「超回復」について調べられている方が大勢います。
トレーニング指導の世界では、筋トレや体幹トレ、その他の練習でも「超回復」を利用することで、効果的に発達を促すことができると考えられています。
ではその「超回復」とは何か。いつ、どのようにトレーニングを行うと「超回復」を生み出すことができるのでしょうか。
実は「超回復」 のためには、どのトレーニングを行うかよりも、トレーニングの強さを適切に選択することとその後どうするかが重要です。
具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。
そこで、この記事では米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)であり運動指導のプロフェッショナルである山口淳士が内外の研究文献や資料をもとに解説いたします。
超回復を効果的に発生させたい方はぜひ参考になさってください。
この記事は山口淳士が執筆しました。 |
目次
1. 「超回復」とは。二人の専門家が構築した「GAS」理論に基づいている
「超回復」は、実はこれ自体がトレーニング理論というわけではありません。
超回復は、ある理論における身体の反応の一つです。 少し詳しくいうと、ストレス(=外部からの刺激)に対する身体の反応を説明した「General Adaptation Syndrome(=GAS:汎適応症候群)」と呼ばれる理論があります。この理論に出てくる反応の一つなのです。
このGASという理論を提唱したのはハンス・セリエ(Hans Selye)というカナダの生物学者です。ハンスは、人間の身体はストレスに反応して3つのステージを経る、と説明しました。
このGASという概念を、運動やレジスタンストレーニングに応用して説明したのが、ジョン・ガルハンマー(John Garhammer)というバイオメカニクス・生理学の専門家です。
2.超回復に関わる4つのフェーズとは
それでは、超回復を説明するためにこのGASという概念を基にして、筋トレをすると身体にはどのような反応が起きるのかを説明していきます。
2−1.まずはアラームフェイズ=警告反応期から
筋トレをすると(=外部からの刺激・ストレスを身体が受けると)、多かれ少なかれ筋肉が損傷します。皆さんがトレーニング後に筋肉痛になるのは、筋肉の筋繊維が損傷しているからです。
さらに、筋トレによって疲労がたまり、収縮を繰り返した筋肉は硬直し、トレーニングで使ったエネルギーは身体から失われます。これらが原因で、筋トレをした後は、一時的にパフォーマンスが低下します。これは、筋トレによって、筋肉をはじめとした人間の身体に刺激・ストレスを受けた時に起こる最初の反応であり、「アラームフェイズ(=警告反応期/疲労期:グラフ❶)」と呼ばれます。
2−2.身体を元に戻そうとするレジスタンスフェイズ
筋トレをして、身体がこのアラームフェイズを迎えると、身体はそのストレスに反応して、適応しようとします。具体的に言うと、筋肉(筋繊維)が損傷すると、身体は「ヤバイ!傷ついた!治さないと!」と、身体が自ら修復作業を開始します。骨折が良い例ですね。多くの骨折は、手術はせずにギブスなどで固定をして安静にしておけば自然に骨はくっつきます(複雑骨折のようなひどい骨折になると手術が必要なケースもあります)。
このように人間の身体は、壊れてしまった組織を自ら修復する能力があるのです。
筋肉の場合は、筋肉の損傷を修復するだけではなく、たまった疲労を回復させ、筋肉の痛みや硬直を和らげ、低下したパフォーマンスを元のレベルに戻していきます。これらの身体の適応反応が起こるのが「レジスタンスフェイズ(=抵抗期/回復期:グラフ❷)」です。
2−3.いよいよ超回復期(スーパーコンペンセイションフェイズ)へ
このレジスタンスフェイズで適切な休息・休養をとると、「スーパーコンペンセイションフェイズ(=超回復期:グラフ❸)」を迎えます。
グラフを見ると、トレーニング前よりもパフォーマンスレベルが上がっていることがわかります。骨折の場合、骨が折れた部分は、治るとその部位が一時的に以前よりも少しだけ太くなる、という話を聞いたことはありませんか? これは実際に起きる現象で、これは骨折部位において超回復が起きていることを表しています。
つまり身体はある部位を損傷すると、それを修復する過程で、以前よりも少しだけ強くして、次にその刺激・ストレスを受けた時に耐えられる身体を作ろうとするのです。
この「骨が折れると治った時に少しだけ太くなっている」と同じことが、筋トレをした後にも起こります。筋繊維が損傷すると、身体は修復作業を開始し、次回同じストレスを身体が受けても耐えられるようにと、損傷前よりも少し強くします。同じ刺激がきたときに、より少ない痛みや、より少ない疲労で済むように、あまり筋肉が硬直しないように、身体を準備します。これが超回復と呼ばれる現象なのです。
2−4.強度が高過ぎたり休養が足りないとオーバートレーニングフェイズに
筋トレの強度が適切であれば、その後適切な休養をとることで超回復の効果を得ることができます(詳しくは後述します)。 しかし、もし強度が高すぎて筋肉の損傷が多すぎたり、休養が足りずに過度な疲労が溜まってしまったりすると、身体がそのストレスにうまく適応できないことがあります。
すると、アラームフェイズからレジスタンスフェイズに進まずに、「オーバートレーニングフェイズ(グラフ❹)」へと進んでしまいます。筋繊維の損傷の修復やたまった疲労の回復が起こらないため、痛みはなくならず、疲労も回復せず、パフォーマンスレベルは低下したままとなってしまいます。
そこでトレーニングを繰り返すことで、故障が続いたり練習についていけないなどの悪循環を生むことになるのです。
以上が、筋トレをした後に起こる身体の反応です。
3.超回復を起こすのに不可欠な2つの要素
ここまで見るとわかるかと思いますが、超回復は特別な現象ではありません。
適度な強度でトレーニングをして、適切な休養をとることで、誰の身体にも超回復は起きます。ですが、それは「適切な強度のトレーニング」をして身体をアラームフェイズに導き、レジスタンスフェイズで「適切な休養」をとったら、というのが前提です。
上記しましたが、身体はトレーニングをしてストレスを受けると、次また同じストレスがきたときはしっかり耐えられるように準備をします。
しかし次のトレーニングでまた以前と同じ強度だったり、それよりも低い強度でトレーニングを行うと、身体はそれをストレスだとは感じません。「もっと身体を強くしないと!」という適応反応が起きないのです。
しっかりと身体にストレスを与え、「修復して次にこのストレスがきたら耐えられるように準備しないと!」という適応反応を起こすためには、ただ運動をすれば良いのではなく、強度がとても大切になるのです。 適度な強度のトレーニングをしていくうえで知っておくべきなのが「トレーニングの原則」です。
詳しくはこちらの記事に書いてありますので、ぜひこちらもあわせてお読みください。 トレーニング7原則|ムダを省きムリなく最大効果を得る方法
4.「適切な運動後の休養」にも個人差がある
上記した「適度な強度の運動」とともに大切なのが、「運動後の休養」です。
4−1.休養時に筋肉は発達しパフォーマンスは向上する
どうしても、「筋力を早くつけたい!」「一刻も早く筋肥大させたい!」と考えると、トレーニングの内容のことばかりを考えてしまいがちでしょう。しかし、ここでしっかりと覚えておきたい大事なことが、「トレーニングをしているときにパフォーマンスが向上しているわけではない」ということです。
トレーニングをするとまずアラームフェイズが来るのですが、トレーニングをしている最中やトレーニング直後は「パフォーマンスが低下」します。パフォーマンスが向上するのは、トレーニングを終えてから数日間の「レジスタンスフェイズ=回復期」である、ということをしっかり覚えておきましょう。
(このグラフでは「アラームフェイズ=Fatigue(疲労)」「レジスタンスフェイズ=Recovery(回復)」と表記されています)
つまり、しっかりと休養をとる回復期がなければ、パフォーマンスの向上は起こらないのです。筋トレをしたら、その筋トレをしているときに筋肉がついてくるのではなく、その後休んだり、栄養を摂ることで筋肉がついてきます。
4−2.休養が足りないと「オーバートレーニング」になる
筋トレ自体は、あくまで筋肉が成長するためのキッカケであり、「休まない」ことは「パフォーマンスが向上する時間を与えない」ようにしていることになります。これではなんのためにトレーニングをしているのかわからないですよね?
上記しましたが、回復期がないまま身体にストレスを与え続けてしまうと、それは過度な負荷となり、オーバートレーニング期に進んでしまい、パフォーマンスは低下し続けてしまいます。
実際に警告反応・疲労期から抵抗・回復期を迎えるのは「24〜72時間後」と言われています。トレーニングの強度や、筋肉の損傷・疲労具合、その人の身体の回復の速度によって、超回復のフェイズを迎えるまでの時間が異なります。
難しく聞こえるかもしれませんが、キツイトレーニングをすれば、疲労もたくさん溜まるため、回復にも時間がかかりますよね? 逆に、トレーニングによる刺激が少なければ、疲労も少なく、回復は早いです。 超回復のフェイズを迎える前に(=まだ回復している段階で)次のトレーニングをしてしまうと、まだ回復しきっていないため、疲労を積み重ねることになってしまい、オーバートレーニングになってしまいます。
逆に、休養を取り過ぎてしまうと、上のグラフのように超回復フェイズを通りすぎてしまい、トレーニング以前のレベルに戻ってしまいます(=Return to baseline)。これでも超回復の効果は得られません。超回復の効果を得て、パフォーマンスを向上させていきたい場合は、このタイミングを逃さずに次のトレーニングをする必要があるのです。
5.超回復を進める具体的な回復の方法とは
回復期を設けることが大切である、とはお伝えしました。ここからは、具体的な回復の方法について紹介します。大事なのは「栄養補給」と「休み方(休養)」です。
5−1.栄養バランスの良い食生活を送ろう
栄養補給の根幹はまずは日頃の食事となります。サプリメントよりもまずは食生活を向上させましょう。
5−1−1.運動直後からタンパク質と糖質を補給する
たんぱく質(アミノ酸)をしっかりと摂ることは、筋繊維の損傷や疲労の回復を促進するため、オーバートレーニング期に進んでしまうことを防ぐ効果があるだろう、と研究によって示されています(Meeusen et al., 2013)。
さらに、たんぱく質に炭水化物を加えた食事を摂ることで、筋トレによって失われたエネルギーの補給(=グリコーゲンの補充)を行うことができるため、より効果的に疲労回復を促進することができます。
最近話題の「糖質」ですが、糖質は疲労回復のためにとても重要な栄養素の一つです。身体を動かすエネルギー源となっているのは「グリコーゲン(=糖質)」です。これが身体から失われると、パフォーマンスは低下します。これはつまり、筋力も落ちてしまうことになるので、効果的な筋トレやトレーニングができなくなってしまいます。
5−1−2.厚労省やスポーツ栄養士が勧める栄養バランスに考慮する
さらに、糖質制限などをして身体から失われたグリコーゲンを補給しなければ、次の日に疲労が回復しないため、回復期に進むことができず、超回復は起きないでしょう。 筋肉をつけたいからとタンパク質ばかり補給したり、太るからと糖質制限をしたりせず、栄養バランスの良い食事を摂ることが、筋肉を効率よくつけていくためには大切です。
厚生労働省による日本人の食事摂取基準(2015年版)には、一日の食事の三大栄養素のバランスとして、炭水化物が50〜65%、タンパク質が13〜20%、脂質が20〜30%を推奨しています。公認スポーツ栄養士である松本恵先生は、PFCバランス(Protein=タンパク質、Fat=脂質、Carbohydrate=炭水化物)が「2:2:6」の割合で1日の食事を摂るべきとおっしゃっているので参考にしてください。
また、激しいトレーニングをした後は免疫が低下してしまうため、風邪をはじめとした病気になりやすくなります。よって、野菜からビタミン・ミネラル等もしっかり摂りましょう。
頑張ってトレーニングを続けてきても、風邪を引いてしまって一週間全くトレーニングができなかった、となってしまってはもったいないですよね? パフォーマンス向上や筋肉の成長に栄養はもちろん大事ですが、体調の管理という観点からも、バランスの良い栄養の摂取はとても重要です。 詳しい食材については当ブログの別記事「筋トレは食事から!最大効率を得る食べ物の知識【レシピも】」をご覧ください。
5−2.積極的に回復期を迎えられる休養の知識
休養もトレーニングの一環と考えてください。
回復期に、トレーニングをせずにただ休んでいればいい、というわけではありません。「休み方」も、超回復という現象を利用して最速効果を得るためには、重要な要素です。
5−2−1.アイシングで回復期を早く迎えられる
まず紹介したいのが「アイシング」です。
筋トレによって損傷した筋肉・筋繊維の炎症をアイシングをすることで抑えることができます。炎症を早く抑えることで、より早く回復期を迎えることができます。筋トレや運動をした後に痛みがある部位は、ぜひアイシングをして炎症を抑えましょう。
詳しいアイシングの原理や効果については別記事「アイシングとは・痛みに効果的な方法と原理をプロトレーナーが解説!」をお読みください。
5−2−2.質の良い睡眠を得よう
また、休養に欠かせないのが「睡眠」です。
「睡眠不足は筋トレ(特に多関節筋トレーニング)の効果を低下させる」という研究があります(Knowles et al., 2018)。なぜ睡眠不足が筋トレの効果を低下させるかというと、「睡眠不足によって、筋グリコーゲンが不足する」というのが理由の一つです。多関節筋トレーニングは、一度に多くの筋肉を使うため、エネルギーの消費量がとても多いです(=筋グリコーゲンをより多く使う)。よって、睡眠不足で筋グリコーゲンの量が少ない状態で筋トレをすると、すぐに疲れてしまったり、以前はできた重さや回数ができなくなってしまいます。
さらに、筋肥大をはじめとした筋力アップやパフォーマンス向上だけでなく、疲労の回復にとってもキーファクターであるのが「成長ホルモン」です。この成長ホルモンが身体の中で多く分泌されるのが、「トレーニング後」と「睡眠中」です。特に「22時〜2時」に寝ていると、成長ホルモンが最も多く分泌されます。成長ホルモンが分泌されているときにしっかりとタンパク質をはじめとした栄養が身体に補給されていることで、効果的に筋肉の損傷の修復や疲労回復を促進させることができます。
5−2−3.アクティブレストを活用する
休養期間はただじっとしているのではなく、積極的な休養=アクティブレストをすることも、回復期を早めることに繋がります。ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチ、フォームローラーやストレッチポールを使ったセルフマッサージ、軽いスポーツや水泳など、全身運動によって血流をよくすることで、酸素や栄養素を身体全体に送ります。それによって身体の回復を促進させ、超回復のフェイズに早く進むことができ、次のトレーニングを早く行うことができます。
アクティブレスト・疲労回復効果を上げる積極的休息の最善方法とは
しかし、ときには完全オフの日も作りましょう。リフレッシュDayも必要です。
6.超回復を阻む「オーバートレーニング」とは
「オーバートレーニング」とは「トレーニングのしすぎ」のことです。過ぎたるは及ばざるがごとし、と言います。やりすぎは回復し難い疲労や故障の原因になります。「ちょうどいい運動負荷」と「オーバートレーニング」の境界を見極めるコツについてお伝えします。
6−1.オーバートレーニングの基準と原因
今のところ「オーバートレーニングの基準とはズバリこれだ!」というはっきりとした定義はまだありません。 研究者によってまちまちですが、参考文献内で定義された説明は、以下の通りです。
トレーニング、もしくはトレーニング以外でのストレスが蓄積することで、長期のパフォーマンス低下が起きること。身体的もしくは心理的な症状は、あることもあれば、目に見える症状は何もないこともある。パフォーマンスの回復・向上には数週間から数ヶ月かかることがある
オーバートレーニング症候群になってしまう具体的な原因は以下の通りです。
・突然の練習量の増加
・長すぎる練習時間
・多すぎるトレーニング量
・高すぎるトレーニング強度
・短すぎる(少なすぎる)休息時間
6−2.オーバートレーニングの水準は個人差がある
ここで難しいのは、「ここまでやってしまったらオーバートレーニング!」という目安が数値でお伝えできないということです。
その理由は、その人のフィットネスレベル・体力レベルによって異なるためです。更に、オーバートレーニングはトレーニング要素だけが理由ではないというのも難しくしています。
以下のような「トレーニング以外のストレス」も、オーバートレーニングを引き起こす原因となる可能性があります。
・栄養摂取不足
・睡眠不足
・病気
・健康上の問題
・身体的もしくは精神的なストレス
6−3.オーバートレーニングになるとどうなる?
それでは、オーバートレーニング症候群になるとどのような症状が現れるのでしょうか。以下が主な症状です。
・パフォーマンスの低下(筋力の低下や痛み・やる気の低下)
・食欲の低下 、睡眠の質や量の低下 、胃腸の不調
・免疫の低下(風邪を引きやすい・リンパ腺の腫れ、疲労が回復しない、など)
パフォーマンスの低下は、オーバートレーニングでなくてもトレーニング直後にはおきます。ただ、そのパフォーマンス低下は回復期に進むにつれて回復してくるはずです。しかし、回復しない、もしくは低下し続ける場合は、オーバートレーニングが疑われます。
ですが、これくらいパフォーマンスが低下したから、これはオーバートレーニング症候群だ、と言い切れる基準はまだ明らかにされていません。 また、上記しましたが、免疫の低下も、オーバートレーニングではなくても強度の高いトレーニングをしたあと(特に長時間の持久性トレーニングの後、3〜24時間後)には起きるため、感染症や怪我・病気などになりやすくなります。
6−4.筆者が考える「オーバートレーニング」の目安
「最も適切なトレーニング強度と量」と「オーバートレーニングになってしまう過度なトレーニング強度と量」の差は、とても小さいと言われています。その小さな差を知るためには、トレーニング後の自分の身体の感覚・変化を適切に捉える必要があります。
「オーバートレーニングかどうか」を決めるポイントは「パフォーマンスの低下があるか」と「ムード(気持ち)の低下があるか」であると言われています。
以下のような症状がある場合は、高強度のトレーニングを行うにはまだ早く、疲労回復に努める必要がある可能性があります。
・普段できる重量・回数・パフォーマンスができない
実際には、これだけでオーバートレーニングだ、と言い切ることはできません。他に原因がある可能性も大いにあるからです。ですが、オーバートレーニングによって一番顕著に出るサインはこの「パフォーマンスの低下」と言われています。よって、もし他に原因が考えられなければ(睡眠不足・エネルギー不足・風邪などの病気など)、まだ超回復期には達しておらず、まだ休養をとる必要があるかもしれません。
オーバートレーニングを予防するために「普段の自分のパフォーマンス」をわかっておく必要があります。前回はどれくらいできたのか?がわからなければ、自分のパフォーマンスが低下しているのか、いつも通りなのか、がわかりませんよね?
よって、筋トレであれば、毎回どんな筋トレを、どれくらいの重さで、どれくらいの回数行ったか、ということを記録しておきましょう。オーバートレーニング症候群に一度陥ってしまうと、回復にはかなりの時間がかかってしまいます。予防するためにも、毎回のトレーニング記録をつけていきましょう。
・筋肉痛がまだ強く残っている/筋肉痛の痛みや疲労感のせいで、正しいフォームで筋トレを行えない
筋肉痛の度合いは、まだ疲労回復が必要な段階か、超回復期に入ったのかを知る目安となります。とはいえ、どれくらいの痛みになったら次のトレーニングを始めて良い、というのは個人差があるために、なかなかお伝えするのは難しいところです。
一つの基準として、「やろうとしている筋トレを、フォームが変わらずにできるか」を目安にすると良いと思います。筋肉痛による多少の痛みがあっても、筋トレをする際にその痛みをかばうことなく、正しいフォームで行うことができれば大丈夫でしょう。もし痛みによって動きが変わってしまうのであれば、その代償運動によって怪我をしてしまう恐れがあるため、まだ疲労の回復に努める必要があるかもしれません。
・元気がない/やる気が出ない(=モチベーションの低下)
パフォーマンスの低下とともに、もう一つのオーバートレーニングを知るポイントが「ムード(=気持ち)の低下」です。気持ちの部分なのでとても判断が難しいですが、トレーニングに向かうモチベーションがなかなか上がらない場合、オーバートレーニングの可能性があります(睡眠不足・体調不良・エネルギー不足など、原因が違う可能性ももちろんあります)。
・運動していない時(=安静時)の心拍数がいつもより高い
上記した「毎回のトレーニングを記録する」とともに、「朝起きた時に心拍数(=脈)を測る」も、オーバートレーニングを予防するために行いたいことです。オーバートレーニングになると、運動をしていない時(=安静時)の脈が早くなります。安静時の心拍数を知る一番のタイミングは朝起きてすぐに測ること。ぜひ、毎朝脈を測ることを日課にして、自分の体調管理や、その日のトレーニングメニューを考えることに役立ててください。
これらの症状があるにも関わらず、無理をしてトレーニングをして、身体に負荷をかけ続けていくと、オーバートレーニングフェイズに進んでしまう可能性があります。
適切なトレーニング強度の設定については以下の記事も参考になさってください。
トレーニングの7原則|ケガを予防し最大効果を得るための最善法とは
6−5.筋肉痛が残っている場合は?
別の部位の筋力トレーニングを行いましょう。
例えば、腕の筋肉痛がとても強いからといって、腕以外の部分や全身も休ませる必要はありません。筋肉痛や疲労感のない下半身や体幹トレーニングはもちろん行って大丈夫です。
逆に、腕の筋力をもっとつけたいからと、痛みを我慢してさらに腕のトレーニングをしてしまうと、パフォーマンスが向上する回復期を与えずにさらに負荷をかけてしまうことになります。これではオーバートレーニングになってしまう可能性が高まります。
より効率的に全身の部位を鍛えていきたい!という方は、一日単位で特定の部位に集中して筋トレを行い、その部位を毎回変えていくことで、部位ごとに回復期間を与えながらも、鍛えていくことができます。
7.まとめ
超回復についてお伝えしました。超回復を効率的に生むには適切なトレーニング強度に加えて、休養期を設け効果的な回復方法を実践することです。そのためにはまずご自身の身体について敏感になり、日々のトレーニングの内容や、身体が受ける印象を記録しておくことをおすすめします。
この記事で紹介した知識や方法が皆さんのパフォーマンスアップにお役立ていただければ幸いです。
8.参考文献
この記事は、文中で紹介したものに加えて以下の研究資料を参考に執筆致しました。
1. Anthony T. The science and practice of periodization: a brief review. Strength and conditioning journal. 2011;33(1):34-46.
2. Meeusen R, et al. Prevention, diagnosis, and treatment of the overtraining syndrome: joint consensus statement of the European College of Sport Science and the American College of Sports Medicine. Med Sci Sports Exerc. 2013 Jan;45(1):186-205.
3. Knowles OE, et al. Inadequate sleep and muscle strength: Implication for resistance training. J Sci Med Sport. 2018 Feb 2. pil: S1440-2440(18)30030-6.
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