「もっとスタミナがほしい」と多くの方が考えます。
選手であれば「試合の時間いっぱい走り回れるようになりたい」「終盤になっても落ちない体力が欲しい」「1日に何試合もこなせるようになりたい」と思います。
主婦やサラリーマンであっても「疲れしらずの体が欲しい」と思うでしょう。
スタミナとは、競技や日常生活でハードに動いてもまだ動けるタフネスさや、疲労回復能力のことをいいます。そのためにカロリーのある食事をとったり、長距離走を行ったりしているかもしれません。
それは間違いではありませんが、もっと効果的な方法があります。そこでこの記事では、スタミナを身につける方法をご紹介します。疲れやすい、と感じている方はぜひ参考になさってください。
目次
1.スタミナを構成する要素とは
「タフネスさ」や「疲労回復能力」これを分解すると、以下がスタミナを構成する要素になります。
・持久力
・心肺機能
・脳疲労の抑制
・エネルギーのストックと変換効率(代謝能力)
・十分で積極的な休養
・質の良い睡眠
となります。それぞれを解説していきます。
2.持久力を高める
スタミナの大きな要素が「持久力」です。まずはこれをアップさせる方法をお伝えします。
2−1.やみくもに長距離を走らなくてもよい
競技に適した走力を鍛えるようにしましょう。例えばサッカーでは一試合あたり10km走ることは珍しくありませんが、毎日10km走を行わなくても良いのです。サッカーの動きは、全力で走るのは10秒以内で、そこから体を切り返したり止まったりジャンプしたりということが中心となります。一度に長距離を走る練習よりも、こういう動きができるような練習を繰り返すべきです。
最も過酷な競技の一つと言えるボクシングでは、世界チャンピオンでも練習で15〜20ラウンドを行うことはないといえます。その代わりに、4分1ラウンドで行なったり、インターバルを30秒にしたり、スパーリングパートナーを数ラウンドごとに変えて行うということをします。
マラソン選手も近年は練習でフルを走ることはなくなったそうです。これは練習による疲労の蓄積を避けるため。練習のしすぎでパフォーマンスが落ちたり、故障をするリスクが高まるのです。2時間走りっぱなしという練習よりも、スピード走を取り入れるなど、種類が多く目的を定めた練習を行うのが現在の主流です。
2−2.心肺能力を高める
心肺能力とは、簡単に言えば血行と呼吸の能力のことです。それを高めるタフな心臓を作り、多くの酸素を取り込めるようにすることです。高強度な試合や練習でも、脈拍が低く抑えられれ(1回の心臓の動きで多くの血液を送ることができる)、1回の呼吸で多くの空気を肺に吸い込み吐き出せるようにしたいのです。
その方法は以下のようなものです。
・ペース走(運動不足や初心者の方は、なるべく長時間同じペースで走ったり泳いだりすることを目的にする)
・インターバル走(短めの距離をダッシュして、10〜30秒の休息を取り、再度ダッシュ。これを繰り返す)
・坂道ダッシュ走(インターバル走の一種。坂道を駆け上がり、下りをジョグで戻ってくる)
・クロストレーニング(有酸素運動と無酸素運動を組み合わせる。普段とはちがう球技や種目を行う)
そのほかに高地(標高1300m以上)で行うトレーニングもあります。これは空気中の酸素が薄いために、同じ運動でも肺の機能が高められる効果が得られるからです。縄跳びも心肺機能向上には効果的な練習です。
2−3.筋持久力を向上させるウエイトトレーニングの方法
持久力の一つに「筋持久力」があります。これは、同じ負荷を何度もこなせる能力です。同じ動作を繰り返すものもあります。例えばボート競技のローイングなどがあります。
米国では、「トレーニング変数」といってウエイトトレーニングの方法で、目的ごとの適切な負荷と回数を提言しているものがあります。NASM(National Academy of sports medicine)では、テンポと休息時間まで明示したものを伝えています。以下にご紹介します。
回数 | セット | 強度 | テンポ | 休息時間 | |
筋持久力 | 12〜20 | 1〜3 | 50〜70% 1RM | 4,2,1 | 30~60秒 |
筋肥大 | 6~12 | 3〜5 | 75〜85% 1RM | 2,0,2 | 45〜90秒 |
最大筋力 | 1~5 | 4〜6 | 85〜100% 1RM | 適度/速く動かす意識 | 3〜5分 |
パワー | 1~10 | 3〜6 | 30〜45% 1RM or 体重の10%以下 | 爆発的に | 3〜5分 |
強度とは「最大筋力の何パーセントの強さで行うか」です。1RMは1回あたり、ということでよろしいです。また、テンポは「あげるカウント数、止めるカウント数、戻すカウント数」の目安です。
これによると、筋持久力をあげるためには、
・比較的低負荷で、回数を多くゆっくりあげて2カウント止めて、素早く降ろす。セット間の休息も短め。その分セット数は少なくてよい
となります。
2−4.高強度間欠トレーニングを行う
インターバルトレーニングの一種です。疲労困憊になるまで運動を行い、インターバルを設けて再度行うトレーニングです。例えば10分間のエアロバイクを高強度で行い、15〜30分の休憩を挟みます。実験ではこれにウエイトトレーニングを加えることで、酸素消費量と摂取量が増えることがわかりました。
高強度の間欠的トレーニングで最大酸素借と最大酸素摂取量が増加した被験者に、同時にウエイトトレーニングを加えることにより、さらに最大酸素借が増加することが明らかになった。(出典:高強度の間欠的トレーニングとウエイトトレーニングが最大酸素借と最大酸素摂取量に与える影響 平井雄介ら https://ci.nii.ac.jp/naid/110001917326/)
これを短時間で行うものが「タバタ式トレーニング」と言われるものです。これは立命館大学教授の田畑泉先生が考案したもので、短い時間で持久力や瞬発力、筋力を同時に向上できるとして注目を集めています。
【タバタ式トレーニングの方法】
・20秒全力で運動したら10秒休息をとる
・それを繰り返し3〜4分1セットを行う。可能なら3~7セット行いたいが、1セットでも疲労困憊になる強度が理想
・複数の運動を取り入れる。自重であればスクワットやバービージャンプ、腕立て伏せ、ハンドレッドなど。3~4分間繰り返し続ける
・全力で3〜4分間こなすと疲労困憊になり、再開できないくらいで行う。数分の休憩後、もう1セットできるようでは「全力」とは言えない
タバタ式トレーニングの詳細は以下の書籍にありますので、取り入れたい方は参考になさってください。
3.脳=自律神経疲労を予防する
肉体の疲労を疲労として捉え、それに伴う指令を出しているのが「脳」です。疲れていると思えば「休め」「不足した栄養を補給しろ」「睡眠も必要」と全身にサインを送っているのです。
書籍「すべての疲労は脳が原因」を執筆した医師梶本修身先生は、その著書の中で、
過度な仕事や運動、メンタルの悩みなどを脳はすべて『ストレス』として受け取り、対処するためにさまざまな指令を体に送ります。強いストレスが続くと脳内の処理が増大して活性酸素が発生し、脳が酸化ストレスにさらされ本来の働きができなくなる。そのとき脳は『疲れた』というシグナルを体に送るのです
としています。脳、特に自律神経の疲労を軽減させる方法を説いており、それは
・質の良い睡眠をとる。就寝直前は安静にして過ごす
・疲労軽減効果のある食事をとる。鳥の胸肉など
・環境面では「ゆらぎ」が大事
・休日は何もせずダラダラ過ごす
としています。
しかし、自律神経は、積極的な行動に関わる交感神経と安静的な行動の副交感神経の緩急のリズムによるものですから、休日もなにもしないよりは、平日と同様の生活パターンで、1日の中で行動と安静を作る積極的休養を当ブログではお勧めします。詳しくは後述します。
4.スタミナ食は有効?
食事からスタミナ補給。よく聞くことだと思いますが、この場合のスタミナとは「栄養、カロリー」のことでしょう。どんな食事を取っても「筋持久力」や「心肺機能」を直接向上させる効果はありません。
ただ、エネルギー代謝を高めたり、エネルギー源になることで、疲労を回復したり失われた栄養を補給することは大いにあります。
例えば、豚肉の生姜焼きにタマネギ炒めを追加。これでご飯を食べるとします。
豚肉にはビタミンB1が豊富で、これにタマネギのアリシンが加わることで、アリチアミンに変化します。アリチアミンは、ご飯の糖をエネルギーに変える作用があり、これは脳のエネルギー源となり疲労を感じにくくさせます。
また、ビタミンB1の消化吸収を促進させて体内に長くとどまらせる働きがあり、疲労回復効果をさらに持続させる作用をもたらすのです。また血管を拡張して血行を促進する効果もあるとされます。
アリシンはにんにくやニラなどにも含まれます。昔からスタミナ食と言われるものにはこうした作用があるのです。
肉体疲労時に補給したいものは以下のような栄養素です。
・糖質、タンパク質、脂質(三大栄養素)
・各種ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム等)
・各種微量栄養素(鉄分、亜鉛、葉酸等)
・クエン酸(鉄の吸収を高める。糖と結合してグリコーゲンの蓄積量が増える)
・水(脱水状態の改善。血行促進。老廃物除去)
5.発達を進める超回復とアクティブレストとは
適正量を超えてトレーニングをし続ければ、早晩故障や疾患を発症するでしょう。筋肉はトレーニングで発達するのではなく、損傷するのです。休息時に修復され、以前よりも太い筋肉を得るのです。持久力に限らずカラダの発達には質の良い休息が不可欠なのです。
5−1.超回復の方法
まずはオーバートレーニングを避けることです。
身体はある部位を損傷すると、それを修復する過程で、以前よりも少しだけ強くして、次にその刺激・ストレスを受けた時に耐えられる身体を作ろうとします。
この「骨が折れると治った時に少しだけ太くなっている」と同じことが、筋トレをした後にも起こります。筋繊維が損傷すると、身体は修復作業を開始し、次回同じストレスを身体が受けても耐えられるようにと、損傷前よりも少し強くします。同じ刺激がきたときに、より少ない痛みや、より少ない疲労で済むように、あまり筋肉が硬直しないように、身体を準備します。
上図でいうレジスタンスフェーズ(回復期)を経て、以前よりパフォーマンスレベルの高い超回復期を迎えるのです。
しかし、回復期を得られずにオーバートレーニングをしてしまうと疲労の蓄積により故障や疾患を引き起こし、パフォーマンスレベルが低下してしまうのです。
どれだけ休めばいいか、は個人差があり断言できません。「まずは回復しやすい負荷から設定する」「徐々に負荷をあげる」「疲労度は主観客観で都度チェックする」ことが大事です。
部活等においては、練習の翌日に完全に休養する、という意味ではありません。腕のトレーニングを重点的に行ったら、翌日は足のトレーニングを集中して行う、その翌日は体幹トレーニングをメインにするなどの方法でプログラムを作成できます。
全身を鍛える筋トレの場合は週に2度程度が目安になるのでしょう。
超回復については以下の記事で詳細に解説しています。
超回復・筋肉と運動パフォーマンスを最も効果的に発達させる全知識
5−2.休みの日は何もしない、ではなくアクティブレストで
アクティブレストは積極的休養と訳され、休息のタイミングでもごく軽い負荷で体を動かすことを意味します。主に休日の場合と、試合中のインターバルの過ごし方に大別されます。
休日の場合、ダラダラと寝て過ごすのではなく、平日とできるだけ同じ起床時間と就寝時間を守ります。デスクワークの方で「脳は疲れているが、カラダは疲れていない」人は、この休日に運動を行うようにします。
作業労働や立ち仕事などで平日に体力を使った方は、休日は種類の違う軽い負荷の運動を行います。
試合のインターバルは、安静にするのではなく、ゆっくり歩いたりストレッチを行うようにします。
熊本大学で2010年に発表された柔道選手を対象にした研究では、連続打ち込みという練習を高強度で行なったあとに血中乳酸値濃度を測ることを行いました。
練習後に、椅子で安静をとったグループとストレッチを行なったグループ、軽いウォーキングを行なったグループに分け、乳酸値の増えかたを計測したところ、軽いウォーキングを行なったグループが乳酸値の増えかたがやや少なかったという結果になりました。(出典:連続打ち込み練習後のアクティブレストが柔道選手の血中乳酸値の変動に及ぼす影響 熊本大学リポジトリ)
試合の直後は、動きながら呼吸を整え心拍数を下げていき、水分と栄養を補給し、疲労が回復してきたな、と感じたら少しずつ動くようにしましょう。
アクティブレストについては以下の記事で解説しています。
アクティブレスト・疲労回復効果を上げる積極的休息の最善方法とは
6.質の良い睡眠をとる
回復と成長に最も大きく関わるものが睡眠です。どんなトレーニングを行ったとしても、十分で質の高い睡眠が得られないと、わずか数日でパフォーマンスダウンします。
医学博士で睡眠に関する著書もある石川善樹先生は、質の良い睡眠の取り方について以下の方法を勧めています。
・起床したら陽の光を浴びたり、ストレッチなどを行う
・日中はコーヒーの取りすぎに注意
・就寝の3時間前までに食事(ここから睡眠への取り組み開始)
・1時間前までにぬるめのお風呂に入浴
・その後、軽いストレッチを行い、テレビ、スマホは消す。読書を行う
・就寝時は暗い環境で
以下の記事では睡眠の取り方を解説しています。
最適な睡眠時間が6時間半って本当?理想的な睡眠時間を徹底解説!
就寝前にはストレッチポール®でのリラクゼーションもお勧めします。円柱状のツールの上に縦乗りし、呼吸をしたりゆらゆら揺れるだけで筋肉がほぐれます。「寝つきが良くなった」という声もいただいています。
ストレッチポール®と睡眠の関係については以下の記事で解説しています。
7.才能も大きいが努力で向上できる部分もある
スタミナ=持久力には、「天賦の才能」もあるという点は否めません。同じ練習を行っても上限が違う人がいます。特に運動経験がなくても、短期間で高レベルな持久力を手にする方もいます。
ボクシングの例で言えば、元世界チャンピオンの飯田覚士さんは大学から始め、短期間で世界の頂点まで登り詰めました。本人の努力もさることながら他に類を見ない肉体的才能があったとしか考えられないと、当時を知るボクシング専門誌編集者は語っています。
もう一つ、スタミナにかかわる能力が「よく食べることができる食欲と消化能力」です。よく食べ、消化し、エネルギーに変換し、消費し、さらに食べるという繰り返しをどれだけ行えるかということです。
消化能力が低ければ、一度に無理して食べることができてもそれを継続することは難しいのです。しかし、これも向上させることができる方法はあると言われています。
ホットドッグ早食い世界一を何度も達成した小林尊さんは、当初は痩せ体型でしたが、筋力トレーニングを繰り返し、ボディビル体型になることで、さらに食べられるようになりました。体がエネルギーを必要とする体質になることで消化能力も向上するかもしれません。
8.まとめ
スタミナの向上方法についてお伝えしました。まずは心肺機能と筋持久力を高めるトレーニングを行いますが、どのようなトレーニングでも2週間行えば、体が順応して効果が得られにくくなります。少しずつウエイトアップしたり、インターバルを短くするなどして負荷をあげていきます。
同時に、発達は休息と睡眠の際に行われますので、決して軽視しないでください。ご自身の体の状態を敏感に感じながらトレーニングを行うようにしましょう。この記事が参考になれば幸いです。
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