姿勢改善の意味、効果と最も効果的な方法とは【米国認定ATが解説】

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Man with impaired posture position defect scoliosis and ideal bearing

姿勢改善したい! 普段から猫背や反り腰、巻き肩、左右どちらかに傾いた姿勢などを気にされている方は多いと思います。肩こりや頭痛などのトラブルもそれが原因となっているかもしれません。

では「正しい姿勢」とは? そして「最も効果的な姿勢改善の方法」とは? そもそも姿勢って何? 

これらの疑問について、姿勢の専門家であり、米国公認アスレティックトレーナーの三田貴史が解説します。姿勢の概念や正しい姿勢、悪い姿勢の意味についてもご紹介します。


1.姿勢とは?

まず、この姿勢という言葉について説明します。姿勢を辞書などで調べると「からだの構え、物事に対する態度」とあります。また、英語で姿勢をpostureと言いますが、このpostureは姿勢を取る、態度を取る、立場を取る、心構えという意味を持ちます。

言葉の意味だけを見ても、姿勢という言葉は単なる人の形や形態を表す言葉ではなさそうです。この姿勢という言葉は、フィットネス、ヘルスケアに限らず、サービス業などの多様な業界で色々な見方、様々な認識のされ方をしている単語だと思います(例えば、接客業における立ち居振る舞いなど)。

今回の記事では姿勢とは単に人の身体の骨や、関節、筋肉の「位置」の見た目の状態を示すものではなく、「姿勢」とは身体を安定させるために幾つもの筋肉が連動して得られる結果です。つまり、姿勢とは単に身体のパーツの状態や形態を合わせたものではなく、身体が快適なゾーンに居ることを指します。

それは地球上で二足歩行で生活する上で、自身の生活スタイルや、動きの癖、行動習慣などの身体がさらされている「抵抗」によって対応し、変化するものと考えます。

1−1.姿勢には二種類ある

大まかに姿勢とは二つに分けられます。静的姿勢動的姿勢です。

1−2.静的姿勢とは

静的姿勢とは、態度や体位がリラックスしている状態を指します。この時、筋肉の動きは最小であり、脱力していると考えられます。なので、静的姿勢では、筋肉の長さや骨のポジションなどの構造的な安定性にその状態が依存する形になります。例をあげると静的姿勢の状態は座位、立位、臥位など静止状態です。

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静的姿勢の例

1−3.動的姿勢とは

動的姿勢とは効率良く動作を行うために身体の部位が適切に動く状態です。幾つかの筋肉の統合的な動きにより、動作を維持することができます。つまり、動作を継続または完了させるために努力を要する姿勢が動的姿勢と言えます。そのため、筋肉や、その他の身体の組織が目まぐるしく変化する状況に適応し、働き続けなければなりません。例えば、歩く、走る、ジャンプする、投げる、持ち上げるなどです。また、立位でも、姿勢を維持しようと意識している場合もこの動的姿勢に含まれるでしょう。

※動作を含む動的パターンもここでは姿勢とみなします。

Proper lifting technique

動的姿勢の例


2.私たちは普段どのように姿勢を保っているか?

普段の我々の姿勢を維持する為の三つの要素について説明します。

姿勢とは、身体や関節、筋肉、骨などの位置ではなく、動きのパターンや癖、生活習慣に置ける適応の結果であると先程述べましたが、姿勢を維持するためにかかせない要素があります。

1つは「安定した重心のコントロール」です。重心とは身体のバランスがとれる場所です。

頭が前に倒れれば、当然身体の重心は前へ移動します。それをカバーするために、身体は頭以外の部分で重心をなんとか中心に残そうと、後ろ向きの力を生み出そうとします。重心をコントロールするために、無意識のうちに身体を動かして微調整しています。

2つ目は「重力に逆って動くことができる」こと。乳幼児を除き人間は二足歩行で生活しています。つまり、身体への負担の大小に関わらず、常に重力に抵抗して生活をしています。関節の可動域が確保され、筋肉がきちんと収縮、伸長が可能であること。このとき幾つかの筋肉が連動して働くことで重力に負けずに姿勢を維持することが可能です。

3つ目は「身体のイメージ、また体性感覚」です。これは自分がイメージしている動作をきちんと実際の動作で再現していることです。この身体のイメージと実際の動きに差異が小さければ小さいほど、効率良い姿勢になりますし、反対にイメージと実際の姿勢の差異が大きいほど、余計に努力が必要となり、極端な身体の使い方をすることになります。

Yoga Indoors: Tree Pose

生きていくために取り続ける多様な姿勢。それを保つにはいろいろな要素が必要です

3.悪い姿勢(姿勢不良)とは?

座り姿勢や立ち姿などの静的姿勢と歩行やしゃがみ込み動作などの動的姿勢が崩れて悪い姿勢に見えることについて説明します。

3−1.悪い姿勢の定義

Concentrated Businessman Using Computer At Desk

猫背は不良姿勢の代表格です

悪い姿勢いわゆる姿勢不良とは「身体に習慣付いた極端な姿勢」と言えます。

例えば、座ったとき、または立った時にこのような姿勢の人を見かけたら、皆さんはどう思うでしょうか?

「姿勢が悪い」

「背中が丸まっている」

「シャキッとしないと!」

など、ネガティブな印象を受けると思います。では、なぜこの人はこの姿勢でいるのでしょうか? 一番多い理由は、この立った時 or 座った時の姿勢が「楽」な状態であることです。

ただ、この姿勢が「楽」というのは全員に当てはまるのでしょうか? この姿勢をするのが楽だという人もいるでしょうし、逆に肩が疲れる、腰が張る。という人もいるかと思います。

「楽」な動作というのは身体が選択する動作です。つまり、この姿勢になることが楽なのではなく、この姿勢でいることが「楽」だと感じてしまう身体の使い方が代償的に身についているのです。悪い姿勢である、またはそのように見えるということは、身体の動きの機能が崩れていて、その代償動作が現れた結果とも言えます。

3−2.姿勢不良の種類

姿勢不良についてはいくつか分類がされています。

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立位の不良姿勢の一例(英語)

これらは分類は違えど、身体のどこかの部位の動きの機能が崩れ、代償動作の結果と言えるでしょう。このどれも筋肉が正常でない長さ、ポジション取りをしているために起こることが多いと思います。だからこそ、曲がった背中が「楽」だと感じる環境が出来上がってしまうのです。

また、例えばスクワットをする際に真っ直ぐに保てず、代償動作として腰が丸くなったり、反ったりする状態も「スクワットの姿勢が良くない」と言えると思います。

これもどこかの筋力が足りないというより、腰が真っ直ぐでない方が身体にとって楽な動作なのでしょう。また、歩行時などの普段の動きが乱れてしまうのも、同様に身体の本来の動きに制限があることによる代償動作によるものです。

4.姿勢を悪くする要因

では、なぜ姿勢は悪くなってしまうのでしょうか?別の言い方をすれば、なぜ身体の動きの機能が崩れてしまうのでしょうか?この章では姿勢を悪くする要因について解説します。大まかに物理的要因と心理的要因について解説します。

4−1.物理的要因

物理的要因とは環境による適応や解剖学的な特徴によって姿勢に変化を及ぼすものです。周りの生活環境において、パターン化や習慣づいた動作というのは姿勢の変化を起こすことがあります。

酷使したり、縮んだままの筋肉は短縮したままになり、あまり使われない筋肉は伸長されたままになります。この伸長されたままや短縮したのままの筋肉がその状態で定着してしまうと、姿勢となって現れてくるのです。

つまり、筋肉のポジションにより姿勢は変化すると言えるでしょう。

・デスクワークでいつも背中を丸め、首を前に突き出している。

・常に同じ脚で脚を組む

また、骨の形状や関節の角度などの解剖学的特徴によっても、筋肉のポジションが変化します。これもまた姿勢の変化に影響を与えます。

例えば、大腿骨の骨頭の角度が人によって異なることがあります。これは骨の形状なので変化させることはできませんが、姿勢について考えた時に、問題は股関節や脚の形状ではなく、その周囲の筋肉本来の動きを失う、または他の部位でかばうように代償してしまうことが、姿勢をさらに悪くしてしまう要因になるのです。

Asian women Aches from working She felt like relaxing

肩こりや腰痛の原因が不良姿勢にあることは珍しくありません

4−2.心理的要因

また、姿勢は社会的、心理的な条件によっても従順に影響を受けたり、時には姿勢が感情に支配されることすらあるのです。

例えば、うつ傾向にある方は、胸椎が後ろに曲がった姿勢(胸椎後弯)を取りやすいという報告もあります。これは、メンタルヘルスが、身体の状態を定める要因の一つのなりうるということです。(Canales et al., 2010)

つまり、精神衛生をよく保つことは姿勢不良のリスクを減らすことに繋がるかもしれません。強いストレスにさらされていたり、気分が落ち込みやすい人は気分転換の場を確保することも必要かもしれませんね。よく猫背と呼称される姿勢は「背骨が曲がっている」などと表現されることがあります。

ですが、骨の役割は身体を支える支柱であり、臓物を保護するためでもあります。つまり、骨が勝手に曲がることはなく、筋肉によって骨が動かされると考えるのが自然でしょう。

骨が曲がっているから姿勢が変化するのではなく、筋肉によって骨が動かされて、結果として骨がその場所に定着するのです。

つまり、外的要因や心理的要因により、均衡を保っていた幾つかの筋肉のうち、一つでも筋肉の動きが崩れると、均衡も崩れ骨や靭帯、関節などをアブノーマルな状態へと変化させることになり、結果として姿勢の変化へと繋がるのです。

Working late

うつむくことで不良姿勢が作られていきます

5.良い姿勢とは?

良い姿勢とは機能的に身体が可動すると定義し、それについて解説していきます。機能的に身体が可動するためには、静的な姿勢も動的な姿勢も、力学的に最も効率の良い関節が位置していることが必要となるでしょう。力学的に効率の良い関節の位置というのは、運動連鎖において、最適な荷重がそれぞれの関節にて起こることを指しています。

以前の記事「姿勢が悪いとはどんな状態?どんなデメリットがあるのか解説でも紹介している通り、立位や座位などの静的姿勢では自然とこのような姿勢になっていると良い姿勢と言えるでしょう。

しかし、我々の生活において、静的姿勢の状態を維持する時間というのは限られています。なにかしら身体を動かしている、つまり動的姿勢を保持しているのです。動的姿勢において、動きの見た目だけでなく動きの質も大切になってきます。

例えば、スポーツ時や日常生活の中の歩行などの身体を動かす際に、必要なタイミングで必要な筋肉群が働くこと。身体のパーツを保持するために筋肉が役割を果たすこと。弛緩するべきところは弛緩して、余計な緊張を生まないこと。緊張するべきところは緊張して、弛緩状態が過度にならないようにすることなどが大切です。

Safe lifting of heavy items

正しい動的姿勢のためには、筋肉の正しい連動が不可欠です

6.まっすぐな姿勢と整った姿勢は違う?

見た目がまっすぐな姿勢と機能的に整った姿勢について違いを解説します。まっすぐな姿勢とは文字通り、見た目がまっすぐな姿勢です。座位、立位のこの姿勢については前章でも紹介しました。

一方、機能的に整った姿勢というのは過不足なく、身体が本来持つ可動性を維持している状態です。

ですので、これらは必ずしも一致するとは限りません。立位姿勢は真っ直ぐだけど、歩いたり、立ち座り動作をすると代償動作が出てしまう場合は「立ち姿は真っ直ぐだけど、機能的には整っていない」と言えるでしょう。その逆もまたしかりです。

7.姿勢改善に必要なもの

姿勢改善のためにエクササイズやストレッチで短いままや伸びている筋肉の柔軟性や筋力を正常な状態にすることがまず必要です。その上で、それらの筋肉がまた伸びたまま、縮んだままにならないような身体の使い方をすることが必要です。つまり、社会的条件、環境的条件、心理的条件において、自分の身体を極端に使ってしまう状況を抜け出すことが大切です。そのためには一度、普段の生活における自分の身体の使い方を見直す必要があるでしょう。

姿勢とは日常の行動の結果であると考えるので、姿勢を変えるというのは行動を変える必要があるということです。とはいえ、姿勢や身体の動きの評価というのは、理学療法士やトレーナーといった専門知識のある方に見てもらうことがオススメです。

8.姿勢改善のためのエクササイズ

この章では、デスクワーカーがなりやすい「猫背」に対して、例として具体的なストレッチ、簡単な筋トレ、体幹エクササイズを紹介します。

・ベーシックセブン:普段の日常生活において短縮になりがちな身体前面の筋肉をリラックスさせる狙いがあります。過去記事にてご紹介しています。

ストレッチポール®の効果とほとんどの方に効果が得られる使い方

・腹式呼吸横隔膜ストレッチ・姿勢を整え肩をラクに!くびれもできる5つの方法

・ペルビックティルト:重力に逆らって身体を支えるのに重要なもも裏とお尻の筋肉の促通を促します。

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(C)Healthwise

腰をあまり浮かせないように、骨盤の前傾、後傾運動を行います。

・ヒップリフト:ペルビックティルトを維持したまま、両足で踏ん張りお尻を持ち上げます。

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ヒザから肩までを一直線にします

・胸椎回旋:デスクワークなどでかたまりやすい胸椎、胸郭の可動域の改善を狙います。

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下半身がフラフラしないようにします

・キャットバック:これもデスクワークなどでかたまりやすい胸椎、胸郭の可動域の改善、および短縮になりやすい背中の筋肉の抑制を狙います。

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・4つばい片手浮かし:(身体がねじれないように注意)

・4つばい片足浮かし:(身体がねじれないように注意)

・ウォールエンジェル:伸長しやすい肩甲骨の間の筋肉の促通を狙います。

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出典:http://bostonbodyworker.com/2018/08/life-hack-wall-angels/

・つま先立ち→かかと立ち

・応用としてハーフカットのストレッチポールの凸面を下にして上に立ち、前後にゆっくり体重移動をする。

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いろいろ試してみてください

9.参考文献

Canales, Janette Zamudio, Cordás, Táki Athanássios, Fiquer, Juliana Teixeira, Cavalcante, André Furtado, & Moreno, Ricardo Alberto. (2010). Posture and body image in individuals with major depressive disorder: a controlled study. Brazilian Journal of Psychiatry, 32(4), 375-380. https://dx.doi.org/10.1590/S1516-44462010000400010

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