呼吸エクササイズ「ドローイン」を知っていますか?
体幹トレーニングのもっとも基礎的な方法のひとつですが、近年ダイエットに効果的といわれ、一般女性の間でも注目されている方法です。また腰痛持ちの方にも改善方法として広まってきました。
このドローイン。ビギナーの方には誤ったやり方で行われているケースがあるようです。そこでここでは、ドローインの正しい方法をお伝えし、さらにその目的や意味、応用エクササイズまでをお伝えします。
正しく効果的なドローインを行うためにはぜひ知っておいていただきたい内容ですので、ダイエッターの方や腰痛を克服したい方、アスリートの方はぜひご一読いただき、参考になさってください。
この記事は石塚利光が監修しました。 日本コアコンディショニング協会コアコンディショニングリサーチディレクター/東京大学女子バレーボール部トレーナー/米国公認アスレティックトレーナー (BOC-ATC) /日本トレーニング指導者協会・認定上級トレーニング指導者(JATI-AATI)/ペンシルベニア州立カルフォルニア大学卒業/前・福岡大学助教/訳書「アスレティックボディ・イン・バランス」(Gray Cook著) |
目次
1.もっとも正しく効果的なドローインの方法
さっそくドローインを行ってみましょう。お伝えする方法を一日三セット行うだけで、ウエスト引き締めや腰痛予防に効果があります。
基本姿勢としては、仰向けに寝てヒザを立てます。左右の下腹部の柔らかい所に指や手をあてるとお腹の動きが分かりやすいです。
1−1.準備運動
ドローインは呼吸を行うエクササイズです。ですので「吸って吐いて」を確かめる準備運動から行いましょう。
■自然な呼吸
まずは自然な呼吸を行います。ラクな呼吸で今のご自分の呼吸の感覚をつかみましょう。15〜30秒。
■逆腹式呼吸
息を吸う時にお腹の周囲が縮む呼吸です。スーーーッとゆっくり吸いながらお腹を凹ませていきます。難しいと感じる方は、自然呼吸からハッとかホッと息を吐きます。そこから息を吸うとともにお腹を凹ませていくとうまくいきやすいです。
■自然な呼吸
再度、全身をラクにして自然な呼吸を行います。最初のときと呼吸やお腹の動きの違いはありますか? 確かめてみましょう。
■腹式呼吸
今度は息をゆっくり深く吸いながらお腹を膨らませていきます。膨らみきったら息を吐きながらお腹を凹ませていきます。
※腹式呼吸が難しい方 脱力と深い呼吸が足りない場合が多いです。よくリラックスして深い呼吸を行ってください。カラダを左右に揺すったりしてもかまいません。
※それでも難しい方 一度ベッタリとうつ伏せになってみましょう。再度脱力します。息を吸いながらおへそで床を押し、お腹を膨らませてください。これが腹式呼吸の感覚です。仰向けでも行えるように少し練習しましょう。
1−2.ドローイン
腹式呼吸を繰り返したのちにそのままドローインを行います。
■ドローイン(強制呼気)
腹式呼吸の流れのまま、鼻か口で息を細く長く吐きながら、お腹を凹ませていきます。
お腹から空気が出きった!というところでお腹をキープします。息は浅い胸呼吸で繰り返します。最初は10秒キープから。徐々に時間を延ばし30秒を目指してください。
息を細く長く吐き出す時には、おへそ周辺の一点だけを中に引き込むのではなく、お腹の前面を面のまま、ゆっくりじんわりと息を吐きながら少し凹ませ、お腹の圧を高めていきます。
■自然な呼吸
脱力してドローインは終わりです。最後にもう一度自然な呼吸を行って、やる前との変化を感じてみてください。
この呼吸法をマスターすると、椅子に座っている時や立っている時も行うことができます。その時は逆腹式呼吸とセットで行ってください。
1−3.ドローインはいつどれだけやるか
ダイエット目的や腰痛予防の方、アスリートの方いずれも、一日最低一度は準備運動からの一連の動きを行ってください。できれば朝昼晩一回ずつ行うことをおすすめします。アスリートの方はウォーミングアップとクールダウンの一番最初に行うと効果的です。
一日中やっている必要はまったくありません。むしろドローインの呼吸法がクセになると、インナーユニットの固定化を生じさせてしまいます。気がついたときに行う程度でOKです。
次章からはこのドローインとは何か、その意味や目的をお伝えします。ドローインの効果を最大限に高めたい方や、より詳しく知りたい方はぜひ読み進めてください。
2.ドローインを行う目的とは
「ドローイン」はお腹を凹ませてキープする呼吸エクササイズである、と思われているケースが多いようです。これは正しいのですが、正確に意図が伝わっていないケースもあります。
この意図をお伝えするために、当ブログではドローインを以下のように定義します。
お腹への意識を高め、深層筋を有効活用する呼吸エクササイズ
前章でお伝えした方法がまさにその通りなのですが、なぜお腹への意識を高める必要があり、深層筋を有効に活用しなければならないのかをここで説明します。
2−1.お腹の深層筋=インナーユニットを知ろう
私たちは体幹(胴体)の深層部にある4つの筋肉を特に重視します。それは・腹横筋(ふくおうきん)・横隔膜(おうかくまく) ・多裂筋(たれつきん) ・骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)です。
これらを総称して「インナーユニット」と呼びます。深層部にあって目立たない動きをしているために、なかなか自覚できませんが、呼吸や姿勢、内臓の安定化に大きく関わる大事な筋肉です。4つの筋肉は以下の通りです。
■横隔膜
肺の下にある呼吸のための筋肉です。息を吸おうとした時に下がり、肺に空気を取り込みます。息を吐こうとする時には持ち上がり、肺の空気を押し出します。腹横筋と関連して、多裂筋と骨盤底筋群の動きを引き出します。
■腹横筋
お腹のもっとも深層部にあるコルセットのような筋肉です。息を吸うことによって働き、お腹の内圧を高め、腹部の安定性に寄与します。
■多裂筋
背中を後ろから支える深層筋です。背骨の骨それぞれを安定させ、正しい姿勢づくりに大きく関係しています。骨盤底筋群とも協働して骨盤の安定化にも関わっています。
■骨盤底筋群
骨盤のもっとも底にあって、多裂筋と協働して骨盤の安定化に寄与しています。
このインナーユニットが、日常生活や労働、スポーツを続けることでうまく機能しなくなることがあります。そのために腰痛や肩こり、スポーツ傷害などの原因となります。
インナーユニットを再びうまく使えるようにする、もっともシンプルで効果的な手段がドローインなのです。またドローインの感覚なくして、有効な体幹トレーニングは成り立たないのです。
2−2.腹横筋をさわってみよう
インナーユニットは、体の深層部にあるので本来は触ることができません。しかし腹横筋だけは触って確認できる位置と方法があります。その2つの方法をお知らせします。
骨盤の骨の出っ張りから指1〜2本内下側の柔らかい部分(写真の位置)に指を1〜2本あてます。
・息を細く長く吐きながらお腹を膨らませます(逆腹式呼吸)。お腹の内側から徐々に膨らんでくるのを感じてください。吐ききる頃にグ〜〜ッと盛り上がってくる筋肉があります。これが腹横筋です。
・やや指で押しながら、コホンコホンと空せきをしてください。お腹の中からポコッポコッと盛り上がるのが腹横筋です。
ドローインの際もここに指をあてて腹横筋を感じながら行うと感覚をつかみやすいです。
3.ドローインを行うメリット
ドローインを行うことで以下のようなメリットが考えられます。つまりどなたでも行った方が良い呼吸エクササイズなのです。
・ぽっこりお腹解消になる
・腰痛予防になる
・正しい姿勢がキープされる
・呼吸が深くなる
・腕があげやすくなり、肩こりが減る
・尿もれ解消になる
・動作に対する反応の速さを引き出す
4.正しいドローインを行うコツ
ここでは、より正しくドローインを行うためにぜひご理解いただきたいポイントをお伝えします。
4−1.陥りがちな誤ったドローインとは
まずはありがちな失敗例からお伝えします。
・お腹を引き込みすぎている →腹横筋ではなく、腹直筋(ふくちょくきん)を使ってしまっています。下図と次項をご参照ください。
・お腹を凹ませた時に、ろっ骨の下部が広がる →思いっきり引き込んでいる時にろっ骨下部が広がることが多いです。吸う時も吐く時もろっ骨下部に手を当てて広がらないように意識しながらじんわり呼吸をしましょう。ドローインはそこまで大きな動きをしないエクササイズです。
・腰が反っている →体を反ることで呼吸しようとしており、腰痛発症につながります。床に仰向けになり、お腹に圧をかけながら腰を床に押しつけるようにしてください。
・肩に力が入り上がってしまう →お腹以外の全身に力が入っています。
・前傾して背中が丸くなる →お腹を引き込もうとしすぎるあまり、上体を曲げることで凹ませようとしています。脱力して行いましょう。
次項では、これらの失敗を防ぐ大事なポイントをお伝えします。
4−2.ビギナーはお腹を凹ませることを意識しすぎない
お腹を意識的に凹ませようとすると、腹直筋でお腹を引き込んでいるケースがあります。こうなってしまうと、インナーユニットの活性化が目的にも関わらず、インナーユニットが少しも働かず効果が得られないこととなってしまいます。
また腰が反った姿勢は、腰痛を引き起こしたり悪化させる可能性があります。
ビギナーの方は、冒頭でご紹介したとおりの方法で、全身の力を抜いて、呼吸だけを意識して、ゆっくりじんわりとお腹の中の圧力が高まっていくようにドローインを行ってください。
3割程度の力でお腹に圧力をかけて、キープするのがもっとも理想的なドローインです。
ドローインの時にお尻は締める?
ドローインの際に「お尻を締めながらお腹を凹ませましょう」と伝えているケースがあるようです。意図としては骨盤底筋群を引き上げる目的があるのでしょうが、多くの場合、お尻を締めようとするとお尻や太腿の筋肉がキュッと締まってしまうだけで、むしろインナーユニットの動きが悪くなってしまう可能性があります。お尻を締める、ゆるめるについても意識しないでドローインを行いましょう。
4−3.骨盤底筋群の動きも大事!
ドローインを行う時には、骨盤底筋群も意識するようにしてください。近年、骨盤底筋群の重要性が認識されるようになってきました。呼吸を行う時には、横隔膜、腹横筋と協調して骨盤底筋群が働いています。
息を吐くときに肺の下にある横隔膜が引き上がります。そのときに骨盤底筋群は下がっていくのが理想です。
息を細く長く吐き出してお腹を凹ませる時には、骨盤底筋群(おまたの上にあります)は下がっていくイメージで行ってください。頭の上からティッシュを引き上げるイメージで、おまたの面を上げる感覚で行うとうまくいきやすいです。
4−4.ドローインのもっともわかりにくいポイントを簡単に行うツール
骨盤底筋群を下げたり引き上げる意識は、お伝えしたとおりなのですがなかなかよく分からないかもしれません。
当ブログを運営する㈱LPNが製造販売するストレッチポール®ひめトレを活用すると、この骨盤底筋群の感覚がよくわかります。息を吐きながらひめトレが当たっている部分の感触を確かめながら行うだけで、正しいドローインが可能になります。
■ひめトレエクササイズの例
ひめトレを椅子の真ん中に縦において、おまたの中心に当たるように座ります。
両手を胸の前で合わせます。息を吐きながらお腹を凹ませ、両手を上にあげます。吐ききったら息を吸います。
再度、息を吐きながら両手を外に向けてヒジを90度に曲げ降ろしていきます。ヒジを降ろしきったら息を吐ききります。
息を吸いながら最初のポジションに戻り、3〜5回繰り返してください。
ストレッチポール®ひめトレをお求めの方へ
ストレッチポール®ひめトレは㈱LPNの登録商標(第5576963号)です。公式LPNショップでお求め頂けます。
5.ドローインから行う応用エクササイズ
ドローインと組み合わせることで効果を上げるエクササイズをご紹介します。
■有酸素運動をドローイン直後に行う
お腹を引締めるなどダイエット効果をあげるためには、ドローイン直後に有酸素運動を行うと大変効果的です。
・ウォーキングなら25〜60分程度
・ランニングなら15〜60分程度
汗をじんわりかくくらいの負荷で行いましょう。
■股関節開き
ドローインでお腹を引締めたまま、両ヒザをゆっくり外に倒します。股関節の可動域を向上させるエクササイズです。
■脚上げ
お腹を引締めたまま、片足を90度キープで上げます。10秒保持したら足を入れ替えます。体軸の安定化をはかります。
両脚上げも行ってみましょう。
■上体起こし
腹直筋を安全に効果的にトレーニングするエクササイズです。
両脚上げのまま、ヒジを床から浮かせます。そのまま上体を曲げるようにして、顔をヒザに近づけます。手は水平に足首方向に伸ばしてください。
■ヒジ&ヒザ クロスタッチ
腹直筋の下に斜めに走る「腹斜筋(ふくしゃきん)」を効果的に鍛えるエクササイズです。
両脚上げのまま、右手を頭にあてます。そこから左ヒザをタッチしてください。左右交互に10回行いましょう。
■ひめトレ チューブエクササイズ
ひめトレとチューブを組み合わせることで、体幹を安定化させながら全身を効果的に鍛えることができます。
ひめトレ&チューブを組み合わせたエクササイズをYoutubeで公開していますので、興味のある方はぜひご覧になってください。
6.おわりに
最後に少し専門的なお話しをします。
筋肉の発達には、伸ばす時の筋肉活用(伸張性収縮)と、縮ませる時の筋肉活用(短縮性収縮)の両方が必要です。バーベルで二の腕を鍛える時も、持ち上げる(引き寄せる)時にだけ力を入れるだけではなく、降ろす時にも力を入れてゆっくり戻すことが最も効果的なエクササイズ方法です。
ドローインは、インナーユニットに対して同じことを行います。
ご紹介した方法では、最初に逆腹式呼吸を行います。息を吸う時にお腹を凹ませます。これは短縮性収縮を行っています。
続いて腹式呼吸をし、お腹を膨らませて伸張性収縮を行います。ドローインを行うと息を吐きながらお腹を凹ませます。この両方のエクササイズで、腹横筋に両方の収縮を行っているのです。
これは普段なかなか行わない呼吸ですから、意図的な呼吸によって両方の収縮を行わさせるのです。このようにしてインナーユニットを効果的に活性化できるのがドローインという素晴らしい方法なのです。
ぜひお伝えした方法でドローインを行い、皆さんの目的を達成なさってください。
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