頭を打った!脳震盪(しんとう)かも?今やる対応策と予防法の全知識

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Nice professional doctor pointing at the X ray photo

「頭を打って倒れた! ちょっとフラっとしたようだけども、どうやら平気らしい。これが“脳震盪(のうしんとう)”? でもどうすれば?」

選手が目の前で倒れたら心配かと思います。このように頭を打つことはスポーツシーンのみならず、日常でも簡単に起こりえます。

脳震盪なのかどうか、そして放っておいてもいいものかどうなのか、わかりかねる方は多いかと思います。

実は脳震盪は、決して軽い一時的なケガではありません。調子が悪いまま同様のプレーや作業を続けていると再度引き起こされ、重篤な状態になる可能性があるものです。

そこでこの記事では、米国公認アスレティックトレーナーで経験も豊富な指導者の先生に脳震盪について解説いただきました。米国の研究論文とご自身の経験に基づいた情報ですので、お調べになりたい方はぜひ参考になさってください。

この記事は山口淳士が執筆しました。
EXOS Performance Specialist/米国公認アスレティックトレーナー(NATA-ATC)/NASM-PES, CES
中京大学体育学部体育科学科卒業後、Bloomsburg University大学院でアスレティックトレーニングを学び、米国公認アスレティックトレーナーの資格を取得。2016年4月に6年間のアメリカ生活を終えて日本に帰国。現在はEXOS Performance Specialistとして、某大手企業内フィットネスセンターで運動指導などを行っている。また、アスレティックトレーニング系ブログ「CHAINON」と、熱中症ブログ「熱中症.com」を運営している。


目次

1.脳震盪チェック方法とは

まず、脳震盪かどうか疑わしい場合に参考になる判断基準をお伝えします。

1−1.すぐ救急車を呼ぶべきかどうかの判断基準

blessure sportive

脳震盪の可能性があれば、むやみに動かさないことも重要です

脳に衝撃を受けた受けないに関わらず、人体に衝撃を受け、以下のような症状が出ている場合は大至急救急車を呼んでください。

・片側の瞳孔が逆側の瞳孔よりも大きい

・意識がない

・意識が最初はあったけれど、だんだん意識がなくなっていっている

・起き上がることができない

・首の痛みを訴えている

・手足が動かない、マヒがある

・異常な興奮状態、不可解な行動、混乱状態である

呼びかけに反応がない場合は心疾患も疑い、AEDを使用する 

  • 心筋梗塞など心臓の疾患で倒れている可能性もあります。意識の喪失があればとりあえずAEDを用意し、ガイダンスに従ってチェックすることもおすすめします。AEDは自動的に電気ショックが必要な状況かどうか判断し、必要がなければ作動しません

1−2.受傷後、しばらくしてから現れる脳震盪の症状とは

脳震盪は「進行性のケガ」と言われています。この意味は、脳が急激に揺られるような出来事が起こったすぐ後に脳震盪のサインや症状が現れるとは限らず、徐々に現れてくることもあるということです。

頭を強く打ったり、脳が揺れたような出来事があったら、その日もしくは次の日はその人の体調を注意深く観察してください

その選手が家に帰ったあと、もしくはご飯を食べている時や寝ている時に現れるかもしれません。以下のようなサインや症状が現れたら、すぐに救急車を呼びましょう。

・ 意識レベルの低下や喪失(たとえ1秒でも)

・ ずっと眠気がある

・ 頭痛がまったく消えないか、どんどんひどくなっている

・嘔吐を繰り返しているか、吐き気が消えない

・混乱や興奮状態がひどくなっている/はっきりと喋ることができない(不明瞭な話し方)

・発作やけいれんが続いている

・手足の筋力が低下している/手足がチクチクピリピリする

・ただただなんか変な感じがずっと続いている

頭に衝撃を受けてから数時間後、もしくは翌日に、このようなサインや症状が現れることもあります。よって、その選手に「こんなことが起きたらすぐに病院行かないとダメだよ」とか、その子の両親に「これらのサインが現れたら救急車を呼んでください」としっかり伝えておくことが大切です。

1−3.数日後に現れる可能性のある脳震盪の症状

Teen woman with headache holding her hand to head

最も多いのが頭痛です

前段のようなサインが見られなければ、とりあえず救急車は必要ないかもしれません。ですが、その人が頭に衝撃を受けたのちに、以下のような症状を訴えたら、その人は脳震盪の可能性があります。その場合によく現れるサインや症状を紹介します。(参考資料:SCAT3, Post Concussion Symptom Scale, Graded Symptom Scale Checklist)

以下のような症状をおぼえたら早めに医療機関を受診してください。

・頭痛/吐き気/嘔吐 /めまい

・意識もうろう

・疲労感

・視界がぼやける(霧の中にいるような感覚)

・複視(モノが二重に見えている)/耳鳴り

・質問への答えや、反応が遅い

・起き上がるのがゆっくり/フラフラしている/動きがぎこちない

・常に悲しい気分でいる/突然泣き出す/常にイライラしている/理由もなく怒っている

・集中力減退 /少し前のことを覚えていない /自分に今起きたことがわかっていない/混乱している

・睡眠障害(眠れない or 眠りすぎている)

・光や騒音に敏感になる

・ただただなにか調子が悪い

特に多い症状の一つが「頭痛」で、脳震盪になった人の90%以上は頭痛が現れるという統計があります。次に多いのが「めまい」や「フラフラする」で、約75%が訴える症状。3位は「集中できない」で、だいたい60%くらいです。

1−4.脳震盪による意識喪失や記憶障害は少ない

脳震盪になると「記憶がなくなる」というイメージがあるかもしれませんが、「記憶の問題」が起きるのは25%程度。「意識がなくなる」ケースは10%以下です。

ボクシングも含めたスポーツ現場でも、脳震盪になった人で意識を失ったのは “5%以下” と言われており、実際に脳震盪と診断された人の95%は意識を失っていません

つまり、意識の有無は脳震盪の診断をする上で一切関係がありません。あくまで、数多くある脳しんとうの症状の一つに過ぎないのです。

よって、「頭を打ったけど、意識は失っていないし記憶もはっきりしてるからこれは脳震盪ではないな」と自己判断するのは誤りです。上に挙げた症状が一つでも当てはまる場合は脳しんとうの可能性があります。しっかりチェックしてもらうために、医療機関を受診しましょう。

1−5.脳震盪の自己判断はしない

ここで覚えておいていただきたいポイントは「脳震盪の程度を自分で決めない」ということです。

「ちょっと頭痛いけどそこまでひどくないからすぐ治るだろう」とか、「ちょっとクラクラするけど、これくらいは誰でもなるだろうし、こんなことで練習休んでいたら根性ないなって思われる」などとは決して考えてはいけません。

脳震盪は進行していくケガです。最初は症状が軽く感じても、だんだんひどくなっていくことは多いにありえますし、数時間後や翌日に症状が現れてくることもあります。医師でさえ判断が難しい脳しんとうを、自分で判断するのはくれぐれもやめましょう。


2.応急処置の方法

脳震盪の可能性がある場合に行うべき方法は限られていますが、必ず行うべきものです。

2−1.脳震盪かな?と思ったときに、現場でとるべきステップ

脳震盪を軽く考えていると、後述する後遺症に悩まされる可能性が高くなります。スポーツ中に脳震盪かな?と考えられるプレーがあったときや、上にあげた症状が選手から見られた場合、監督・コーチやまわりにいる人は以下のステップを行い、それ以上症状を悪化させないように努めましょう。

① 練習・試合中であれば、まずはやめさせる

Coach and Player

思い切った決断が必要なこともあります

この①が一番大事です。現段階では国際的に「脳震盪になった当日は、いくら症状がすぐに消えてもその日に運動を開始するべきではない」とされています。脳震盪に軽い・重いという区別はありません。

② 医師や脳震盪について知識のあるトレーナーがいれば、評価を受ける。いない場合は病院へ

「こんな症状が現れたら救急車を呼びましょう」として上で挙げたサインが現れていなければ、救急車を呼ぶ必要はないと思います。まずはゆっくり休んで、落ち着いてから病院へ行きましょう。できれば親やトレーナー、友人など誰かと一緒に行くのがベターです。決して自分で、もしくは知識のない人が脳震盪の程度を判断せず、病院へ行きましょう。

③ (未成年であれば)両親やそれと同等の人に連絡をし、一緒に病院へ行ってもらう。

脳に衝撃を再度加えないようにして、安静にして連れて行ってください。

④ その日は運動をさせないこと。医師によって許可されない限り、運動を再開しない。

病院へ行ったら、やってもいいことと悪いことを医師の方が説明してくれると思いますが、参考までに、やっていいこと・やったほうがいいことを以下に挙げます。

・安静に過ごさせる/身体的・精神的にしっかり休む

・栄養バランスの良い食生活 をとり、睡眠をしっかりとる

・こまめな水分補給を行う

・医師の許可が出るまでは運動しない

・頭や首を氷で冷やす(もしこれで症状がラクになるなら)

以下のようなものは、脳震盪を悪化させる可能性があるので行わないようにしましょう。

・アルコールの摂取

・辛い食べ物

・車の運転(脳震盪中の運転は危ない)

・医師に処方された薬以外の薬の服用(どうしても飲みたい薬がある場合は医師に相談する)

・身体活動(ジョギング・体育の授業・部活動の参加)

・テレビ、スマホ、パソコン、ゲームの長時間視聴や操作


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3.脳震盪は何科を受診?

脳震盪かもな?と思ったら、脳神経外科を受診しましょう。

もしその病院に脳神経外科がない場合、どのようにして頭を強く打ったか、もしくは脳が揺れるような出来事が起きたかにもよりますが、整形外科を受診なさってください。頭を打ったのであれば頭の外傷をチェックしてもらえますし、脳震盪の疑いがあれば、近くの脳外科病院を紹介してもらえるはずです。

よくわからない場合は、大きい総合病院に行きましょう。どのように起こったかと、今ある症状を伝えれば、その病院の受付で診療科を教えてくれるはずです。

4.脳震盪が起こりやすいシーンとは

日常にも危険は潜んでいます

やはり脳震盪が一番よく起こるのは「スポーツ中」です。

脳震盪についての研究が多くされるスポーツは「アメフト」「ラグビー」「アイスホッケー」「レスリング」「バスケットボール」「サッカー」など、接触プレーが多いスポーツになります。

この他にも「ボクシング」「柔道」「剣道」「総合格闘技」のような、頭部や顔面に衝撃が加わるものは全て脳震盪を起こす危険性があります。

また、意外かもしれませんが「バレーボール」でも脳震盪は結構起きています。アタックされたボールが頭に当たって脳が急激に揺れることによって起きているようです。

スポーツ中に起こる脳震盪では男子よりも女子の方が起こしやすいと言われています。理由ははっきりとはわかっていないのですが、女子の方が頭の揺れを支える首の筋肉が弱いからとか、女子の方が隠さず素直に脳しんとうの症状を報告する傾向があるため、統計的に女子の方が多いと出ているのではないか、などが考えられています。

スポーツ中以外であれば「交通事故」などで起こるむち打ちのような動きでも脳震盪は起きます。日常生活で起こりうるのは「後ろに転んで頭から地面に落ちる」というもの。階段から滑って落ちたり、スケートをしてて頭から滑って転んだり、逆上がりをしている途中で手が滑って地面に落ちてしまったり… これは「地面に頭を打つ」という直接的な外傷が脳しんとうに繋がることもあれば、地面に頭を打つことで脳が急激に揺れて、その揺れが原因で脳しんとうになることもあります。

5.脳震盪で本当に怖いのは「後遺症」

Man suffering headache at home

何年も経ってから苛まれることがあります

5−1.脳震盪の症状が何ヶ月も続くことがある

もっとも多い後遺症は「脳震盪の症状が消えない」というもの。脳震盪になっているときに、まだしっかり治っていないのに頭や脳に再び衝撃を与えたり、疲労を与えたりしてしまうと、回復がどんどん遅くなり、完治までかなりの時間がかかってしまいます。

私がアスレティックトレーナーとして活動してきた中でも、3ヶ月以上頭痛がなくならないという大学生女子バスケの選手を見たことがあります。

脳震盪になってから約2週間は、ただでさえもろい脳がさらに傷つきやすくなると言われています。その時期に激しい運動をしたり、スマホやコンピュータの使いすぎなどで脳に刺激を与えすぎてしまうと、症状がなかなか消えなくなってしまいます。

5−2.セカンドインパクトシンドロームは死に至る可能性も

脳震盪になった後、まだ脳が治っていない状態で再び脳に衝撃を与えてしまうことを「セカンドインパクトシンドローム」と言います。

この「セカンドインパクト(=二度目の衝撃)」を受けてしまうと、命を落としてしまう危険性がかなり高くなります。また命を落とさなかったとしても、重度の障害(記憶の喪失進行性痴呆などが残ってしまうことがあります。

よってこのセカンドインパクトを防ぐためにも、選手自身が少しでも(脳震盪かな?なんか変だな?)と思ったらすぐに監督やコーチまたは両親などに報告する、ということや、周りで見ている人がちょっとでも(おかしいな?)と感じたらすぐにプレーをやめさせる、ということが大事になります。

5−3.脳震盪を治療する方法はない

現在、脳震盪になった人がまずするべき一番の治療は「休む」ことと言われています。脳の回復を早める方法はないと言われており、しっかり休んで、脳が回復するのを待つほかありません。よって、上で何回も言っていますが、脳が治っていない時に再び脳に衝撃・刺激を与えてしまうと、どんどん回復時間が伸びてしまいます。

頭をよぎるのは近年、NFLで大きな問題として指摘されている「脳振盪問題」だ。

 激しいタックルがつきものの競技で、度重なる衝撃による脳へのダメージは大きく、引退してから深刻な後遺症を訴える選手も少なくない。アルツハイマー病になる率が高いというデータもある。

 頭痛、短気、落ち着きのなさ、感情的になりすぎる、不眠、記憶喪失、目まい、倦怠(けんたい)感など……。CDC(米疾病対策センター)も脳振盪による後遺症の問題について注意喚起している。(出典:日本経済新聞記事 米最大の人気スポーツ、NFLを揺るがす脳振盪問題

6.脳震盪の予防方法

選手のみならず、すべての指導者や保護者、スポーツ関係者はぜひ予防に努めてください。

6−1.まずは関係者すべてが理解を深めること

ある研究では、高校生選手の50%、大学生選手の70%がアメフトの練習中に起きた脳震盪を誰にも報告しなかったといいます。その大きな理由の1つは「脳震盪のサインや症状を知らなかった」というのが原因です。

さらに「脳震盪というのは意識を失うもの」と思っていたから、頭は強く打ったけど意識は失ってないから大丈夫、と思っている選手が多いという「知識のなさ」も、脳しんとうを悪化させてしまう原因となっています。

これは選手だけではありません。選手は多少「変だな?なんか頭痛いかも」と実感しても、練習を休みたくないからと監督やコーチに報告しないことがあります。日本では特にこういう考えをする学生は多いように感じます。

これを防ぐためにも、スポーツに関わる周りの人(監督・コーチ・マネージャー・トレーナー・両親など)も脳震盪のサインや症状について学び、周りから見て(あいつ変だな?)と気づくことができるようになることや、(今のプレーって脳震盪になりそうだな。ちょっと声かけてみるか)といったことが、脳しんとうを予防するためにとても大切です。

「セカンドインパクトシンドローム」についてお話ししましたが、脳震盪になったことに気がつかず、そのまま運動を続け、再度脳に衝撃を与えてしまって、重度の脳震盪になってしまう、ということが一番怖くて、絶対に避けたいことです。

脅すつもりはないですが、脳震盪は怖いものということをまずは大人がしっかり知り、それを子供に伝え、何か変だな?とまずは気づくことができるようになるということが、脳震盪の一番の予防方法だと思います。

特に両親は子供といる時間が一番長いので、例えば子供がスポーツをして帰ってきてから、日常生活で変な様子や行動をしていた時に(これはもしかしたら脳震盪かも?)と頭に浮かんでくるように、知識を持っておいて欲しいです。

6−2.できるだけ多くの選手や子供たちに教育すること

周りからも気づくことができるようにと述べましたが、脳震盪はなかなか外から見てもわかりずらいものです。

よって、選手たちが「なんかあのプレーの後から頭が痛い」とか「気持ち悪い」とか、自分から調子が悪いことを報告してもらうことが、脳震盪をそれ以上悪化させない一番の方法です。

選手たちに、脳震盪がどのように起こるのか、脳震盪の症状などを伝え、少しでも変だな?と思ったらすぐに報告するように教育しましょう。

また、コンタクトスポーツの監督・コーチは、頭に向かってタックルすることや危険なプレーをするのはやめるようにする教育も徹底し、正しいテクニックの指導に練習時間をしっかりさきましょう

フェアプレー精神を徹底し、安全に楽しくスポーツを行うようにしてください。

6−3.ヘルメット等の装備品は必ず装着すること

adorable girl fell off the bicycle

ちょっとした遊びのつもりでも防具は付けるようにしましょう

脳震盪や頭のケガを最小限に防ぐために、その競技で必要とされているヘルメットや防具を必ず身に付けてください。また、小さい子が自転車に乗るときなども同様です。

6−4.スポーツに関わる人はCPRの講習を受けておくこと

CPR First Aid Training Concept

どのような方でも救急救命の知識は必要です

最悪の状況が起きたときにその人の命を救うことができるように、心肺蘇生法(CPR)やAEDの使い方を知っておきましょう。日本赤十字社での救急法の講習は、基礎講習であれば1,700円で受けることができます。たった1,700円で自分の周りの人の命を救うことができます。スポーツを安全に楽しく行うためにもぜひ受けてください。

日本赤十字社 救急法講習について

7.脳震盪に関する知識

ここからは脳震盪について、より詳細に解説します。

7−1.脳震盪とは

脳震盪とは簡単にいうと、脳が急激に揺れたことによって「脳がケガを起こしている状態」です。

肩やヒザをケガするように、脳もケガをするのです。例えばヒザをケガすると、ヒザが痛くなったり、ヒザが自分の思うように動かなくなったりしますよね?

脳震盪も同じで、脳がうまく働かなくなってしまいます。脳がうまく働かなくなると聞くとちょっと怖いかもしれませんが、他のケガと同じように、しっかり対処すれば問題はありません。

ただ、ヒザのケガと脳のケガの一つである脳震盪で大きく違う点は、「脳震盪になったことが、ヒザのケガと比べてわかりづらい」というところにあります。脳震盪は、スポーツ医学の分野の中でも最も複雑で、診断・評価・管理・ケアが難しいケガの一つと言われています。

例えばヒザのケガであれば、レントゲンを撮れば骨が折れているか折れていないかはわかるし、MRIを撮れば靭帯が切れているか切れていないかが明確にわかります。腫れたら目に見えてわかるし、「ここが痛い」と指で指すことこともできます。

ですが、脳をレントゲン・MRI・CTなどで撮影をしても、これが切れているからあなたは脳震盪です、という明確なものは現在ありません。また、このテストをやってできなかったら脳震盪です、という明確な判断基準もないのです。 

7−2.脳震盪が起こるメカニズム

脳震盪は「衝突」「強打」「急激な揺れ」で起こります。

頭を強く打たなくても脳震盪は起きます。頭を打つ・打たないは関係なく、脳震盪は“脳が急激に揺れた”ときに起きるのです。

いわゆる「脳みそ」というのは、頭蓋骨の中で、脳脊髄液という液体の中でフワフワと浮いています。脳は身体にある臓器の中でもっとももろいと言われています。急激な揺れが起こると、その脳みそが頭蓋骨の中で急速に揺れたり、バウンドしたりして、頭蓋骨の内側に脳みそが打ち付けられて、細胞が損傷を起こしてしまいます。これが脳震盪の状態です。

まずここで覚えて欲しいのは「頭を直接打たなくても、揺れるだけで脳震盪は起こりえる」ということです。つまり、脳を揺らすだけの充分な力が身体(顔・首・肩・胸・背中や腰でも)に加わったら、脳震盪になる可能性があるのです。

頭を直接打たなくても、身体に強い衝撃が加わっただけで、脳震盪を起こすことがあります

さて、先ほどMRIやCTを撮っても異常がない場合がある、とお伝えしました。この理由としては、脳震盪というのは「構造的な損傷(=structural injury)」ではなく「機能的な損傷(=functional injury)」であるからと言われています。

少し難しい言葉を使ってしまいましたが、簡単に言うと、脳震盪というのは、脳が出血しているとか、脳の細胞が死んでしまっているという「構造の変化が起こるケガ」ではなく、脳の細胞がうまく機能しなくなってしまうというケガであるということ。脳が揺れることで起こるケガなので、出血等は起こりません。この「うまく機能しない」という状態は、MRIやCTのような画像には映らないのです。

7−3.脳震盪で死ぬこともあるの?

脳震盪で死ぬことはあります。この確率が上がるのがすでにご説明した「脳震盪になった状態で、再度脳震盪になる」ことです。ケガをしていて、それがまだ治っていないのにまた同じケガをしたら、それは脳でなくても悪化しますよね? 脳しんとうが悪化すると、それはかなり重度な症状になる可能性があり、より重篤な障害につながったり、最悪の場合は死に至ることもあります。

7−4.頭を打った際に考えられる疾患名

上で、脳震盪というのは機能的な損傷であり、構造的な損傷ではないと言いました。ですが、頭を強く打った際に構造的な損傷が起こってしまった場合は、脳震盪よりももっと深刻なものになる可能性があります。 (注)構造的な損傷と機能的な損傷の両方が起きることもあります。

・脳卒中(脳血管障害のうち、急激に発症したもの)

・脳挫傷(脳の打撲)

・頭蓋骨折

・硬膜下血腫

・硬膜外血腫

・脳内出血

・慢性外傷性脳炎(脳への反復的な衝撃・傷害が原因となり、進行性の脳変性による脳症をきたすこと )

・脳神経の損傷

これらは選手の人生を大きく変えてしまう危険性が高いです。

8.まとめ

脳震盪について解説しました。脳震盪は、スポーツの種類によっては起こりやすく、またその際の症状を知らないと軽視されやすい傷害です。

しかしながら、将来的に後遺症を発生させたり、死に至らしめることもある恐ろしいものです。ぜひ知識を得て、また脳に衝撃が加わったり、他部位からの衝撃で脳が揺れないように十分に対策をなさってください。

また、選手と関係者、保護者は正しい知識を得て、発生のサインを見逃さないようにお願い致します。

今回の執筆に際し、以下の文献を参考に致しました。

1) Broglio SP, Cantu RC, Gioia GA, et al. National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Management of Sport Concussion. Journal of Athletic Training. 2014;49(2):245-265. doi:10.4085/1062-6050-49.1.07.

2) McCrory P, Meeuwisse W, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sports – the 4th international conference on concussion in sport held in Zurich, November 2012. Clin J Sport Med. 2013;23:89-117.

3) “HEADS UP”. Centers for Disease Control and Prevention. Web. 8 May 2017.

4) SCAT3. Br J Sports Med 2013;47:259.

5) “Post-Concussion Symptom Scale | Momsteam”. Momsteam.com. Web. 8 May 2017.

6) Graded Symptom Scale Checklist. 1st ed. Web. 8 May 2017.

7) “What Is CTE?”. CTE Center | Boston University. Web. 8 May 2017.

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