「猫背を引き起こしている原因って何?」
「猫背の人は体がどうなっているの?」
「猫背に筋肉が影響しているって聞いたけど……」
このように猫背の原因に調べられている方が大勢いらっしゃいます。「日頃の姿勢が悪いから猫背になる」。これは皆さんの想像しているとおりです。
しかしながら、猫背の本当の原因や、何が起きているかについては、詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、猫背の原因とカラダに起きていること、そして根本からの解決方法についてお伝えします。ここでご紹介する方法を日頃から行っていただければ猫背が改善しますので、ぜひ生活に取り入れてください。
この記事は石塚利光が監修しました。 日本コアコンディショニング協会コアコンディショニングリサーチディレクター/東京大学女子バレーボール部トレーナー/米国公認アスレティックトレーナー (BOC-ATC) /日本トレーニング指導者協会・認定上級トレーニング指導者(JATI-AATI)/ペンシルベニア州立カルフォルニア大学卒業/前・福岡大学助教/訳書「アスレティックボディ・イン・バランス」(Gray Cook著) |
目次
1.猫背とは
背骨が丸まって頭が前に出ている状態です。専門用語では上位交差症候群(じょういこうさしょうこうぐん)とも言います。
頭の重さは体重の一割と言われています(体重50kgの人で5kg程度)。頭部が前に出るほど、首や肩に負担をかけます。
猫背の結果、首や肩、胸まわりの筋肉が緊張して固くなりコリを引き起こします。
見た目が老けて見えるばかりでなく、さらに腰から下にも悪影響を及ぼし、腰痛、ぽっこりお腹、垂れ尻などの原因になります。自律神経失調症やうつなどの危険性を指摘する医師や学者の方もいます。
2.猫背の原因となる五大生活習慣
猫背を引き起こすのは、日常の姿勢によるものが大きいです。大きな可能性を与える5つの原因を下記にお伝えします。
1.デスクワークでの作業姿勢 上の写真の女性のような姿勢がもっとも猫背を引き起こしやすいです(すでに猫背になっています)。この状態がクセになると姿勢や骨格をつくる筋肉が猫背の形で固まります。
上記写真の例だと、胸の前の筋肉が拘縮して縮こまりを助長しています。頭部の負担は増え続けますので、どんどん頭が前にでて猫背が増長されます。コリやハリも増える一方です。
2.座り姿勢 座面に浅く腰掛け背もたれに背中の後ろだけを当てる姿勢は、姿勢をつくる筋肉が衰えて猫背となりやすいです。気付かないうちにアゴを引く姿勢にもなっており、頭部が前に出ています。
3.体力系の作業姿勢やスポーツ姿勢 背中に重い荷物を背負ったり、重いヘルメットを被りっぱなしの作業は頭部が前に出て猫背を引き起こしやすいです。バレーボールのレシーブ前姿勢に代表されるようなスポーツ時の前屈み姿勢(ファイティングポーズ)も、猫背の原因となります。
4.スマホ姿勢 スマホをのぞきこむ姿勢は猫背となります。なるべく顔の高さまであげ、目線が下にならないように注意しましょう。
5.一人で考えこみがちな性格 アイデアを練ったり、思考を整理したり、人間関係を良くしようと考えることは素晴らしいことですが、一人で考え込みがちな方は、自然とうつむくようになり猫背になりやすいです。
自分だけで考え込むと、ネガティブ思考に陥りやすく、うつにも繋がり慢性化しやすくなることは研究家や精神医の間では常識となっています。考えた結果は人に話すなどすることでさらに磨かれますので、どんどん人に話すようにしましょう。
このような姿勢に気をつけることが猫背改善の第一歩です。
3.猫背姿勢で起きている三大現象と関係する筋肉
猫背を語るうえでもっとも顕著に現れている3つのポイントについて解説します。自分やパートナーが猫背かどうかのチェックにもなります。以下の3つの点を意識してください。
・頭が前に出ている
・肩が前に出ている
・骨盤が後傾している
猫背は悪い姿勢の一つで、姿勢をつくっているのは骨ではなく筋肉です。筋肉の働き方を変えることで猫背が改善します。ですので猫背に関係する筋肉についても解説します。
3−1.頭部が前に出ることと“首の筋肉”の関係
頭が前に出ると、アゴの上部付近からろっ骨や鎖骨付近に走る筋肉に影響があります。すなわち斜角筋(しゃかくきん)と胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)です。主にこの2つの筋肉が、猫背姿勢で頭と首の位置が近くなったことで、収縮し硬直したままになっています。
3−2.肩が前に出ることと“胸前の筋肉”の関係
猫背姿勢は、背中が大きく丸くなっているので、背中の筋肉が伸びたことによる影響と思われるかもしれません。しかし、背中を伸ばしているのは、胸前の筋肉です。胸前の筋肉が縮こまることで、反対側に位置する背中が伸びているのです。主に大胸筋(だいきょうきん)と小胸筋(しょうきょうきん)の2つの筋肉が収縮を起こしています。
3−3.骨盤の後傾と“体幹部の筋肉”の関係
猫背姿勢で注目すべきもう一つの大きなポイントが骨盤の後傾(後ろに傾くこと)です。骨盤まわりは腰で、人体の要めともいうべき重要な部位です。骨盤が正しい傾きや位置にないと、姿勢が悪化し、腰痛やぽっこりお腹が発生し、内臓が正常な機能を保てなくなるなど様々なトラブルが発生しやすくなります。
頭部が前に出て、肩も前に出ると、人体はバランスをとるために、腰を後ろに傾けようとします。この状態が長く続いてクセになると、骨盤が後ろに傾いたままになってしまうのです。
腰部を正しい位置にキープするのは、腰周辺のさまざまな深層筋肉です。姿勢や呼吸に大きく関わるインナーユニットと呼ばれる4つの筋肉を重要視します。
4.猫背を引き起こす二大原因はコレ!
前項では猫背状態では何が起きているかをご説明しました。これにより猫背を引き起こす原因がはっきりしました。すなわち、
・胸の筋肉が硬い
・体幹が弱い
の2点です。猫背の人は胴体の前面、特に胸部周辺の筋肉が固くなっています。また骨盤を始めとする姿勢を保持する筋肉が弱くなっていて、機能不全を起こしています。
日頃の姿勢に気をつけるだけではなく、この2点に積極的にアプローチすることで猫背が解消するのです。
5.もっとも効果的な猫背二大原因の解消法
猫背を引き起こすものが分かりました。胸前の筋肉はストレッチで柔らかくほぐしましょう。骨盤の後傾は、体幹部の筋肉を呼吸運動で活性化することで解消します。呼吸運動はろっ骨まわりを広げる効果もあるので、胸を内側からストレッチすることにもなります。
ストレッチは一時間に1回は行いましょう。数十秒で可能です。呼吸エクササイズも椅子に座りながらできますので思い出した時にぜひ行ってください。
5−1.椅子に座ったままできる胸前ストレッチ
まずはオフィスや家庭で今スグできる胸のストレッチ方法をお伝えします。
■背もたれを利用した胸ストレッチ
椅子の背もたれを使うことで効果的に胸前のストレッチを行うことができます。
エクササイズ方法:
姿勢を良くして座り背もたれに両手をかけます。手首からヒジの間のポイントで、上半身がまっすぐ立つ部分を探してください。
上半身を起こして胸を軽く反らすようなイメージで開き、ストレッチをかけていきます。
20~40秒を目安に行いましょう。
この状態から手のひらを外側に向けることで、さらに効果が上がります。意識的な呼吸を繰り返してください。
腰は反らさずに肩甲骨を少し寄せるようなイメージで行いましょう。(背もたれがない場合は後ろで手を組みましょう。)
■腕伸ばしストレッチ
パソコン作業で、一定の動作を繰り返し凝り固まった筋肉を伸ばします。腕の筋肉は胸とつながっているので、腕のストレッチを行うことで胸に作用することができます。
手のひらを下にして腕をカラダの前に持ち上げます。反対の手で指を持ち、手のひらが自分の方に向くように倒して伸ばしましょう。ストレッチ感を意識しながら左右30秒伸ばします。
続いて、手のひらを外向きにします。下向きの指を手前に引きつけて腕やヒジの内側をストレッチします。同じく30秒
■バードウイング運動
次は肩甲骨を動かしながら胸のストレッチを行いましょう。
エクササイズ方法:
椅子に座り良い姿勢をとり、息を細く長く吐きながら両手を上にあげます。てっぺんで息を吸い、再度細く長く吐きながら、
手のひらを外側に向けてヒジを曲げながら外に開いていきます。右の写真の位置で斜め後ろに腕を引いて肩甲骨を寄せます。
ゆっくりと自分のペースで5回行いましょう。
5−2.呼吸で体幹を活性化し、姿勢を整えるエクササイズ
呼吸運動を行うことで、体幹の深層筋(インナーユニット)が活性化し姿勢保持の機能が正しく働きます。椅子に座ってもできるように、まずは仰向け寝で正しい呼吸エクササイズ(ドローイン)の方法をマスターしましょう。
呼吸を行いながら骨盤の最も底部にある骨盤底筋を引き上げる感覚を習得しましょう。ひめトレが当たっている位置の体内側が骨盤底筋の場所です。
エクササイズ方法:椅子に座り、良い姿勢をとります。その状態で呼吸をしていきましょう。呼吸と連動して股間部の筋肉やお腹、胸の動きを感じながら骨盤底部の筋肉をゆっくり引き上げたり、力を緩めて下ろしたりしましょう。自然な呼吸で30秒間行ってください。
■ひめトレツリーエクササイズ
手の動きを出しながら骨盤底筋を引き上げていきます。
エクササイズ方法:
良い姿勢のまま、両手を胸の前で合わせ頭の上に持ち上げます。まっすぐ頭の上にきたら胸の高さまで戻します。この動作を繰り返し行います。息を吐いている時に骨盤底筋を引き上げる感覚が大事です。5回繰り返しましょう。
ポイントは背中が丸まらないように姿勢を保持することです。
■ひめトレシェイプブレス
呼吸をしながら肋骨の動きを感じてみてください。
エクササイズ方法:
先ほどの姿勢のまま、両手を胸の下の骨に置きます。この時にご自身の肋骨の動きを感じてみましょう。ドローインをしながら胸の開きを感じ、息を吐きながら内側へ締めるように肋骨を引き締めます。息を吐いている時に骨盤底筋を引き上げましょう。
自然な呼吸に合わせて5回動きを繰り返しましょう。
6.まとめ
猫背の原因について、生活習慣での姿勢のクセが、頭や肩、腰に影響を及ぼしていることをご説明しました。また猫背の解消には、胸前のストレッチを行い、呼吸エクササイズによってインナーユニットを活性化し骨盤を正しい位置にキープすることが重要です。猫背を根本的に解消したい方は、ぜひご紹介したエクササイズを継続的に行ってください。
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