出場権が当たった時は大喜び! それと同時に「走りきれるかなー」という不安。
「今から少しずつ走れば大丈夫だろう」と考えたのはもう去年の秋のことでした。
月日が過ぎるのはあっという間。なんとかせねばと思ううちにレース当日まであと2週間!
「気がつけばほとんど何もしてこなかった」という方は多いのではないでしょうか。
このままレースに向かうのは不安ですが、どうせ出るなら完走したい、できれば笑顔でゴールしたい、そのお気持ちはよくわかります。
そこでこの記事では、東京マラソンを始めとする市民マラソンに「残り2週間でなんとかベストを尽くすためのトレーニング&コンディショニング方法」をご紹介します。
ランニング専門のトレーナーがご提案する、無理なくツラくなく継続できる練習方法です。走りの原理に則ったやり方ですので、初マラソンの方はもちろん、サブ4〜3を狙う中級者・上級者の方にも絶対にプラスになるはずです。
特に初心者の方はレース当日までこれ以外はしなくていい!という決定版。レースへの心がまえや前日、当日に行うべき方法もお伝えしていますので、当日に少しでもいい結果を出したい方はぜひ参考になさってください。
この記事は、近藤洋先生の監修を頂きました。 日本体育協会認定フィットネストレーナー/ジョギングインストラクター1級/NESTA認定ハートレートスペシャリスト/ランナーズフィジカルコーチ/プロランニングアドバイスコーチ/スポーツシューフィッター 「姿勢」と「痛み」の改善専門パーソナルトレーニングスタジオ コア・リファイン 代表 年間1,800件以上のセッションを行うランニング指導の専門家。指導歴15年で一般ランナーからアスリートまで述べ1,000人以上にアプローチ。自身も駅伝、フルマラソン、ウルトラマラソン出場経験多数。「2人に1人は障害を抱える」ランナーの現状を変えたいと、2009年に「スマイルランナーズ」ランニングクラブを設立。指導経験とスキルも活かし『メンバーさんのランニング障害ゼロ!』を合言葉に100名を超えるランニングクラブに育てあげている。 |
目次
1.初の東京マラソンに挑むために不可欠な「2つの心がまえ」
なにかに挑戦するには「気の持ちよう」が大切です。恐れや悲観は緊張しか生み出しません。まずは初めて挑戦する方にぜひ覚えておいてほしい心がまえをお伝えします。
1−1.東京マラソンは楽しすぎる大会!きっと素晴らしい日になる
東京マラソンは魅力的なレースです。コースは高低差が少なく、普段は車でしか走れない大きな東京の道を、名所巡りしながら走ることができるのです。
エイドステーションは充実しており給水には事欠きません。後半は食品のブースも多くなりますので「次の関門には何があるか」と期待しながら走ることができます。
仮装したランナーも多く、何よりも沿道の声援がゴールまで続きます。あの有名人と一緒に走ることができるかもしれません。このように実際にコースを走ると楽しいことばかりです。
練習では5kmも大変な人が、当日はあっさり完走できることも珍しくありません。これは普段とは違って楽しく走れるからなのです。
もちろんフルマラソンを走るわけですから、疲労困ぱいになりますが、きっとまた出たいと思えるはずです。何よりも初めての東京マラソン。過度に恐れずに「めいっぱい楽しんでやる」 という気持ちでスタートしましょう。
1−2.準備で90%が決まる!「徹底的にやりきった感」が大事!
大会当日を思いっきり楽しむためには、少しでも体力を付けましょう。
なにごとも「段取り九割」と言われます。マラソンにおいても「ここまでやったんだからできるはずだ!」という気持ちがレース中ずっと背中を押してくれるのです。
レース後半の苦しい時間帯でも何とか頑張れると思いますし、万一完走できなかったとしても、やりきっていると満足感があり、気持ちが前向きになります。「今年は2週間だけの練習でここまでできた」「来年はもっとできるはずだ」と充実した笑顔が溢れ出ます。
反対に、中途半端な取り組みしか行わなかったのでは不安が先に立ち、レース中もあきらめの気持ちがよぎります。「練習不足だったから」「仕事が忙しかったから」という言い訳に甘え、人によっては「向いていない」「センスがない」と走ることへのつまらなさしか感じなくなります。
せっかくレースに出られているのに、そのような気持ちになっては残念です。高い競争率を勝ち抜き出場権を得た東京マラソン。やはりご自分なりにやりきってみませんか?
残り2週間。今から練習に取り組んで「達成感」を持って、当日最大限に楽しめるようにしてみましょう。次章より具体的な方法を解説いたします。
2.キツいトレーニングはいっさいなし! 二週間で必ずやるべき「5つの方法」
残り2週間でやるべきことは「カラダを動きやすい状態にする」ということです。プロトレーナーの近藤洋さんにおうかがいし、少ない時間でベストな結果を出すためにポイントをリストアップしていただきました。残り2週間繰り返すことができ「達成感」も得られるものです。以下の5つの項目だけ重点的に行います。
・一日100分の低負荷有酸素運動を行う
・肩甲骨や股関節周辺の可動性を向上させる
・姿勢&ランニングフォームを改善する
・ランニング中はゆっくりでも走り続ける
・練習後に疲労回復の取り組みを行う
この章ではその理由と方法を解説していきます。
2−1.トレーニングの中心はやはりラン!有酸素運動のコツ
まずは完走のための練習のコツをお伝えします。
2−1−1.1kmを8.5分のペースで60分以上走る
マラソン大会出場のための練習はやはりランが主体。心肺機能を向上させるために走りましょう。1kmを8分30秒で走ることができれば、フルマラソンならば約6時間で走ることができます。
東京マラソンの制限タイムは7時間ですから、スタート時の混雑や、エイドステーション、トイレでの行列時間を加味してこのペースで走れるようにしたいものです。キロ8.5分走は、10kmなら1時間25分です。けっこうゆっくりなペースであると言えます。
この2週間はキロ8.5分のペースをカラダに覚え込ませるようにします。
2−1−2.ランは7割!水泳や自転車等の有酸素運動も行う
週に6日を練習日として前述のペース走主体の練習を行ってください。1週間に5〜600分の有酸素運動を行うことができれば2週間で効果が出ます。つまり1日100分の有酸素運動です。これは分割してもよく、朝60分+夜40分でも大丈夫です。また、土日に多めに走ってもよく、1週間トータルで5〜600分になるようにしてください。これはあくまでも理想なので、できる範囲で大丈夫です。
さらに理想をいえば、ランだけではなく自転車や水泳を取り入れた“クロストレーニング”を行うことです。お勧めはランニングの後に水泳を行う方法です。スポーツクラブや公共のプールを活用することで可能かと思います。これを含めて1日100分できるようにしてください。ランの理想的な比率は7割です。
このことで最低限必要なランの量を確保しながら、飽きにくく故障を防いで心肺機能を高め、翌日の疲労を軽減させることができます。
2−1−3.心拍数は130/分以下に抑える
「毎日100分も走るのかよ!」と思われる方もいらっしゃるかと思います。しかしランでいえば1km/8〜8.5分のゆっくりペースで十分です。これは心拍数でいうと130回/1分以下となるはずです。他のトレーニングでもこれ以上にならないようにしてください。
この心拍数に抑えておくと、ラクに走ることができます。足腰への負担も少ないので継続することができます。当日も最初から最後までこのペースで走るとお考えください。
反対に、追い込んだ練習をしないようにしてください。普段走り慣れていない人が急に激しい練習を行うとケガをする可能性があります。そうでなくとも筋肉痛が発生して翌日にはもう走れなくなったり、大会当日に疲れ果てている可能性があります。
ランニングマシンやハートレイトモニターを使用すると心拍数を測ることができます。その時の呼吸の荒さをおぼえておき、それ以上にならないようにコントロールします。
2−2.可動域を作るコンディショニング&トレーニング
いきなり走り出さないください。「動ける状態」で走らないと無駄に疲れたり、故障の原因になります。「動ける状態」とは、体幹が安定し、腕を良く振ることができ、股関節からダイナミックに脚を運べる状態です。ランの前後に必ず行ってほしい方法をお伝えします。
2−2−1.練習前のウォーミングアップ
練習前には動きを引き出すためのウォーミングアップを行います。
■肩甲骨の動きのトレーニング
まずは腕の振りに直結する肩甲骨の動きを引き出すトレーニングを行います。
中腰、もしくはベンチなどを使うと行いやすいです。
背中を平らに保ち前傾姿勢(45度程度)となります。その姿勢をできるだけキープしながら耳の横まで両腕を上げ、バンザイの状態にしていきます。姿勢を保ちながら上がられるところまで上げたら3秒キーブ。これを5回繰り返しましょう。
【ポイント】
・平らな姿勢をキープ!
・肩甲骨から動きだすイメージで!
■骨盤を動きやすくする足の付け根のストレッチ
足を肩幅より少し大きめに開きます。そこからさらに前後1mほど、どちらかの足が前後になるようにします。手を頭の後ろに組んで、前に出ている足と同じ方向へ身体を倒していきます。
上げている方のヒジをより高く引き上げるように意識して行いましょう。下半身は最初の状態をキープしておきます。上体だけを動かすようなイメージです。左右5回ずつ行いましょう。
【ポイント】
・上体を倒すことよりも、ヒジを引き上げることを大事に。脇腹から後ろの脚の付け根が広がるように意識します。
NGポイントやさらに効果を出す動的ストレッチの方法を別記事「ランニングストレッチ・走る前後のベストメソッド【NGも】」で紹介していますのでぜひご一読ください。
2−2−2.可動域を向上させ安定感をあげるエクササイズ
身体の中で動きが悪い部位があると、他の部位がその代わりとなって動こうとします(代償動作)。これは疲労や故障の元になります。効率よく走るために良い動きを引き出しましょう。
ここからのトレーニングはランニング前に行うのが理想的ですが、まとまった時間がなかなか取れない方はお昼休みなどお好きな時間に行ってください。
■胸郭にアプローチする「キャット&ドッグ」
四つんばいになり、息を細く長く吐きながら背中を丸めてお腹を覗き込んでいきます。
【ポイント】頭のてっぺんからお尻までをしっかり丸くしていきます。特に骨盤周辺が丸くなる意識で行ってください。
丸めきったら息を吸いながら背骨を伸ばしていきます。
応用編1・ヒジを床につけて行うと、胸椎が動かしづらくなりますので、より腰椎にアプローチした動きができます。
応用編2・骨盤の丸まりに左右差が出る人が多いです。この左右差を解消するために別々に行う方法です。
写真のように片ヒジを付き、その脇の下にもう片方の腕を通して骨盤を丸めるエクササイズを行います。
この動きを簡単に作ることができるのが当ブログ運営元の㈱LPNが販売するスイングストレッチ®です。ランナーの方からも、『ストライドの幅が広がった』『背中を押してもらうような感覚がある』など好評のお言葉を頂いています。興味のある方は別ページ「スイングストレッチとは」をご参照ください。
■体幹を鍛えるプランク
有名なエクササイズですが、背中がまっすぐではないと意味がありません。簡単に行う方法をお伝えします。
両ヒジをついたキャット&ドッグの態勢から行うだけです。背中がまっすぐの意識のまま両足を後ろに伸ばしてください。
【ポイント】頭が落ちたり、腰だけ上がらないようにします
2−2−3.肩甲骨の正しい動きと手足の連動を引き出すトレーニング
低負荷で正しいフォームで回数を行うことが大事です。筋肉を鍛えるトレーニングではありません。
■肩甲骨を寄せるトレーニング
ロープ状のトレーニングチューブを用意します。
天井にチューブを掛けられるといいのですが、撮影ではドアに挟むことにしました。
ドアにチューブをかけ背を向けて座ります。腕で下に引きます。肩甲骨から動かすイメージでヒジを曲げたまま下に引ききります。2〜30回行ってください。
■ヒジを引くトレーニング
手を良く振って走りましょう、といってもなかなかできない方が多いです。それはヒジを引くことのイメージができないからです。チューブでしっかり引く練習を行いましょう。
チューブをドアノブや柱などに回して、左右両手で同時に引きます。ヒジをしっかり引ききってください。2~30回行います。
■肩甲骨とお尻の連動を出すヒップリフト
写真の態勢をとります。右腕と左足をあげておいた状態から、お尻も一緒に腰から浮かせます。右ヒザから肩までを一直線に保ってください。左足と右肩で床面をしっかり押し付けます。10秒キープして反対側も行います。2〜3セット。走る時もこの連動のイメージで走ります。
※キャット&ドッグを行っていないと左右差が出ます。これを行う前には必ず行うようにしてください。
2−2−4.股関節の正しい動きを引き出すエクササイズ
股関節がダイナミックに動くことで効率よく、疲労が少ない走りができます。可動性と正しい動きを練習で身につけましょう。
■股関節の内外旋を引き出すチューブトレーニング
チューブを使いますが、これも負荷は強くなくて結構です。正しく真っすぐな動きを身につけます。
テーブルの足などにチューブを回し、膝に巻きます。腰の高さを左右揃えた状態で片ヒザ立ちになります。腰骨から内側にヒザを引き寄せます(内旋)。10回行ったら足を替えます。2〜3セット。
【ポイント】
・上半身がヒザと反対側に倒れないように、カラダをまっすぐにして行ってください。
・足(くるぶしから下の部分)がヒザと反対に外に流れると土踏まずのアーチが崩れる原因になります
・前に出した足に加重しないで、ラクに動かせるようにします。加重は後ろ足です
・内側に入れすぎずに、真ん中程度までにします。
立ち位置を反対にして、今度は外に開く運動を行います(外旋)。これもカラダや腰が曲がらないようにします。10回行ったら足を替えます。2〜3セット。
2−2−5.練習後のストレッチ
練習を行ったら十分にストレッチを行います。全身の血流が改善し、疲労回復効果が得られます。
■激しく使った呼吸筋をゆるめ、副交感神経優位にする呼吸ストレッチ
仰向けに寝て、全身を脱力します。その状態で、ゆっくりと腹式呼吸を繰り返します。
特に吐くほうを7秒ほど時間をかけて行います。30秒ほど繰り返したら、腹式呼吸に肋骨を広げるような意識も加えて、さらに30秒行いましょう。
【ポイント】
・重力を感じるように脱力して行います。
■腰から背中にかけてのストレッチ
壁に対して、写真のように脚が十文字になるようにセットします。その状態から、おへそから上を捻るようにしながら床に伏せていきます。ヒジは横に張り、胸を床に近づけるようにします。
腹式呼吸を意識して行うとさらに効果的です。
これ以外の方法も別記事「ランニングストレッチ・走る前後のベストメソッド【NGも】」で紹介しています。併せてご一読ください。
2−3.姿勢&ランニングフォームを意識する
良い姿勢(ランニングフォーム)で走ることで、運動効率が良くなります。同じ体力でもさらに走ることができ、疲労が蓄積しにくくなります。正しい姿勢で走らないと、練習の効果も思ったように得られず、レース中も体力をロスします。
正しい姿勢は、運動において理にかなっているということです。なるべく正しいフォームで走るようにしましょう。
■正しいランニングフォーム
・初心者は一生懸命大きく腕を振らなくてもOK。リラックスできる振り幅とリズムで
・腕は腰より下、後ろで振る。腕の振りと骨盤が連動して動くことを意識する
・脚は常に前で回転させるイメージ
■良い例↓
左脚を地面に着いた瞬間、素早く右脚が左脚を追い越し、手も素早く切り替わっています。
■初心者にありがちな悪い例↓
左足が地面に着地した瞬間の写真ですが、右足がまだ身体の後ろに残っています。
近藤さんが主宰するスマイルランナーズというランニングクラブのホームページではこのフォームについてさらに詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。
スマイルランナーズのホームページ「初心者のためのランニングフォーム講座」
■ステップ台を使ったランニングフォームエクササイズ
上記の切り替えをつかむトレーニングになります。
走るフォームを実際にステップ台を使って行い、チェックします。ステップ台に片足を乗せる瞬間に腕と足を走る時のフォームで引き上げます。
トレーニング用のステップ台がなくても、同様のものなら何でも良く、写真では折りたたみのヨガマットとストレッチポール®ハーフカットを使用しています。ハーフカットのほうが難易度は高いです。
この時にこれまでのエクササイズで行った、「肩甲骨から腕を振る意識」「ヒジをしっかり引き寄せる意識」「肩甲骨とお尻が連動する意識」「骨盤が水平の状態のまま股関節の内外旋を生み出す意識」「股関節から脚を引き上げる意識」で行ってください。
これができればラクに走ることができます。常に正しいフォームを意識して走りましょう。
大泉学園駅から徒歩2分。新築ビルの4Fにリニューアルオープンしたのがコア・リファインです。広めのサロンは明るい日差しが入り込むゆったりした空間。ストレッチポールやピラティス、加圧トレーニングなどお客様の“なりたい自分”になるための、オーダーメイドセッションを受けることができます。ランニングを少しでもはやく上達したい方、理想的なフォームを身につけたい方はぜひ一度セッションを受けてみてはいかがでしょうか?
2−4.疲れを翌日に残さない!練習後の疲労軽減方法
適切なクールダウンと血液循環を行いましょう。
前述したとおり、できるのであれば練習の最後を水泳にすることがおすすめです。ランニング後に10〜20分、軽く泳いだり水中ウオーキングやストレッチをしたり、プカプカ浮かぶようにします。
その代表的な効果は以下のようなものです。
・筋温を下げるクールダウン効果
・重力負担が減ることによるリラックス効果&血液還流促進効果
・水圧によるマッサージ効果
日本のトレーニング指導の第一人者、山本利春先生も各種の文献を示してその効果を紹介されています。詳しくは下記リンクをご参照ください。
アクティブレストの1手段として、水中での軽運動による疲労回復を図る試みが行われている。水は浮力、粘性抵抗、水圧、水温などの身体に影響を与える特性を併せ持ち、陸上では得られない多様な身体機能への効果をもたらす。この水の特性を活用することで効果的なコンディショニングが可能になる。
山本利春:アクアコンディショニングの有効性 ~特集にあたって~,トレーニング科学, Vol.19, No.3, 2007
プールが難しい方は、ご家庭のお風呂での交替浴もおすすめです。水シャワーを脚に当てたあとに温浴することを繰り返すと疲労が残りにくいです。
その後にストレッチやマッサージを行ってください。すべて面倒な方ははり灸マッサージ師によるマッサージでもいいでしょう。その際はランナーを診るのが得意な方のほうが良いでしょう。
セルフでやる方法として、近藤さんはストレッチポール®でのリラクゼーションやセルフマッサージをお勧めしています。
2−5.「できるだけ歩かない」ことが大事
ランニングを行う上で、ゆっくりでもいいのでなるべく走り続けるようにします。苦しくなると歩きたくなりますが、一度歩いてしまうとそこから再度走ることが難しくなるからです。肉体的にも精神的にキツくなります。
歩くことはペースダウンにもなります。1kmが15分くらいに落ちます。後でそれを挽回することは至難の業で、関門をクリアすることが難しくなるのです。走ってさえいれば、体調回復しだいペースアップをすることはさほど難しくありません。当日歩かないようにするために、練習でもランニング中はなるべく走り続けるようにします。
※体調に関わるので、限界を感じたら無理せずに歩いてください。慣れないうちはウォーキングを100分練習の中に含めてもOKです。
3.トラブル回避はグッズに頼る!あったほうがいいツールの知識
せっかくの大会。完走率をあげたり少しでもラクに走るにはツールの活用もお勧めします。大会であったほうがいいものをお伝えします。
・シューズ ランニング専門店でサイズが合っているものを目的を伝えてフィッティングしてもらってください。特にカカトが片側にすり減っている場合は、ランニングフォームに影響し、不良姿勢を増大させます。2週間前の今、レース用のシューズで練習を開始しましょう。
- 今までのシューズで不具合が出そうな場合は早めに新品に交換したほうがいいでしょう。近藤さんは「僕もレース前日にシューズを替えたことがあります。あまり褒められた方法ではないと思いますが、今のシューズはデキがいいので履き慣らさなくても大丈夫のものが多いです。なるべく専門店でアドバイスをもらいながら適正なサイズのものを選んでください」 と語っていました。
・サポーター ヒザや足首などが不安な方はあらかじめ装着してからランをします。
・コンプレッションウエア 保温やカラダを引き締め安定させ、動きを引き出す効果があります。着ないのを好みにする方もいますので相談してみるのがおすすめです。
・インソール&ソックス ランニング専用品をぜひ使用してください。アーチをサポートするタイプがあります。一般的な靴下では疲労の軽減効果などが望めません。足首のサポーター代わりになるものもあります。
この2週間は購入したものをカラダに慣れさせたり試してみる機会です。例えばコンプレッションウエアは、レース開始時は暖かくていいのですが、日中には暑くなり脱ぎたくなる場合もあります(実際に脱いで手に持って走っている人もいます)。練習でもそれを想定して、レース本番の時間帯で同じように走ってみてください。
4.前日までの体調管理方法
・レースまで急激な運動をしない 「何もしないよりは」と思って激しいスポーツをしても疲労蓄積の原因となります。翌日も練習ができる余力を残しておきましょう。
・食事は通常通りバランスよく 糖質制限は絶対に行わないでください。鉄分の多い食品を意識するようにします。お勧めは赤身のお刺身です。
・揚げ物、アルコールは禁止 「控えめに」と言いたいところですが、近藤さんはクライアントさんの場合は「絶対に禁止」と伝えています。揚げ物は消化が悪く疲労回復効果を損ないます。マラソン中は速やかな糖質代謝が必要ですが、アルコールは肝臓に重大な負担をかけます。完走の願掛けも兼ね、レース後においしく頂けるのを楽しみに頑張りましょう。
・カフェインは控える 中枢神経を刺激してカラダが無理できるようになります。その結果疲労が残ることになります。
・前々日にオフを設ける もしくはごく軽い練習にします。前日も2〜30分程度の軽い練習にし、「気持ちよかった」感覚が得られる程度にとどめておきます。
・トイレ不要の練習もしておく レース中にトイレに行きたくならないようにその感覚をつかんでおきましょう。行くとなると行列=時間のロスとなります。練習前にトイレに行き、練習中は行かないという習慣を身につけておきましょう。この感覚をつかんでおくことで、直前の不安が解消します。
・できれば下見をする ここまで走れば何km、あそこには小さな坂がある、銀座はビルが多く日陰が多いので日中でも気温が上がりにくいなどコースのイメージが確立できます。
5.当日絶対に押さえておきたいポイント
・当日のウォーミングアップは? 前日にしっかりストレッチ、もしくは当日の朝にしっかりストレッチできれば理想的です。会場についたら、集合時間の30分前に軽く屈伸やアキレス腱運動など、体育授業の前に誰でもやるような、ラジオ体操のようなものをやれば十分です。
レース前に走ったり、ダイナミックストレッチをやらないのは、スタート前にだいぶ待たされるからです。 身体を冷やさないように防寒をして、スタートしてからアップを行うつもりで大丈夫です。スタート時からゆっくり身体を温めるつもりで走っていきます。
スタート直後は前になかなか進めないので。 だんだん温まってきたら、防寒着を使い捨てのものなら捨てるか、応援の人がいるなら渡すなりして、自分が最も走りやすい体温、ウエアの状態に持っていきます。 暑すぎても寒すぎても余分なエネルギーを奪われるので注意してください。
・当日の食事は 通常どおりで構いません。パンよりはご飯のほうが良いとは思います。繊維質が多いものは腸内でガスが溜まりやすいので気をつけてください。サラダ程度なら問題ありません。水分はこまめに摂るようにしてください。
レース2時間前までに | 朝食を済ませる |
レース1時間前 | バナナなどを軽く食べる |
レース直前 | エネルギーゼリーを補給する |
・エイドステーションでバカ食いをしない 走っている時は、全身の血液のうち7割が筋肉に集中します。胃腸などの内臓には普段より血流が減少します。ここに固形物が入ると消化に時間がかかり、腹痛の原因にもなります。少しずつ食べることがおすすめです。(食べ走ることを楽しみにされている方は、それはそれで良いかと思います)
・ジグザグ走りなど急な方向転換をしない 特にレース開始直後、渋滞に焦って人並みを縫っていくようなジグザグ走りをする人がいますが、このような走り方は筋肉に負担をかけ、貴重なエネルギーをロスします。渋滞は徐々に解消しますし、どこかで調整できるポイントが来ますので自分のペースで走れるようになるまでは我慢して走っていきましょう。
6.初マラソンQ&A
初心者の方が心配なポイントを近藤さんにうかがいました。
Q.レース中に水は持っていくの?
A.エイドステーションが充実しているのでレース中は不要。前後の持ち物としてはあったほうがいいでしょう。
Q.タオルは持っていく?
A.個人差があります。心拍数130以下では、あまり汗をかかないと思うので、不要の人が多いでしょう。額の汗を帽子で防ぐ方も多いです。これも事前にシミュレーションしてみてください。
Q.ウエストポーチかリュックは?
A.ウエストポーチは揺れるのでおすすめしませんし、不要の方が多いです。スマホを持ち込む場合は腕に巻けるソフトケースがおすすめです。エイドステーションで配っているものを集めるためにリュックの人もいますが、それを楽しむには体力が必要です。
Q.他によく見るグッズは?
A.使い捨てのポンチョを着ている人をよく見ます。これはスタート前の寒さ対策です。ポリ袋を繋ぎ合わせて作っている人もいます。(走路には絶対に捨てないでください。持ち帰るか定められたゴミ箱に捨てましょう)
Q. ふくらはぎが痛くなるのが心配
A.小股走りの方に多いトラブルです。これは歩幅が小さいとふくらはぎに負担がかかるからです。これを避けるには股関節と下半身のバネを使うようにして走ります。股関節の可動域を広げるトレーニングと正しいランニングフォームを練習しておきましょう。また、ふくらはぎをサポートするコンプレッションウエアを利用するのもおすすめです。キネシオテーピングも効果があると思いますので、専門家に直前に貼ってもらうこともお勧めします。
Q.「30kmの壁」が怖いです!どんな世界が見えていますか?
A.お伝えした8.5分/kmのペースではそこまでツラくはならないはずです。自分のレース経験では30kmはまだ大丈夫。苦しくなってくるのは33~34kmからです。「残り8~9kmもあるのか」と思いますし、足が前に出ません。頑張っているのに進まなくてツラいという心境になりますし、着地の度に足に疲労を感じます。
ここで最も効果的なのが「家族や友人の声援」です。信じられないほどの効果があります。事前に「33km地点でハイタッチをしよう!」と予告しておくといいかもしれません。
もしくは短いゴールを設定します。「あの交差点まで頑張ろう」「次のエイドステーションまではナントカ!」「ここまで来れたから次まで頑張ってみよう」と考えていくことで走り続けることができる人もいます。
Q.翌日仕事です。無事に出社できるでしょうか?少しでも疲労をとる方法は?
A.レース直後に糖分(おにぎりやバナナ、オレンジジュース等)とアミノ酸(BCAA)、水分の補給を行います。事前に準備をしておいてください。
ストレッチはスペースがないので難しいでしょう。できるだけはやくお風呂に入り交替浴をすることをお勧めします。例えばサウナと冷水浴を繰り返します(ゴール周辺の施設は混むので難しいかもしれませんが)。その上でストレッチを行いましょう。レースで肝臓も疲労しているので飲酒は控えめに、ビール一杯程度にしておいてください。
7.まとめ
初心者の方でも、2週間でなるべくベストな結果を生み出せる方法をご紹介しました。お伝えしたように、東京マラソンや大きな大会は魅力的で楽しい大会です。それを120%楽しむには、事前の練習をこなした「達成感」が大事です。まず今年は参加してみましょう。そして伸びしろを感じたら再度チャレンジしましょう。これを機会に、ランニングの楽しさを感じていただければ幸いです。
8.【ご報告】石塚トレーナーみごと完走!
2017年2月26日に行われた東京マラソン2017で、石塚さんが人生初のフルマラソンに挑戦!みごと4時間18分41秒で完走いたしました。初マラソンにしてはなかなかのタイムではありませんか?
「この日まで近藤さんの指導どおりに練習をして当日を迎え、楽しく走ることができました。やはり32〜33km地点がキツかったですね。足底部にテーピングをして臨んだのですが、途中で熱くなり一時停止してハズして走り直しました。そのせいか足が攣った瞬間もあります。そんな時に心強かったのが仲間の声援。気力が戻ってきて最後まで走ることができました。翌日はさすがに筋肉痛やむくみを感じましたがそれすらも楽しいと感じられる大会でした。また来年も走ってみたいですね。」(石塚さん)