れが治まり、安定して足を動かすことができるかが重要です。
反面、歩いたり走ったりの動作が難しくなっているようでは固定しすぎです。
7.テープをはがす際は
・アンダーラップテープを使用していない場合は、テープを皮膚から素早くはがさないでください。内出血や、擦過傷などを引き起こします。
・テープを水に浸したり、テープリムーバーを使用すると安全にはがせます。
・先が丸いはさみまたはテープカッターを使用して切るのも一つの方法です。
8.まとめ
足首の捻挫予防のテーピング方法をお伝えしました。岩﨑さんは・素早く ・綺麗 に巻きますが、もっとも重要なポイントは、・効果的である ということです。動画を参考にぜひ何度も練習してマスターなさってください。
コンテンツの全部または一部の無断転載を禁止します。(C)Imaginear co.,ltd. co.,ltd. All rights reserved.