のどかな午後、お天気が良かったり、退屈な会議や授業の最中…。
「ふわぁああああああ……」思わずあくびですね。少々お疲れぎみだったり、ゆうべあまり眠れなかったかもしれません。
してはいけない、と思ってもしてしまうのがあくびで、止めようと思っても連続して出てしまいます。
どうしても止めたいと考えますよね。集中しようと思っても、なぜかまた「ふわぁああああああ……」。口を閉じても涙目になります。
このような止まらないあくび。実は脳の状態や機能に関係しています。
この記事では、その原理に基づいた「今すぐ止める方法」と「根本改善策」、また「長期間続く場合に考えられる病気の可能性」についてお伝えします。
あくびでお困りの方はぜひ参考になさってください。
1.あくび(欠伸)とは
あくびは、自分の意思とは関係なく、口を通常よりあけて口まわりの筋肉をストレッチする不随意の反射運動です。
眠いとき、また目覚め直後、退屈なとき、空腹および満腹のときに起こりやすく、また周囲の人があくびをすることで伝染して起こることが多いです。(あくびの記事を書いているときにもよく起こります。)
あくびをしている間に、中耳のアブミ骨筋筋が収縮し、頭の中からグワンワンワンといううなりのような音が発生します。あくびをするときには、腕、首、肩、背中などを一緒に伸ばすことが多いです。
2.あくびの原因とは
なぜ起きるか、またあくびをすることで何が解消するかについて、まだはっきりとはわかっていません。
古くから「脳が酸素不足に陥った時に、空気を多く取り入れるためだ」という説明が一般的です。
最近の研究では、「あくびをすると脳室内の温度が下がる」ことがわかりました。プリンストン大学のアンドリュー・ギャラップ博士が研究し発表しました。「私たちは、ラット、インコ、そして人間についてのデータを収集しました。それらのすべてが脳冷却仮説をサポートしています」(出典:WebMD Why We Yawn)。
これは以下のような原理と考えられます。
・あくびをすると、あごがストレッチされ、首、顔、頭の血流が増加する。
・息を深く摂取すると、脳からの脊髄液や血液の流れが強くなる。
・吸い込まれた冷たい空気がこれらの液体を冷却する。
また、気温が寒い室内にいるほうがあくびが起きやすいことも分かっています。相対的に体温や頭蓋骨内の温度が高くなるからかもしれません。
3.今すぐあくびを止める方法5選
さっそくあくびを止める方法をご紹介します。上記にある「脳を冷やすこと」にフォーカスした方法です。
3−1.鼻から深呼吸する
鼻から息を深く吸って、口から吐きます。 新しい研究が発表されましたが、酸素不足はいぜん有力なあくびの原因です。鼻から吸うことでより深く肺に空気が送り込まれます。
また冷たい空気は口から入るよりも、鼻からのほうがより脳に近く、冷却効果が期待できます。
もう一つのポイントとしては、胸を膨らませるのではなく、腹部や胃の中に空気が入るイメージで行いましょう。
3−2.頭部血行改善ストレッチを行う
運動をすることで、全身の血流が改善されます。おすすめはラジオ体操や四つ這い歩きですが、デスクワーク中は難しいでしょう。
以下の首ストレッチであれば、あくびと同様に首まわりの血流が改善されます。息を止めないで行ってください。
別記事「ガンコな首こり解消は「全方向伸ばし」!今すぐ実感7つのストレッチ」では効果的な首ストレッチの方法をご紹介しています。そちらの記事もぜひ参考になさってください。
3−3.冷たい飲み物を飲む
冷たい飲み物を飲むことで、体を一時的に冷やすことができます。
お好みで何でも良く、水、お茶、紅茶、コーヒー、ジュースを試してみてください。炭酸飲料でも構いませんが、ゲップの原因ともなりますので、会議中などは注意してください。
3−4.冷たい食べ物をとる
冷たい飲み物と同じように、冷たい食べ物はあくびを防ぐことができます。アイスやケーキはカロリー過多になります。寝不足の場合は、あくびが起きやすく、食欲も強くなります。
冷蔵フルーツ、野菜スティック、チーズ、ヨーグルトなどがおすすめです。
3−5.おでこを冷やす
頭を冷やすストレートな方法です。飲み物や食べ物でも効果が感じられない場合、氷のうや冷えピタシートのようなものがあれば、これがもっとも効果的です。
密着するように軽く圧迫すると良いでしょう。
4.生活習慣であくびを出しにくくする方法
日頃から眠気を感じてあくびが出る方は、呼吸や睡眠の質があまり良くない傾向にあります。この章ではその根本改善法をお伝えします。
4−1.仮眠をとる
眠い場合は寝て睡眠不足を解消する、という方法です。一般的な生活では、午後2時くらいに副交感神経が優位になり、眠気を覚えるのが普通です。このタイミングで20分までを目安に仮眠をとることで、頭がスッキリし、あくびを減らすことができます。
時間的に難しい方は、昼食後の休憩時間内でもいいでしょう。仮眠のとりかたについては別記事「眠気をふっとばす15分仮眠!午後の能率をアップさせるコツ」にて詳しく紹介しています。
4−2.腹式呼吸を体得する
腹式呼吸は、横隔膜をよく使った呼吸法で、体内の酸素流量を増加させる方法です。
呼吸が浅い方は、横隔膜があまり上下せずに、肋骨の動きも悪いことが多いです。練習することでマスターできますので行ってみましょう。
良い姿勢になります(立っても座っても可)。胸に片手を、下腹に片手を置きます。鼻を使って呼吸します。 息を吸った時に、胸に置いた手は動かず、お腹の手が、お腹の膨らみに合わせて動くようにします。
五つ数える間、キープしておいて、息を吐きだします。息を吐く時には、お腹が凹むようにしてください。5〜10回繰り返します。 少なくとも1日に1回はこの練習を行います。
4−3.規則正しい生活に努める
体は概日リズムと呼ばれる24時間周期で動いています。起きる〜食べる〜活動する〜休む、といった一日の周期を守り続けることで、自律神経が整い、日中に眠気を感じにくくなります。また入眠時はすみやかに深い眠りに落ちるようになります。
毎日ほぼ同じ時間に起き上がり、眠りにつくようになさってください。 体はこの睡眠と覚醒のサイクルに適応し、午前中はより活動的に動けるようになります。また、睡眠時間は、毎日7〜8時間確保するようにしてください。
週末も平日と同様のサイクルで活動します。休日に夜更かしして遊んだり、昼までダラダラ眠るようにしていると、月曜日にかえって疲れを感じることになります。
睡眠の質を改善する方法については別記事「睡眠の質を高めて目覚めスッキリ!改善のために最も効果的な5つの方法」で詳細に解説していますので、そちらも参考になさってください。
4−4.歩く機会を増やす
軽い運動を行ってください。 あまりにも座っている時間が長いと、かえって疲労感が増すことがあります。 デスクワークの方は、休憩時には散歩したりラジオ体操などの運動を行うようにしてください。
また一駅分多く歩いたり、階段を活用することもおすすめです。肉体疲労を感じている日も、一日中寝ているのではなく別の種類の軽い運動を行うことをおすすめします。
4−5.健康的な生活を心がける
疲労や睡眠の質の低下があくびの最大の原因です。より健康的であれば、疲労を感じにくくなります。
普段から、疲れやすい、もしくは一日中疲れていると感じる場合は、良い食事をとり、運動を行ってください。週に数回、20分運動を行うだけで約6週間後には疲労感が軽減したという研究があります。
食事も、高糖質なものばかりではなく、栄養バランスが良い天然のものをとるようにします。
5.ごくまれにある病気サインの可能性
一分間に一度以上起こる場合、さらにそれが数十分、数時間、数日継続する場合を「過度のあくび」と言います。あまり気にしないでいいものと、病気が原因になっている可能性のものがあります。
気にしないでいいものは、
・自分で疲労や睡眠不足が原因だと判断できる
・上記を解消することで治まる
・生活に大きな支障をきたすほどではない
・他に心当たりや既往症、慢性疾患、薬の日常的な服用がない
などの例です。上記に当てはまらなく二週間以上継続する場合は、病気の可能性も疑います。この章では、どんな病気が過度のあくびを引き起こすか解説します。
5−1.睡眠時無呼吸症候群またはナルコレプシーなどの睡眠障害
いびき体質の方で、夜中にいびきが止み、その間呼吸も止まっている状態を呈するのが睡眠時無呼吸症候群です。寝てはいるが、酸素が足りずに十分な疲れが取れません。心筋梗塞や脳梗塞の原因ともなります。
ナルコレプシーは、日中、場所や状況に関わらず、強い眠気が起き、どうしようもなくなる病いです。ともに睡眠障害の治療を行うことが必要になります。
5−2.特定の医薬品の副作用
花粉症などのアレルギー薬や、うつ病・パニック障害時によく使われる選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)のような抗不安症の薬は、副作用として眠気を催す場合があります。
投薬が過度のあくびを引き起こしている場合、薬の量や薬そのものを変更する前に医師に相談してください。 医師の承認なしに薬の服用を止めるべきではありません。
5−3.ごくまれにある重篤な疾患
以下の疾患の症状の一つとして、過度なあくびが出ることがあります。
・脳腫瘍
・心臓発作
・てんかん
・多発性硬化症
・肝不全
原因疾患の治療が最優先です。心当たりがないにも関わらず、過度なあくびが継続する場合は、医師の診察を受けてください。
6.あくびの雑学
あくびに関するコラムをお伝えします
6−1.あくびがうつるは本当?
清少納言は「枕草子」で「見ならひするもの、欠伸」と書いています。このようにあくびが伝染することは昔から知られていました。このことは研究者の間でも「事実である」とされています。
これは、呼吸中枢が神経活動レベルと関係しているからと考えられています。脳の機能が低下している(注意力、集中力散漫)場合は、大脳皮質や視床下部からの影響を受けやすく、見たものをマネするような行動を取る場合があります。
疲れている時に誰かがお菓子を食べ始めると、自分まで何か口にしたくなるのと同様のことがあくびでも起きているのです。
6−2.動物もあくびをする
前述した研究ではラットやインコまで対象にしました。これ以外にも、陸上で暮らす生き物のうち、肺と脳、アゴがあるものはあくびをする可能性が高いです。チンパンジー、イヌ、ネコ、トリ、カエル、および一部の爬虫類においては観察されており、ほ乳類、鳥類、爬虫類、両生類の全てで行う可能性があります。また人間同様に伝播することも分かっています。
6−3.あくびで刑罰を受けた例
田中正造は、足尾銅山鉱毒事件などで有名な帝国議会議員です。明治35年、警察と農民の衝突で起きた川俣事件の裁判中に大あくびを連発し、態度が悪いとして官吏侮辱罪に問われ、裁判にかけられ40日間の収監となりました。
また、09年米国イリノイ州シカゴの裁判所で、クリフトン・ウィリアムズという男性が裁判官より禁固6ヶ月を言い渡されました。彼は、薬物犯罪で起訴された被告人のいとことして傍聴人で出席していたところ、大あくびをたびたび行い、これが法廷侮辱罪となりました。
肝心のいとこは保護観察2年間ですから、ウィリアムズのほうが重罪となったのです。裁判の進行を妨害するほど大きな音だったとのことで、睡眠障害などの持病があったのかもしれません。
6−4.あくびによる事故に注意
米国・国道交通安全局(NHTSA)は、米国で毎年56,000件の睡眠関連の自動車事故が発生していると推定しています。これにより4万人が軽・重傷を負い、1,550人が死亡しているとしています。全交通事故のうち17%が睡眠関連だという調査もあります。
時速100kmで走行する場合、5秒間のあくび中に走る距離は138メートルにもなります。運転中の眠気には特に注意してください。
7.まとめ
あくびが止まらない場合にできる対策をお伝えしました。一般的なあくびは、睡眠や疲労の改善で治めることができますが、まれに病気の可能性があります。その際は、躊躇せずに医師の診察を受けてください。
この記事が、あくびを減らすことに役立てば幸いです。
コンテンツの全部または一部の無断転載を禁止します。(C)Imaginear co.,ltd. co.,ltd. All rights reserved.