「8時間も寝たのに、全然疲れが取れてない感じなんだよね……」ということはありませんか?
昨夜しっかり寝たはずなのに、朝起きたときから眠い。午前中は何とか耐えたが、午後からは眠くて仕方がない…。
このような時につい口に出るのが「寝ても寝ても眠い」です。
ひょっとしたらオーバーワークで、睡眠だけでは足りないのかもしれませんが、実は最適な睡眠をとれば、一日の疲れのほとんどは取ることができるのです。
そこでこの記事では、睡眠の質を高めて、日中の眠気を予防する方法をお伝えします。東大医学部からハーバード大学を経て自治医科大より博士号を取得し、予防医学者としてテレビでも引っ張りだこの石川善樹先生におうかがいした最先端かつ強力な方法です。
寝ても寝ても眠い方は、ぜひお試しください。
目次
1.寝ても寝ても眠い原因は“睡眠の質”にある
日中に過度に眠気を催さないことが、適切な睡眠がとれていることのバローメーターとなります。
人間は正しい睡眠がとれていれば、日中(活動時間帯)に眠くなることはあまりありません。本来持っている自律神経の働きにより、活動時間は行動できるように、休息時間は身体を休めるようにできています。
自律神経 | 交感神経 | 副交感神経 |
機能 | 活動に関わる | 休息に関わる |
心臓 | 脈拍が速くなる | 脈拍が遅くなる |
末梢血管 | 収縮する | 拡張する |
瞳孔 | 拡大する | 縮小する |
腸管 | 運動抑制する | 運動亢進する |
気道 | 気管支が緩む | 気管支が収縮する |
発汗 | 亢進する | 低下する |
自律神経は、1日の中で交感神経と副交感神経がシーソーのようにどちらかが優位になるようになっています。
昼食時間後に眠気を催すのは、上図の通り副交感神経が優位になるためで、自然なことです。
この時に15分程度の仮眠をとることで、午後の能率アップにつながります。頭がスッキリするからです。最適な仮眠の方法については、別記事「眠気をふっとばす15分仮眠!午後の能率をアップさせるコツ」にて詳しくご紹介しています。
日中、眠くて仕方がない人は、最適な睡眠を取れていなかったか、この自律神経のリズムがおかしくなっている可能性があります。
2.主観と客観は違う!「睡眠の質」を知る方法
よく寝たと思っても、実際は眠りの質が悪かったことがあります。
例えばいびきは、本人がもっとも気持ちよく寝ている時にかきやすいものです。気道が狭くなっており呼吸量が減少していても何も感じず、むしろ本人は熟睡している感覚になっています。
これが睡眠の質における主観と客観の違いです。ここでは眠りの状態を客観的に知る方法をお伝えします。
2−1.睡眠計を活用する
主観ではなかなか分かりにくい睡眠の質。客観的に調べる方法としては、睡眠計の活用があります。専用の機械はもちろん、アプリやウエアラブルデバイスなど種類が充実してきました。
このような睡眠計はわずか数日の使用ではなかなか傾向がわかりません。少なくとも2週間程度使用することでご自身のリズムがわかってきます。
【睡眠計の代表例】
■オムロン 睡眠計 HSL-101
睡眠計の専用設計なので、ウエアラブルデバイスよりも正確だと評判の一つです。ベッドサイドに置くだけで電波センサーが眠りの状態を計測してくれます。本体だけで、睡眠時間や夜中に目覚めた時間を確認できる
便利な機能(ねむりインジケータ、バックライト、時計機能、睡眠時間、アラーム、14回分メモリ)も満載。SDカードで2週間分のデータが記録でき、PCに移すことでPC上でも「睡眠の見える化」が可能になります。参考価格13,606円。Amazon紹介ページ
■Fitbit フィットネスリストバンド Alta Large
リストバンド型睡眠計(活動量計)のトップブランドがFitbitです。これはスリムでファッショナブルなデザインで、睡眠計測を行うもの。夜中の寝返りや目が覚めたタイミングも記録。日中は運動を行うようにアラートを発してくれる機能もあります。専用アプリでPCやスマホと連係することができます。サイズも2種類。バンドが各色選べるほか、オプションで着せ替えることも可能。参考価格16,224円。Amazon紹介ページ
■Sleep Meister – 睡眠サイクルアラーム Lite
スマホにインストールして起動し、あとは枕元に置いて寝るだけで睡眠の状態を計測してくれる無料アプリです。睡眠計や睡眠アプリを使ってみたい方におすすめします。また、起床時にも、端末に内臓された加速度センサを用いて、人の体動を感知し、眠りの浅い(レム睡眠)時にアラームを鳴らすことにより、快適な目覚めをサポートする目覚ましアラーム機能もあります。
2−2.起床時脈拍を測る
睡眠計がなくとも起床時の体調を知る方法です。睡眠の質が脈拍の回数で現れます。起床時の体調をはかる目安にもなります。回数が多いと睡眠の質が悪くよく休めなかったということになります。
上図のように手首に中指を当て、性格に10秒での回数を数えます。それを6倍したのが1分間の脈拍です。
個人差がありますが、おおむね以下の回数を参考にしてください。
起床時体調が良い……40回台
疲労が抜けきれていない……50回台
疲労が溜まっている……60回台
これも数日だけではなく何日か測り続けることで、体調がわかります。日中の活動時やお昼休みなどにも時間を決めてはかってみてください。
- 色々な表現やイディオムの使用が考えられますが、I feel so drowsy even if I sleep well! をご紹介します。No matter how much I sleep,it’s never enough.という表現もありますが、「たとえどんなに寝たとしても」というニュアンスになります。
3.睡眠における「時間」と「質」の関係
最近の研究では、睡眠時間はその段階においてそれぞれ意味があることがわかってきました。
・前半の2〜2.5時間くらい=「入眠フェーズ」といい、脳の疲れを取り記憶の再統合をする段階
・中盤の2〜2.5時間くらい=「中途睡眠フェーズ」といい、体の疲れをとり、動作の記憶に関係する段階
・後半の2〜2.5時間くらい=「起床フェーズ」といい、精神の安定を図り、記憶を定着させる段階
睡眠はどのフェーズでも重要な役割があります。そのために睡眠時間が短かったり、途中で目覚めたり、熟睡できなかったりするとその役割を果たすことができなくなるのです。
それが起床時や日中に「寝ても寝ても眠い」と感じてしまう要因になるのです。
このフェーズをすべて行い、充実した睡眠を得るために、当ブログでは最適な睡眠時間を7時間半とお伝えしています。(参考:最適な睡眠時間は本当に6時間半なのか理想的な睡眠時間とは)
4.それぞれの睡眠フェーズを改善する要因があった!
また研究により、睡眠フェーズの質を左右する要因があることがわかっています。その要因への対処の仕方で睡眠の質が変わるのです。ここで解説いたします。
4−1.入眠フェーズを左右する3つの要因
それは以下の通りです。
4−1−1.体温
行動時に比較的あたたかい体温が、眠りと同時にカラダは体温を下げようとします。子どもが入眠直後に寝汗をびっしょりかいていることがありますが、あれは温かい体温を下げるために汗をかくという自然な作用なのです。寝る直前に手足が温かくなっているのも同じ理由です。
この作用を人為的に作り上げることで入眠しやすくなります。
あまりにカラダがアツいままでは眠りにくいし、寒すぎてもNGです。お風呂は睡眠の1時間前までに。筋温を上げるストレッチも同様です。このように一度体温を高めにしてから、徐々に体温が下がっていくようにします。
室温は25度前後をおすすめします。
4−1−2.夕方以降のカフェイン
カフェインには覚醒作用があるので、睡眠の質を高めたい方は控えるようにしましょう。特に夕方以降はその夜の睡眠に直結しますので、16時以降はカラダに入れないようにしてください。
カフェインといえばコーヒーが思い浮かびますが、緑茶、紅茶、ウーロン茶にも含まれます。意外なことにココアにも入っているので注意してください。
飲料 | カフェイン量 (100ml当り) | 備考 |
---|---|---|
レギュラーコーヒー浸出液 | 約 60mg | コーヒー豆の粉末10gを熱湯150mlで浸出 |
インスタントコーヒー | 約 60mg | インスタントコーヒー粉末2gを熱湯140mlに溶かす |
玉露 | 約 160mg | 茶葉10gに60℃の湯60mlを加え2.5分浸出 |
煎茶 | 約 20mg | 茶葉10gに90℃の湯430mlを加え1分浸出 |
紅茶 | 約 30mg | 茶葉5gに熱湯360mlを加え1.5~4分浸出 |
ウーロン茶 | 約 20mg | 茶葉15gに90℃の湯650mlを加え0.5分浸出 |
※ココアには100mlあたり約30mg含まれています。
4−1−3.寝る直前の脳活動
寝る前1時間は、脳に対して刺激を与えないようにしましょう。具体的にはドラマや映画を見ることや、考えごと、悩みごとをすることを避けます。
理論的思考は朝の方がむいています。寝る直前は記憶的要素のほうがむいているので、暗記が必要な勉強を行うようにします。
悩みごとについては、起床後に行うことにします。その他、明日のtodoリストを作るなどをします。
4−2.中途睡眠フェーズを左右する2つの要因
以下の2つの要因に配慮すると、夜中に目が覚めることが少なくなると考えられます。
4−2−1.光
眠りに関わる脳内物質セロトニンは光によって影響を大きく受けます。光を浴びることでセロトニンが発生し、脳に覚醒作用を及ぼします。
寝る直前はテレビ、パソコン、スマートフォンはやめましょう。特に部屋の電気を消してこのようなことを行うと、脳に対して光の強い刺激が入ります。
セロトニンは徐波睡眠(ノンレム睡眠のStage3,4の段階)で極端に減り、そこからのレム睡眠時には完全に消失するのが正常です。寝る直前に強い光を受けると、この時に完全にセロトニンが消失せずに目が覚める可能性が高くなります。
LED光やコンビニ店内の光も強いものがありますので注意してください。
4−2−2.飲酒
飲酒は寝付きには効果がありそうですが、適量を超えやすいものです。このように過剰摂取したアルコールはその覚めとともに目覚めを引き起こします。
中途睡眠フェーズで、ノドの渇きを覚えたり、トイレに行きたくなる原因にもなります。胃腸の負担にもなります。
4−3.起床フェーズを左右する3つの要因
このフェーズは実は起床時から午前中の活動が大きく関わっていることがわかってきました。規則的な生活を送ることで(休日も)、質の高い睡眠が取れるようになります。
4−3−1.起床から1時間以内の光
起床後1時間以内に光を浴びるようにすると、翌日の起床フェーズがしっかり取れるようになります。
4−3−2.朝食
規則正しく朝食をとっていると、カラダも起床フェーズにおいて朝食を迎えるための準備を始めます。その結果目覚めも良くなると考えられています。
4−3−3.午前中のストレッチや運動
朝食後はなるべくカラダを動かすようにしましょう。午前中に軽く汗をかく程度に運動するリズムを作ると、体内リズムも適正になります。
4−4.睡眠の質改善策・まとめ
上記の改善策をまとめると下記のようになります。
タイミング | 睡眠改善策の例 |
朝 | 光を浴びる 朝食をとる ストレッチや軽い運動をする |
昼 | 昼休憩時に5〜15分間目を閉じる 20分以内の昼寝をとる |
夕方 | 軽いストレッチや散歩等をする |
寝る前 | 就寝1時間前までにストレッチや軽い運動 お風呂は寝る1時間前まで 強い明かり(コンビニ、スマホ、テレビ)を避ける 深酒・寝酒を避ける |
休日 | 起床時間を平日に揃える(+-1時間の範囲で) (眠ければ)昼寝をとる |
この「快適な睡眠を得るための」チャレンジを2週間以上継続してみましょう。科学的に裏付けされたもので自信を持っておすすめできる睡眠改善策です。その結果も好転しない方は次項を参考になさってください。
5.ひょっとして病気? 眠さが取れない疾患の代表例
「寝ても寝ても眠い」ことを自覚される方は、ある種の疾患の可能性があります。前項までの取り組みで改善しない場合は以下のような疾患の可能性がありますので、内科や心療内科を受診されることを検討してください。
・自律神経失調症
・更年期障害
・甲状腺障害
・低血圧症
・睡眠時無呼吸症候群
・ナルコレプシー
・特発性過眠症
・うつ病
6.まとめ
今回、取材させていただいた石川善樹先生は次のように語っています。
「睡眠は皆さんの人生を健康的に長生きさせるために、また日々の暮らしを充実させるために大変重要なものです。
仕事や家事、遊びで忙しかったりすると睡眠時間を削ってしまいがち。生活の中で優先度が低くなってしまっていませんか?
実は睡眠は、優先順位を最上位に上げていただきたいくらいのものなのです。飲みにいったりデートがあると、仕事を早めに切り上げようとするでしょう。大事な行事があると、午前中から仕事の配分を考えますよね?
これと同じような意識で、睡眠の質を改善するために一日のスケジュールは、良質な睡眠を得るためにしっかりプログラムを計画してほしいのです。『寝ても寝ても眠い』というような方はぜひこの方法をキチンとやっていただきたいと思います。」
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
※この記事は石川善樹先生に取材し、構成しました。
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