くるぶしを中心とする足首は、故障(ケガ)が発生しやすい部位です。
心当たりがある痛みならまだしも、よくわからない痛みに不安になる方が多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、くるぶし周辺の痛みを引き起こす傷害について解説します。
ご自身の痛みがどのような可能性があるか、判断の一助になりますので、痛みに不安に思われる方はぜひ最後までご一読ください。
1.くるぶしの構造
くるぶし周辺は、足の動きに大きく関わっています。多くの関節があり、腱や靭帯、神経が集中しています。直径10センチほどの小さい部位にも関わらず、複雑な構造をしているのです。
くるぶし周辺には筋肉はほとんどないのですが、骨と骨を繋いで関節を構成する“靭帯”と、筋肉と骨をつなぐ“腱”が集中しています。
それにも関わらず、脂肪も少ないなど、足首を守るものはほとんどありません。色々な動きをし、体重や衝撃がかかりやすいので、よく故障を起こす箇所です。原因に心当たりがない場合、一般の方ではなかなか痛みの原因がわかりにくいものが多い部位です。
2.くるぶし痛の代表例
くるぶし周辺の痛みについて、よくあるものから順にご説明します。
成長痛
幼稚園から小学校低学年くらいのお子さんに起こる足首周辺の痛みです。足首のみならず、ひざやふくらはぎなど下肢のどこかに出ることが多いようです。
多いケースは、夕方から夜までの間に、このいずれかの部分を痛がって泣いたりするというものです。
以前は、急激な成長にカラダがついていかないための痛みだと言われていましたが、近年では否定される考え方が主流です。現代では、精神的な寂しさなどに起因する痛みと考えられることが多いようです。日中の激しい動きによる疲労が出ているかもしれません。
翌朝になれば、なにごともなかったかのようにケロリと治っています。このようなケースが間を置いて何回か出るようですと、心理的なケアをして上げた方が良さそうです。
しかし、朝になっても引かずに、数日間様子を見ても痛みが長引くようですと他の障害も考えられます。医師の診察を受けることをおすすめします。
- スポーツをしているお子さんで、高学年以降に成長痛をかかとに起こす場合があります。踵骨骨端症(しゅうこつこったんしょう)・シーバー病と言われるものです。これは骨がまだ軟骨様で、それについている腱がこの骨を引っぱりはがす状態になるものです。痛みが引くまで安静が必要になります。詳しくは別記事 かかとが痛い方へお伝えする16の原因疾患と根本解決の方法 で解説しています。
- 同様のトラブルがひざに出るものをオスグッド・シュラッター症候群と言います。こちらも別記事 オスグッドの痛みを改善し予防する最善ストレッチなど5選 にて解説しています。
筋肉の炎症
腓骨筋や長指屈筋など、くるぶしに近い位置にある筋肉の炎症です。疲労が溜まることで筋肉痛などの炎症が起きています。高負荷をかけた直後はアイシングなどで対処します。筋肉痛程度ならそのままで。痛み止め作用がある湿布を数日しても痛みが引かない場合は、他の傷害の可能性があるので、受診してください。
靭帯の損傷(ねんざなど)
くるぶし周辺には多くの靭帯があって関節を形作っています。通常の範囲を超えて動いたり、外部からの衝撃で伸びたり損傷したりすることがあります。
最も多いのがねんざです。あきらかにひねった感覚がある場合がほとんどですが、気付かないうちにねんざしていて、翌日にその痛みが出ることもあります。
軽度なねんざであれば、痛みがすぐ引いたり、翌日には治まってなにごともなく動けるようになりますが、その翌日移行も痛みが残り、平常の動きの妨げとなるようなものが中度以上になります。
中度以上の場合は、明らかにねんざをした自覚があるはずです。整形外科の受診をおすすめします。装具等の処置や痛み止め、湿布を処方されるでしょう。
重度の場合は、受傷時に激痛が走り足をつくこともままならないものになります。受傷後数時間〜1日かけて腫れが発生し、内出血も起き黒ずみます。痛みに加えて足が腫れますのでうっ血したような苦しい感じがあります。
診断しだいでは入院となり、松葉杖などの使用になります。手術を行うケースもあります。完治までは骨折の治療よりも時間がかかるケースが少なくありません。
いずれにしろねんざを起こして激しい痛みがある場合は、適切な応急処置が重要です。以下の記事にて詳しくご紹介していますので、参考になさってください。足首捻挫 | 発症直後に必ずやるべき5つのPRICE処置
- テーピングの目的は簡易的な固定です。1日程度は関節の動きを制限することができます。このような固定が必要なくるぶしの傷害は“軽度のねんざ”です。応急処置やギプスを使用するまでもない程度の場合に使用されます。また、支帯の炎症でも、足首を動かさないために使用することがあります。それ以外のくるぶしの痛みでは特にテーピングによる固定の必要性はないといえます。※ここでいうテーピングは伸縮性のない一般的な白い固定用テーピングのことです。
オーバーユース症候群
ランニングやジャンプ動作の多い競技をやっている中高生や、ジョギングを始めたばかりの大人に起こりやすいのがオーバーユース(使い過ぎ)症候群です。ジーンとした鈍い痛みがずっと続きます。発症前と同様に走ることができないほど痛い、と感じます。
オーバーユースによって引き起こされますが、次のような状況でも起こりえます。
・練習量が増えた
・練習環境が変わった(走路の変更など)
・ウォーミングアップ不足
・練習後のクールダウン不足
・シューズの変更
・短期間での体重増があった
内外くるぶしの前、下、後ろなどのいずれかに痛みが出ます。これはくるぶしを取り囲むようにしていろいろな筋腱が足部につながっているからです。
腱は足の動きに関係していますので、どのような動きをすると痛みを感じるかで、原因となっている筋肉や腱がどれかを判断する一助になります。
しかしながら、脛骨の疲労骨折もよく似た痛みを引き起こしますので、素人判断は危険です。スポーツ整形外科の受診をおすすめします。
オーバーユース症候群になった場合は、安静にし痛みが引くのを待ちます。痛みが引いたならば、様子を見ながら徐々に練習量を増やします。走姿勢などを改善することで再発防止につながります。
また、同様の原因でスネに痛みが出るケースがあります。
シンスプリントについては下記の記事で詳しく解説していますので、診断された方はぜひ参考になさってください。
支帯の損傷
くるぶし周辺で腱や神経を束ねているのが支帯というものです。外くるぶしから前側の方に伸筋支帯が、内くるぶしのかかと側には屈筋支帯があります。この支帯が炎症を起こしたり、外傷によって断裂を起こす場合があります。
炎症は、サッカーやランニング、ジャンプ種目など足首を良く使うスポーツで起きることが多いです。車の運転を多くする仕事の方も可能性があります。
足首をなるべく動かさないように安静にしていると改善します。
断裂の場合は、整形外科でギプス固定や手術などを行います。支帯は腱をあるべき位置に保持するという役割も果たしています。足の動きに大きく関わる部分ですので、整形外科などでの治療が不可欠です。
また、神経への圧迫によってジンジンとしたしびれが足首から足部、指の方に起きる場合があります。圧迫している原因への対処となります。
疲労骨折
最初はちょっとした痛み…。それが日を追うごとにどんどん強くなる…。ねんざだと思っていたがどうやら違うかもしれない…。
このような場合は疲労骨折の可能性があります。休んでいるときは痛みを感じにくく、動き出したら痛みだすということが多いです。
痛み止めを飲みながらだましだまし練習を続けていると、いつまでたっても治らないばかりか、より深刻化する恐れがあります。
この写真のように、わずかな影となって現れてくるのは、受傷後2週間程度経ってからです。ですので当初は分かりにくいのですが、医師は所見から疲労骨折の可能性があればその対処をします。
全治までは2ヶ月程度。2〜4週間安静にして痛みが引いてきた後にリハビリを開始し、徐々に練習の強さを上げていきます。
再発防止には、脚全体で衝撃を吸収するような足の使い方を身につけることです。シンスプリントの予防法記事の対処も参考になさってください。
骨軟骨腫(こつなんこつしゅ)
外骨腫ともいい、10代の子どもに発生することが多い良性の腫瘍です。脛骨周辺の他、下肢および上肢に出ることもあります。骨が出っ張って大きくなるもので、痛みを伴わずさほど大きくない場合は放置で構いません。痛みが出たり運動を妨げるようなものであれば、手術で切除します。
3.まとめ
くるぶしの痛みについてお伝えしました。原因がはっきりするものはねんざなどごく一部で、よくわからないものが多く、皆さんも不安になられるかと思います。そのためになるべく可能性があるものを想定できるようにいたしました。
お伝えした情報はそのためのものであり、傷害を断定するものではありません。1日程度様子を見ても痛みがある場合はぜひ整形外科を受診なさってください。レントゲン設備は整形外科にしかありませんので、骨の異常を見るためにもぜひ一度は整形外科にお願いします。
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