トリガーポイントとは・その原理と痛みに効果的なアプローチを解説!

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Physiotherapist giving knee therapy to a woman

「病院で診てもらったけど原因がいまいち分からず炎症止めの薬だけもらった」

「肩が凝って頭まで痛くなる」

「マッサージに定期的に通ってなんとかもちこたえている」

「寝る前にストレッチはするようにしてるけど肩こりがひどい」

などなど、このように感じている人は非常に多いです。実際に私が働いている企業内フィットネスセンターでも、このような不満を解消するためにカウンセリングを受ける方はたくさんいます。

そして多くの人は「病院へ行くほどのことではない」と感じて診察を受けていなかったり、病院で診てもらったけど「特に異常はない」と言われ、「運動は少し控えて様子を見ましょう」とか、いくつか簡単なストレッチを教えてもらっただけ、ということが非常に多いです。

結果、痛みや症状の根本の原因が分からないので、「週1回接骨院に行って電気治療を受けてます」「どうしようもないときだけ鍼治療に行きます」など、対症療法(症状を取る治療法)に頼るしかない方が大勢います。ケアを受けると痛みは和らぐけれども、数日のうちにまたその痛みや症状は戻ってきて、結局定期的に通うしかないということがほとんどです。

痛みや症状の原因を解決するための1つの方法としてお伝えしたいのが「トリガーポイント」という考え方です。今あなた(もしくはあなたの患者さん・クライアントさん・選手)が抱えている痛み・症状は、その部位自体に原因があるわけではなく、他の部位が原因かもしれません。他の部位に異常が起きたことが原因で、今の痛みや症状が現れている可能性があります。

トレーナーの方は、患者さんや選手へのケアの1つとして利用していただけます。また、その人自身で行なうセルフケアとしても簡単に行えます。トリガーポイントのケアは自宅で簡単にでき、しかもケアの時間は数分でOK。それでいて、今までなかなか治らなかった痛みや症状を改善させてくれるかもしれません。

身体のケアの方法の1つとしてレパートリーに加えておくときっと役に立つと思います。ここから詳しく解説していきます。

この記事は山口淳士が執筆しました。
米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)/NASM-PES, CES
中京大学体育学部体育科学科卒業後、Bloomsburg University大学院でアスレティックトレーニングを学び、米国公認アスレティックトレーナーの資格を取得。2016年4月に6年間のアメリカ生活を終えて日本に帰国。現在は某大手企業内フィットネスセンターで運動指導などを行っている。また、アスレティックトレーニング系ブログ「CHAINON」と、熱中症ブログ「熱中症ドットコム」を運営している。


1.トリガーポイントとは?

トリガーポイントとは、簡単に言うと「過度に収縮してしまった筋肉のある一部分」のことを言います。その部分を圧迫・指圧すると痛みが発生し、さらに圧迫・指圧されている所以外の場所に痛みや症状が現れることもあります(=これを「関連痛」と呼びます)。

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図のように、筋肉全体が収縮して固まってしまっているわけではなく、一部のみ「結び目」のように固まってしまっているので、ただの筋肉のストレッチだけでは、この結び目部分がしっかりと伸びずにそれ以外の部分だけが伸びてしまうため、トリガーポイントのケア・解消にはなりません。

1−1.トリガーポイントは様々な痛み・症状を引き起こす

トリガーポイントは、突然の怪我や筋肉の使いすぎ、慢性的な損傷・炎症、また姿勢の悪さや長時間同じ姿勢で居続ける、といった行動などで発生してしまいます。そして、トリガーポイントは全身のあらゆる筋肉にできてしまう可能性があります。

トリガーポイントは全身にできる可能性があります

筋肉の一部にトリガーポイント(=結び目のような場所)ができてしまうと、その部分の血流が悪くなるため、その筋肉に疲労物質などが溜まりやすくなるとともに、代謝に必要な新鮮な酸素や栄養素も入ってこなくなってしまうため、痛みや症状を引き起こします。また、トリガーポイントが発生した筋肉や付近の関節などに痛みが現れてしまうだけでなく、そこから離れた場所にも痛みを発生させたり、頭痛やめまい、吐き気、心臓の痛み、不整脈など、一見筋肉とは関係のないような症状も引き起こす可能性があります(=「関連痛」です)。

1−2.トリガーポイントの「関連痛」の意味

トリガーポイントは、この関連痛がキーポイントとなるため、もう少し詳しく解説します。例えば「膝」に痛みがある場合、多くの治療家は「膝」に問題があると考え、膝周辺の筋肉や組織をチェックし、治療を行います。本当に膝に問題・原因があれば、それで解決します。ですが、膝の痛みを引き起こしている原因が「膝以外」にある、ということも多くあります。これが、いくら治療を受けても、治療を受けた後は多少痛みが和らいだとしても、すぐに痛みが復活してしまう、ということが起こる理由です。

そんなときに、治療の1つのレパートリーとして持っておくと良いのが「トリガーポイント」です。膝以外の部位にできたトリガーポイントが、関連痛として膝に痛みを引き起こしている可能性があるため、トリガーポイントをケアすることで膝の痛みが解消する可能性があります。

その膝の痛みの原因は他の部位にあるかもしれません

なぜトリガーポイントが関連痛を引き起こすのかについては、まだはっきりと研究で解明はされていないのですが、多くの研究によって「〇〇筋にできたトリガーポイントが△△に痛みを発生させる」というパターンがわかっているものは数多くあります。この記事の中盤以降で紹介しているので、トレーナー・治療家はそれを見て、ぜひ試してみましょう。正しいトリガーポイントのケア方法を知れば、悪化させてしまうリスクは限りなく低く、なおかつ効果的な治療を行なうことができます。

1−3.トリガーポイント実在証明のための研究があった

トリガーポイントの一番厄介な点は「レントゲン、MRI、CT検査などで見ること・判別することができない」ことです。よって、医師から「この痛みはトリガーポイントが原因ですね」と言われることはありません。

ですが、多くの研究で「トリガーポイントは実際に存在する」ということが示されています。トリガーポイント研究の第一人者と言われているDr. TravelとDr. Simonsは、1999年に発表した研究で「トリガーポイントは電子顕微鏡によって写真撮影をすることができた」と示し、Sikdarらは2009年の研究で「ドップラー超音波検査法をはじめとした超音波検査によってトリガーポイントを発見することができる」ということを示しました。

今回の参考文献の1つである「The Trigger Point Therapy Workbook 3rd Edition」には、何千人という医師、理学療法士、マッサージセラピストが、自身の経験から「多くの凝り、痛み、なかなか改善しない症状はトリガーポイントのような『小さな筋肉の拘縮』が引き起こしている」と感じていると示しています。

1−4.トリガーポイントの判別方法

以下3つの条件を満たした場合に「これはトリガーポイントである」と言うことができます。

  1. 触って感じることができる、緊張した繊細な筋肉のすじ
  2. 挟むように(つまむように)触診をしたときに、目に見える or 触って感じ取れるくらい痙攣したようにピクピクと動く
  3. その部位の触診によって、患者が普段感じるような痛み・症状・関連痛が引き起こされる

Daviesらはトリガーポイントのことを「周りの筋肉と比較するとより硬く、より密集しているように感じる場所」という表現をしています。他に「ギターの弦のような感触」と表現したり、「ちょっとだけ茹でたスパゲティ」のような感覚、という表現もしています。上記したようにトリガーポイントはレントゲンやMRIなどの画像診断では映らないため、「触った感触」や「痛み・症状の出現」などが判断基準となります。

特に大切なのが「その部位を圧迫することで出現する痛み・症状・関連痛」です。以下で詳しく解説します。

1−5.トリガーポイントは2種類ある

トリガーポイントは「活動的なトリガーポイント」「潜伏性のトリガーポイント」の2種類があります。

活動的なトリガーポイントは「何もしていなくても痛み・症状が発生する」ものです。トリガーポイント自体が痛みを発生させており、その部分を指圧すれば痛みがあるし、そのトリガーポイントがある筋肉を動かすと痛みや症状、関連痛を引き起こします。

潜伏性のトリガーポイントは「何もしていなければ、痛み・症状は発生しない」ものです。トリガーポイント自体は痛みを出現させません。圧迫などの外的刺激を受けてはじめて痛みや関連痛が出現します。

この2種類のトリガーポイント、どちらのトリガーポイントができやすいかと言えば圧倒的に「潜伏性のトリガーポイント」です。つまり、痛みが発生している場所にトリガーポイントはなく、痛みの原因となっているトリガーポイントは別の場所にあるということ。

もう何年も肩こりに苦しんでいて、マッサージや接骨院で肩のケアを受けているけど治らないという場合、もしかしたらその肩こりの原因は肩ではなく、他の部位に潜伏性のトリガーポイントがあり、それが原因となっているかもしれません。そのトリガーポイントを解消することで、何年も痛みや症状がとれなかったものが解決する、ということはよく起こります。

トリガーポイントは怪我や筋肉の使いすぎ、慢性的な損傷・炎症、姿勢の悪さなどで発生するため、痛みや症状の原因となっている潜伏性のトリガーポイントを見つけ出すためにトレーナーや治療家のみなさんは、今現在ある痛み・症状を聞き、姿勢や動きをチェックすることはもちろんですが、その他に、過去の怪我や病気の既往歴、普段よくする動きなども、しっかりと聞き出すことが大切です。

患者は往々にして、自分自身で「この痛みはほんのちょっとだから別に言わなくてもいいよな」と勝手に判断して、すべての症状や過去の経験をトレーナーに伝えてくれないことがとても多いです。ちょっとした情報がパズルのピースとなり、ケアをするべきトリガーポイントを見つける手がかりとなるため、しっかりと情報収集を行いましょう。

コラム:トリガーポイントと異なる「スパズム」とは

よくトリガーポイントと「スパズム(筋けいれん/筋痙縮)」を一緒、もしくは混同している方がいますが、別物です。スパズムは「筋肉全体の突然の筋収縮」を指します。トリガーポイントは「筋肉内のある一部分の拘縮」です。トリガーポイントがあることでスパズムを引き起こしてしまうことはありますが、トリガーポイントとスパズムは違うものということを知っておきましょう。

1−6.トリガーポイントと筋膜リリースの関係

「トリガーポイントをケアすること」と「筋膜リリース」をすることは、目的が同じであることもありますが、基本的には異なります。

トリガーポイントは、指圧や野球ボールのようなものでピンポイントに拘縮した部分を圧迫して、リリースした際にその部位に酸素や栄養素が送られてくることでその部位の拘縮を取り除く、という施術方法です。

一方で筋膜リリースは、ピンポイントではなく筋膜・筋肉全体へのケアのこと。筋膜と筋肉はなめらかに滑り合っている状態が理想ですが、筋肉の使いすぎや長時間同じ姿勢でいるといった行動により、筋膜と筋肉がくっついてしまうことがあります。このくっついてしまった状態が、筋肉の柔軟性を低下させたり、痛みや凝りといった症状を引き起こします。筋膜リリースは、この「筋肉と筋膜の滑りを良くする・取り戻す」「くっついてしまった(=癒着してしまった)筋肉と筋膜を引き剥がす」ことを目的として行なうものであり、ある特定の部位の拘縮をピンポイントに圧迫してその拘縮を解消させるトリガーポイントケアとは異なります。

トリガーポイントが発生している場所の筋肉とその筋膜が癒着している、ということはもちろんあるので、筋膜リリースをすることによって痛みや凝りが改善したり動きが良くなることはあります。ですが、広い範囲のケアをする筋膜リリースだけでは「小さい拘縮」を取り除くことができないことも多いため、トリガーポイントにはその考え方を理解して専用にケアする方法のほうがより効果的な治療となります。


2.トリガーポイントへのアプローチで痛みを解消する方法

ここから、実際にトリガーポイントを使ったケアの方法をお伝えしていきます。

痛みを感じる部分のケアを行うことで、その痛みや症状の程度が改善するのであれば簡単です。問題となるのは、痛みがある部分にアプローチしても改善しないとき。プロの治療家でさえも、痛みがある部分だけに注目してしまい、その部位に様々な手技・テクニックを用いて治療を試みるけれども治らない、ということはよくあります。治らない理由は「その部位自体が痛みを引き起こしているわけではないから」です。そんな時、治療法の1つとしてトリガーポイントへのアプローチを試してみましょう。

2−1.トリガーポイントの見つけ方

まずは、このあと3章で紹介する「トリガーポイントのパターン」を見ながら試してみましょう。「×印=トリガーポイント」「赤エリア=関連痛が起こる場所」を表します。つまり、選手・患者・クライアントが赤エリアで表されている部分に痛み・症状があるという場合、×印が示す場所にトリガーポイントが発生している可能性があり、それが痛み・症状の原因である可能性があります。

トリガーポイントは、その名から「一点にあるものすごく硬くなっている場所」のようなイメージを抱かせます。確かにそうなっている場合もありますが、明らかにここだけメチャクチャ硬い、となっていることはあまりありません。あくまで「周りよりは少し硬くなっているエリア」くらいに考えておきましょう。ですが実際に圧をかけると、明らかに他の部位に圧をかけられているときとは感覚が違う痛みを感じます。

2−2.トリガーポイントケアによって起こること

トリガーポイントを見つけたら、そこに指圧・圧迫をかけていくわけですが、その圧は以下2つのことを起こすキッカケとなります。

  • トリガーポイントを圧迫することで、化学物質や神経の信号が「筋肉の拘縮を起こしている」ということを脳に伝える
  • その信号を受け取った脳は、筋肉の拘縮を解消するために血液をその場所に送る

ずっと圧迫をしていては「止血」をしているようなものなので、実際に拘縮部分に血液が流れません。圧迫はあくまで、脳に「この部分に異常が起きてるから酸素と栄養素送って!」という合図。一定時間圧迫をかけたら、その圧迫を解き放つことで一気に血流が良くなり、新鮮な酸素や栄養素がその部位に届くのです。つまり、トリガーポイントのケアは「トリガーポイントにある一定の時間圧迫をかけた後に解放する」で完結します。「圧迫からの解放」がトリガーポイントケアのキーということを覚えておきましょう。

2−3.トリガーポイントの圧迫の程度と時間

トリガーポイント部分にどれくらいの圧を、どれくらいの時間かけていけば良いのでしょうか?

まずは「圧の強さ」。これは、痛みのレベルを1〜10で表したときに(「1=全然痛くない」「10=耐えられないくらいの激痛」)、ちょうど真ん中くらいの「5」のレベルで指圧しましょう。下記「症状別トリガーポイントケア方法」で紹介する図の×印部分に「痛いけど気持ちいい」「痛いけどまだリラックスはできる」くらいの圧をかけるのがベスト。「痛みに耐えれば治りが早くなる」ということはありません。トリガーポイントやマッサージなどのマニュアルセラピーではよく「Less is more(少ないほどより良い)」と言われます。やり過ぎは逆に症状を悪化させるので注意しましょう。

次に「時間の長さ」ですが、以下3つの現象が起こったら、その時点で圧迫を解放します。

  1. その部位の拘縮が緩んだと感じたら
  2. ピクピクと痙攣のような動きがおさまったら
  3. 関連痛の症状が消えてきたら

これらの現象が起きたら、それ以上長く圧迫をかけておく必要はありません。すでに改善の兆候が出ている証拠です。もし上記の現象が起こらなかったとしても、起こるまで圧迫をかけ続けるわけではなく、一箇所のトリガーポイントを指圧する時間は長くても「1分」にします。

上記しましたが、トリガーポイントを指圧し、そのプレッシャーをリリースすることで新鮮な酸素や栄養素がその部分に流れ込んできます。長い時間指圧すればするほどよい結果が生まれるわけではないということを覚えておきましょう。1分以上指圧し続けることは、逆に痛みを増幅させたり、症状を悪化させてしまう可能性もあります。1回のケアだけで痛みや症状が完全に治ることは稀です。定期的なケアを積み重ねて痛み・症状を改善していきましょう。

2−4.トリガーポイントケアを行なうときの体勢

トリガーポイントに圧迫をかけるときは、トリガーポイントが発生している筋肉を「ニュートラル」もしくは「少し短い状態」にして圧迫するほうが効果的です。筋肉がピンと伸ばされた状態(=ストレッチされた状態)では、拘縮はなかなか改善しません。リラックスした状態で、痛みレベル5くらいの圧をかけていきましょう。

2−5.一度のトリガーポイントケアで行なうのは「3ヶ所」まで

短時間にたくさんのトリガーポイントを指圧すると、気分を悪くさせてしまうことがあります。たくさんケアしたい場所がある場合は、特に痛みがある部位や一番症状が強い部分のケアを優先的に行い、一度に全部のケアを行なうことは控えましょう。1日に行うトリガーポイントのケアは多くても「3部位」までにすることが推奨されます。

2−6.トリガーポイントは「同側」に発生する

トリガーポイントは、基本的に「同側」に関連痛を引き起こします。例えば、右肩に痛みがある場合、それが関連痛であれば、トリガーポイントは身体の右側の筋肉のどこかにあるということ。身体の左側にあるトリガーポイントが、身体の右側へ関連痛を引き起こすことは滅多にありません。

2−7.トリガーポイントを使ったケアでやってはいけないこと

まず避けなくてはいけないのは「脈を指圧すること」です。もし動脈に近い所(頸動脈、撓骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈など)のトリガーポイントをケアする場合は、まずは脈が触れるところを確認し、その部分を避けて圧迫をしましょう。また「リンパの腫れ」がある場合も、その腫れている部分を指圧するのは避けましょう。

もしあなた(もしくは治療を受ける人)が動脈硬化のような症状を持っている場合は、トリガーポイントによる治療は行わないようにしましょう。更に「熱がある」「高血圧」「感染症にかかっている」「骨折」「腎不全を含めた腎障害」「動脈瘤」「心不全」「冠動脈疾患」「腹膜炎」など、ここに挙げたものは多くあるものの一例ですが、何か疾患を持っている場合は、トリガーポイントによるケアを行う前に、医師に相談して行なうケアを決めましょう。

3. 症状別トリガーポイントケア方法

今回は関連痛として代表的な7つの症状別に、どこのトリガーポイントのケアをするべきかをお伝えしていきます。

3−1.頭痛

以下のトリガーポイントの関連痛として「頭痛」「偏頭痛」の症状が生まれることがあります。

【僧帽筋上部】

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僧帽筋上部で一番メジャーなトリガーポイントが、上図の×印で表されている部分です。こめかみの部分がズキズキする頭痛をよく経験する場合、僧帽筋上部の部分に発生するトリガーポイントをケアすることによって、症状が回復することがあります。

【胸鎖乳突筋】

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胸骨から伸びる筋肉は、筋肉の走行に沿ってほぼすべての部分がトリガーポイントとなっています。目の奥がズンと重くなるような頭痛、もしくは耳の後ろや頭頂部がズキズキするような頭痛の場合は、胸鎖乳突筋のケアによって解消するかもしれません。

頸動脈が近いので、くれぐれも頸動脈を指圧することは避けましょう。

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鎖骨から伸びる方の胸鎖乳突筋にも数箇所、走行に沿ってトリガーポイントがあります。おでこの当たりがズキズキするような頭痛は、胸鎖乳突筋の深層パートへのケアを行ってみましょう。こちらも頸動脈が近いので気をつけましょう。

3−2.首の凝り

オフィスワーカーや首・肩こりのひどい人は、とりあえず硬いと感じる部分を揉んでしのいでいる、ということは多いと思います。ですが、首の痛み・凝りを引き起こすトリガーポイントを知っておくと、対症療法ではなく原因を解消させ、痛み・凝りとおさらばすることができるかもしれません。

【肩甲挙筋】

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肩甲骨の上角すぐ上の部分や、肩甲挙筋の筋腹にトリガーポイントが発生すると、首・肩こりを感じるようになります。肩甲骨上角すぐの場所がケアしやすいですが、筋腹のトリガーポイントもケアすることで、より首の凝りが取れやすくなります。しっかり2ヶ所ケアしましょう。

3−3.肘の痛み

肘に痛みがあるにも関わらず、レントゲンやMRIを撮ってもこれといった原因が見つからないということはよくあります。そんなときはトリガーポイントのケアを試してみると、もしかしたら症状が回復するかもしれません。

【腕撓骨筋】

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肘を曲げる強い筋肉の1つが腕撓骨筋です。この筋肉にトリガーポイントができると、肘の外側(手の平を前方に向けた状態での肘の外側)に痛みが発生することがあります。トリガーポイントの場所は、肘関節から約5cm下外側です。

また、この部分にトリガーポイントが発生すると、手の甲側にある親指と人指し指の間のプニプニした部分にも痛みが生じることがあります。

腕撓骨筋と同じエリアには「回外筋」と「長橈側手根伸筋」があり、これらの筋肉に発生するトリガーポイントも肘の外側に痛みを引き起こします。肘外側に痛みがあったら、肘・手首の伸筋のケアを行なうと、良い結果が生まれるかもしれません。

【上腕三頭筋】

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肘の痛みを発生させることが多い上腕三頭筋のトリガーポイントは、内側頭の筋腹あたりにできます。ここにトリガーポイントができると、指圧した際に肘の外側や肩の後ろ側に関連痛が現れます。

また、肘関節すぐ上の部分外側〜内側にも、肘に痛みを発生させるトリガーポイントができてしまうことがあります。こちらもぜひケアをしてみましょう。

3−4.背中・腰の痛み

背中や腰の痛みも、原因がはっきりしないものが多いです。ぜひ以下のトリガーポイントを指圧してみて、関連痛(普段感じるような痛み・症状)が現れるかチェック&ケアをしてみましょう。

【最長筋・腸肋筋】

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胸椎10番〜腰椎1番の高さあたりにできるトリガーポイントは、腰からお尻にかけて痛みを引き起こします。良い姿勢ではないまま重いものを地面から持ち上げたり、重いものを運んだりすることで、これらのトリガーポイントができてしまいます。トリガーポイントのケアと並行して、正しいスクワットの動きを身に付けさせることも大切になります。

3−5.鼠径部の痛み

鼠径部には大きい動脈やリンパなど繊細な組織が多く通っている場所なので、なかなかケアを行なうのが難しいと感じているトレーナー・治療家の方は多いと思います。そんな鼠径部に痛みが生じたとき、もちろんまずはドクターに診てもらうべきですが、以下のトリガーポイントのケアを試してみるのも良いかもしれません。

【長内転筋/短内転筋】

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恥骨から大腿骨の上部に停止する長内転筋と短内転筋。短内転筋の上(浅部)には恥骨筋があるため、短内転筋へのケアは同時に恥骨筋をケアすることにもなります。

鼠径部の痛みの原因としてよくあるのが、この内転筋群へのトリガーポイントの発生です。

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横になった状態で床側の膝を90度に曲げ、少しだけ床から脚を浮かせます。すると長内転筋にグッと力が入るので、長内転筋の場所を特定することができます。そこを指で掴むようにして、トリガーポイントのケアを行ってみましょう。

3−6.膝の前側の痛み

膝のお皿のあたりに痛みがあり、レントゲンやMRIを撮っても特に異常がなくイマイチ原因がわからない…ということはよくあります。そんな場合、もしかしたらトリガーポイントが原因かもしれません。以下2つの筋肉にトリガーポイントが発生すると、膝の前方(お皿)あたりに痛みや症状が発生することがあります。

【大腿直筋】

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大腿直筋にトリガーポイントが発生すると、膝のお皿の深層に痛みが発生します。膝の曲げ伸ばしをするとコリコリと音がする、といった症状も、この大腿直筋のトリガーポイントをケアすることでなくなるかもしれません。場所は、起始部であるASISから手の長さ1つ分下あたりです。

【内側広筋】

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膝のお皿付近に痛みを引き起こす内側広筋にできるトリガーポイントは、膝のお皿から手の長さ1つ分上、そこから指2〜3本内側にできます。

3−7.かかとの痛み

突然かかとの痛みが現れることがあります。打撲したなどの覚えがなければ、トリガーポイントが原因かもしれません。

【ヒラメ筋】

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アキレス腱付近から踵にかけての痛みは、腓腹筋の内側頭と外側頭の境目とアキレス腱との筋腱移行部にできてしまったトリガーポイントが原因かもしれません。

このトリガーポイントはセルフケアもしやすい部分です。トレーナーや治療家のみなさんは、手技で使用するだけではなく、セルフケアとして選手やクライアントさんに教えてあげるのも良いですね。

4. トリガーポイントケアで便利なツール

トレーナー、治療家としてトリガーポイントを使ったケアを行う場合、指圧や拳、肘などを使用する方が多いと思います。もちろんそれで良いのですが、1日に何人ものケアを行ない、それを毎日続けることで、自分の指や手が痛くなってしまうことは避けなければいけません。

トリガーポイントに圧をかける方法は、別に「手指」でなくても構いません。以下のようなツールはトリガーポイントのケアに最適です。

ストレッチポール®ショート「ハードタイプ」、ストレッチポール®EX

トリガーポイントの解消には、ピンポイントに押圧をかける感覚で使用します

筋膜リリース4

ストレッチポール®EX

ボール:野球ボール、ソフトボール、テニスボール、ラクロスボールなど

背中のツボを押すようなツール

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これらのツールは、安全に、最小限の力で、最大限の圧迫をピンポイントでかけることができます。首の前側や動脈の近くといった、繊細な力で指圧をするべき部位では手指のほうが効果的ですが、ある程度の圧をかけたい部位の場合は、手指ばかり使っていると、逆に治療家側が怪我をしてしまう可能性があります。利用できるものは利用していきましょう。

5. まとめ

選手やクライアントにいきなりトリガーポイントを使ったケアを行なうのではなく、まずは自分自身で試してみましょう。どんな感覚になるのか、関連痛というのはどういうものなのか、実際に症状は改善するのか。トリガーポイントを自分の身体で見つけられるようになると、他の人に施術をする際により鮮明にわかるようになります。

どのような治療法、テクニックでもそうですが、トリガーポイントのケアだけですべて解決することはありえません。まずはドクターに診察をしてもらい、痛みの原因を探ってもらう。実際に痛みがある部分に原因があることもたくさんあります。もし原因がはっきりしない場合、あくまでも引き出しの1つとして「トリガーポイント」を行ってみましょう。解決することもあれば、解決しないこともあります。うまくいかなければ他のアプローチを試しましょう。

ケア方法の1つとして、あなたの助けになれば幸いです。

参考文献

Davies C, Davies A. The Trigger Point Therapy Workbook: Your Self-Treatment Guide for Pain Relief. Oakland, CA: New Harbinger Publications, Inc.; 2013.

Sikdar S, Shah JP, Gebreab T, et al. Novel Applications of Ultrasound Technology to Visualize and Characterize Myofascial Trigger Points and Surrounding Soft Tissue. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2009;90(11):1829-1838. doi:10.1016/j.apmr.2009.04.015.

Travell JG, Simons DG, Simons LS, Johnson E, Napora L, Meyers JS. Myofascial Pain and Dysfunction: the Trigger Point Manual. Baltimore: Williams & Wilkins; 1999.

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