まさかの五十肩! 少しずつ痛みは引いてきたけど、いつになったら完治するの?
五十肩のケアには、病院での治療以外に患者さん自身の取り組みが大事です。肩や胸郭(肋骨まわり)をなるべく動かすことにより、肩内部で起きている癒着を少しずつ解消できるからです。
そこでここでは、五十肩を治すために手軽で最も効果の高い方法をご紹介します。実際に毎月約100人の方にケアを行っている理学療法士の先生にお聞きした方法です。痛みが治まって来た方は、動ける範囲でなるべく行ってみてください。速やかに痛みを解消し元の生活が送れるようにしましょう。
この記事は、今関礼章先生の監修を頂きました。
財団法人福祉医療推進事業団 あかりクリニック(静岡県)理学療法士/日本コアコンディショニング協会認定マスタートレーナー&講師 他
1.五十肩は胸郭と肩甲骨の動きで改善する、とは
胸郭と肩甲骨の動きが悪い方は五十肩の症状が発症しやすく、治りにくい傾向にあります。
運動していない方のほうが五十肩になりやすく、運動している人に比べて治るのも遅いと言われており、運動習慣が五十肩の改善・予防に大きく関係しています。
ストレッチなどの運動を行って五十肩を改善していきましょう。具体的には、肩甲骨が正しい動きをしているかどうかをチェックし動かせるようにすることと、日頃動かさないことで固まってしまった胸郭をほぐしていくこと、さらに肩を動かしながら肩まわりの筋肉を強化する方法があります。
2.毎日行っていただきたいカンタンストレッチ3選
まず、五十肩を改善するために毎日行っていただきたいストレッチ3種目をご紹介します。胸郭や肩甲骨の動きを良くする基本的なストレッチです。※激しい痛みがあるときは、炎症を悪化させる恐れがあるため、行わないでください。
【重要】五十肩ストレッチを行う際の注意点
五十肩を発症してしまうと、早く治そうとして頑張りすぎてしまったり、やればやるだけ治ると思う方がいます。実は、五十肩が徐々に発症していくように、改善していく際にもその人なりのペースがあります。今回ご紹介する方法も、何もしなかった場合より、回復が早くなるというものです。焦らずに痛みが出ない範囲で長く続けられる頻度で行うことをおすすめします。特に運動習慣のない人は限度がわからないので注意です。心配な方は、運動指導を受けられる整形外科にご相談の上、行ってください。
2-1.ウォーミングアップ編「肩甲骨の動きチェック運動」
肩甲骨には主に6つの動きがあります。五十肩や四十肩の悩みを抱えている方の多くは、この6つの動きが正しくできないことが多いです。これらの動きをイメージ通り動かせるようになることで、五十肩対策に効果的です。毎日実際に動かすことで肩甲骨の動きをチェックしましょう。
動きにくい動作はありませんでしたか?
日常的に一部の筋肉に負担がかかり過ぎていると、いくつかの動きがとりにくい場合などがあります。気になる動きを意識的に行うだけでも普段縮こまっている筋肉をストレッチすることができるので、ぜひ動かしてみてください。
2−2.肩甲骨の動きを良くする「膝の抱え込み運動」
膝を抱えるようにして肩から肩甲骨まで刺激をいれるエクササイズです。ポイントは全身を脱力して行うことです。デスクワークなどで椅子に座ることが多い方は仕事の合間に行えるのでこまめに行いましょう。
エクササイズ方法:
椅子に座った状態で軽く片脚を浮かせます。(両膝が90度に曲がり両足が床につく椅子をご用意ください。)膝頭を抱えるようにして持ち、歩く背中を丸めて抱えている脚が床につくかつかないかギリギリの高さになるように調節しましょう。全身はなるべく脱力した状態で20秒キープ。終了後抱える脚を入れ替えましょう。両足を1セットにして3セット行いましょう。
2-3.胸郭と肩甲骨の動きを良くする「胸おこしローイング運動」
肩甲骨の動きを出しながら胸郭を動かすエクササイズです。椅子に座り呼吸と連動して行うので、呼吸が浅い方は深く正しい呼吸ができるようになります。
エクササイズ方法:
手の甲を膝の上にくるように置いて座ります。この時目線は骨盤あたりを見て少し背中を丸めるイメージです。
息を吸いながら手の甲が膝から骨盤にかけて滑るように肩甲骨を内側に寄せながら肘を真後ろに引き、顔を起こしてきます。この時顔は正面を見るようにしましょう。
息を吐きながら元の姿勢に戻ります。この動きを繰り返し行いましょう。
始めは動きなどを丁寧に確認しながら10回行いましょう。
3.できれば行っていただきたい「効果向上セルフストレッチ」7選
上記のストレッチだけでも効果がありますが、回復を早めるためにはさらに行っていただきたい運動があります。時間が取れる方は、1つでも多くの運動を行ってください。
ここで紹介する運動の前半は、胸郭の曲げ伸ばしや横倒し・回転の動きで胸郭の動きを改善します。全種目の所要時間はおおよそ7分です。隙間時間を見つけてカラダをほぐしていきましょう。
後半の運動は、基礎代謝を上げるために行います。汗をかくくらい行うと、基礎体力、心肺機能、血行に良い効果があります。
※激しい痛みがあるときは、炎症を悪化させる恐れがあるため、行わないでください。
3−1.胸郭の曲げ伸ばしをする-キャットバック
胸郭の伸展を出すことで五十肩の改善を目指すエクササイズです。猫が背中を伸ばすところをモデルに考案されたエクササイズです。
エクササイズ方法:
肩とももの付け根から、床に垂直になるように手と膝をつき四つばいになります。
四つばいの姿勢から背中を丸めるように天井へ引き上げます。この時に息を細く吐きながら、おへそをのぞき込むようにします。背中が丸められることで背骨にそった脊柱起立筋へのストレッチがかかります。
今度は息を吸いながら、背中を反らし、胸郭をストレッチしていきます。天井を見るように目線を上げ、首を前にのばしていきます。両手で床をじんわりと強く押していってください。
交互に繰り返し5~10セットを目安にまずは5セット行いましょう。
3-2.胸郭の横倒し運動-サイドルック
左右に伸ばすことで胸郭の横の動きを滑らかにします。日常生活の中であまり動かないため固くなりがちな部分です。ストレッチをしてほぐしていきましょう。
エクササイズ方法:
肩とももの付け根から、床に垂直になるように手と膝をつき四つ這いになります。
姿勢が崩れないように注意し、息を吐きながら横から左右のつま先をのぞき込むようにして上半身を左右に曲げましょう。脇腹あたりにストレッチを感じながら左右5回ずつ行いましょう。
3-3.肘を上げて胸郭を動かす運動-トランクローテーション
最後は固まってしまった胸郭を肘を上げて動きやすくします。腰を動かさず胴体を意識して動かしていくことがポイントです。
エクササイズ方法:
肩と手のひら・膝とももの付け根が床に垂直になるようにして四つ這いになります。
右手の甲を背中に当てます。腰が動かないように注意しながら左右にカラダをひねって行きます。(※痛みがある方はこの体勢がとれないかもしれません。できるだけ近い状態で行ってください)
ひねるポイントはひねるほうの肩甲骨を内側に寄せるようにして動きをリードすることです。
痛みは我慢せずに自分のできる範囲で10回を目標に行いましょう。
※回復期において、痛みがあると腰に手をあてることができないかもしれません。その場合はなるべく近い形で行ってください。
3-4.胸郭の左右の動きを出す-ストレッチポールを使った胸のスライド運動
ストレッチポールをお持ちの方はぜひこちらのエクササイズをお試しください。上半身と下半身の動きを分離させて胸だけを左右に動かすエクササイズです。胸郭の左右の動きをわかりやすく大きく引き出すことができる運動です。(※ストレッチポールに乗るのが痛い方は行わないでください)
エクササイズ方法:
ストレッチポールに仰向けで横になり手の甲と肘が床につくように、足は腰幅から肩幅程度でカラダが安定するように開きましょう。
その姿勢から腰から上の部分のみを動くように意識して上半身を左右にスライドさせましょう。この時上半身が捻じれないように左右の胸の高さが床と並行になるように調整しましょう。呼吸は止めないで自然な呼吸をキープしてください。左右の一連の動きを1回として10回を目安に行いましょう。
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3−5.五十肩の代表的なエクササイズ-アイロン体操
無理せず手軽に肩の痛みを和らげる五十肩の代表的なエクササイズです。少しずつ継続的に動かすことで肩の動きを引き出します。意識しなくても肩甲骨周りを動かすことができるので、トレーニング初心者の方でも無理なく行うことができます。
エクササイズ方法:
気になるほうの手に重りをつけ(500ml~1Lのペットボトルでも可)軽くお辞儀をします。(30~40度くらいを目安に)
反対の手を椅子や手すりに置きバランスを取ります。
カラダのバランスが取れたらアイロンをかけるように腕の力を抜いて前後に振っていきましょう。ポイントは、腕を振り始めたら動きや速さをコントロールしようとせず、自然と腕が止まるように意識して振ることです。左右5回ずつ行いましょう。
またバリエーションとして同じ姿勢をとった状態で左右横に振ったり、円を描くように回す方法もあります。これも各5回ずつ行いましょう。
3-6.代謝を高める-腕振りウォーキング
基礎代謝を高めるための有酸素運動です。通常のウォーキングと違い、少し腕を大きく振ることがポイントです。歩く速さは腕をしっかり振る分早くなります。歩行速度は最初はゆっくりでかまいません。なれてきたら徐々に速くしていきます。10分くらい歩くとカラダが温まってじんわり汗をかくくらいの感覚を得ます。
15~20分を目安に行いましょう。
3-7.体幹安定と肩甲骨の動きを高める-ダンベルウォーキング
ウォーキング時にダンベルを持って行うことでさらにウォーキングの強度が上がります。重さは片手500g〜1キロ程度でも基礎代謝を高める効果は期待できるでしょう。
通常のウォーキングと違い、少し腕を大きく振ることがポイントです。歩く速さは腕をしっかり振る分早くなります。歩行速度は通常の速度よりも1.5倍程度あげましょう。10分くらい歩くとカラダが温まってじんわり汗をかくくらいの体感になるでしょう。
15~20分を目安に行いましょう。
4.まとめ
五十肩は日頃の運動の積み重ねで改善できます。実際のクリニックでも、運動を行ったほうが、行わないよりも圧倒的に早く回復するのだそうです。ぜひ毎日実施してその効果を実感してみてください。肩の痛み改善・予防のためにも運動習慣を手に入れましょう。
※五十肩の症状や何が痛みを引き起こしているのかについて、また治療法などは 別記事「まさか私が!という方へ理学療法士が教える五十肩・四十肩の治し方」にて詳しくご紹介しています。
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