腹横筋を鍛えたいという方は大勢います。
その目的は、お腹を凹ませたかったり、腰痛を予防したいという方が多いようです。
腹横筋はお腹の深層部にある筋肉で、自分ではなかなか感じることができません。しかし人体においてはとても大切な役割を果たしています。ですから、健康的な生活を送りたい方は他のトレーニングに加えて、ぜひ腹横筋を鍛えることも行なっていただきたいのです。
もちろん筋肉ですから、鍛えることで強化できます。しかし、目に見える腕や胸の筋肉と違って鍛え方が少々異なるのです。そしてそのような筋肉と異なり、肥大化させる必要もあまりありません。
では、どうすればいいのでしょうか。今回は、この独特な筋肉のメカニズムを解説し、効果的なトレーニング方法をご紹介いたします。
目次
1.腹横筋とは
まずこの目に見えず、感じにくい筋肉のメカニズムについて解説します。
1−1.位置。お腹の深層部にある
お腹には主に3つの筋肉があります。表層側から・腹直筋 ・腹斜筋 ・腹横筋です。筋繊維が横に走るので腹横筋だと思っていただいて構わないでしょう。
正常であれば、筋肉は収縮(ちぢみ)と弛緩(ゆるみ)を繰り返します。例えば腕の筋肉であれば物を持ち上げるときには硬くなり、力こぶができますが、脱力状態ではゆるんで柔らかくなっています。
腹横筋も同様に収縮と弛緩があるのですが、目に見えず動きもわかりにくいので感じることはなかなか難しいものです。それでも感じることができる方法があります。ぜひやってみてください。
骨盤の前部に骨の出っ張りがあります。ここから指2本分くらい下で内側のところを、人指し指で軽く押します。押しながら周辺より柔らかく、やや凹みがちな部分を見つけてください。
指で押したまま、息を吐きながらお腹を膨らませます。このときに内側から盛り上がってくる筋肉が腹横筋です。水平レベルからさらに盛り上がってくるときには内腹斜筋が作用しています。息を吸ってお腹を凹ませていくと、この部分も合わせて凹んでいきます。
仰向け寝で行う方が感じやすいです。また軽く咳をしてみると、ポコッと膨らみます。
1−2.腹横筋がうまく機能しないことのデメリット
腹横筋を使うことができていないと以下のようなデメリットが生じます。
・猫背などの悪い姿勢
・内臓下垂
・スポーツパフォーマンス低下
・非効率的な動き
・腰痛の発症
・ぽっこりお腹
・X脚、O脚
これらがなぜ起きるのか次章にて解説します。
1−3.腹横筋の機能と役割
腹横筋は、体表面から見えませんが、人間の活動にとって大事な役割を果たしています。
まず腹横筋は、インナーユニットの他の筋肉(横隔膜、多裂筋、骨盤底筋群)と協働し、腹腔内圧を保つ働きをしています。このことは以下の役割に寄与しています。
・姿勢の安定化
・内臓位置の適正化
・呼吸の適正化
腹横筋が働かないと、背骨や骨盤が不安定となります。このことで姿勢が悪くなり、また腰に負荷がかかりやすくなることで腰痛を引き起こしやすくなります。
骨盤の傾きは、筋肉や骨格にも影響しX脚やO脚の原因ともなります。
腹腔内圧が保たれないと、お腹が前に出るようになり(ぽっこりお腹)、内臓下垂も発生させます。
腹横筋が働かないと、人体はこの役割を腹斜筋、腹直筋を始めとする別の筋肉でカバーしようとします。それらの筋肉は本来別の役割(動きのための出力を発揮するなど)があるので、そちらの能力も低下してしまうのです。
これらのことから、外側の筋肉だけではなく、内側の筋肉を鍛えることも同様に重要なのです。
1−4.「鍛える」意味が他の筋肉と違う
このような腹横筋ですが、鍛えることでムキムキになるわけではありません。むしろ「正しく働かせられること」と「よく動くように活性化させてあげること」がこのトレーニングの目的となります。
端的には、以下のようなことができることを目指します。
・インナーユニット全体を使った深い呼吸を行う
・腹腔内圧を高めてお腹を引き込んだ状態でキープする
・正しい姿勢を保持する
1−5.単純な腹筋運動では鍛えることが難しい理由
腹横筋を鍛えること=腹筋運動をする、ではありません。一つの運動で腹直筋も腹斜筋も腹横筋も鍛えることができるのが理想的ですが、かなり高度な筋運動の意識が必要となります。無意識のまま一般的な腹筋運動を行えば、腹直筋のみ鍛えられることになるでしょう。そしてこの方法は、お腹を前に押し出しがちになってしまいます。
腹横筋を鍛えるには、お腹を前に出さずにキープすることが重要です。
腹横筋の働きで腹腔内圧を高め、そのうえで腹斜筋、腹直筋と上手に連携させていくようになるのが理想的なのです。このコツが掴めるようになるまでは、まずは腹横筋をしっかり働かさせるトレーニングを行うようにしましょう。
2.腹横筋のトレーニング方法3選
いよいよ腹横筋のトレーニングをご紹介します。一見地味なトレーニングですが、強力なコアや良い姿勢と呼吸を得るためにはぜひおこなっていただきたいものばかりです。
2−1.ドローイン
写真の通り、ヒザを立てて仰向け寝します。まずは自然な呼吸を行います。
■逆腹式呼吸
息を吸う時にお腹の周囲が縮む呼吸です。鼻から息をスーーーッとゆっくり吸いながらお腹を凹ませていきます。難しいと感じる方は、自然呼吸からハッとかホッと息を吐きます。そこから息を吸うとともにお腹を凹ませていくとうまくいきやすいです。
再度、全身をラクにして自然な呼吸を行います。
■腹式呼吸
今度は鼻から息をゆっくり深く吸いながらお腹を膨らませていきます。膨らみきったら息を吐きながらお腹を凹ませていきます。
※腹式呼吸が難しい方 脱力と深い呼吸が足りない場合が多いです。よくリラックスして深い呼吸を行ってください。カラダを左右に揺すったりしてもかまいません。
※それでも難しい方 一度ベッタリとうつ伏せになってみましょう。再度脱力します。息を吸いながらおへそで床を押し、お腹を膨らませてください。これが腹式呼吸の感覚です。仰向けでも行えるように少し練習しましょう。
この腹式呼吸を繰り返したのちにそのままドローインを行います。
■ドローイン(強制呼気)
腹式呼吸の流れのまま、鼻か口で息を細く長く吐きながら、お腹を凹ませていきます。
お腹から空気が出きった!というところでお腹をキープします。息は浅い胸呼吸で繰り返します。最初は10秒キープから。徐々に時間を延ばし30秒を目指してください。
息を細く長く吐き出す時には、おへそ周辺の一点だけを中に引き込むのではなく、お腹の前面を面のまま、ゆっくりじんわりと息を吐きながら少し凹ませ、お腹の圧を高めていきます。
最後にもう一度自然な呼吸を行って、やる前との変化を感じてみてください。
この呼吸法をマスターすると、椅子に座っている時や立っている時も行うことができます。その時は逆腹式呼吸とセットで行ってください。
2−2.ハンド&ニー
腹横筋を始めとするインナーユニットと手足の連動をはかるトレーニングです。
四つ這いの体勢から、お腹に力を入れて片腕をあげます。まずはこの片手上げの態勢をキープすることから行なってみましょう
ふらつかないでできるようになったら反対の脚をあげます(右腕をあげたら、左脚をあげる)。10秒キープして、脚と腕をおろし、反対側も行います。2〜3セットを行ってください。腰が反らないように注意してください。
【応用編】
上記のポーズがラクにできる方は、あげたヒジとヒザをくっつける動きをしてみましょう。
2−3.プランク
体幹トレーニングの代表的なエクササイズです。腹横筋をしっかり固めてカラダを1枚の板のようにしましょう。
腕立て伏せの姿勢から、肩の下にヒジが来るようにして床にヒジをつきます。頭からおしりまでが一直線になるようにしてお腹が落ちないように姿勢をキープ。呼吸は自然に繰り返してください。30~60秒を目安に行いましょう。
初心者の方は・腹腔内圧が高められないと腰を痛める原因になります。上記の姿勢がキツい方は両ヒザをついて行なってみてください。そこから片ヒザだけでできるようになることを目指します。
アレンジメニュー・プランクがラクにできるようになったら、片足を床から20cm程度浮かしてみましょう。つま先まで伸ばしてください。さらにお腹を鍛えられる運動になります。
2−4.トレーニングのコツ
実施に際しては以下の点に留意してください。
・いずれもゆっくり行う 額に汗をかいたり呼吸が乱れるほどの強度で行わないようにします。
・肋骨下部の広がりに注意 お腹を引き込もうとして肋骨下部が外や前に広がってしまうことがあります(リブフレア)。呼吸エクササイズなどのときはここが広がらないように手を当てて感じながら行うといいでしょう。リブフレアのデメリットについては以下の記事でご紹介しています。
「リブフレアに注意しよう」腹筋を鍛える最善方法とは・シックスパック&腰痛予防の腹トレ10選
・骨盤をニュートラルの位置で保つ 骨盤の傾きが適正でないと腹横筋が働きにくいです。例えば腰を反ったり丸めるような形になると狙った効果が得られません。
・トレーニングの開始時に行うことがおすすめ あらゆる練習や筋トレなどの一番初めに行うことで、姿勢や呼吸、動きの適正化が図られます。
・椅子に座った状態や立った状態でもできることを目指す お伝えしたエクササイズは仰向け寝や四つ這いの姿勢で行うものです。日常生活では座ったり立ったりの「抗重力下」で過ごすことが多いです。この状況でもできるように、腹圧を高めての片足あげなども行うようにしてください。
・できれば毎日行う 筋肉痛などにはなりにくいので、毎日継続的に行うようにしてください。そのことで効果が現れます。お腹を引き込む運動は、気が付いた時にいつでも行うようにしたほうがいいでしょう。
3.ツールを使用した効果的な方法
ここまでは今すぐ行える運動をご紹介しました。腹横筋は無意識かつ自然に働くことが望ましいのですが、なかなか分かりにくかったのではないでしょうか。
ストレッチポール®やひめトレ®を使用すると、意識しなくても自然に働くことが体感できます。ここからはそれらを使用した効果的な運動をいくつかご紹介します。
3−1.ストレッチポール®足あげ運動
ストレッチポール®の上で仰向けで縦乗りします。
ヒザを立てたり、伸ばしたりリラックスできる態勢から片足を写真のように直角に持ち上げます。カラダはバランスを取ろうとして自然に腹横筋が働きます。片手上げ、体格の手足上げなども行なってみてください。
3−2.ひめトレ®の基本的な運動
座った態勢で、手軽に腹横筋の働きを活性化できるのが「ひめトレ」です。ひめトレはインナーユニットのひとつである骨盤底筋群にアプローチするツールですが、腹横筋は骨盤底筋と連動します。ひめトレを使用することで腹横筋も働きやすくなるのです。
ひめトレの上に座り、リラックスします。胸の前で手を合わせ息を吐きながら真上に伸ばしていきます。息を吐ききったら胸の前に戻します。
ひめトレについての詳しい情報は、当ブログ内のこの記事より、エクササイズの内容をさらにお知りになりたい方はyoutubeコアコンファンチャンネルの「【ひめトレ】代表的なエクササイズ」をご覧ください。
4.まとめ
腹横筋の機能とトレーニング方法についてご紹介しました。腹横筋を鍛えるためには、日頃から下腹がぽっこり出ないようにお腹をキープしておくことです。反対に、お腹が出てしまっていたら腹横筋が働いていない=腹圧が高まっていないことと判断できます。
全力で固める必要はありませんが、3割程度の力でお腹をキープできていると良いでしょう。
これらの方法で、適正なインナーユニットの働きと、それが基盤になった健康的なカラダを手に入れられることを願っています。
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