カラダにプラスになる一つの方法として、バレエのストレッチが注目されています。長い歴史で培われたバレエのストレッチやエクササイズは、現代の女性にとっても、美しい姿勢やレッグラインを作るのに効果的です。
しかし、どのような方法で行えばいいか、まだまだ情報が少ないと思います。
そこで当ブログでは、愛知県でバレエ教室を主宰する藤野奈緒子さんのご協力により、正しく効果的なバレエストレッチをお伝えします。
これは、バレエストレッチにおける「基本のすべて」ともいうべきストレッチ集です。生活に取り入れたい一般の方はもちろん、クラシックバレエのスキルをレベルアップしたい方にも、きっとご満足頂ける内容だと思います。
お部屋やオフィスでできるようにシーン別にまとめてありますし、また注意すべきポイントについても解説していますので、ぜひ試してみてください。
※ご紹介するストレッチは、一般の方の場合、一度にすべてをやらなくてもよく、特にやるべき順番もありません。ご自身でやってみたいと思ったものをチョイスしていただいて大丈夫です。
目次
1.バレエストレッチのメリット
バレエを美しく踊るために研究されたバレエストレッチは、一般の女性にとってもたくさんのメリットがあります。
・美しい姿勢を作る
・全身が伸びることで使われていなかった筋肉が使われるようになる
・全身のバランスを整える
・全身のコリをほぐす
・血行改善になる
・スラリとした脚になる
・いつまでも若々しく見える
どうでしょうか。気になる方はぜひ朝起きたときから行ってください。また、おやすみの1時間くらい前に行うのも、柔軟性や睡眠の質を高めるのに効果的です。お風呂上がりなどにも試してみてください。次項からさっそくシーン別のストレッチの方法をご紹介します。
2.床に座って行うストレッチ
2−1.前足部回し
藤野さんのバレエ教室で、まず最初に行うストレッチです。足関節周辺を柔らかくし、つまずきを軽減、足底の接地感覚を向上する効果があります。ハイヒールを履かれる方にもおすすめします。
あぐらに座り、片方の前足をしっかり持ちぞうきんを絞るようにひねります。片足10回ずつ。
続いて、ヒザから足先までのラインをまっすぐにしたまま、曲げ伸ばしを行います。つま先が内や外にならないようにしてください。これも片足10回ずつです。
そのまま足先と足首に手を当て、手前に引き寄せます。伸ばした脚とお尻の外側が伸びることを意識してください。10〜20秒程度、息を止めないで行います。
2−2.脚部全体のダイナミックストレッチ
①足先をぴーんと伸ばします。②足先を手前に引きつけて立てます。③足の指を立てたまま前に伸ばします。④最初の状態に戻ります。※足がつりやすい人は、①~④の動きでつりそうと思ったら力を抜いて無理せず行ってください。
⑤そのまま、股関節の付け根からしっかり外に開きます。⑥足先を手前に引きつけます。⑦天井に向かって立てます。⑧足の指を立てたまま前に伸ばしてから、①の状態に戻ります。
⑧〜①まで逆の動きも行ってください。
2−3.ハムストリングスのストレッチ
ハムストリングとは、太ももの後ろがわの筋肉のことです。加齢とともに足腰の筋肉は萎えてしまい、意識していてもすぐ固くなってくる部位です。
一般的に行われているストレッチ方法では、骨盤コントロールが難しく、効果的に行えていない方が多いのです。
①両手を天井に伸ばし、骨盤を立ててから ②腰から「くの字」に骨盤を前に傾けながらカラダを前に倒していくとハムストリングが伸びます。20秒までをメドに伸ばします。
※上の写真のように、骨盤が後ろに傾くと、ヒザ関節が曲がり、ヒザと床の間に隙間ができます。こうなると効果が薄いので気をつけてください。
骨盤がまっすぐ立てられない人は
お尻の下にクッション等を折りたたんで置くと、少し骨盤が立てやすくなります。※ただし、膝が反張しやすい方や、膝に痛みの出やすい方は、ストレスがかかりやすいのでご注意ください。
2−4.大臀筋のストレッチ
お尻を大きくカバーしている筋肉です。走ったり跳んだりするときはもちろん、姿勢の保持にも大きな役割を果たしています。ここをストレッチでほぐすことで、ヒップアップ効果が期待できます。
片卍に脚を崩し(股関節と膝が90度くらいになるように足を曲げ)、胸を張ります。そのまま両肩がヒザとカカトに並行になるようなイメージでお腹から近づけていきます。(背中が丸くなると効きにくいので、骨盤を立てて、しっかり胸をはって行うとGOODです)。※両脚とも、写真のように90度くらいの角度になると効果的ですが、ヒザが悪い方は無理しないでください。また、カカトの位置が体に近いと効きにくいです。左右それぞれ20秒までを目安に行ってください。
2−5.中臀筋のストレッチ
上記ストレッチをねじって行うと、効くポイントが変わります。
対側の肩が膝に近づく方向で、カカトにつくように伏せて行きます。上記右の写真では、左肩が右ヒザにつくように捻りながら折り曲げます。
2−6.大腿四頭筋のストレッチ
太もも前面の筋肉です。一般的なストレッチでは、腰をそらせたり股関節が外に開いてしまうことが多いです。このポイントに気をつけないと、効果が薄いばかりでなく、腰を痛めてしまうことがあります。藤野さんオリジナルのストレッチは、この点を解消した効果的な方法です。
前項の体勢から、片側の足を後ろ側に回します。後ろの足の甲を同側の手で持ち、顔はおへそを覗き込むようにしながら、体重を少し反対側に倒しつつ、ストレッチしている足の膝が床から浮かないように股関節を後方に伸ばしていきます。もも前が伸びるのを感じながらゆっくりと行ってください。※骨盤が後に傾いた状態をつくり、腰痛を起こしにくくしています。
2−7.内転筋ストレッチ
太ももの内側の筋肉を伸ばします。
両脚を開いて床に手をつき、背中を丸めながら骨盤を後ろに倒したり、カラダを前に伸ばしながら骨盤を前に傾ける動作を繰り返します。交互にゆっくり動かしながら股関節周りをほぐします。5〜10往復行ってください。
2−8.バレエの動きを取り入れた、腕の動きのストレッチ(ポール・ドゥ・ブラ)
ゆっくり動きながら体をのびのび使ってみましょう。
通常は立位ですが、体幹をスクウェア(腰・肩の四点が四角となる状態)に保つ意識がしやすいように、今回はくずしあぐらで座って行ってみました。
まずは姿勢をつくる
骨盤を立てて、背中をまっすぐにし、肩を下げてリラックスします。足はももに載せず、床にくずして楽にしてください。
背中が丸くなる場合は、クッションをお尻の下に敷くと楽になります。
フル・ポール・ドゥ・ブラ その1(アン・ドゥオール)
ゆっくりと4カウントずつで動いていきます。
①基本のゼロ・ポジション(アン・バー)から、②第1ポジション(アン・ナヴァン)へ
③第5ポジション(アン・オー)へ移り、④第2ポジション(ア・ラ・セゴン)に広げ、
⑤手のひらを返して、⑥アン・バーに戻ります。
※NG例。左は、肩の力が残っていて首がすくんでいます。腕をあげたときも、肩が上らないように。肩の力を抜き、コルセットを締める(アバラを絞るような)感覚で体幹を固定し、首を長く見せましょう。視線は手を直接見ずに、遠くを見ます。あごがあがって首が折れないように。頭にのせた冠を落さないようなイメージ、あるいは常につむじを糸で引っ張られてる感じで顔を付けます。
フル・ポール・ドゥ・ブラ その2
こちらも4カウントずつで動いていきます。
最初はその1と同じです。アン・バーからアン・ナヴァンへ。
③第3ポジションです。④手を横から入れ替えて…
⑤両手を広げて第2ポジション(ア・ラ・セゴン)を取り、基本のゼロポジションへ戻ります。
3.立って行うストレッチ
3−1.脚部全体のダイナミックストレッチ
キッチンのヘリや、机につかまって行います。ゆるやかに動きを伴うストレッチで、下半身の姿勢調整に効果があります。
つかまり立ちしながら、両膝を曲げます。片足のつま先を立てて上に伸びます。つま先を立てたまま両膝を曲げます。両足のつま先を立てて伸びます。逆足も行ってください。つま先の位置は常に同じです。※膝の中央から足の中指をつなぐ線が真っすぐの状態で行います。交互に5セット。
足のひらの内側と外側それぞれで立ちます。重心を左右にゆらゆら揺らす感覚です。10セット行ってください。
両足とも、つま先を上にあげて、カカト重心で立ちます。そのまま片ヒザを折り曲げます。
つま先に重心を乗せかえてから、つま先重心で揃えます。写真1枚目カカト重心に戻ります。5〜10セット行います。
3−2.大腿四頭筋・大腿直筋のストレッチ
2−6.で紹介した「もも前ストレッチ」を立って行うバージョンです。よくあるストレッチなのですが、NGポイントに注意しないと、効果が弱いばかりか腰痛を起こす可能性があります。
同じ側の手で足の甲あたりを持ち、カカトがお尻に近づく様に膝を曲げます。後ろ方向にひっぱりながら、太ももの前側に伸張感が出るところで呼吸をしながら10〜20秒、キープします。呼吸は腹式呼吸で、息を吐きながらお腹を凹ませます。壁などに手をついて、安定感のある状態で行ってください。※両膝が近い状態で行ってください。腰を反らしたり、足を外側に引かないこと。
3−3.バレエのポーズで行う首・肩・背中のストレッチ
まずは肩甲挙筋を意識したポーズです。肩こりにお悩みの方に最適なストレッチです。
片方の腕を上げます。肩甲骨が上方回旋した状態を保ってください。首を反対側へ側屈しつつ、やや前方にゆっくり倒します。
バレエの「ポール・ド・ブラ」(腕の動き)のポーズです。首の動きを連動させることにより美しく気持ちよいストレッチングになります。僧帽筋や広背筋という首や背中の筋肉がよく伸びます。
4.オフィスでもできる!椅子を使って行うストレッチ
4−1.大臀筋・中臀筋のストレッチ
2−4でご紹介したストレッチを椅子を使って行います。ヒザに不安のある方はこちらを試してみてください(痛みのある場合はストレッチを中止してください)
ヒザの上に足を乗せて外に倒し、胸をはってお腹から近づけて行く。お尻の外側に適度な伸び感を感じたら、15~30秒間をメドに呼吸をしながらキープします。NG例は、背中が丸まって骨盤が後傾してしまい、ストレッチがあまり効いていないものです。
上記ストレッチをねじって行うと、効くポイントが中臀筋になります。対側の肩が膝に近づく方向で、カカトにつくように伏せて行きます。上記右の写真では、左肩が右ヒザにつくように捻りながら折り曲げます。
※顔が下を向いて、背中が丸くなると、効果がありません。
4−2.胸・肩~腕前面のストレッチ
ルーブル美術館にある「サモトラケのニケ」のようなポーズです。バレエの白鳥をイメージして、上腕二頭筋・胸筋などをゆっくり動かしながらストレッチングしていきます。
腰が反りやすいストレッチなので、椅子に座って骨盤が後に傾いた状態で行うことをお勧めします。また、肩周辺や脱臼の既往歴のある方、四十肩五十肩、肩関節に痛みが出やすい方は無理をしないでください。
①あごを引き、腕を外側から外転してあげて行き、手の甲が内側に向く様にして耳の後ろで手を合わせます。
②顔をあげ、ゆっくり腕を背中で羽を広げるように開いてゆきます。胸まわりの筋肉が伸びて行きます。(※目安としては4カウント位かけてゆっくり)
③ナナメ後方(ニケの羽のイメージ)で手首を内側に折り曲げ、小指側に力をかけて開くことで、上腕二頭筋もストレッチされます。呼吸をして4秒ほどキープしたら最初ののポーズへゆったりと戻ってゆきます。
4−3.腕の後側のストレッチ
よくあるストレッチですが、絶対にはずせない重要なポイントがあります。
片方の手をあげて、手の平で肩甲骨か背骨あたりを触るようにして、反対の手でヒジを押さえ、後ろにゆっくり引いていきます。指でヒジの皮膚をすこしつまみ上げるようにすると筋膜にもストレッチがかかり、より伸び感が出てGOODです。10〜20秒を2〜3セット。
※真上まで腕を上げると肩の付け根に挟まったようなつまり感が出る方は、少し外に開いたまま、後方に引いていくと良いです。
立った状態でもできます。その場合は腹式呼吸で、息を吐きながらお腹を凹ませましょう。骨盤を前に傾けて腰を反らせると、痛める原因になるので注意してください。
4−4. 内転筋のストレッチ
イチロー選手が打撃前に行うような、開脚してのストレッチです。
椅子に浅く開脚ぎみに座り、肩をひねりながらうち太ももを開くようにストレッチ。肩や背中も気持ちよい運動です。足を大きく広げ、つま先と膝の方向を合わせ…
胸を張りながら(視線は前)うちももを伸ばします。肩も背中も気持ちよいストレッチです。肘は反張しないよう、曲げて行って下さい。気持ちよい伸び感のあるところで呼吸をしながら15~30秒キープです。
※妊娠中や出産後すぐなど、恥骨の結合部分がゆるんでいる方は、引っ張られて痛みが出ることがあるので、このストレッチングは行わないでください。基本的に、妊娠中のストレッチは、ホルモンの作用で体がゆるんでいるために、お勧めしません。むしろ骨盤を締めるゆるやかな筋トレ系エクササイズを行ってください。
5.安全で効果的!ツールを使うストレッチ
一般の方にはもちろん、本職のバレリーナにも自信を持っておすすめする、ツールを使ったストレッチです。ツールなしで行うよりも安全で効果的なので、ストレッチポールをお持ちの方はぜひ試してみてください。
5−1.体幹(特に腸腰筋)のストレッチ
体幹のインナーにある腸腰筋のストレッチは非常に重要な部位でありながら、ここをストレッチしようとすると、どうしても骨盤の前傾や、腰椎前弯を招きやすく、腰痛リスクが高くなるものが多いです。
しかし、ストレッチポールを用いることで誰にでも安全に簡単にストレッチができる方法をご紹介します。
腰の下にストレッチポールを当て、片方の太ももが胸につくくらいしっかり抱きます。(片方の足をしっかり胸に付け背中を丸めることで骨盤が後ろに傾いた位置となり、腰痛リスクが減ります)
ストレッチ側の足を宙に浮かせ、地面と平行になるようにまっすぐ伸ばします。
ゆっくり足の重みで腿の付け根あたりが心地よく伸びたと感じたら、呼吸をしながら15~30秒キープします。ポールで落差をつくり、足の自重で伸張感のコントロールがしやすく、伸び感が感じられやすいストレッチです。
5−2.ハムストリングのストレッチ
そのまま、太ももの裏(ハムストリング)を伸ばします。
膝をまげてストレッチポールにのせ、太ももと胸をくっつけたまま、ゆっくりポールを遠ざけていきます。(多少背中が丸まっても、膝が曲がったままでもストレッチがかかります)。気持ちよい伸び感のあるところで呼吸をしながら15~30秒キープです。
反対側の足の形はこんなかんじでOKです。※椎間板ヘルニアの既往歴がある方、下肢の痺れや放散痛(原因部位から離れた場所へ走ったり散るように出る痛み)などを感じたらすぐにエクササイズを中止してください。
6.超上級編ストレッチ
バレリーナのストレッチというと、このような開脚をイメージされるかもしれませんが、かなりの経験を必要とします。
骨盤がまっすぐ立てられない方は…。
お尻の下にクッション等を折りたたんで置く(写真ではストレッチポールハーフカット)と、少し骨盤が立てやすくなります。
胸を張って骨盤前傾したほうが効きやすいストレッチですが、反りすぎて腰を痛めないように注意してください。
骨盤の形状が日本人は外国人に比べて角度が浅いといいます。生まれ持った骨盤や股関節の形状はストレッチでは改善しませんので、無理をして横に広げると股関節に大きなストレスがかかります。開脚であれば、90度くらいでも十分伸張感が感じられるのならそれで大丈夫です。その人なりに応じた角度にとどめてストレッチすることをお勧めします。
足を外転させ坐骨で座り胸を張ります。体幹をスクウェアに保ったまま(腰・肩の四点が四角を保つこと)、身体を歪めないように気を付けながら片手をあげます。スクウェアを保ったままのイメージで、股関節からしっかりと体を倒していきます。
さらに上の手を背中の方へまっすぐ倒していく(水平伸展)と、胸筋やわき腹のストレッチも加わります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回、藤野さんにバレエストレッチの「基本編」をご紹介いただきましたが、奥深いバレエの世界ではまだほんの一部だそうです。それぞれのストレッチにも、押さえておきたいポイントはありますので、ぜひ解説を参考に行ってください。また、興味がある方は、一般女性のための美姿勢づくりもおこなっているスクールの見学に行かれてはいかがでしょうか。
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