お茶は水の次に世界で最も広く多く飲まれている飲料です。種類は様々あり、緑茶、紅茶、烏龍茶(ウーロン茶)、ハーブティーが代表的です。温かくしても冷たくしても飲め、飽きにくいためでしょう。
お茶を飲むと痩せられる感じがする「宣伝」も少なくありません。ダイエットを目的としてお茶を常飲されている方もいるかと思いますが、その効果は実のところはどうなのでしょうか。
しかしながら、それを差し置いても健康的なメリットは大きいです。即時効果としては、喉の渇きを和らげたり、目を覚ましたり、リラックスすることができます。長期的には様々な効果があることがわかっています。
しかし、良いと思って必要以上に飲みすぎるとデメリットをもたらす可能性もあります。
この記事では科学的に裏付けられたそれらのメリットとデメリットをお伝えし、オススメのお茶をご紹介します。健康的な生活にお茶を取り入れようと思っている方はぜひ参考になさってください。
1.お茶にはダイエット効果があるの?
みなさんが知りたいお茶のダイエット効果についてまず解説します。
1−1.研究でははっきりしていない
近年の研究ではお茶を飲むことは優位な体重減少と関連していないことがわかってきました。
米国農務省の主導で、19名の成人(糖尿病に罹患していない)を被験者として、五日間にわたって一日1.4リットルのウーロン茶、カテキン入りウーロン茶、ポリフェノール入りウーロン茶、カフェイン入り飲料を飲ませ、空腹時の血中グルコース濃度、血中インスリン濃度、経口ブドウ糖負荷試験を実施したが、代謝改善の有意な効果は見られなかった。2010.10.20「European Journal of Clinical Nutrition」“Oolong tea does not improve glucose metabolism in non-diabetic adults”
別の実験結果では以下のようなものがあります。
三日間の実験で、被験者を少量カテキン (300 mg)、多量カテキン (600 mg)、カフェイン (200 mg)、カテキン&カフェイン (300 mg/200 mg) 、及びプラセボ(偽)の五つのグループに分けて、起床時および食事後に摂取する方法で、それぞれの効果を実験した。
その結果は、
・食後の少量カテキン及びカフェインは、それぞれ共に脂肪酸化を高めたが、多量カテキンは無影響であった。
・空腹時の脂肪酸化はカフェインを摂取した時のみ高まった
・少量カテキン及びカフェインの相乗効果は認められなかった。
・カテキンを摂取してもエネルギー消費への影響はなかった。2010.4.7「European Journal of Clinical Nutrition」、 “Epigallocatechin-3-gallate and postprandial fat oxidation in overweight/obese male volunteers: a pilot study” by University Medicine Berlin:
この実験結果は3日間、茶を飲んでも、運動しなければエネルギー消費量は変わらないこと、つまり体重の減少には至らないことを示しています。
成分にはダイエット効果は期待できませんが、水やお茶を食事前に飲むことで、満腹感を得ることができ、食事量を減らすことができる効果はあるでしょう。
1−2.痩せられそうなトクホ系お茶飲料も同様
日本のダイエットに効果がありそうな茶飲料の広告でも「これで痩せられる」とは一言も書いていません。
例えば、黒烏龍茶(サントリー)の広告では、「体に脂肪がつきにくい」とありますが、これは「高脂肪食を食べるときに、黒烏龍茶をあわせて飲むことで体への脂肪の吸収を他の飲料よりは抑えられる」ということのようです。「脂肪の排出量も他よりは多かった」とありますが、まったく脂肪を吸収しなかったわけではないはずです。高脂肪のものを食事する時に一緒に飲むことでこれらの機能が現れるとのことですから、傍に置いて好きな時に飲むというスタイルでは効果は期待できないはずです。
また別の実験では、「16週間毎日2本飲み続けたら、腹部脂肪が平均で11.32立方センチメートル減った」というものもあります。これは2×2×3cmくらいの体積となります。軽度肥満(BMI指数25〜30)の方を対象にしたということで、これは例えば170cm80kgくらいの方になります。それくらいの体格の方であれば、2×2×3cmほどの脂肪が減ったところで外見はそれほど変化がないと思われます。
単位や表現の見せ方とトクホのお墨付きでいかにもありそうだと思わせていると言ってもいいでしょう。4ヶ月あれば食事のコントロールと運動を心がけた方がダイエットの効果はあると考えられます。(参照:黒烏龍茶とは)
2.お茶の健康づくりにおけるメリットについて
お茶の成分で健康に寄与するものは、ポリフェノールとカフェイン、さらに水分です。
緑茶と紅茶にはカテキンが、烏龍茶には烏龍茶ポリフェノールが含まれています。カテキンと烏龍茶ポリフェノールには抗酸化作用があります。麦茶にはそれらがほとんど含まれませんが、代わりにミネラルが多いです。
たとえお茶にダイエットの効果がないとしても、飲むべき理由はたくさんあるようです。
2−1.心疾患や脳卒中の予防効果
カテキンが豊富に含まれる紅茶を飲むことは、Journal of Hypertensionに掲載された研究論文では心機能の改善に関係があることが示唆されました。
別の研究では、緑茶と紅茶ともに、脳卒中と冠状動脈性心疾患のリスクを低下させることが示されました。また、オランダの約4万人を対象にした13年間の調査によれば、紅茶を日常的に飲んでいる人は、紅飲まなかった人に比べて、心臓病に関連した死のリスクが低いことが分かりました。
日本でも、東北大大学院医学系研究科・栗山進一講師らの調査により、緑茶を1日5杯以上飲むと脳梗塞の死亡リスクが低下する(1日1杯未満の人に比べて男性は42%の低下・女性は62%の低下)ことを示唆しています。
ハーブティーも心臓の健康にメリットがあるという研究報告があります。
2−2.それ以外の健康効果
茶の健康効果は、他にもあります。
・整胃効果
・ビタミンCの補給による美肌効果(特に煎茶に含有量が多いです)
・リラクゼーション効果
・糖尿病のリスク低下
・目のピント調節効果
・睡眠改善効果
・起床時に目をさます効果
・水分補給と排出による血行促進効果、デトックス効果
日常習慣的にお茶を飲むことは、飲まないことよりも健康的にメリットがあると言えるでしょう。
3.飲み過ぎによる健康被害に注意
なにごとも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。ダイエットや健康に良さそうだからといって、あまりに多量にとりすぎるとかえって健康を害することがあります。
3−1.カテキンの多量摂取による被害の可能性
2007年1月、カナダ保健省 (Health Canada) は緑茶抽出物製品の摂取との関連が疑われる肝毒性の事例を公表しています。これは他のサプリメントやホルモン治療剤の注射も受けていたとのことで、必ずしもカテキンが及ぼす悪影響と断定されたわけではありませんが、カナダ保険省がリスク回避のために公開しているものです。
これによると、カテキンサプリメント600mg/1日を6ヶ月以上飲んでいた42歳の女性が、黄疸と腹部の不快を訴えて入院し、その後さらに症状が悪化して肝移植を受けたということです。
通常の緑茶1杯のカテキン含有量は30mg程度ですが、高濃度カテキンをうたうお茶飲料では300mg/1本含有するものもありますので、念のため飲み過ぎに注意なさってください。(出典:健康食品の安全性・有効性情報(厚生労働省)
ちなみにカナダでは減量目的のカテキンサプリメントは承認されていません。
3−2.カフェインの多量摂取による弊害
カフェインは、摂取量に応じてリラックス効果や目をさます効果、精神を高揚させる効果があります。夜にお茶を飲んだり、飲み過ぎによって、眠れなくなる経験をした方は多いでしょう。
カフェインにはわずかながら中毒性もあります。また個人差がありますが、耐性が生じてしまうので、「気がつくと欲しくなるようになり、徐々にその量が増えてしまう」という傾向があります。
カナダ保健省ではカフェインの一日許容量(成人の場合)を400mgとしており、これは紅茶や煎茶で2〜3リットルの量となります。(参照:カフェイン リスクを知ろう(2016/2/2 日本経済新聞朝刊))
3−3.烏龍茶の飲み過ぎも注意
烏龍茶は食品の脂を流す作用が特に強いです。車の窓についた油汚れを烏龍茶で洗っている人もいるほどです。空腹時や食事後でも必要以上に飲みすぎると胃を荒らしてしまう恐れがあります。その他にも飲み過ぎによるデメリットがあります。
・鉄分の吸収を抑える(貧血症の人は注意)
・利尿作用が利きすぎる(下痢、その後の便秘、栄養素の排出のリスクがあります)
・空腹時の血糖上昇を引き起こすという研究結果がある(反対に、糖尿病の発生確率を下げるという発表もあります)
黒烏龍茶(サントリー)のホームページでも1日2本を目安に摂取してください、と一日量を推奨しています。
4.おすすめの飲み方について
あまり多量に(1日10杯程度まで)飲まなければ、好きなタイミングと温度で飲まれればいいと思います。ここでは、編集部おすすめの飲み方をお伝えします。
4−1.種類によって適温は異なる
緑茶の場合、渋みが好きな方は高温で、旨味を重視する方は50~60度の低温で煎れるようになさってください。これは渋み成分のカテキンが80度以上で、旨味成分のアミノ酸は低温で溶け出しやすいとされているからです。
香りは熱湯に近いほうがより引き立ちます。玄米茶・ほうじ茶・中国茶(種類による)・紅茶は熱湯で入れ、香りと渋みを楽しむと良いでしょう。
4−2.目覚めのお茶は一度歯磨きをするか口をゆすいでから
起きたらそのままお湯を沸かしてお茶を飲まれる方が多いと思いますが、注意が必要です。就寝中は、口内が乾燥しやすく雑菌が繁殖しやすい環境になっています。
当ブログでオーラルケア関連の記事監修をいただいている歯科医の森昭先生は以下のように語っています。
一日の中で、口内細菌が最も多い時間帯は、唾液の分泌が減り、口内が乾燥しがちな就寝中となります。このときの細菌数は便10gに匹敵する量です。就寝中の口がどれだけ汚いかイメージできるかと思います。(出典:有名歯科医が解説!正しい歯の磨き方で歯垢を驚くほどよく落とす方法)
この細菌が、水分とともに胃の中に落ちることで健康上のリスクが高まります。
朝一番にやることは、洗面所で歯磨きをするかせめて口をゆすぐことをお勧めします。先生が推奨する方法はデンタルフロスを使う方法ですので、上記出典記事を参考になさってみてください。
4−3.砂糖の追加は控える
ダイエット的にも口腔環境的視点からも、甘み(砂糖)を追加することは避けた方が良いでしょう。甘さが感じられるようになる程度、砂糖を加えるには500ccで角砂糖6個分は必要になります。
5.麦茶やハーブティーもおすすめ
前述したとおり、麦茶はカフェイン摂取の弊害を受けることがありません。ミネラル(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム)が含まれるので汗をかいたときには特におすすめです。
その他のハーブティーもカフェインやカテキンがなく、別の健康成分が含まれるものがあります。安眠効果で代表的なものはカモミールでしょう。その他のハーブティーも一部ご紹介します。
5−1.パッションフラワーティー
パッションフラワーティーにも安眠効果がありそうです。Phytotherapy Researchという研究報告誌の2011年8月号に掲載された研究では、就寝1時間前にパッションフラワーティーを飲んだ人々が、プラセボ群よりも安眠感覚を得たとしています。
5−2.ルイボスティー
ルイボス葉から作られた赤い色のハーブティーです。Ethnopharmacology Journalに掲載された研究発表では、心臓病を発症するリスクのある人々(高コレステロール、血圧および/またはBMI指数)が毎日6カップを飲むことによって「善玉」HDLコレステロールが高まり、トリグリセリドおよび「悪玉」LDLコレステロールを有意に低下させたという発表があります。
5−3.ほうじ茶とのミックスハーブティー
初めてのハーブティーは、香りに抵抗があるかもしれません。飲み慣れているほうじ茶にハーブのリーフを加えることで、飲みやすくなります。ほうじ茶にはカラダを温める効果があるので、試してみてはいかがでしょうか。以下のページにて作り方がのっていました。
つらい風邪の症状や風邪予防に・・・。ハーブティーはいかが?(大井川茶園公式ブログ)
6.まとめ
お茶の健康におけるメリットを紹介しました。以前はダイエットや代謝を高める効果があるのではと考えられましたが、現在の研究ではなかなか裏付けるものがありません。
「痩せられそうなお茶を飲むから、少しくらい食べ過ぎても大丈夫だ」と思ってしまうとかえって肥満を加速させることになります。
それ以外の健康における効果も少なくありませんが、度を越してはかえって健康を害するおそれがあります。負担にならない程度の量を習慣的に飲まれることで、長期的なメリット(気づかない程度かもしれませんが)が得られるかと思います。この記事が参考になれば幸いです。
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