元サッカー日本代表が語るアスリートの裏側|イベントレポート

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12月17日、サンパール荒川で「ONEATHLETEシンポジウム」が開催されました。
編集部として取材してきましたので、その様子をレポートします。

シンポジウムでは、サッカー元日本代表で昨年より現役復帰をしたゴンこと中山雅史選手、同じく日本代表で、昨年現役を引退した鈴木啓太選手、アメリカプロサッカーリーグ、ロサンゼルスギャラクシーで10年以上メディカルスタッフとして選手のケアに携わっている清水俊太さんの3名によって行われました。
他では聞けない話が満載な、シンポジウムの様子をレポートします。

ONEATHLETEとは、チームや種目、国境を超えたアスリートのネットワークを目指すプロジェクト。個人の故障の原因やプロセス、トレーニングを共有することで、アスリートの競技寿命の向上やケアスタッフの更なる技術向上を目指す。詳しくは、ONEATHLETE HPにて。


練習に行くと自分のロッカーに他の選手が!?厳しいプロアスリートの世界

シンポジウム登壇者

中山雅史

中山雅史

1990年にのヤマハ発動機(現磐田)に入団。
J1歴代最多の157ゴールを記録し、98年に最優秀選手、同年と2000年には得点王に輝く。日本代表としても通算53試合で21得点。ワールドカップ2大会に出場し、98年フランス大会ではジャマイカ戦で日本選手として史上初得点を挙げた。
2012年、一線を退くことを発表。2015年9月、JFLアスルクラロ沼津とアマチュア契約を結ぶ。

 

鈴木啓太

鈴木啓太

AuB 代表取締役。200
0年に浦和レッドダイヤモンズに入団。2006年に日本代表に招集され、オシム監督の元で唯一全試合先発出場を継続した。2015年に現役を退くまで16年間、浦和一筋で379試合に出場。ベストイレブン2回、2016年にJリーグ功労選手賞受賞。

 

 

清水俊太
清水俊太

ONEATHLETE 代表。
アメリカプロサッカーリーグ、ロサンゼルスギャラクシー メディカルスタッフ。米国公認カイロプラクター。

 

 

中山雅史トーク

ユーモアを交えながら、熱く語る中山雅史さん

皆さま自己紹介を一言お願いいたします。

中山雅史さん:昨年現役復帰をしました。過去の自分のイメージと、自分の身体とのギャップを感じながらプレーしています。清水さんと出会ってサポートしていただきながら、以前よりも走れる、以前よりも膝が曲がる、というのを実感しています。

鈴木啓太さん:昨年現役を引退し、少しでもアスリートの力になりたいと考え腸内細菌叢の研究を行う会社を経営しています。清水さんと出会い、考えに賛同し、アスリートの力になりたいと考えています。

清水俊太さん:11年、アメリカのロサンゼルスギャラクシーで選手のケアをしています。この間に選手のそばで実感したことから、このようなプロジェクトを立ち上げました。

Q.華やかに見えるアスリートの世界ですが、その裏側はどのような世界なのでしょうか?

中山:アスリートの特徴として、試合は華やかに見えるかもしれませんが、それまでにピークを持っていく必要があります。サッカーの場合は週に2試合。最大の目的は試合でベストパフォーマンスを発揮し、お客さんに満足していただき、試合に勝つことです。そのために、他の曜日は逆算してコンディションを整えていきます。また、例えば今はオフですが、キャンプイン、シーズン開幕に向けて日々、1年中準備を積み重ねています。そしてそれが当たり前と思わないといけないです。

鈴木:精神的なプレッシャーも多いです。自律神経がおかしくなったこともあります。試合で活躍することで何万人ものお客さんに喜んでもらえ、メディアにも露出します。その反面、試合でミスをしたり勝負に負けると反動も大きいです。そしてチームにとって必要ないとなればいつ首を切られてもおかしくない世界です。華やかに見える裏側ではそのようなプレッシャーと日々戦い続けています。

清水:選手に近い立場で彼らを見ていて思うのは、やはり来年の契約がどうなるのか、先の事が決まっていないことだと思います。アメリカではトレードも多いので、練習に行くと昨日までいた選手がいなかったり、場合によってはロッカーに行くと違う選手が自分のロッカーを使っている、というような場面にも直面したことがあります。そういう意味では非常に厳しい世界だと実感しています。

中山・鈴木:そんなことあるんですか!?それはキツイ……!!


え?お前のチームそんなことやってるの?アスリートへのケアの実情とは

Q.トップアスリートというのは、最先端の治療を受けられているのでしょうか

中山:そもそも最先端が何かという話になるのかもしれませんが、チームによって異なるというのが実情です。人がやってうまくいったからといって、自分が同じ治療を受けてうまくいくかは分からないというのが難しいところですね。

鈴木:そうですね。チームによっても差がありますが、浦和レッズはその点恵まれていたと思います。医療スタッフも充実していましたし、ひとつの事に縛られずに常に新しい情報を得に行っている方々ばかりでした。他チームの選手と話していて、詳しいことは分からないけど、え?そんなことやってんの?ってことは多いです。それでうまくいっているならまだしも、明らかに悪化していたり同じケガを繰り返したり。

中山:うん、レッズは恵まれてるよ。僕が膝のケガをしたときにセカンドオピニオンを聞きに行ったのはレッズのドクターだったし、そのおかげでドイツの先生を紹介してもらえた。

鈴木:他の選手の話を聞いていると、ひとつの方法に凝り固まっていると感じることがありますね。俺のやり方が全てだ、みたいな。ゴンさんもおっしゃっているように、個人に合わせて最善のアプローチを目指してほしいなと思うこともあります。

清水:プロの世界に入って感じたのは、必ずしもトップの世界が最先端の治療であるとは限らない、ということです。コネと言ったら語弊がありますが、やはり人のつながりで仕事になることが多いですし、人の技量をはかることは非常に難しいです。なのでいざプロの世界に入って、そこが世の中で最も進んでいると思っていたら、そうではないギャップの部分の方が多く感じました。 

シンポジウム対談

中山さんと鈴木さん、息のあった掛け合いをしていました。

中山:選手としては、選択肢が多い方が嬉しいですね。最先端の治療にはもちろん興味があります。誰々が何かで改善したという話を聞くと、試してみたいと思います。ただ、どれが自分に合うかは別です。
もちろん、最先端だと期待して結果が出なかった時はそのギャップに後悔することもあります。

昔は半月板は手術の方が主流で、復帰が早いと言われていました。自分はそれが最善と思って選択肢したので後悔はありません。
ただ、今は保存療法の方がリハビリが早いと言われています。当時どの情報を知っていれば保存療法を選択していたかもしれません。

(編集部註:個人やケガの程度によっても異なります。また手術の方法も以前と異なり切開しない方法が主流です。)

人によって、身体によって、人種によっても違うので、個人に合わせた方が嬉しいです。
昔ブラジル人で肉離れから2週間で復帰できるという人もいましたけど、それを当てはめられてお前もできるだろと言われたら困ります(笑)

膝とか、肉離れとか、一度やってしまうと選手としてはやはり怖い。そこで、「もう大丈夫、この段階ならダッシュしてもいい。」ってトレーナーに言われてできるかどうかは、信頼関係が全てだと思います。逆に不安になって練習をやりすぎるような時に、やめろ!と止められるかどうか。僕はどちらかというとこのタイプなので、しっかり止められる、というのも重要なことだと思います。

鈴木:結局、選手はピッチで結果を残してナンボ。正直早く戻れればなんでもいいです。最先端でなくてもいい。

清水:治療家と選手で共通言語がないことが問題だと感じます。治ると一言に言っても定義やアプローチが人によって異なります。選手は何をもって”治る”と言っているのか、それをお互いが理解していないとゴールにたどり着くことはできません。共通言語を作ることが大切です。

鈴木:もうひとつ、感じることは、チームの治療に違和感を感じた場合、コソコソ他のところに治療に行かなければいけない。これは、コソコソされる方も嫌だし、する方も嫌。それはおかしいと思いますね。

Q.最後に総括としてメッセージをお願いします

鈴木:アスリートにとっていい環境を作るためには、アスリートが団結しなければいけないし、それを受け入れてもらえる環境を作ることが大切だと思います。その思いに共感して、このONEATHLETEに賛同しています。

中山:個人でできることには限界があるのでチームをつくることが大切だと思います。みんなで力を合わせてより良い世界を築いていく。また、それによってトレーナーの方々も知識や技術がより向上するのではないかと思います。お互いが高め合っていけるような環境を目指していきたいです。

まとめ

あっという間の1時間でした。3名の熱がこちらにも伝わり、会場は終始熱気に包まれていました。アスリートの環境をもっと良くしたい、という共通のビジョンから語られる話は、とても胸に響きました。

チーム単位で見ると、ライバルチームに自チームの情報が漏れたり、ライバルチームの選手にプラスとなるようなことはしたくない、というのが現実だと思います。それでも、もっと長い目、広い視野で見た時に、日本・世界のスポーツ界がどのようにあるべきなのか。そのような高い視点からのお話を聞く事ができました。

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