スクワットは足をやや開き、しゃがみこむような動作をするトレーニングです。腕立て伏せや腹筋運動に並ぶ代表的なトレーニングの一つと言えるでしょう。
このスクワットの効果について知りたい方が大勢います。その動作から「足腰を鍛える」イメージはあるでしょうが、それ以外にもスクワットの効果=メリットはたくさんあります。
またその効果を最大に引き出す正しい方法があります。ただやみくもにしゃがみ運動を行なっても、効果が得られないばかりかケガを引き起こすリスクがあります。
そこで今回は米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)の三田貴史さんにスクワットの効果と安全で効果的な方法について寄稿していただきました。アスリートや運動愛好家はもちろん、体力維持や健康増進を考える方にとってもおすすめな内容ですので、ぜひ参考になさってください。
目次
1.スクワットの直接的効果
まず、スクワットを行うことによる直接的な効果について解説します。
1−1.筋力アップ効果
スクワットをすることで全身の筋力アップが期待できます。
スクワット動作は膝を伸ばす筋肉群(大腿四頭筋群)と股関節を伸ばす筋肉群(大臀筋、ハムストリング)の二つの筋肉のグループが主に導作する筋肉群(主導作筋)と言われています。さらに、動作中の姿勢を維持するために背筋、腹筋などにも効くのでスクワットは全身運動と言えるでしょう。
また、スクワットをすることでより多くのカロリーを消費することができます。
スクワット動作で使用する大腿四頭筋とハムストリングと大臀筋は、いずれも体の中では大きな筋肉です。これらの筋肉を動かすと多くのカロリーを必要とするので、結果的にカロリー消費につながるのです。
1−2.基礎代謝アップ効果
大きな筋肉が集まる下半身を鍛えることで基礎代謝を上げることもできます。これは何もしなくても体の中で生命維持のために消費されるカロリーが増えるということです。
スクワットを継続的にやることは単純な筋力アップだけでなく、シェイプアップにもメリットがあります。大きい筋肉を鍛えて、基礎代謝が向上することでエネルギー消費が効率よく行われ、脂肪は燃焼しやすくなるのです。
ベーシックなスクワットは大腿部前面と後面、臀部の筋肉を鍛えるエクササイズです。また、スクワットをやる際の足の幅や、負荷大小、各関節の角度によっても効きやすい部位が変化していきます。使い分けることによってよりエネルギー消費も増大するでしょう。
2.スクワットの間接的効果
ここまでは一般的にも比較的浸透してるスクワットのイメージではないでしょうか。実はスクワットの効果はまだまだ考えられるのです。
2−1.効率良い動きができるようになる
その一つは、効率の良い身体の使い方を獲得できることにあります。
例えば、腰、膝に負担のかけない動作ができるようになるということです。
ここから少しスクワットの動きの因数分解をしてみましょう。
スクワット動作に必須の身体の動きは股関節の屈曲伸展、膝の屈曲伸展、足関節の底屈背屈動作です。
歩く、しゃがむ、立ち上がるなど、日常の中の様々な動きで、各関節がうまく使えることでなめらかな身体の機能的な動きを可能にしています。スクワットを行うことで、これらの機能的な動きを練習することができるのです。
2−2.QOLの向上(ロコモ予防)になる
スクワットは膝の伸筋群と股関節の伸筋群を鍛える運動であり、人々のQOL(生活の質)を改善する効果が期待できます。
ロコモティブシンドローム(ロコモ、運動器症候群)のテスト項目の一つに立ち上がりテストというのがあります。
これには、
「片脚で40cmの台から立ち上がることができる。」
「両足で20cmの高さの台から立ち上がることができる。」
などの判定基準があります。
これを無理なく行えるようになるためには、スクワットのエクササイズが有効な手段であると言えるでしょう。
2−3.腰痛や肩こりなどの改善が期待できる
スクワットでは体幹を鍛えることもできます。
スクワット動作中に姿勢を維持するために大事な筋肉となるのが、腹筋、背筋(腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋、脊柱起立筋)です。
これらは、体幹の筋肉であり、上半身と下半身をつなぐ大切な部分です。
これらの筋肉は普段の私たちの姿勢を保つためにも働いている筋肉ですので、スクワットを続けることで適切な姿勢を手に入れることも期待できます。
肩こりや腰痛などが「負担のかかる姿勢」から起きている場合は、適切なスクワットを続けることでそれらの症状が軽減することも十分考えられるのです。
3.スクワットをやるべき人
老若男女問わず、正しくスクワットすることでその恩恵を受けられます。
前の章で述べた通り、筋力アップはもちろん。姿勢改善や、腰痛、膝痛を含む疼痛緩和も期待出来るからです。
例えば、
・筋力アップを狙う人
・スポーツやパフォーマンスアートのパフォーマンスを向上させたい人
・運動不足を解消したい人
・シェイプアップを望む人
・以前の怪我や運動器疾患(特に足関節、膝関節、股関節)により動きに不安を感じており、その再発予防を望む人
・ロコモを予防したい人
・日々の生活に起因する猫背などを姿勢を改善したい人
などなど挙げればキリがありませんが、共通しているのは、スクワットをすることで効率の良い動きを獲得することでメリットがある人です。
前章で説明した通り、直接的効果と間接的効果のそれぞれを望む人がスクワットをやるべきと考えます。
逆にスクワットをするのを注意した方がいい人は、股関節を動かすのが苦手な方、または背中の安定性が乏しい人。これには腰が反りやすい人と丸まりやすい人も当てはまります。
何故これらは注意が必要なのかは次章でご説明しましょう。
4.正しいスクワットの方法とコツ
いよいよスクワットの方法をご紹介します。実は、スクワットにはいくつか種類があります。それは股関節と膝関節を曲げる深さと向きによって変わります。
今回は「安全で効果的」なスクワットを紹介します。
4−1.正しいスクワット、2つのポイント
安全に効果的なスクワットを行う上で二つのポイントを押さえておきましょう。
①股関節を曲げる
②足部全体に荷重をする
4−2.具体的な方法
実施の際は以下の点を意識してください。
1、スタート姿勢は足幅を肩幅ほどに立つ。
ポイント1:目線は下に向けずに遠くに。
ポイント2:つま先はまっすぐ正面に向けるか、若干開き気味(5~10度)
ポイント3:膝のお皿とつま先を同じ方向へ向ける
2、お尻を後ろに引きながら、上半身を前傾させると同時に椅子に腰をかけるように膝を曲げる
ポイント1:一連の動作の中で脊骨が丸くなったり、反ったりしない
ポイント2:膝がつま先と同じ向きを向き続けていること
ポイント3:足部全体に荷重するためには、母趾球、小趾球、踵骨(カカト)の3点に均一に体重をかけること
3、膝を曲げるのは90度まで。足の裏全体で床を押すようにスタート姿勢に戻る
ポイント1:一連の動作の中で脊骨が丸くなったり、反ったりしない
ポイント2:膝がつま先と同じ向きを向き続けていること
ポイント3:足部全体に荷重するためには、母趾球、小趾球、カカトの3点に均一に体重をかけること
4−3.NGなやり方
・膝が外に開く
・膝が内側に入る
→足からの力の伝達が膝で捻れてしまい、膝に余計なストレスをかけてしまい、ケガの原因になる可能性があります。
・腰が前に曲がる
・腰が後ろに反る
→腰が真っ直ぐ(脊柱のニュートラルポジション)でない無理な姿勢を続けることは腰周りへストレスをかけてしまいます。
・頚椎が曲がる
・股関節が屈曲せずに、膝を前に突き出すように曲げる
→重心が前にずれることで膝にストレスをかけてしまいます。
5.スクワットの正しい動きをラクにマスターする方法
続いてスクワットをより分かりやすくアレンジしたトレーニングをいくつかご紹介します。
■四つ這いでのヒップヒンジ
スクワットに必要な股関節、膝関節の屈曲と脊柱の安定性を練習します。
肩関節の真下に手、股関節の真下に膝がくるように四つ這いの姿勢になり、つま先は立てずに楽にします。脊柱が曲がらず真っ直ぐを維持したまま、お尻をかかとの方へつけるように股関節を曲げます。
そして、元の姿勢に戻ります。
■筋力が少ない方向け。椅子を使う方法
両手でイスの背もたれを持ちバランスをとりながら、スクワットをしていきます。この時も前傾と足部への荷重は忘れません。
■椅子を使い、下へ降りた時の負荷を減らすスクワット
どの程度まで低くすればいいのか分からない人向け。イスの前に足の長さぶん離れて立ち、上記のスクワットを行います。お尻がイスに触れる程度まで膝を曲げましょう。そのまま座ってしまわぬように気をつけて、両側の足にしっかりと荷重を維持したまま股関節と膝を伸ばします。
6.キツくないスクワットを選ぶことが大事
一口にスクワットと言っても、様々なスクワットがあります。全てに共通することとして、スクワットとは「しゃがむ」という意味であり、既出の立ち座り動作の延長であることです。
スクワットの方法として、足幅が広いもの、つま先の向きが外向きなもの、真っ直ぐなもの、膝の曲げる角度が浅いもの、深いもの…とあげればキリがありません。各々の身体にあったスクワットが存在します。
ここで紹介したスクワットはとてもベーシックなものですが、個々にあった「キツくない」スクワットをすることが大事なのです。
7.スクワットを難しくしてしまう要因
筋骨隆々な人がやるものと思ってしまったり、以前スクワットをやって体を逆に痛めてしまったりしたことによる苦手意識がスクワットから遠ざかってしまう心理的な要因かもしれません。
また、身体的な要因として正しいフォームでスクワットができないというのが挙げられると思います。先ほども申し上げましたが、個々にとっての難しくないスクワットは違うのです。
極端な話、隣の人がやっているスクワットがその人にとってはやりやすいやり方であっても、自分にとっては難しいやり方であるということもあり得るわけです。
あの人はスクワットをしてどんどん効果が出ているのに、同じ様に真似して続けている私はどんどん膝が痛くなっていく…ということになりかねません。
8.まとめ
スクワットの効果と効果的な方法をお伝えしました。正しいスクワットは「もも前」「お尻」「もも裏」の筋肉に満遍なく負荷がかかることを感じられるものです。また、股関節を曲げることを意識して行なってください。
ヒザが痛くなったり、一部にしか負荷を感じなかったりする場合は、適正に行えていない可能性があります。個人個人によってちょうどいいスクワットは違いますが、お伝えしたポイントに「効いている」と思われれば、トレーニングの効果が得られています。物足りないようでしたらより負荷がかかる方法を洗濯してください。
この記事が参考になれば幸いです。
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