変形性股関節症の初期に効果的!20の改善運動を理学療法士が紹介

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Woman Receiving Leg Massage In Spa

股関節が痛い…。足の付け根がつらくて動きにくい…。

この痛みが気になり、整形外科を受診したら「変形性股関節症の初期でしょうね」と言われることがあります。

「痛みがなくなるまで安静に」と言われる一方で、「筋力低下を起こしたくないのでできる範囲で負担のかからない運動を」とも指導されたりします。

正直、困るのではないでしょうか。

しかしこれには理由があります。痛みによって歩くのにも不自由するようになりますし、使い続けることで股関節の状態も徐々に悪化していきます。しかし動かないことも問題で、筋力が低下するとさらに動けなくなる可能性があります。

そのためには水中ウオーキングなど負担の少ない方法もありますが、プールに出かけるのも大変な方もいるでしょう。もっと手軽にできる方法はないのでしょうか。

実は、変形性股関節症による「股関節の動きが悪い」ことには、体幹の深層筋「インナーユニット」の機能低下が関わっていることが多いのです。インナーユニットの働きを良くすることで連鎖的に股関節の動きが良くなることが考えられます。

今回は、理学療法士でインナーユニットの専門家である今関礼章さんに、ご自宅で今すぐできる変形性股関節症のための運動をお聞きしました。股関節の痛みが気になる方、今は痛くないが再発を起こしたくない方はぜひ参考になさってください。

この記事は、今関礼章先生の情報提供と監修を頂きました。
財団法人福祉医療推進事業団あかりクリニック(静岡県)
理学療法士/日本コアコンディショニング協会認定マスタートレーナー&講師 他


1.変形性股関節症とは

まずこの症状について解説します。

1−1.症状

股関節が痛んだり、引っかかりやツマリなどの違和感を感じたり、動きが悪い感覚を覚えるものの一つです。最初は立ち上がるときや歩き出そうとするときに痛みを感じる程度ですが、放置しておくと痛みが起こるときが増え、また痛みも強まっていきます。ヒザや腰、お尻も痛くなったりこわばりが起きたりします。

さらに悪化すると常に痛むようになり、寝ているときも痛みを感じるようにもなります。

男女比では女性が多く、また長年の酷使により、加齢とともに発生しやすくなるので、高齢者にも多い症状です。

1−2.様態

osteoarthritis

進行した変形性股関節症の状態(右半分)。初期ではここまでの状態にはなっていません

変形性股関節症は、骨盤のお鉢(臼蓋・きゅうがい)と大腿骨が噛み合わさる部分、つまり股関節の軟骨がすり減ることから始まります。

傷ついた軟骨や軟骨が薄くなることで股関節内部の隙間が小さくなっていきます。そのうちにこの傾向は進み、大きな動きをしようとするときに摩耗した軟骨が関節の袋(関節包)を刺激し、炎症を起こし痛みを感じるようになります。

変形性股関節症のタイプ A)正常な股関節 B)大腿骨頭に問題があるカム型 C)寛骨臼に問題があるピンサー型 D)併発型 出典:http://clinicalgate.com/

進行期になると、関節の隙間はさらに狭くなり、大腿骨頭に変形骨棘が現れるようになります。こうなると痛みはさらに増し、または慢性化して歩くことが難しくなります。

服薬・注射・リハビリで改善しない場合は人工関節にする手術も行われます(術後の経過はおおむね良好です)。

ArtroseQuadril

傷ついて狭くなった股関節の内部(イメージ)


2.変形性股関節症にインナーユニットが関係? 二つのパターンとは

本稿監修者の今関さんによると、変形性股関節症が悪化することに二つのパターンがあるとのことです。一つは、股関節が正しく使えていないケース。もう一つは股関節のはまりが悪い(臼蓋形成不全)ケース。これは出生時に生じる股関節脱臼や発育時の運動経験の不足などにより臼蓋が深く作られなかったものです。

このどちらもインナーユニットの機能低下が見られ、このことがさらに動きを悪くして痛みを生じさせていることがあるのです。

根本に着目しないまま筋力強化の運動を行っても、股関節の痛みを増幅させます。負荷のかかる使い方が修正されていないまま動いているからです。

※インナーユニット 主に腹部の深層にある4つの筋肉。横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群からなる。

2−1.股関節が正しく使えていない場合の原理

股関節周辺の主な筋肉

股関節周辺の主な筋肉

インナーユニットの大きな機能の一つに、骨盤を安定させ、股関節を正しく動かすというものがあります。インナーユニットが正しく働いていないと、骨盤が不安定になります。その状態で歩くと別の筋肉に負荷がかかります。

例えば、大腿直筋縫工筋小殿筋という股関節の周辺筋肉です。このことはさらに、足のパワーを発揮させるための筋肉である腸腰筋の筋力を低下させ、ますます「歩行の質」が悪くなります。

根本解決には、インナーユニットを正しく働かせることがまず大切です。

2−2.臼蓋形成不全の場合の原理

この場合は、前項と逆の順序の感じでインナーユニットの弱化をもたらします。

臼蓋の発達が悪い場合、カラダは自然と骨盤の傾きを前に倒すことによって臼蓋のかぶさりを増やそうとします。このことは、股関節内転筋・腸腰筋の過緊張を引き起こします。そこから、大腿直筋などの股関節をまたぐ外側の筋肉が優先的に働き、結果として深層部にあるインナーユニットが働かなくなります。

インナーユニットが働かないとより股関節は不安定になり、「歩行の質」が悪くなるという悪循環を発生させます。

骨盤前傾

骨盤が前傾すると、さまざまな弊害を生み出します。

変形性股関節症の方に多い反り腰=骨盤前傾は上図のような作用が同時に起きています。

3.変形性股関節症の痛みを運動で改善する20の方法

ここからは今関さんがクリニックで実際に行っている方法をもとに、ご自分でもできるようにアレンジしたやり方をご紹介します。

3−1.発生初期は筋肉の緊張と痛みを取る

インナーユニットの活性化をはかり、外側の大きな筋肉のストレッチと筋膜リリースを行います。痛みがある場合は安静にして過ごしできる範囲で行っていきましょう。

インナーユニットをゆるめ、活性化する呼吸トレーニング

まずは横隔膜をゆるめましょう。効果的なものは「大きなため息」です。

Close up view of fitness girl catching a breath after a long run on the athletic track.

深く大きく息を吐き出しましょう

できるだけ太い声を出すようにしましょう。

その後、横隔膜を強化する「腹式呼吸」を行います。

腹式呼吸

息を吸った時にお腹を膨らませます

お腹を膨らませ切ったら、5〜10秒キープしてください。数回繰り返します。

お腹に圧をかけた「深呼吸」も効果的です。骨盤のASIS(上前腸骨棘)内側を刺激しながら行います。

ASIS

骨盤の前方の突起部分よりやや内側を刺激しながら行います。

テニスボールや手をASISの内側に押し付けて深呼吸を繰り返します。

腹横筋を強化する方法としては、「強制呼気」があります。

ドローイン2

腹式呼吸の流れのまま、息を細く長く吐きながら、お腹を凹ませていきます

ドローイン3

空気が出きった!というところでお腹をキープします。息は浅い胸呼吸で繰り返します。最初は10秒キープから。徐々に時間を延ばし30秒を目指してください。

ツールを使った効果的なインナーユニット活性化方法

今関さんは治療にストレッチポール®をよく活用されています。ツールなしでおこなうよりもインナーユニットが働きやすくなるとのことです。

手足の対角運動

手足の対角運動

足のワイパー運動

足のワイパー運動

大腿直筋と腸腰筋のストレッチ

大腿直筋はモモ前の筋肉で骨盤上部からヒザの下まで通っています。大腿直筋のストレッチには以下のような方法があります。

大腿四頭筋のストレッチ1

クッションなどを利用してヒザの負荷を減らします。足を腰に引きつけることでモモ前がストレッチされます。仰向け寝になって行うのも良いでしょう。

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手を離して重心を前にかけることで股関節前面の腸腰筋のストレッチもできます。

縫工筋のストレッチ

縫工筋は骨盤からヒザ下まで通る、人体で最も長い筋肉です。腰を押し出す動きでストレッチします。

臀筋群のストレッチ

小臀筋はお尻の深層にあり、それだけをストレッチすることは難しいです。お尻の筋肉をトータルにストレッチしましょう。

臀筋のストレッチ

写真(左)のように仰向け寝になり片ヒザを立てその上に片方の足を置きます。立てたヒザを両手で抱えて引き寄せます。円の部分にストレッチを感じてください。

写真(右)のように足の外側からロックして引くとさらにストレッチ感を高めることができます。

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このように座って足を組んで引き寄せるだけでも、臀筋のストレッチを感じることができます

アウター筋肉群の筋膜リリース

ストレッチポール®を筋肉に当ててゆっくり転がすように圧をかけると簡単かつ効果的に筋膜リリース(セルフマッサージ)ができます。ストレッチで伸ばしたところに行いましょう。

SP-Massage

痛気持ちいいくらいの強さで圧をかけます

3−2.股関節と体幹の筋力を強化する

初期においては上記のストレッチなどで股関節が動かしやすくなるでしょう。可動域や痛みが改善すれば、股関節インナーマッスルの強化と体幹筋力強化を行っていきます。

体幹にスイッチを入れる「キャット&ドッグ」

猫が寝起きに伸びをするような動きをイメージしてください。 背骨の深層筋肉のストレッチと、体幹筋の活性化エクササイズです。

キャットバック1

左の体勢の時に反り腰になったり、反対に腰が丸まらないようにしてください。息を吐き、お腹を凹ませながら、背中が丸くなるようにします

肩とももの付け根から、床に垂直になるように手・ヒザをつき四つんばいになります。

1.背中を丸めながら天井へ引き上げます。この時に息を細く吐きながら、おへそに顔が近づいていくようにします。背中が丸められることで背骨にそった脊柱起立筋へのストレッチがかかります。

キャットバック2

最初は左の感じでOKですが、右のように前に伸ばすと、さらにトレーニングの強さがアップします

2.息を吸いながら、背中を反らしつつ、上と前に伸びていきます。前を見るように目線を上げ、首を前にのばしていきます。両手で床をじんわりと強く押していってください。

1と2を交互に繰り返しましょう。3〜5セット

キャットバック3

息を吐きながら、お腹を凹ませつつ、足先を見るようにします

また、同様の状態から、左右の足のつまさきを覗き込むように上半身を左右に曲げていきます。 正面に戻り、反対側も行います。3〜5セット

変形性股関節症を発症すると、上半身と腰を左右に揺さぶって歩く「トレンデレンブルグ歩行」の方がいます。このような場合、背骨の回旋・側屈運動も重要となります。上記のストレッチはこの側屈を引き出す方法の一つです。

トレンデレンブルグ歩行(右) 出典:https://www.memorangapp.com

回旋を引き出すには、例えばストレッチポール®を使ったひねりの運動が効果的です。

ストレッチポールを使ったひねりの運動「ツイスター」

ツイスター

カラダをねじる運動です。仰向けで縦乗りし、腕を天井方向に伸ばします。片側の手でもうひとつの手首を握ります。握った方の手を床に付けます。両足は、腕とは逆の方向に倒します。自然な呼吸のまま、ゆっくり10カウント数えてください。体勢をもどし、反対側も同様に行います。1セットだけでも効果がありますが、気に入られたら2〜3セットおこなっていただいて構いません。

体幹力をアップする「プランク」

プランク

腕立て伏せの姿勢から、肩の下にヒジが来るようにして床にヒジをつきます。頭からおしりまでが一直線になるようにしてお腹が落ちないように姿勢をキープ。呼吸は自然に繰り返してください。3060秒を目安に行いましょう。

腰痛持ちだったり筋力不足の方は、片ヒザを床に付けて行うことで、腰の負荷を減らしながら腹筋を鍛えることができます。

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ヒザは落としますが、全身の姿勢を変えないことです。プランクが理想的な姿勢でできているかどうか、一度トレーナーに見てもらうことをおすすめします。

体幹トレーニングの方法については下記の記事も参考になさってください。

体幹トレーニング50選!初心者〜上級者までレベル別一週間メニュー

3−3.インナーとアウター筋の協調性をはかる

このような条件が整って来たら、股関節の適切な動きを引き出すための最後の段階に入ります。股関節のインナーとアウターの協調性改善のためのトレーニングです。

お尻の筋肉を強化し、効果的に使えるようにする「ヒップリフト」

股関節の偏った負荷を減らして効率よく歩くためには、臀筋群の活用が大切です。以下のトレーニングでお尻の筋肉を意識し、活用することができます。

ヒザを軽く曲げた状態で仰向けになります。膝の頭から鎖骨まで一直線になるように姿勢を意識してお尻を持ち上げましょう。お尻に負荷がかかっているのを感じながら、息を止めないように注意して姿勢を保ちます。

腸腰筋を活用し推進力を生み出す「魚のポーズ」

ヨガの代表的なポーズの一つです。

魚のポーズ1修正

仰向け寝になり、手のひらを床につけたままお尻の下に当てます。ポイントはヒジでしっかり床を押して胸を開き上げます
ヒジで押せないとクビがつぶれてしまうので注意してください。息は止めずに、自然な呼吸で。

腸腰筋トレーニングのためには、この状態から小さく両脚を上げたり下げたりを繰り返します。

アクティブな女性向け「戦士のポーズ3」

ヨガのポーズからもう一つ、効果的なものを紹介します。これはインナーユニットとアウター筋との協調、バランスがとれないと難しいポーズです。

Young attractive woman standing in Warrior Three pose, grey stud

気をつけの姿勢から、腕を上に伸ばします。そのまま左足に荷重し、右足を後ろに引いて行きます。指先から足までが一直線となるようにキープ。手と足によって両端から胴体を引っ張り合うようなイメージです。

6呼吸ほどしたら、最初の姿勢に戻ります。

股関節を調整し、全身の動きを引き出す「スイングストレッチ®」

スイングストレッチは腰のような形をしたツールで、腰の部分に当ててうつ伏せになって使います。腰部を安定させながら足の引き上げを行うことで理想的な動きが得られやすくなります。背骨の回旋、側屈運動にも効果的です。

スイングストレッチ運動例

脱力してユラユラするなど、基本的には息の上がらない運動ばかりです

スイングストレッチ®では、骨盤矯正のための3つのエクササイズが可能です。

・骨盤をゆるめ、正しい状態にする

・その状態をキープする

・日常動作などの「動き」に繋げる

以下のページでは詳細にご紹介しています。

スイングストレッチ®紹介ページ

4.まとめ

変形性股関節症の初期に行っていただきたい運動をご紹介しました。やみくもに動かしても痛みを増長させ、その結果動かないことが増え、筋力が減ってしまうのも問題です。

原因から解決するには、インナーユニットと股関節周辺へのアプローチが、さらに背骨や肋骨まわりなど全身のバランスを改善することが重要です。

お伝えした運動を適宜行うようにして、姿勢とカラダの使い方のバランスを取るようになさってください。

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