ランナーの方で膝の痛みを訴える人は大勢いらっしゃいます。
そもそも走りに向いていないのか、走り足りないのか、シューズに問題があるのかと不安になりますよね。アスファルト舗装路ばかり走っているからなのか…。
そのお悩みを解決するために、現役時代からトップレベルのランナーであり、現在もランニング専門トレーナーとして活躍する小島成久先生に寄稿いただきました。
膝の痛みの解消には、ランニングフォームや普段の姿勢が非常に大切とのことです。この記事をお読み頂ければそれがなぜなのか、さらにご自身がとるべき方法についてご理解頂けるはずです。
ランニング時の膝の痛みにお悩みの方はぜひご一読ください。
この記事は、小島成久先生に執筆いただきました。
ランフィット代表・パーソナルトレーナー/日本コアコンディショニング協会 マスタートレーナー 他
詳細なプロフィールはページ下部にてご紹介しています。
目次
1.誰しも最初は膝が痛くなかった
ランニング障害の中でも上位にランクされる膝の痛み。その多くは腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)だったり、関節包炎(かんせつほうえん)、タナの炎症、鵞足炎(がそくえん)などだったり…。痛みの出る場所も膝の上、下、横、裏側などなどさまざまです。
そしてよく耳にする言葉は『膝が弱い』。(編集部註:長距離を走ったり短期集中的に距離を走ると痛みが発生し、タフな膝ではないという意味)
でも果たしてそうでしょうか? もともとあなたの膝は痛かったのですか? 悪かったのですか? ほとんどの方はそうではなかったはずです。もともと痛かったのなら、そもそも走ろうなんて思わなかったはずです。
ごく一部の方を除いては、膝にはなんの問題もなかった方々だったはずです。
それが走り続けていくうちに、次第に違和感を覚え痛みを感じまたそれを我慢して走ってきていたはずです。
最初のうちはちょっと痛みを感じると少し休んでいたのが、それもあまり変わらないからと走りはじめ、ついには『走って治す!』などと訳の分からん理由を述べて痛みを抱えながらも走ろうとする。その結果取り返しのつかないことに陥ってしまう。まあ良くある話です。
2.今痛みで困っている人のための膝ストレッチの方法
本題に入る前に、今スグできる膝ストレッチの方法をご紹介します。膝に関係する筋肉を効果的にストレッチできるオススメの方法です。※お伝えする方法が痛みで難しい方は医師の診察を受けてください。またストレッチ中に痛みが増幅する場合は中止してください。
2−1.膝の上側に効果的な大腿四頭筋のストレッチ
写真の態勢をとります。右膝は直接床につけると痛いのでクッション等を利用してください。右手で右足の甲をつかみ体側に引き寄せます。腿前をよくストレッチしてください。
2−2.膝の外側に有効な大腿筋膜張筋のストレッチ
椅子や机、壁等を利用して写真の態勢をとります。左膝に手を起き、後ろ側にまわした右脚の外側を体重をかけてストレッチしていきます。
2−3.膝の裏側はハムストリングのストレッチから
腿裏を伸ばす方法です。ドアなどを使って上記の態勢をとります。足をまっすぐにしてテンションをかけていきます。床につけた足の膝は浮かせないようにしてください。伸ばした足の股関節前側にある腸腰筋(ちょうようきん)もストレッチされます。行ったあとに前後を比較してみましょう。
2−4.膝の裏側は腓腹筋のストレッチも行う
ふくらはぎの筋肉である腓腹筋(ひふくきん)をストレッチする方法です。壁を利用して、写真の態勢をとります。前に出した足は曲げ、後ろ足を伸ばします。カカトは床から離さずに、下にテンションをかけ後ろ足のふくらはぎを伸ばします。
2−5.膝の内側は縫工筋のストレッチで
腿の内側に走る長い筋肉、縫工筋(ほうこうきん)をストレッチする方法です。
挙げた足の甲は左手でつかんでいます。全身の力を抜いて内腿にストレッチをかけていきます。
膝のストレッチ方法については別記事「膝ストレッチ|5つの筋肉で膝の内外上下を伸ばす最善方法」でさらに多くの方法をご紹介しています。ぜひ参考になさってください。
3.膝の痛みは体の使い方に原因があるケースがほとんど
さて、このような膝のトラブルを根本的に防ぐためには何が必要でしょうか?
しっかりとしたウォーミングアップやクールダウンはもちろんのこと、日ごろからのケアが一番大切だと思っています。「ケア」というとストレッチやマッサージなどスタティック(静止的)でパッシブ(受動的・消極的)なイメージがあるかもしれません。もちろんそれはそれで大切なことですが、アクティブ(積極的)なケアも必要だと思っています。
そもそもなぜその痛みが出たのか? というところに着目する必要があります。
それは、姿勢やフォームの歪み・クセ、つまりは体の使い方にほぼその原因があると言っていいと思います。
膝は足部と股関節に挟まれていますから、そのどちらかに問題が起きれば必ずその影響を受けますし、腰が落ちていたり脚が捻じれて動くフォームならまず間違いなく膝に何らかの問題を生じさせます。つまり膝の痛みはそれら体の使い方が原因であって、その結果として膝が痛くなる。ほとんどの場合そうなります。
4.フォームの修正は何気ない動作の改善から
ということは、フォームの改善はもちろんですが普段の姿勢や何気ない動作の改善が重要になってきます。自分の中で当たり前と思っている動作一つひとつをもう一度見直していくことが大変重要になると思っています。
もちろん痛みがある場合には治療が最優先ですし、そのためのインソールやテーピング、サポーターなども必要でしょう。ですがもともとは必要なかったモノのはずなのです。
と言うことは自分の体そのものが改善すればそれらは必要なくなるということです。いつまでもモノに頼っていては根本的な改善にはつながりませんし、かえって改善の妨げになってしまうこともあります。いつまでも不安を抱えてモノに頼った生活を送らずに済むように、まずは自分の体からの見直しが必要だと思っています。
5.フォームを見直すポイント
ではどのようにしたらよいのでしょうか?
人の体には下肢荷重線(ミクリッツ線)と言って、この骨の並びの上に重みがかかると一番良いと言う線が存在します。その線の上にきちんと立てているでしょうか?
また足の「動き」も股関節・膝・つま先が一直線上できれいに動かせているのか? ここから逸脱していれば痛みや違和感など何らかの問題を引き起こす可能性が高いということになりますし、現状問題を抱えている人はすでにここから逸脱しているはずです。O脚やX脚など言わずもがなです。
6.本来の姿勢や体の使い方を取り戻すために
こういった姿勢や動作の崩れを改善するためにストレッチポール®などを使って本来あるべき快適な姿勢を取り戻したり、ハイハイやきちんと足をそろえた状態での正座からの膝立ちなど赤ちゃんの動きをベースにしたコンディショニングやトレーニングをすることで、赤ちゃんが一歳頃に立ち上がるために獲得してきたその過程をあらためてたどり、効率のよい動作を再獲得することが大切だと思っています。
最後になりますが、この春から入部した新入生などは急に練習がきつくなり怪我や故障を起こしがちになることもしばしばです。このような悲劇を少しでも減らせるように、ウォーミングアップやクールダウン、補強トレーニングやケアを見直してみませんか?
そのきっかけとしてこの記事や当ブログの関連記事をお役立ていただけたら幸いです。
7.まとめ
膝の痛みは、ランニングフォームが原因で生じていることが多いことを小島先生にご説明いただきました。単純に膝が内や外に入っているだけでリスクが格段に増幅します。
また、シンスプリントなどスネの痛みも同様の原因で起きる可能性があります。土踏まずのアーチはちゃんと発達していますか? 小島先生によると足の指がうまく使えることと足首の柔軟性を高めることもケガ予防とタイム削減のためには重要なポイントだそうです。
これらのフォームチェックの方法や、解消のためのトレーニング、ランニング前後に行いたいストレッチの方法は以下の記事で紹介していますのでぜひご一読ください。
また、ランニングフォームをチェックし指導できるトレーナーとして、日本コアコンディショニング協会のマスタートレーナーの皆さんをご紹介します。小島先生ほか多くのトレーナーさんが全国にいますのでチェックしてみてください。コアコンファン.com トレーナー検索ページ
こじま・なりひさ
ランフィット代表・パーソナルトレーナー/日本コアコンディショニング協会 マスタートレーナー・A級講師/ニューバランスジャパン 技術顧問 シューズ開発アドバイザー 他
自己ベスト記録 フルマラソン 2時間22分34秒
100kmマラソン 6時間36分34秒(日本記録2回更新)
体に無理なく楽しく走るために、最適なランニングフォームやコンディショニングを提案。教え子に箱根駅伝選手も。Run-Fitホームページはこちら
小島先生の提唱する、カラダにもっとも負担なくラクに楽しく走るためのメソッド「背伸びランニング」が一冊の本になりました。フォームの考え方や重心移動で効率よく走る方法がわかりやすく紹介されています。重要なフォーム解説はスマートフォンから動画で見ることもできます。Amazonでのユーザーレビューも「この本に書かれていることはすぐできるし、やればすぐ変わる。グッと楽に走れる。読まないと損である」などと5つ星で絶賛。シューズの選び方やシューレースの結び方等も詳しく解説しています。興味のある方はぜひお求めください。Amazon「背伸びランニング」紹介ページ