「股関節のつまり」とは、まさにその表現がピッタリ!と感じられる「動きの悪さ」や「ひっかかり感」です。実際に詰まっている感覚もあります。
この「つまり」は運動している方であればほとんどの方が経験していることでしょう。
ヒザを深く屈伸する動作や、足をあげようとした時、ボールを蹴る時などにはっきりわかります。
さほど痛みを感じないレベルでも、この動きの悪さは大変気になるし、早急に改善したいものです。放置しておけば改善することもありますが、多くは慢性的に違和感を感じるようになったり、痛みが強くなっていきます。
大きく動かしてみたり、股関節を揉んでみたり、ストレッチをしたりして、ご自身なりにいろいろやっている方が多いと思いますが、なかなか改善しないことに焦れているかもしれません。
実は「股関節のつまり」は、股関節やお尻の深層筋に問題があって発生していることが多いのです。そこにアプローチをしないとさほど効果が得られないのです。
そこでこの記事では、ストレッチやトレーニングなど、股関節やお尻の深層筋に着目して改善をはかる方法をお伝えします。股関節に違和感を感じている方はぜひ参考になさってください。※痛みのある場合は、早急に整形外科の診察を受けてください。
目次
1.股関節のつまり 重症度チェック
股関節のつまり、といっても程度は様々です。まずは度合いをチェックしてみましょう。
1)ひっかかるような違和感や動きの悪さが気になる程度→軽度の「股関節のつまり」
2)限界域まで動かしたり、サッカーでボールを蹴ったり、全力疾走の時に股関節中心に痛みを感じる→グローインペイン症候群の可能性あり
3)長い時間座ったり、坂を上ったりするような運動で痛みを感じ、時間や距離が伸びるほど痛みが強くなる→グローインペイン症候群の進行
4)夜間の安静時や平らな場所を歩いているときでも痛みを感じる→変形性股関節症、関節唇損傷、恥骨結合炎、疲労骨折等はっきりした傷害の発生と進行
グローインペイン症候群は、股関節に痛みを発する傷害の総称です。その代表的なものである変形性股関節症になると、大腿骨頭や寛骨臼に変性や関節唇損傷を生じているために、大規模な治療が必要です。状態を見て手術療法が選択されます。こうなるまえに早めの対処が重要です。
この記事では、違和感程度のつまりがある場合にできるケアの方法をご紹介します。
2.股関節のつまりの原因
股関節は、寛骨臼(かんこつきゅう)というカップと、大腿骨頭(だいたいこっとう)というボール状の骨の噛み合わせでできています。
一般的な「つまり」の場合は、寛骨臼と大腿骨頭の噛み合わせの位置が少しズレていることが考えられます。
大腿骨頭がほんのわずかズレたり、噛み合わせが浅くなったりしただけで、可動域に制限が出てしまいます。
これがなぜ起きるかというと、股関節周辺の深層筋のアンバランスな使い方が生じているからです。股関節に関係する筋肉は様々です。
これらが正常な働き方や力学関係を保っている場合は「股関節のつまり」などの障害は起きにくいのですが、特に深層筋の使い方が偏ってしまっている場合に正常な位置をキープしにくくなるのです。
正常な位置にないと引っかかりができますし、動きができないと可動域制限が生じます。
ちなみに、変形性股関節症の場合は寛骨臼や大腿骨頭、関節唇の損傷や変性肥大が原因となります。
3.股関節のつまりを治療家はどうやって治すか
違和感程度であれば、一般の整形外科では痛み止めと安静にしておく等の口頭指導が中心になります。痛みのある部位に電気や温熱治療を行う可能性もあります。
スポーツ傷害を得意とする整形外科や整骨院、トレーナーであればストレッチやトレーニングの方法をお伝えいただける可能性があります。
また、柔道整復師やはり灸マッサージ師、理学療法士など国家資格で手技が使える方は、股関節のモビライゼーションエクササイズを行うことがあります。方法をひとつご参考にお伝えします。(あくまでも実施例ですので、一般の方は行わないでください)
また長友佑都選手(インテル)のトレーナーである木場克己先生は、お尻の深層筋や体幹筋を重視したトレーニングメニューでサッカー選手の鼠径部症候群に効果をあげています。これも筋肉の使い方を正しくし、タフにして一ヶ所への負荷を避ける方法です。
痛みが強くなってきたり、通常の練習ができないレベルであれば変形性股関節症等が進行している可能性があります。恥骨の疲労骨折などを起こす(起こしている)ことも考えられますので、早めに病院での診察を受けてください。
4.セルフで改善をはかる方法・1【ストレッチ編】
ここからはさほど深刻ではない「違和感程度の股関節のつまり」にセルフで対応する方法をお伝えします。まずはストレッチで股関節周辺の筋肉をほぐし、血流を増大させる方法です。
7種類ありますが、「立ちヒザ」「仰向け寝」のポジションで一連の流れでできますので、ぜひマスターなさってください。
※ストレッチだけでは一時的にしか改善しません。5章以降の方法も併せて行ってください。
4−1.大腿四頭筋のストレッチ
ももの前面が張っている方が多いです。大腿四頭筋という大きな筋肉群をストレッチします。
ヒザ下にクッションを置いて写真の態勢をとります。右手で右足甲をつかみ引き寄せてください。引き寄せる脚が外に開いたり、腰が反らないように注意。もも前がストレッチされる感覚を得てください。20〜30秒。
4−2.大腿筋膜張筋のストレッチ
ももの外側、横にあり縦に走る筋肉です。
先ほどの体勢から、後ろ足がやや内側に入るようにします。また前に出した足も内側に移動させます。写真の体勢をとり、下に体重をかけますと、後ろ足のももの外側がストレッチされます。それが感じられるように、体重の掛け方や足の位置を調整して行ってください。骨盤から上は正中軸を意識します。
この部分をボールやストレッチポール®でグリグリとマッサージすることもおすすめです。
4−3.腸腰筋のストレッチ
背骨や骨盤から、大腿骨へつながる深層筋です。
骨盤前面(鼠径部)がよく伸びるようにストレッチします。写真(中)のように手を上に伸ばすとさらにストレッチされますし、左手で足をつかんで体重を前にかけることも効果的です。
4−4.中殿筋・小殿筋のストレッチ
お尻の筋肉です。股関節のつまりやヒザの不具合を感じる方は、お尻の筋肉を有効活用できていない場合があります。このあとトレーニングの方法をお伝えしますが、その前にストレッチでほぐし、血流を改善しておきます。トレーニングの際に意識するポイントもわかります。
写真(左)のように仰向け寝になり片ヒザを立てその上に片方の足を置きます。立てたヒザを両手で抱えて引き寄せます。円の部分にストレッチを感じてください。
写真(右)のように足の外側からロックして引くとさらにストレッチ感を高めることができます。
4−5.梨状筋のストレッチ
梨状筋(りじょうきん)もお尻の深層筋です。
仰向け寝になり足を深く組みます。下になったヒザを少しあげ、上になった足の方向に下半身をひねっていきます。上になった足で下のヒザにテンションをかけます。この時になるべく腰が浮かないようにしてください。円の部分にストレッチを感じてください。
4−6.縫工筋のストレッチ
骨盤からヒザ下まで通る、人体で最も長い筋肉です。腰を押し出す動きでストレッチします。
仰向け寝のまま足を卍型に直角に曲げます。ヒジで上体を少しあげ、上にある足側のお尻を手でテンションをかけながら股関節前面を伸ばします。
4−7.ハムストリングのストレッチ
仰向け寝のまま片足のヒザ裏上部に両手を入れ手前に引き寄せます。もも裏がよくストレッチされるように力のポイントをいろいろ試してみてください。
5.セルフで改善をはかる方法・2【自重トレーニング編】
股関節のつまりで多いのは、大腿骨が前にシフトしてしまうものです。これがなぜ起きるかというと前側の筋肉ばかりを使っていて、お尻の筋肉が使われていないか弱化しているためにアンバランスが起きているからです。
お尻の筋肉を使える動き方をマスターしたり、お尻の筋肉を鍛えたり、股関節の付け根から足を動かすトレーニングでバランスと効率の良い動きを体得しましょう。
5−1.お尻の筋肉をアクティブにするヒップリフト
仰向け寝になり、両ひざを立てた体勢からお尻を上げます。この時に肩からひざまでが一直線になるようにします。お尻を硬く締めてキープしてください。最初は10秒から。30秒キープを目標にします。2〜3セット。
ストレッチポール®を使うことでさらに効果がアップします。お尻や体幹を使い足でよく押し付けないと体勢がキープできないからです。可能な方は片足をまっすぐ伸ばしてみましょう。
5−2.肩甲骨とお尻の連動を出すヒップリフト
走動作に直結する肩から骨盤の連動をヒップリフトでマスターします。
写真の態勢をとります。左腕と右足をあげておいた状態から、お尻も一緒に腰から浮かせます。左ヒザから肩までを一直線に保ってください。左足と右肩で床面をしっかり押し付けます。10秒キープして反対側も行います。2〜3セット。
5−3.ハムストリングスを活性化するレッグリフト
5−2のエクササイズでハムストリングス(もも裏)やお尻がつりそうな方は、上記の体勢であげた足を上下に動かします。骨盤は床から浮かせないようにしてください。
5−4.8の字エクササイズ
「股関節のつまり」の場合によく行われるエクササイズですが、おろそかにされがちな重要なポイントがあります。
単に足をブラブラさせて空中で8の字を書くように動かすケースが多いですが、軸足に荷重することが最も大事なポイントです。
「つまり」を感じる足を軸足にしてください。浮いている足が「つまり」のある足ではありません。反対足の円運動で股関節が動くことにより、軸足の噛み合わせが適正な位置に納まっていくのです。
浮いた足を動かすことも股関節の動きのエクササイズになりますので、両足で行ってください。
5−5.ランジ
臀筋やハムストリングスの他、大腿四頭筋など下肢をバランス良く鍛える方法の一つがランジです。
片足を前に出し、もう片足を後ろに下げて立ちます。そのままカラダを上下に動かします。もも前だけではなく、お尻やハムストリングスも使いましょう。慣れないうちはお尻に手を当てながら行うと、お尻の筋肉の動きが分かりやすいです。両足とヒザがまっすぐ前を向くようにしてください。
動画でもお伝えします。スピード感の参考になさってください。
5−6.スクワット
臀筋やハムストリングスをはじめ下肢全体を鍛えるシンプルなトレーニングです。ヒザにポイントがあります。
足を肩幅くらいに開き、頭に手を当てて腰を落とします。上半身は頭から腰までが一直線の感覚で。腰は落としすぎずに写真の程度まででOKです。X脚やO脚で行わないようにします。
5−7.エクセントリックスクワット
かかとの下にストレッチポール®ハーフカットのようなクッションを置いて行うと、ふくらはぎの負荷が減ります。そのぶんお尻やハムストリングスなどを効果的に鍛えることができます。
6.セルフで改善をはかる方法・3【チューブトレーニング編】
トレーニングチューブを使用することで効果的に殿筋やハムストリングスを鍛えることができます。
6−1.チューブレッグカール
チューブを使ったハムストリングスのトレーニングです。
写真のようにうつ伏せ寝になって、片足でチューブを引きます。
まっすぐ引くことが大事です。足が外側に開いてしまうと、ハムストリングスに効果が薄いばかりか姿勢を悪くします。他のトレーニングでも正しい姿勢が重要です。
6−2.パワーポジションニーアウト
太ももにチューブを巻き、ピンと張るような状態にしていきます。脚を腰幅から肩幅くらいにして、背中をまっすぐにします。膝がつま先より前に出ない程度に曲げ、重心を少し下に落とします(パワーポジション)。
つま先、かかとが浮かないように、そして上半身が左右にブレないように注意しながら両膝を写真のように内・外側へ向けて倒していきます。足の付け根のあたりが動いている感覚を実感しながら15回ずつ行いましょう。
6−3.サイドキック
両足首にチューブを巻き、腰幅くらいに開いたときにピンと張るように長さを調整します。
上半身が傾いたりしないように注意しながら、
・片足を曲げて引き上げ
・横に伸ばし
・伸ばしきったら曲げて戻し
・床に足を戻す
この動作を繰り返していきます。股関節周りなど、使っている部分を感じながら左右15回ずつ行いましょう。
併せて片足ずつ後ろに引く動作も行ってください。その際もお尻から動かすようにします。
当ブログの別記事「チューブトレーニング決定版50選!部位別引き締めメニュー」では、これ以外にもエクササイズを紹介しています。お知りになりたい方はぜひご一読ください。
7.セルフで改善をはかる方法・4【股関節コンディショニング編】
股関節の状態を適正化するには、股関節の深層筋を緩めて、正しい位置に納まるようにして、その状態をキープする運動も大事です。3章でご説明した治療家の先生が行う方法がまさにこれに近いものです。
当ブログを運営する㈱LPNが製造販売するストレッチポール®を使用すると、この股関節のコンディショニングエクササイズがセルフで可能になります。この章ではこの運動についてご説明いたします。
7−1.ストレッチポール®を使用した運動で股関節の状態が整えられる理由
ストレッチポールの上に仰向けで縦に乗ると、ポールの反発で骨盤が押されることにより、骨盤が後ろに傾き、前傾していた骨盤は正しい位置へと変化します。
また、骨盤には股関節や足の骨との位置関係によって、「ゆるみの位置」と「締まりの位置」があります。ストレッチポールの上に乗ることで、仙腸関節がゆるみの位置となるために、骨盤の状態が調整しやすくなるのです。この位置は股関節周辺のそれぞれの骨が近づくので、股関節も正しい状態にしやすくなります。
※ストレッチポールのEX、MX、ハーフカットでこの作用が起きます。
ストレッチポール®で行う股関節の運動を「ペルコン」といいます。広島国際大学で行われた研究には下記のようなものがあります。
ストレッチポールを用いた骨盤リアライメントエクササイズ(PelCon)は健常者の下肢発揮筋力の左右差を減少させる 増田圭太ら 日本理学療法学術大会 2008(0), C3P1362-C3P1362, 2009 http://ci.nii.ac.jp/naid/130004580633
次項からこのエクササイズの一部をご紹介します。
7−2.骨盤スライド運動
骨盤の左右差を解消する運動です。腰周りを左右にスライドさせるようにユラユラ動かしします。ポイントは、腰が床面と水平に動くように意識することです。10~20回くらい左右にスライドします。
7−3.フロッグキック運動
股関節の可動域の改善などを目的にします。
片足を伸ばして、
伸ばした片足を内側に倒します。
倒したまま股関節側に引き寄せます。
ヒザを外に開き倒します。
カカトを滑らせるようにして脚を伸ばします。カカトは1本のレールの上を行ったり来たりするイメージで行うと良いです。
7−4.バタ足運動
先ほどまでのエクササイズで整えた骨盤の状態をキープする運動です。骨盤の締まりの位置になります。
腰・ヒザの角度が90度になるように持ち上げます。
脱力しながらカカトでお尻を叩きます。 前記の状態から、両足を床から持ち上げます。息を細くフーッと吐きながら、カカトでお尻を交互にトントンと軽く叩きます。10秒くらい2~3セット続けましょう。インナーユニット活性化の効果もあります。
別記事「ストレッチポール®で簡単骨盤調整!2つのポイントと改善法」では、さらに詳細に紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
8.まとめ
さほど深刻ではない「股関節のつまり」の対処方法をお伝えしました。違和感程度であればガマンしながら普通に過ごすことができますが、放置しておくとさらに重大な障害を引き起こす可能性があります。
いずれも股関節やお尻の深層筋肉が弱化していることが原因に考えられますので、ご紹介した方法をぜひ日頃のケアの一環として続けられることをおすすめ致します。
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