Aさん「インナーマッスルをナントカすると、ダイエットに効果的って聞いたのだけれど……。」
Bくん「ピッチャーは肩のインナーマッスルを強化するとイイっていうけどその方法は……?」
Cコーチ「ウチのサッカーチームで選手にインナーマッスル鍛えさせたいんだけどさ、テレビで見たやり方であってる?」
このように「インナーマッスル」という言葉に疑問符を持つ方は大勢いらっしゃいます。インナーというわけですから内部にあるような感じはしますが、具体的にはどこにある筋肉でしょうか。そして、この3人の方が指しているのは同じ筋肉でしょうか。
そのような疑問を解決するために、この記事では「インナーマッスルとは」について解説いたします。その部位と鍛えるメリット、そしてトップアスリートも行う大変効果的な方法をお伝えします。ぜひご一読ください。
この記事は石塚利光が監修しました。 日本コアコンディショニング協会コアコンディショニングリサーチディレクター/東京大学女子バレーボール部トレーナー/米国公認アスレティックトレーナー (BOC-ATC) /日本トレーニング指導者協会・認定上級トレーニング指導者(JATI-AATI)/ペンシルベニア州立カルフォルニア大学卒業/前・福岡大学助教/訳書「アスレティックボディ・イン・バランス」(Gray Cook著) |
目次
1.インナーマッスルとは深層部にある目に見えない筋肉
人体には多くの筋肉がありますが、インナーマッスルとは、英語ではDeep Muscleというとおり外からは見えない深層部(内部)の筋肉の総称です。人体のあらゆるところにインナーマッスルは存在しています。
■インナーマッスルを構成する筋肉(一例)
胴体(体幹)部 | 横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群、腰方形筋、脊柱起立筋、内腹斜筋など |
---|---|
肩関節周囲部(ローテーターカフ) | 棘上筋、棘下筋、大円筋、小円筋 |
股関節周囲部 | 梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋など |
状況や目的によって、インナーマッスルとはどこの深層筋肉を指すのか異なる場合があります。例えば胴体(体幹)部のことだったり、肩や股関節内部の筋肉をさすことがあります。
ダイエットを行う人にとっての深層筋肉は前者になり、野球をやる人にとっては後者のケースが多いでしょう。いずれも目に見えない筋肉であることには違いがありません。その働きもなかなか自覚できるものではありませんが、健康的な生活やスポーツパフォーマンスアップには欠かせない筋肉です。
インナーマッスルの機能は、人が生まれたときから持っているものですが、年齢を重ねるうちにうまく使えていないようになると、衰えてしまうものです。
スポーツをやられる方も、アウターの筋肉ばかりを積極的に鍛え、インナーマッスルがそれに比例して発達しないとケガやパフォーマンスダウンの原因になります。
■インナーマッスルとアウターマッスルの比較
インナーマッスル | アウターマッスル |
---|---|
深層部にある筋肉。外見からは目に見えない | 外側にある筋肉。外見から目にすることができ、指等で触れることもできる |
動作の際に、先に反応する筋肉 | 動作の際に、インナーマッスルより遅れて反応する筋肉 |
脱力時にも動作する筋肉 | 脱力時は動作しない筋肉 |
姿勢の安定化や呼吸に関与したり、関節の関係性や骨の配列の維持に関わる筋肉 | 動作や力の発揮のために大きく関わる筋肉 |
関節と関節を結びつけているものが多い | 多くの関節にまたがっているものが多い |
回旋動作に関係するものが多い | 直線・回旋などいろいろな動作に関係する(筋肉による) |
低負荷でゆっくりと回数を重ねることで鍛えられる | 高負荷&低負荷、瞬間的&持続的などいろいろな鍛え方がある |
2.インナーマッスルを鍛えるメリット
■胴体(体幹)部では
姿勢や呼吸が良くなります。内臓が正常な位置でキープされるようになり、ぽっこりお腹や便秘が改善し、腰痛や肩こりの予防にもなります。
胴体(体幹部)のインナーマッスルエクササイズは「3−1.ダイエット・姿勢&腰痛改善編」になります。
■肩関節では
タフな肩を作ります。特に投球動作で酷使する肩関節を守ります。「地肩が強くなる」ためにもインナーマッスルの強化が有効です。アウターマッスルの発達に伴い、インナーマッスルも強くする必要があります。
トレーニングすることで野球肩、野球ヒジ、インピンジメントなどのスポーツ傷害を予防し、選手生命を長く保てるようになります。
肩関節のインナーマッスルエクササイズは「3−2.ケガを起こさない強い肩! 投球能力アップ! 肩甲骨編」です。
■股関節では
肩関節同様に、骨盤周辺の関節の安定化をサポートします。ランニングや蹴る動作が多いスポーツでは股関節のインナーマッスルを鍛えることで、スポーツ傷害を予防し、能力がフルに発揮できるようになります。
起こりうるスポーツ傷害は様々で、股関節周囲炎、変形性股関節症、恥骨結合炎、仙骨疲労骨折などです。いずれもインナーマッスルをうまく使えていなかったり、バランスが悪くなることで起こる可能性があります。
股関節のインナーマッスルエクササイズは「3−3.下半身のケガ防止に! 股関節編」です。
3.特選インナーマッスル・エクササイズ
ここからは目的ごとに、エクササイズをお伝えします。継続されることで必ず効果がでる方法です。
3−1.ダイエット・姿勢&腰痛改善編
胴体の深層筋肉を活用&鍛えるストレッチ&基礎トレーニング。姿勢が改善され、呼吸が深くなることで腰痛予防にもなります。スポーツを行う方にも、日常的にぜひ行ってほしいエクササイズ集です。
■キャットバック・ストレッチ
四つんばいになります。 猫が背中を丸めたり、伸ばしたりの動作に近い運動です。背骨の深層筋肉のストレッチと、体幹筋の活性化エクササイズです。
肩とももの付け根から、床に垂直になるように手・ヒザをつき四つんばいになります。
1.背中を丸めながら天井へ引き上げます。この時に息を細く吐きながら、おへそに顔が近づいていくようにします。背中が丸められることで背骨にそった脊柱起立筋や、呼吸に関係する横隔膜へのストレッチがかかります。
2.息を吸いながら、背中を反らしつつ、上と前に伸びていきます。前を見るように目線を上げ、首を前にのばしていきます。両手で床をじんわりと強く押していってください。お腹の深層筋肉「腹横筋」にストレッチがかかります。
1と2を交互に繰り返しましょう。3〜5セット。
■プランク
体幹のインナーマッスルを固定化して、安定性を強化する運動です。体幹トレーニングの代表的なエクササイズです。
腕立て伏せの姿勢から、肩の下にヒジが来るようにして床にヒジをつきます。頭からおしりまでが一直線になるようにしてお腹が落ちないように姿勢をキープ。呼吸は自然に繰り返してください。30~60秒を目安に行いましょう。
アレンジメニュー・ラクにできるようになったら、片足をつま先まで伸ばして、床から20cm程度浮かしてみましょう。さらにお腹を鍛えられる運動になります。
■サイドプランク
ヒザを90度に曲げ、肩の下にヒジが来るように床につけ横向けに寝ます。このとき、ヒジの角度は90度にしましょう。おなかが落ちないように頭からおしりまで一直線を維持して30~60秒を目安に姿勢を保ちましょう。
アレンジメニュー・脚をカラダと一直線にし、ヒザも床から上げます。運動の強さが高まります。
■逆プランク
足を伸ばして床に座ります。
肩の下にヒジが来るように床につき鎖骨からかかとまでが一直線になるようにしておしりを床から持ち上げます。このとき、目線はつま先を見るようにします。30~60秒を目安に行いましょう。
■ハンド&ニー
キャットバックの体勢から、お腹に力を入れて片腕をあげます。そのまま反対の脚をあげます(右腕をあげたら、左脚をあげる)。10秒キープして、脚と腕をおろし、反対側も行います。2〜3セットを行ってください。
【応用編】
上記のポーズがラクにできる方は、あげた手のヒジと足のヒザをくっつける動きをしてみましょう。
うまくついたら伸ばします。この動作を繰り返し行います。まずは左右10回3セットを目標に行いましょう。
■ストレッチポールを使用したインナーマッスルエクササイズ
当ブログを運営する㈱LPNが製造販売する「ストレッチポール」を使用すれば、効果的にインナーマッスルをトレーニングすることができます。当ブログの別記事「体幹トレーニング50選!初心者〜上級者の1週間メニュー」にて詳しくご紹介しています。
また、コアコンファン.comというサイトの記事でも紹介されています。これは長友佑都選手(インテル)のトレーナーである木場克己先生がお伝えする方法です。気になる方はそちらもぜひご参考ください。
【参考】コアコンファン.com 固めるよりも、緩めることの方が大事です〜長友佑都選手| Number Do より
3−2.ケガを起こさない強い肩を作る! 投球能力アップも! 肩を動かすスポーツ編
肩のインナーマッスルをストレッチしてから、トレーニングするエクササイズ集です。
肩を酷使するスポーツ(野球、バレーボール、バスケットボール、ハンドボール、水泳、武道など)の方はもちろん、一般の方でも肩こりや五十肩予防になります。あいた時間にぜひ行ってください。
■肩甲骨ストレッチ1
写真のように腕を回して、そのヒジをもう一方の手で後ろにテンションをかけます。ヒジだけを動かさず、肩甲骨の背中側のほうからストレッチ感を感じるように伸ばします。
■肩甲骨ストレッチ2
背中に両手を回し、一方の手の甲を背中につけます。もう一つの手でその手首付近を押さえ、首側にテンションをかけます。
■肩前ストレッチ
タオルやチューブを使います。後ろ手に回して握ったタオルを持ったまま上方向に引っ張ります。小刻みに動かして筋トレするのではなく、肩の前の部分がじんわり引っ張られるようなテンションを感じてください。
■アイロン体操
肩甲骨の動きを良くする有名なエクササイズです。写真のように椅子や机を用意して体を支えます。動かすほうの手はブランブランと脱力した状態でヒジから下を大きく内外に回します。20~30回。振り子のように前後に揺らしてもOK。
■壁使いストレッチ
壁ぎわに横向きに立ち、腕を伸ばし上げ一点を触ります。そのまま壁側に体重をかけると、肩の内部にストレッチがかかります。手のひら上部だけ付けるとか指先だけとかで行ってください。
■内旋エクササイズ(チューブ使用)
ヒジにタオルを挟み、チューブを持った手を内側に引きつけるエクササイズです。ポイントは肩の内部に効いている感覚で行うこと。力の入れ方が異なると、ヒジ先を鍛えるトレーニングになってしまいインナーマッスルには効果がありません。大きな振りで力をこめて引かずに、低負荷で小刻みに動かしてください。30回を2〜3セット。
■外旋エクササイズ(チューブ使用)
前記同様ですが逆の動き、すなわち外に開く運動です。正面を向いた状態から腕を外に開き負荷をかけます。開き具合は45度程度まで。小刻みに動かしてください。30回を2〜3セット。
■アイソメトリック壁押しエクササイズ
アイソメトリックとは、カラダを動かさずに押したり圧をかけるトレーニングのことです。動かないくらいの大きな岩を全身で押すようなトレーニングもアイソメトリックになります。
ここでは壁を握りこぶしで押します。腕を90度に曲げて息を止めずに押し続けます。これだけで肩内部の筋肉が発達します。ゆっくり10秒押しを2〜3セット。
■肩甲骨引き寄せエクササイズ
写真の態勢をとります。ヒジを後ろに引きながら肩甲骨を寄せてください。寄せたまま時間が経つと肩に力が入ってきます。ゆっくり引き寄せを確認したら元に戻す、を5〜10回繰り返してください。
■肩甲骨引き寄せエクササイズ(チューブ使用)
チューブを使うことで、効果的に鍛えることができます。15cmくらいの引き幅で10〜20回を2〜3セット。
■天井へ前ならえエクササイズ
肩甲骨の動きを良くするとともに、肩を安定化させる筋肉を育てるエクササイズです。
仰向け寝になり、天井に向かって両腕を伸ばします。ややおへそよりに傾けてください。そのまま天井から指先が引っ張られるようにあげ、ストンと降ろします。ヒジは曲がらずに、終始一本の棒のようにキープします。肩甲骨全体が、最初は大きく動くように、5回程度行ったら、小刻みに10〜20回行ってください。
ちなみに、ストレッチポールの上に縦乗りして同様のエクササイズを行うと、さらに効果的に肩甲骨を緩め整えることができます。一直線の軸でキープされるために背中まわりがフリーで動かせるからです。
3−3.下半身のケガ防止に! 股関節の動きを良くしてもっと動けるようになるエクササイズ編
あなたは股関節周辺の故障の経験がありますか? または股関節にツマリを感じたり、動かせる範囲が狭いな、と感じることはありませんか? シニアの方であれば、歩幅が小さくなったり階段でつまづいたりするケースもあります。
股関節のインナーマッスルが弱っているかもしれません。ここでご紹介する運動を行うことで効果的にインナーマッスルを鍛えることができます。
※シニアの方には2番目にご紹介する「おしり上げエクササイズ」をおすすめします。
■ヒザ開きエクササイズ(チューブ使用)
横向け寝になり、ヒザのやや上にチューブをセットします。そのまま上になっている足のヒザを開きます。10〜20回行ったら、向きを変えて下のヒザでも行います。2〜3セット。
■お尻上げエクササイズ
写真のように仰向け寝になり、ヒザを立てます。そのまま息を細く長く吐きながらお腹に力を入れておしりを持ち上げます。10~20回。
ラクにできる方は、片足を伸ばしてみましょう。
■脚後ろ伸ばしエクササイズ1
四つんばいになり、ヒジを床に付けます。その姿勢から片足を後ろに伸ばし、一直線のままカカトから天井方向に持ち上げます。
■脚後ろ伸ばしエクササイズ2
前記の態勢から、ヒザを90度に曲げて天井方向に持ち上げます。
■横歩きエクササイズ(チューブ使用)
チューブをヒザ上にセットし、前かがみのスクワット姿勢をとります。そのまま横に小さい歩幅(足の幅1〜2個分)で横歩きをします。10〜20歩あるいたら反対方向に動き戻ります。つま先は常に正面を向かせたまま歩きます。2〜3セット。
■ストレッチポールを使用した股関節エクササイズ
ストレッチポールをお持ちであれば、ぜひ股関節のエクササイズを行ってください。股関節周辺のインナー&アウターの筋肉をゆるめ、関節の位置を正常なポジションに戻す働きがあります。この運動は、今回ご紹介した股関節エクササイズの前後に行うと効果的です。
ストレッチポールの上に仰向けで縦乗りし、両脚を伸ばします。この状態でカカトを支点にして足でバイバイをします。最初は脱力して小さくバイバイを。しばらく行ったら大きく内に倒し脱力しながら外に開きます。外に開く時に足の付け根に振動を感じられるのがベストです。
ストレッチポールを使用した股関節の運動が効果的な理由とさらに多くの運動方法は別記事「ストレッチポール®で簡単骨盤調整!2つのポイントと改善法」で詳しく紹介しております。
ストレッチポール®は㈱LPNの登録商標(第4666450号)です。正規品は公式LPNショップにて、またAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでも正規品をお買い求め頂けます。
4.まとめ
インナーマッスルを鍛えることの重要性と、目的別に最適な方法をお伝えしました。インナーマッスルのトレーニングは、アウターと違ってなかなか結果が見えにくいものです。また短期的に鍛えることで永遠にその効果が保証されるものではありません。
しかし引き締まったカラダを手に入れるためやケガ予防には、インナーマッスルを鍛えるのがもっとも効果的な方法なのです。プロ選手やトップアスリートは全員行っているのがインナーマッスルのトレーニングなのです。
皆さんも今回ご紹介した方法を日常に取り入れ、素敵でタフなカラダを手に入れてください。
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