タンパク質は、人体のほとんどを形づくるで欠かせない大事な栄養素です。
筋肉、皮膚、骨、髪、爪はもちろん、血管や血液、ホルモンなどを作成しています。不足すると、これらのトラブルはもちろん、免疫力や慢性疲労などに関わり、深刻な健康障害をもたらします。
ではいったい一日どれくらい摂ればいいのか。何が足りないのか。それはどうやって補うのか。逆に、摂り過ぎたらどうなるのか。健康を気にする方や、トレーニングをする方、成長期のお子さんをお持ちの方は気になるかと思います。
そこでこの記事では、日本の公的機関や海外の公的情報、信頼のあるウエブサイトからの情報を整理してお伝えします。タンパク質摂取量の目安を知りたい方はぜひ参考になさってください。
目次
1.一日の目安量は簡単!体重の1/1000グラム!
タンパク質摂取量の目安は、およそでよければ簡単な計算で求めることができます。一般の方は毎日、体重の1/1000gのタンパク質を、活動量が多い方、例えばスポーツマンや肉体労働をされる方は1.2〜2/1000gです。
体重 | 一般の方のタンパク取目安量 | 活動量が多い方のタンパク質目安量 |
40kg | 40g | 48〜80g |
60kg | 60g | 72〜120g |
80kg | 80g | 96〜160g |
活動量が多い方に幅があるのは、その活動の程度によって変わるからで、激しく体力を使う方ほどより多くを必要とします。
- 推奨量は、一日推定必要量の1.25倍です。一日推定必要量は、体重×0.72gです。たとえば、体重50kgの方の推定必要量は(50(kg)×0.72g =36gとなります。推奨量は36×1.25=45gとなります。
2.普通の食事をしていれば十分な理由とは?
どのような食事をしていれば十分なタンパク質量を摂ることができるのでしょうか? 意外なことに、三食きちんと食べていれば満たされると言えます。その理由をここでは二つの例でお伝えします。
2−1.学校の給食程度でOK!
一つの参考になるのが学校給食です。給食は一日の1/3のタンパク質を摂取することができるようにメニューが考えられています。朝食、夕食それぞれで給食と同程度のタンパク質食品を摂ることができれば、足りるといえます。
給食でのタンパク質量は以下の通りです。参照:文部科学省学校給食実施基準(平成25年)
世代 | 基準値 | 適切な範囲 |
小学校低学年 | 20g | 16〜26g |
小学校中学年 | 24g | 18〜32g |
小学校高学年 | 28g | 22〜38g |
中学生 | 30g | 25〜40g |
これもメニューによって差異がありますが、適切な範囲に収まるように計算されています。経験のある方であれば、牛乳まで含めた量でボリューム感をイメージしていただければと思います。
2−2.普通の食事にもけっこう含まれている
ほとんどの食品にタンパク質が含まれています。ご飯やパンなどの穀物にも思ったより多く含まれており、野菜や海藻にも微量ながら含まれていますので、主食・主菜・副菜のバランスをとって食べていれば、さほど量を気にしなくても一般の方には十分なタンパク質を摂ることができます。
■一食分に含まれるタンパク質の量(参考サイト:カロリーSlism)
食品 | タンパク質量(g) |
鮭の塩焼き一切れ | 18 |
ご飯一膳 | 4 |
豆腐とわかめの味噌汁 | 3.61 |
ゆで玉子一個 | 7.74 |
牛乳一杯 | 6.8 |
トースト二枚 | 11.22 |
きつねそば | 20.93 |
カレーライス | 21 |
マカロニグラタン | 23.47 |
チンジャオロース | 16.2 |
肉じゃが | 5.28 |
エビとアボカドのサラダ | 12.03 |
ほうれん草の白和え | 7.61 |
いかがでしょうか? 普通の朝食であれば和洋とも一食でタンパク質20gを確保できます。肉や魚、乳製品の多い食事であればさらに摂ることができるのです。
3.スポーツマンは通常の食事に加えやや意識してタンパク質を摂る
運動や肉体を使った労働をされる方、立ち仕事の方などは、体重×1.2〜1.5÷1000gくらいのタンパク質を摂った方が良いでしょう。体重70kgの方であれば、一日84g〜105gとなります。さらに肉体を酷使される方はそれ以上です。
通常の食事では不足してしまうかもしれません。一度上記サイトを参考に、一週間程度食事を記録し、一日の平均摂取量を計算してみてはいかがでしょうか。
体重70kgの方で、欲しい摂取量が84g、実際の食事からの摂取量が70gだった場合は14gを摂ることをおすすめします。これが不足しがちになると、疲れが抜けなかったり筋肉量を維持できなかったり、生活習慣病になったりするおそれがあるからです。
14gを摂るにはゆで玉子一個と牛乳一杯でクリアできます。おやつで食べるもののカロリー表示も気にしてみてください。
プロテインシェイクを活用することは、手軽で、かつその他の栄養素が少ないので、タンパク質だけを補給したい方にはお勧めの方法です。一般的なプロテインシェイク一杯で14〜16g程度を摂ることができます。
プロテインの効果的な摂取方法については別記事「筋トレの効果を最大限に高めるプロテインの選び方と全知識」にて詳しくご紹介していますので参考になさってください。
また、タンパク質量を確保しながら健康的にダイエットしたい方もプロテインを活用できます。別記事「ダイエットプロテイン・オススメ7製品と3つの成功のコツ」にてご紹介しています。
4.摂りすぎに注意! タンパク質が人体にかける負担とは
タンパク質は足りなくても多すぎてもカラダに害を及ぼします。一日の総エネルギー量(Kcal)におけるタンパク質の割合は12〜20%程度にしてください。タンパク質は4Kcal/gです。
これは学校給食実施基準での数値です。また「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省発表・2015年)では、タンパク質の摂りすぎによる健康障害の研究結果ははっきりとしたものはまだない、としていますが、20%以上摂った場合の健康リスクについての各国の研究を引用しています。
これにより「念のため、20%以下にとどめましょう」という指針となっています。
一日に1800Kcal必要な方の場合、タンパク質の限界量は1800Kcal×0.2=360Kcalであり、これはタンパク質90gです。
この割合を超えて摂取すると以下のようなリスクの可能性が指摘されています。
・糖尿病
・心血管疾患
・がん
・骨量の減少
・BMIの増加(肥満)
過度な高タンパク質ダイエットを行わないようにしましょう。
5.タンパク質合成に欠かせないアミノ酸スコアとは
「アミノ酸スコア」について知ると理想的なタンパク質摂取ができます。この章で解説します。
5−1.必須アミノ酸含有量のバランスの良さを知る数値
国連食料農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)によって提唱された数値で、100に近いほど必須アミノ酸のバランスが良く、体内で有効活用されやすいことを示しています。
なぜこのバランスが重要なのかというと、必須アミノ酸(9種類)は体内で合成されないので、食事から摂る必要がありますが、食事の中で必要量が足りないアミノ酸が1種類でもあると、他のアミノ酸をどんなに多く摂っていたとしても、もっとも低いレベルでしかタンパク質合成が起きずに、体内で欠乏してしまうからです。
アミノ酸スコアの低い食物ばかり摂っていて、不足する必須アミノ酸を別の食物から摂らないでおくと健康を害するリスクが発生するのです。
アミノ酸スコアが100ある理想的な食品でもっとも身近なものは鶏卵です。
5−2.パンだけ食べてもダメ?なのが数値で分かる
2章の表ではトースト2枚にタンパク質が11.22g含まれていることをお伝えしました。一般の方なら一日に食パンを10枚食べれば、タンパク質摂取量の目安に到達しそうですが、それでは到底不十分なことがわかるのがアミノ酸スコアです。
上図の通り、パンはアミノ酸スコアが44しかありません。これは基準値に達してないものが多いからです。特にリジンは少ないので、他にリジンの多い食品と一緒に食べることが勧められます。
■食品のアミノ酸スコア例(日本食品分析センターニュース46号より)
食品 | アミノ酸スコア | 最も不足しているアミノ酸 |
牛肉・豚肉・鶏肉 | 100 | – |
魚類 | 100 | – |
鶏卵 | 100 | – |
牛乳 | 100 | – |
大豆 | 100 | – |
プロセスチーズ | 91 | メチオニン |
サトイモ | 84 | イソロイシン |
ジャガイモ | 68 | ロイシン |
精白米 | 65 | リジン |
みかん | 50 | ロイシン |
トマト | 48 | ロイシン |
対して、欧米の小麦食ではさらにリジンが足りないので、肉類や乳製品で補う必要があったと考えられます。さまざまな食品がある現代では、ぜひこのバランスを考えながら食事をとるようになさってください。
5−3.玉子だけ食べてもダメ!バランスの良い食生活を
アミノ酸スコア100が意味することは「必須アミノ酸9種類だけがいずれも基準値を上回っている」ことだけです。他のアミノ酸や栄養素のバランスについては無視されているのです。
人体にはそれ以外の栄養素も必要です。ビタミンやミネラル、食物繊維や脂質、さらに微量栄養素もです。アミノ酸スコアだけなら玉子だけを食べていれば100になりますが、その他の栄養素が圧倒的に不足します。
また、玉子や鶏肉、牛肉を食べなくても、バランスの良い十分な量のタンパク質やそれ以外の栄養素を補給することもできます。また前述した通り、健康リスクのために1日の摂取カロリーのうちタンパク質は20%までに抑えてください。
さらに一食でそれをすべて摂らないようにしましょう。一回の食事で処理できるタンパク質の量は体重1kgあたり0.7gといわれています。
- アミノ酸スコアが登場する以前、FAOでは「プロテインスコア」という基準値で食品のタンパク質バランスを評価していました。プロテインスコアでは、牛乳は85、鶏胸肉は84、木綿豆腐は67となっており、アミノ酸スコアと異なるものもあります。現代でもこのプロテインスコアのほうが実際の値に近いと言い切るトレーニング愛好家も少なくありません。いずれにせよベストな食品というものはなかなかないので、バランスよく食べることが重要でしょう。
6.まとめ
タンパク質摂取量の目安とアミノ酸スコアについてお伝えしました。一般の方であれば特に気にしなくとも、三食きちんと食べていれば十分な量が補給できると考えられます。
また、特定の食品に偏らずにさまざまな食品を摂ることを公的機関は勧めています。もっとも有名なのは厚生労働省が提唱する「一日30品目を食べましょう」というものです。各国でも同様の見解をとっています。
ボディビルダーの方などは、魅せるカラダを作るためにタンパク質以外の栄養素をストイックに制限しています。普通に筋トレやスポーツを行うレベルであれば、やはりバランスよく、自分のカラダをよく見極め、不足分を補う食生活が重要です。
筋トレなど運動で健康的なカラダを得たい方には、別記事「筋トレは食事から!最大効率を得る食べ物の知識【レシピも】」で詳しくご紹介していますので、ぜひそちらも参考になさってください。
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